北宇治のまえせつさん   作:コーヒーまめ

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ここから、原作外の描写が増えそうです。時系列は沿えるのですが。


7 閉口してしまいそうな

 

 花屋の仕事は、想像していたよりもずっと地味なシーンが多い。

 

「矢田君、お花は商品だし長持ちさせなきゃいけないの。だからこうやって管理が欠かせないし、種類によっても求められる物は違う。分かった?」

「はい!」

 

 花茎を切って生け花の様にして展示する切り花は、水換えが欠かせない。鉢植えに植えられて売っている植物に関しても、病気とか葉っぱを食べる害虫のチェックをする。どちらにも共通するのが、古くなった花弁や葉っぱを取り除く事。それを済ませた上で店内の清掃。

 小学生時代に女子が将来の夢はお花屋さん!とかなんとか言ってたりしたけど、ここを切り取ると憧れの仕事とは程遠い気がする。俺ですら手順やら何やら教わるだけでゲンナリしてるし、誰だよ『花屋なら花言葉を学んどくべき』とか抜かしたやつ。世の中の花屋はこうした地道な努力で成り立ってるのに浮かれすぎだろ……!

 

「いらっしゃいませ!……今週は接客の流れを実際に見せるから、お手本として活かしてね?」

「はい!ばっちり勉強させていただきます!」

 

 商品のメンテナンス、もとい手入れをこなしている合間だろうとそうでなくてもお客さんは訪れる。多分、華やかに見えるのはここから。

 育てるなら鉢植えは何を選べばいいの?水の頻度は?自宅に飾りたいんですけど置き場所は、なんて身近な質問から、大切な人に花を贈りたいんです、とか切実な相談まで。花言葉が活かされるのはこういう場面っぽい。女子が憧れていたのはこの部分なんだろうか?いずれにせよ、取り扱う花に関しては知っておくべきと見た。

 

「お花はね、こうやってラッピングをするんだけど……お花によってはそのクラフト用紙を変えたり、リボンも取り替えるの。こっちは半透明のラッピングペーパーなんだけど、全部覆い隠してる。どうしてだと思う?」

「傷つけない為、っすか?」

「それもあるね。でもこれなら花束を持ち歩くのが恥ずかしい、そんなお客様が気を遣わずに済むの」

「なるほど合理的ですね!」

 

 文字通りここが花形なんだと思う。花束やブーケ、コサージュを如何にして作るか。店頭で売るもののみならず、注文に応じた花束やお祝い事、イベントがあったりすれば装飾用の物を作ったりするらしい。

 ラッピングの技術もだろうけど、花についての知識を求められる。最も専門的な知識とか、日々の経験を活かさないといけないのがここだと思う。暫くはラッピングそのものを教わる事になっている。

 

「そうそう、ウチは大きな店舗じゃないから殆ど受け付けてないんだけど。お祝花ってわかるかな?新しいお店の前に飾ってあるスタンド、ああいう注文も来る場合があるからね」

「えーっとなんでしたっけ、胡蝶蘭とかも飾られたりしますよね?」

「詳しいのね!胡蝶蘭は結構高いのよ」

 

 事務的な仕事も当然ある。花屋で商品を種から育てている訳じゃないので仕入れもする。シフト上、明朝から行くらしい仕入れには参加出来ないけど、そういう下積みが花屋を成り立たせているらしい。

 

「今日は華道教室とお得意さんに配達の案件があるから、一緒に来てくれる?力仕事だし、仕事の流れも把握してもらいたいから」

「分かりました、手伝います!」

 

 

 バイトの流れがどう移り変わってゆくのか、配達先のお得意さんとは何なのか。言われるがままに、配送用らしき店名のステッカーが貼られた車の助手席へと乗り込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 サンフェス出場決定、その一報を井上さんに受けてから北宇治高校吹奏楽部は様変わりした。見た目とか楽器とか、外見や扱う道具じゃなくて練習スケジュールそのものが。『若さにかまけて時間をドブに捨ててる』らしい部員達に、時間の使い方とはこうやるんですよ?とでも言いたい滝先生が、サンフェス本番までのスケジュールを配布した。

