WHITE ALBUM2〜幻想は雪に覆われて〜   作:ソナ刹那

10 / 21
俺は絶対に小木曽から離れていったりしない!
---誰にでも介入して、呆れられて、余計なお世話ばかりで、ウザがられるような人間---



9 二人の過去

♫綺麗で儚いもの

 

 

「…………」

「…………」

 

最寄り駅を降りて、歌姫までの家を歩いている。様子は察しの通り、電車からずっと黙りこくったままだ。

 

「………歌姫、教えてくれないか?」

「………」

 

返答は無い。

 

「……お嬢と委員長。二人きりの合宿、のことだろ?」

「っ…!………知ってたの?」

「あぁ」

 

知っていた。それは、ここに来る前から。

 

「二人がそのことを隠していたことに腹立てたのか?」

「……別に、怒ったわけじゃないの」

「じゃあ、なんで……」

「怖かったの」

「………え?」

 

知ってはいても、それだけじゃ意味がない。直接、歌姫の口から聞かなければいけない。彼女の過去を……。

 

「…………」

「……良かったら、教えてくれないか?」

「………」

 

姫は黙って頷いてくれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

中学生の頃は、今と違って極普通の中学生だったらしい。つまり、普通に友達もいたということ。以前、歌姫弟が言っていた誕生日パーティー。そういうことができるくらい仲のいい友達が、昔の歌姫にもいたということ。

 

「中学生だからなのかなぁ…。ちょっとしたことだけで、簡単に壊れちゃうの」

 

仲のいい友達に好きな人がいた。リーダー格の女の子だ。その子はかなり前から、バスケ部のエース君のことが好きだったらしい。けど、そのバスケ部のエース君は、歌姫に告白した。

特に歌姫は気にして無かったし、その友人のことも思って断った。けど、それが過ちだった。

 

「どうすれば、良かったんだろう……」

 

なんとも理不尽だ。その日から『仲良し五人組』は、『仲良し三人組』になった。リーダー格の子からしてみれば、好きな子が振られたことも許せなかったのだろう。

かと言ってそこで歌姫がオーケーを出しても、仲間はずれにするのだろう。まず間違いなく気まずくなる。

 

目の前で自分だけをはずして、楽しそうに昼食をとる。

教室に入るとあからさまに黙る。

自分だけ飛ばしてプリントを回す。

そういった子供ながらに陰湿なエピソードが、歌姫の口から語られる度、俺の中の何かが大きくなっていった。

 

「………くそ」

「………怒って、くれるんだ」

「え?」

「あんまり人に話したことも無いんだけどね、聞いた人は皆同情はしてくれるの。けど、怒ってくれるのは、桜太くんが初めて」

「………別に、その子たちにキレてたわけじゃない」

「え……?」

「……そんな時に、歌姫と出会えなかった自分に腹が立ったんだ。辛い時にそばにいて、安心させることができなかった自分の運命というか人生というか………そんなのにキレてた」

 

知ってた話。そのはずなのに、直接聞くと、こうも腹ただしくなるのか。

 

「……ホント、優しいんだね…………」

 

三人組ではないもう一人は、変わらずに接してくれたらしい。それでも、毎日のように行われる悪質な行為に歌姫の心が癒されることはなかった。

 

「だから思ったんだ。誰とも仲良くならずに、誰とも一定の距離を置いていれば、また傷つくこともないだろう、って」

「…………」

 

それがミス峰城大付二連覇にも繋がった、箱入りお嬢様のイメージを作った理由。

 

「桜太くんたちのせいなんだからね……?」

「……俺?」

「わたしを楽しいことに巻き込むから……わたしを仲間に入れてくれたから……誰かと一緒にいることがこんなにも楽しいんだって、思い出させるから……」

「……」

 

つまりそれは、歌姫の過去抱いてた想いを呼び起こすことで、

 

「……また、仲間はずれにされる辛さを思い出させるなんて………」

「あ………」

 

俺たちは、心の傷を抉ってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……仲間、はずれじゃない」

「え……?」

 

