WHITE ALBUM2〜幻想は雪に覆われて〜   作:ソナ刹那

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着こなし方とか、似合ってるかどうかとか…
---とある女給さん---



11 始まるまで

♫いつか見た景色

 

 

「それで大丈夫なのか?お嬢」

『あぁ、今はぐっすり眠っている。先生も、三日寝ればよくなるって』

「三日って……間に合うのか?」

『……正直、分からない』

「そっか…なぁ、俺もそっち行こうか?」

『いや、大丈夫だ。それより桜太は雪菜に付いててやってくれ』

「…オーケー、こっちは任せとけ。最悪駄目でも、しっかり治してやれよ」

『あぁ、すまない』

 

通話を終えて、ため息をつく。

 

今日、お嬢は学校を休んだ。さすがのお嬢でも、疲れが溜まったらしく、今日は夜まで寝ると。

けど、今委員長から連絡が来て、お嬢が熱を出して倒れたと。

あのノートに時間を費やしていたからだろう。委員長の願いでもあったあのノート……。

 

「……頼むって、マジで」

 

その日、ドラムを叩いたかなんて覚えてなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

♫君をのせて

 

 

「そっか、未だ回復せずか……」

「あぁ……」

 

委員長からはいい報告はまだ届かない。

 

「もう明後日だぜ?本番」

「大丈夫だって会長」

「そうだよ。冬馬さんなら、きっと大丈夫」

「そっちが大丈夫でも、もう片方の方が問題だ。あいつにとって、2日のロスは大きい」

「それこそ要らない心配だっての。知ってるだろ?あいつはやる時はやる男だって」

「そうだよ!春希くんも大丈夫!」

「……そう、だな」

 

別に根拠とか理屈じゃない。ただ、あいつはやるんだ。ただで終わるような男じゃないんだ。

 

「まあ、明後日は頑張ろうな」

「お前は舞台に出ないけどな」

「……シンセイジってるだけだよ、どうせ」

「でも、飯塚くんはわたしたちの生命線だよ。飯塚くんも倒れないでよね?」

「その気持ちだけ受け取っておくよ」

「例え、40度を超える高熱が出ても引っ張ってくるし、全身複雑骨折しても連れてくるから!」

「お前の俺に対するイメージを是非とも聞いてみたいところだが、あえて聞かないでおく」

 

安心しろ。さすがに休ませるから。

 

「次、軽音楽同好会お願いします〜」

 

 

♫イルミネーション・タウン

 

 

「お、俺らの番か」

「行くよ、雪菜ちゃん」

「う、うん…」

 

軽音楽同好会の番と聞いた瞬間に集まり始めるオーディエンス。

 

「馬鹿ばっか」

「同感。見せもんじゃねーのに……今日は」

「……」

 

改めて舞台に立って体育館を見渡す。

 

「広い、ね…」

 

歌姫に共感する。こういうところに立つっていつ以来だろうか……。

 

「本番は満員だぞ?ここで圧倒されてたら、それこそ上手い下手以前の話だ」

「言っちゃえば、ほとんどが姫目当て」

「………」

 

立ち位置の確認をするよう姫に促す会長。けど歌姫は、どこか心あらずな感じだ。

 

「そうだ。あとでちょっと付き合ってくれない?」

「え……?」

「本番用の衣装合わせを、ね?」

 

さすがというか、お前らしいというか。まぁ、

 

「ナイスだ、会長」

「おう。俺を誰だと思ってる?」

 

よくやったとしか言えない。

 

「けど、難しかったぜ?美女二人に似合う衣装なんて、そうそうありゃしないから」

「だなあ。選ぶ方にもすんげぇプレッシャーが、ってな」

「プレッシャー…か」

「……歌姫?」

 

 

♫綺麗で儚いもの

 

 

「どうしたの?緊張してきた?」

「……」

 

会長の問いになにも答えない。

 

「大丈夫、大丈夫……、みんなと一緒なら。春希くんも、冬馬さんも、一緒…なら……」

「………」

「姫……」

「あ、あは、はははははは……」

 

それはいつもの姫の笑顔じゃなくて、無理に繕おうとしているように見える。

 