 俺の人脈で知れた範囲でも、五組にいる吹部の部員全員が顔を青くしたそのスケジュールはまさに地獄。ゴールデンウィークは何処で遊ぶ?と湧き立つクラスメイトを他所に朝は始業まで、晩は空が暗くなるまで。演奏に勤しむ吹部の鳴らす楽器の音が校舎から絶える事は無かった。

 地獄の練習初回で俺の趣味を押し通せる空気じゃない、そう悟ってサンフェスが終わるまで音楽室への顔出しを止めると誓った。勿論自分としてはそんなつもりでピアノに触れてないけど、遊び半分で弾きに来る部外者は邪魔になる気迫が田邊先輩どころか……パーカスの一年生達にまで芽生えだした。あの様子なら他のパートにも熱は伝播してる筈、出来心で何か差し入れてやろうかな?受け入れて貰えるかは別として。

 

「おー、本当にやってるわ」

 

 やる気の原因までは分からないけど、吹部全体がイベントに向けて汗をかいてまで頑張ってる。そうやってグラウンドに集った熱意は今日、歩幅が明確に定められたマーチングの練習をしている。興味本位で眺めているとこっちまでやる気が湧いてきそう。

 そんな行進を昇降口すぐ傍の階段から視線を走らせてみた。あの日統率も無く走っていた部員達の姿は無く、一丸となって各々の歩調を合わせるべく躍起になっていた。楽器を抱えてはいないけど、誰もが前を向いている。

 あれならもっと近くで観ていたい。階段を降り、グラウンドに通じる門まで近寄ってみた。そんな通用門の前で思わぬ歓迎を受けた。

 

「おんやー?誰かと思えば矢田じゃん!何々、また先生の手伝い?」

 

 黒江と同じ銀に煌めくユーフォニアム……を抱かえずに、マーチングで先陣を切るドラムメジャーの証、バトンを掴んで一人練習に励む田中先輩の姿があった。トワリングの邪魔になるのか、普段は流している髪を後ろで括っている。

 

「こんにちは先輩、今回はなんというか……好奇心っすね」

 

 幾らなんでも、毎日滝先生の良いように遣われるのは御免こうむるっての。ただでさえクラスの運営を任されっぱなしだし。

 

「今日のマーチング練を嗅ぎつけるなんてやるねえ〜!んじゃ、これも興味ある?」

「それって……メジャーバトン、でしたっけ?」

「ほら、これ持って!」

 

 肩で息をしてるのに、涼しい顔をしたままこっちに寄ってきてメジャーバトンを寄越してきた。どうして田中先輩がこれを持っているのか、凡その見当をつける前に。

 

「ふむふむ……やっぱり、私の目に間違いは無いね!男だけど似合ってる!バトンの名前も知ってるみたいだし!」

「えーっと先輩?まさかとは思いますけど、回してみろと?」

「矢田ー何事も経験経験!手先器用そうだしすぐに慣れるって!」

「俺、単に立ち寄っただけっすよ……」

 

 急に渡されて出来る訳ないでしょうが!とははっきり言えなかった。孤児院で下の子が施設の庭で特訓した時間を知っているから。その時間で、少しばかり教えてもらったっけ。

 まあこれが先輩の休み時間になると思って、少し付き合ってみるか。差し入れの一環だって事にしておこう。

 

「まずはバトンを持ったまま手首を八の字に回してみて?肘を曲げながらね、逆回転もやってみて」

 

 言われるがままに、ドラムメジャーの証を手元で回し始めた。肘を曲げるのは、正面から見て円を描いて見せる為。吹奏楽で使うバトンと新体操で握るバトンの感覚が違うけど、原理と技は似ているらしい。

 

「いいねえ、次は両手でバトンを上から……そう、左手で手首を捻りつつ背中に、同じく捻った右手で受け取って。捻りながら受け取るの」

 

 身体を中心にバトンを一周させる。手首を捻りながら渡すのは、全方位にバトンのヘッド部分で弧を描く様を魅せる技。技名があった記憶があるんだけど、それは流石に忘れてしまった。

 