けど、そこにはもう一人いる。

 

「俺だって、知らされてなかったんだ。どちらかて言うと、歌姫側だろ、俺」

「………そう、だね」

「勝手に一人になるな。二人と二人、バランスいいじゃないか」

「……励ましてくれてる?」

「いちよ……そのつもりなんだが」

 

そういう質問をするってことは、そう思っていないということだろう。

 

「じゃあ、言葉を変える」

 

だったら伝わるように、伝えるしかない。

 

「俺は歌姫から離れない」

「………え」

「例え、お嬢と委員長が歌姫から離れていったとしても、俺は絶対離れていかない」

「桜太くん……」

「俺は姫の騎士(ナイト)だ。クビをもらうまでは、絶対に護衛の任務を遂行し続ける。それが、俺に与えられた役目で、俺の存在意義だ」

「……なんか、話大きくなってない?」

「実際に思ってることだ。なんの偽りもない」

「そう、ハッキリ言われると……」

 

俺はただ、想っていることを赤裸々に話しただけだ。

 

「ホント……優しいね……」

「……別に、誰でもじゃない」

「え?」

 

……絶対顔赤くなってる。

 

「……姫、だからだ」

「あ………」

「いや、その、別に他意があるわけじゃないぞ!?ただ、俺は姫の騎士だから、姫を守る責務というか責任というか……」

「義務とか?」

「そ、そう!」

「…………」

「…………歌姫?」

 

なんでそんな目で俺を見るの?

 

「責務とか責任とか義務とか、そういうのでしか、わたしに優しくなってくれないの……?」

「……え?」

「わたしが桜太くんをクビにしちゃったら、もう優しくしてくれないの……?」

「…………」

 

すごく不安定なんだ。まだ、この子はグラついている。

 

「……ホント、歌姫ってズルいよ」

 

そんな顔で迫られたら、理性が保てない。

 

「……クビになったら、ただの南条桜太として、小木曽に関わり続けるよ。俺、結構しつこいから」

「そっか………そっか……」

 

委員長と変わらない。しつこく干渉し続ける。もう、失いたくないから……。

 

「………なぁ?」

「ん?なに?」

「俺も、昔話していいか?」

「………うん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺、昔彼女いたんだ。何回か付き合ったことはあるけど、一番最後は中ニくらいかな。

その子と、ただいつも通りデートしてただけだったんだ。いつも通りだけど、彼女はいつもよりも明るくて、元気で、まるでこの日を一番にしよう。そんなように思ってるように見えた、だから俺も、精一杯楽しませられるようにって思った。

と言っても、中学生のデートだから、店の予約なんて大人びたことは出来なかったけど、彼女が前から行きたいって言ってたとこに行って、たくさん遊んだ。彼女は幸せそうに笑ってくれてた。俺も幸せだった」

「…………」

 

そう、あの時までは間違いなく幸せだった。あの時までは……。

 

「帰る頃には、暗くなっちゃってて、家まで送って行ったんだよ。ちょっとした小道を通るから、一人にさせたくなかったし。

……けど、それは起きた。数人の大人の男たちに囲まれてさ、俺は成す術もなく、みぞおちに拳くらってやられちゃって。俺は抑えられて身動き出来なくて。そんな俺の前で、彼女が殴られて、蹴られて、斬られて…………犯されて」

「っ……!」

「……俺、何も、出来なかった……。どん、だけ暴れても、効かなくて……、目を逸らしても、顔掴まれて目を無理矢理開かせて、「よく見とけ」なんて言うんだ。……どんだけ、鳴いても……どんだけ泣いても、救えなかった」

「…………」

 

小木曽は目を赤らめて聞いてくれている。

 

「……彼女が言うんだよ。「助けて…!」って」

「っ!!」

「…………その後、たまたま近くにいた警察のおかげで、すぐにヤツらは捕まって、死なずには済んだ」

 

最悪のことにはならなかった。そう思い込んでた。

 