「やるじゃん!それじゃあ肩を両手の高さに、肘を伸ばしたまま持ち手を時計回りに頭上で八の字に……下ろした勢いで身体を後ろに!今度は手首を逆に捻って、また正面向く!」

 

 手元でも円を描くようにしながら、その手首を維持しつつ身体も使って弧を描くイメージで。自分を中心に一回転すると、バトンを持った腕も同じ位置に戻る。

 

「仕上げにもう一回転して……勢いを止めずに胸元にバトンを持ってきて。手の甲にバトンが来たと思ったら、腕で押し上げる感じで投げる!親指と他の指を直角に挙げて受け止めて!」

 

 トワリング用のバトンなら親指でトスが出来るけど、吹奏楽のメジャーバトンは長いし重い。描く軌道はズレたけど、掲げた手のひらに投げたバトンは収まってくれた。え?俺凄くないか?昔練習に付き添った経験相当活きてるぞ?

 

「で、出来た」

「…………すっごいじゃんアキヒロヤタ!私の想像を軽く超える演技を披露するなんて逸材じゃん!」

「へへへ、それほどでも」

 

 眠ってた才能を褒められるのは、田中先輩だとしても悪い気はしなかった。なんていうか照れる。

 

「これならいけるねー」

「いける?何をです?」

「矢田、ドラムメジャーやらない?」

 

 突発すぎた提案は俺が受け止めたバトンを、運動場から少しずつ運ばれた砂利の上に落としてしまった。吹部の勧誘かと思えばドラムメジャー?何言ってんだこの先輩?

 

「あのー先輩、風の噂で聞いたんすけど座奏メインですよねここ?サンフェスでしかやらなさそうな役職要らないでしょうよ」

「それはそうだけどさー。だってほら私、ユーフォ担当だし?」

「それとこれと何も関係無いでしょうに、副部長なんすよね」

「鈍いなあ〜矢田?私はね、純粋にユーフォが吹きたいのだよ!君にとってのピアノと同義なワケ!」

 

 唐突にこっちに沿う喩えをしてくるもんだから、思わず頷きかけた。確かにピアノに触れずに生活してる身の上だし、演奏したいと言われれば同調せざるを得ない。田中先輩も並々ならぬ感情をユーフォに抱いてる訳なのか?

 

「晴香はメンタル弱いし、他にバトン出来そうな連中もいないから引き受けたんだけどね。いざ練習してると吹きたくなっちゃうのよね〜私も夏紀や黄前ちゃんみたいに並んで吹きたいな〜チラッ」

「チラ見されてもやらないですよ、てかそこ発音する人初めて見ました」

「勿体なーい、才能腐らせてもいいの?」

「少なくともバトンの為には生きてないんで」

 

 こうやって喋ってる間に、先輩の息は完全に整った。ランニングの日も軽々と先頭を走ってただけあって、体力の回復も早い。立場上気苦労も多そうだし会話でストレスを発散出来るなら立ち寄った価値はきっとある。

 

「とにかくドラムメジャーの枠なら!何時でも!明け渡すからね!カモンジョイナス!」

「回りくどいけど田中先輩が滅茶苦茶吹きたいのは分かったっす」

「あすか〜調子はどう……って矢田君?えっと、こんにちは?」

「こんにちは。矢田君」

 

 息抜きの会話に割り込んで来たのは、メンタル弱い判定を喰らった小笠原先輩に気配りの出来る中世古先輩。一人ドラムメジャーとしての練習に励む気丈な田中先輩の様子を見に、って雰囲気。

 

「こんちはっす!小笠原先輩に中世古先輩!」

「ちょっと矢田ー、私と二人で態度が違うんじゃない?」

「バトンを渡してこなければ同じ対応してました」

「もうあすか、後輩を困らせちゃ駄目だよ?」

「でも香織!矢田ってばバトンも回せるんだから!てなワケで部長、適任が見つかったからドラムメジャー明け渡していい?私ユーフォに回るから」

「駄目に決まってるよ!?」

 

 部長権限を以てあっさり跳ね除けられた田中先輩の願望。メンタルの弱い部長といっても副部長と対等に会話の出来る、良い部長さんだと俺の瞳には映っている。それを相手にする副部長の瞳も輝いてる。

 

「中世古先輩、あの人何時もこんな感じなんですか?」

「うーん、これがあすからしい?って聞かれたらそうかも。あすかと何かあったの?」

「ちょっと気になって来てみたらバトンを操る田中先輩がいまして、言われるがままに俺も回したらあの顔に……」

「そうなんだ。きっと、矢田君の演技に魅せられたんだよ」

「ピアノなら多少は胸張れるんすけどね……」

「あれは多少で済まない演奏だったよ?誇って良いと思うな」

「ど、どうもっす」

 

 今日だけで二度も褒められて頬の痒さも2倍になった。掻く早さまで心なしか速い。高校生活が始まってから、照れ隠しをする頻度が増えた気がするなあ?

 

「ナックルや沙希から聞いたよ?パーカスの所では練習前か後に一曲聴かせてくれるって。なんだか羨ましいな」

「け、結構広まってるんすね」

「他の皆にも何時か披露してあげてね?」

「そ、その時が来れば」

「あすか、香織、そろそろ練習に戻ろう?それじゃあね矢田君」

「うん!矢田君、またね」

「えーまだ引き込めてないのにー!」

「御三方、練習頑張ってください!」

 

 

 これ幸いと、体裁を保てる台詞で練習に赴く先輩達の背中を押した。後ろ髪を引かれてそうな田中先輩、それを連れ戻す小笠原先輩に付き従う中世古先輩。性格こそ三者三様でも、グラウンドへの足取りに迷いは見えなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「こんちわーっす、ご無沙汰してます」

「おう矢田、待ってたぜ!」

 

 久しぶりに吸音素材の敷き詰められた音楽室へと足を運べた。小学校を卒業してから数ヶ月後に母校へ入らせて貰った経験があるけど、まさにその時の記憶が甦ってる。懐かしいとはこういう感覚なのか。たった数週間、授業以外で訪れなかっただけなのに。

 

「委員長久しぶり〜」

「副委員長はクラスで喋るだろ」

「だってパー練前の委員長ってば、レアキャラになりつつあるからね!絶滅危惧種みたいな?」

「俺ってそこまで珍獣扱いされてたんすか?」

 

 同級生かつ副委員長からの保護対象扱いな発言を受けて、思わず井上さん直属の先輩に尋ねてみた。

 

「珍獣とまではいかねーけど、懐かしくはあるな」

「そこはナックルと同意見。私も美代子も、学年すら違うし」

 

 パーカスのリーダー田邊先輩も、そのパーリーと同じ三年生の加山先輩も、数週間顔を出して無かっただけでこの感想。滝先生流の指導は時間感覚すらも弄れるみたいだな?

 

「順菜ちゃんや万沙子ちゃんがクラスでの話をしてくれるけど、それ位でしか矢田君の話を聞かなかったし。花屋さんでアルバイト、始めたんだよね?」

 

 この場にいる唯一の二年生、大野先輩は早くもバイト先の情報を仕入れさせられてる。変な弄り方をしてこない所に優しさが滲み出ていてありがたい。

 

「ねえ矢田!今の本当?ナックルより身長高いのに、結構ギャップある事してるね」

「さり気なく馬鹿にすんな!」

 

 女所帯に一人放り込まれた田邊先輩は、なんというか肩身の狭い思いをしている。元より吹奏楽部はどこも男子の比率が少ないから、どうしてもこうなる運命にあった。辛そうですけど頑張ってください……後一年で卒業っすよ!俺が来てる時は弾除け引き受けますんで!