「しばらく学校来てなかったんだ。あんなことされたら、仕方ないと思った。……ただ、会いに行けなかった。怖かったから」

「桜太くん……」

「……そしたらさ、ある日先生が言うんだ。「転校しました」って。……転校前の最後のデートだったんだよ。転校前に、最高に楽しい思い出を作ろうとしてたんだ、彼女。………なんで………なんで、よりによってそんな日に………!」

 

事件のせいで転校するわけじゃない。元より決まっていたこと。俺は、転校前に彼女に最悪の思い出を作ってしまった。

 

「……俺が、もっと強かったら。もっと、もっと……」

「そんな…桜太くんのせいじゃ………」

「……うん。周りのやつもそう言ってくれたよ。別に桜太のせいじゃない、って。でもさぁ…割り切れることなんて出来なかったんだ……。どうしても、罪を感じるんだよ……」

 

こんなドラマみたいな話を歌姫は黙って、涙を浮かべながら聞いてくれている。だから俺は抑えられなくなる。

 

「…………分かってるんだよ!仕方ないことだったんだって!俺にどうこう出来たことじゃないんだって!でも……!それで許せるわけないだろ?そんなで自分を許せるわけ、ないだろ……」

 

俺の中で消えない罪の意識。それはどれほどの時が経っても、俺の中で重く居続ける。きっとこの先も。

 

「……せめて、なんか一言くらい、言えば良かった……。「ごめん」くらい、「好き」だって…それくらい……」

 

携帯の中に入ってた彼女の電話番号には、繋がらなくなっていた。きっとあの時に壊れてしまったのだろう。そう思い込む。拒絶されたと思いたくなかったから。

 

「……もう、失いたくないんだよ。春希も冬馬も小木曽も!……誰も、傷ついて欲しくない、傷つけたくない……」

「………桜太くん」

「……なに?」

「ごめんなさい」

「…なんで……姫が謝るの?」

「桜太くんにも冷たく当たったのって………やつ当たりなの」

「………やつ、当たり?」

「………うん」

 

お嬢と委員長に腹立てたことのやつ当たりを俺に……?

 

「………ぷっ、はは、ははははははははは!」

「お、桜太くん?」

「なんだなんだ……はぁ良かった。俺、歌姫を傷つけたりなんかしてたらどうしようって。歌姫に嫌われてたりなんかされたら、どうしようって思ってた」

「本当ごめんなさい!変な誤解させちゃって……」

「いいよいいよ。良かった、確かにちょっと怖かったけど、やつ当たり程度で良かった」

「…………本当のことなんて言えないんだもん」

 

本当に良かった。誰かを…歌姫を傷つけてなくて。

 

「………歌姫」

「なに?」

「……着いた」

「あっ………」

 

いろいろなことを話しているうちに、小木曽家に到着した。

 

「ありがとう、ここまで送ってくれて」

「当然のことをしただけ。俺は姫の騎士だから」

「うん」

 

そう言って、俺の顔を見上げるようにして、満面の笑みで、

 

「これからもよろしくね、桜太くん」

 

そんなことを言うから俺は………、

 

「うん、よろしくな、()()

「え、今……」

「じゃ、じゃあな!」

「あっ、ちょっと!」

 

顔を見られないように小木曽家から駆け出す。

だって、さりげなく名前呼んどいて、その行動に恥ずかしくなって、顔赤くなってるなんて、

 

「………かっこ悪ぃ、俺」

 





書いてる途中桜太くんが、暴走しました。別にそのまま書き続けても良かったんですが、そこから物語を続けられる技能というか勇気というかなんというか……。その展開はボツにしました。

流行語大賞も発表され、アニメの方もされましたね。トップはレロレロレロレロ…っと、とある奇妙な冒険する方のセリフでしたね。いろいろ知ってるのはありましたが、確かにどれもインパクトあるけど、これ…流行ったかなぁ…?ていうのが多かったですね、個人的には。

さて、大分寒くなってきました。クリスマスの予定などありませんが、大事なイベントがある方々は体調を崩さないようにお気をつけて。

桜太くんの自己イメージ、BGMの指摘などなど、より多くの方々の感想等お待ちしています。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。