 

「本当ですよ、一駅隣の花屋でバイト始めました。今日もシフトなんで後で行きます」

「ある意味吹部より勇気要るんじゃないの、花屋でしょ?」

「勇気といいますか、候補の1つでしかなかったんで。コンビニとか新聞配達もあり得たっすね」

「沙希先輩、ウチの委員長は可能性を秘めてますんで!なんにでもなれます!」

 

 五組の副委員長はそれなりに俺を買ってくれている。時々褒めてるか怪しくなるけど、これが井上さんなりの褒め方だしもう慣れた。

 

「っと、忘れるとこでした。例の物が出来上がったんで持ってきたんです」

「本当?見せて見せて!」

 

 大野先輩に急かされて鞄のポケットを漁る。その例の物ってのは、この前開催された──。

 

「サンフェスの時に撮った写真、持ってきました!」

「でかしたよ!」

 

 ──吹部の人達が参加を心待ちにしていた、サンフェスでの写真。偶々休みも重なったし、応援も兼ねて写真を収めに行けた。そこまで遠くなかったから正直ホッとしてる。現像してもらうにもお金が掛かるしな!

 

「おっ、俺とグロッケンが綺麗に撮れてる!」

「観客が多かったんでどれもアングル固定です、すみません……」

「いーや、写真があるだけでも助かるよー!部員総出の『ライディーン』だったし、これなら写真係も喜ぶんじゃないかな!」

 

 そんな吹奏楽部では、一人ずつ役割を持たされるらしい。会計を担当したり楽器の運搬だったり、その役職は様々。写真係は思い出作りの担当なんだろう。誰かは知らないけど、カメラを持てずにあの道を歩いてたんだな。

 

「矢田は良かったの?写真一枚でもお金掛かると思うけど」

「良いっすよ別に、俺から吹部への差し入れだと思って下さい」

「ありがとう、写真係に代わってお礼言わせて頂戴。別の形で返すから」

 

 田邊先輩もだけど、加山先輩もこういう所はきちんとしてる。その言葉がユニフォームを来て笑顔で行進する部員達みたいに、こっちまで笑顔にさせてくれた。

 

「万紗子、つばめ!私達も写ってるよ!」

「ホントだ!良かったねつばめ!」

「うん、でもあんまり言われると恥ずかしい……」

 

 同級生にも好評みたいで何より。アングルはそのままでも、我ながら綺麗に撮影したと自負してる。

 そんな井上さん達と改めて写真を眺めてると、なんとなく聞きたくなっていた事が。小笠原先輩の愚痴も相まって、吹部全体を見てきたからこそ気になる話。

 

 

「撮影してて思ったんですけど、やっぱり2年生少ないんすね。先月のランニングだって、青いジャージの人だけ数が凹んでましたし」

「……ああ、そうだな」

 

 

 興味本位で放った言葉が、柔和になっていた音楽室の空気を一瞬で凍りつかせてしまった。3年生は平静を保ってる風に見えるけど、微妙に目が泳いでた。大野先輩に至っては悲しげに写真を見つめて、同期達はそんな年上を見てオドオドするばかり──単に退部したんじゃない、何かがあった。

 俺はてっきり、仲良しこよしで去年の1年生が辞めたんだと思ってた。あの子が辞めるなら私も辞める、それなら割り切れるパーカスの先輩達だと、俺の心がそう言ってる。

 

「この後、バイトなんだろ。早めに行っても良いんじゃねーか?」

「……重ね重ねすみません、確かに頃合いなんでこれで失礼します」

「平気だよー矢田君。写真、ありがとね?」

 

 歯切れも悪く、無理に送り出そうとする先輩達。毅然とした振舞いを見せていても、割り切れない事情が、探れない過去が、北宇治高校吹奏楽部を蝕んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「あのー沙希先輩、ナックル先輩。去年に大量に退部したとは聞きましたけど、美代子先輩の代に何かあったんですか……?」

「……隠してた訳じゃないんだけどね、美代子の代だけじゃないの」

「私が入った頃から、ずっとね?」

「まあ、その、なんだ、これは胸糞わりい話だし、一年には聞かせてらんねーよ……」




年末年始は色々ありましてね、はい。

台詞が無いor数行程度な登場人物は個人的にこんな喋り方かな?あんな喋り方だといいな?という独自の解釈によって書いています。外伝どころかファンブック等に載っているかもしれない情報までは拾えない……でもそこにはいる……じゃあこうしよう、的な。

なんにせよ、当作品のあのキャラはこんな感じなんだ。と思って読んでくだされば幸いです。
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