「セッティングできたら、始めてください」

「了解です。……姫?」

「っ!?なっ、なに……?」

「会長のシンセに合わせてやってみる?」

「な…………なに、を?」

「なにって……リハーサル。最初のとこだけでいいから」

「あ、あっ、そっか……」

「………」

「マイクセットできたら、OK出して、雪菜ちゃん」

「え、えっ…と………」

「………」

「ここ、で……?」

「………」

「やるの……?今から……?」

「………武也」

「…あぁ」

 

なにも言わずにわかってくれるこいつは、やっぱりさすがだと思う。……いや、こいつもそう思ってたのか。

 

「悪い。今日メンバー揃ってないんだよね。段取りだけで頼む」

「別にこっちはいいけど、そっちが大丈夫か?いきなり本番で」

「多分なんとかなるわ!というかなんとかするから」

 

周りにヤジを飛ばされながらも、確認だけして終わった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

体育館を出たところ。壁にもたれかかって考える。

歌姫のあんな顔初めてで……。

いつも周りにいた人がいない不安。それが歌姫を縛っている。それはつまり、

 

「……俺一人じゃ、駄目ってことかよ………」

 

所詮、あの中の一人にしか過ぎないということだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

♫冬の街路樹

 

 

「この電話は、電波の届かないところにあるか、電源が入っていません」

「……来ないのかな」

「委員長か?」

「わっ!!」

 

歌姫の耳元で問うたら、もの凄く驚かれた。

 

「お、おお桜太くん?」

「よぉ、歌姫。驚きすぎでしょうが」

「そりゃ、いきなり耳元で囁かれたら、誰だって驚くよぉ!」

「ふ〜〜ん……じゃあ、いきなりじゃなきゃいいんだ」

「え?」

 

再び歌姫の顔に顔を近づけて、

 

「おはよう、()()

「〜〜〜〜っ!!」

 

名前を囁く。

 

「……委員長、連絡つかないのか?」

 

さらっと話題を切り替える。やっといてあれだけど、このままだとこっちも持たない。

 

「……え?う、うん……繋がらないんだ」

「委員長のことだから、電源切ってるということじゃないだろうし。おそらく、お嬢に付きっ切りで、充電を忘れてるとかそんなとこだろう」

 

既に、ライブ前日。今日から学園祭だが、おそらく委員長は来ないだろうなぁ。そんな余裕もないだろうし。

 

「……来て、くれないのかな?」

「歌姫……」

「あ。いたいた〜雪菜、そろそろ着替えて!」

「お、姐御」

「……それって、わたしのこと?」

「おう。似合ってるだろ?」

「ノーコメント」

「ははは……。依緒、始まるまで、あと1時間も……」

「1時間しかないの。早めに準備するのは普通でしょ?」

「そうだけど……」

 

そう言いつつ、手の中の携帯に目を落とす。

 

「委員長にはこっちから連絡しておく。今は姐御の言う通り、自分のクラスのことに集中しておけって」

 

だってまだ準備時間中なのに、10人ほど既に並んでる。

 

「……武也からは、いろいろ聞いてるよ。でも、今雪菜が慌てたってどうにもならないじゃない」

「そうそう。今は目の前のことに一生懸命にな」

「でも……」

 

不安そうな顔の歌姫。そんな顔をさせる委員長にも腹がたつし、そんな顔のままにさせている俺自身にも腹がたつ。

 

「姫」

「ん?…って、え?」

 

姫の頭に手を置いて、姫の顔の高さに合わせるように背をかがめる。

 

「雪菜の女給姿を楽しみにしている奴だって、たくさんいるんだよ。かく言う俺もそうだし」

「え?桜太くんも?」

「当たり前だろ?『雪菜』の可愛い姿なら、いくらだって見たい」

「え、ちょっと、今は依緒もいるのに……」

「駄目なのか?」

「いや、その、駄目じゃない…けど……」

「じゃあ、なんで?」

「その、恥ずかしい……から」

「委員長には名前を呼ばせているのに?俺に名前呼ばれるのは恥ずかしいの?」

「うぅ……」

「ねぇねぇ、どうして?」

「……もうっ!桜太くんのイジワル!!」

 

そんなことは自分でもよく分かってる。

 

「けど、俺は見たい。歌姫の女給姿。出来れば、いつもみたいな明るい笑顔の歌姫が」

「え?」

「心配だってのは、よく分かる。けど俺たちが出来るのは、あいつらにまた会った時、何事もなかったって報告出来るようにすることだろ?」

「……うん、そうだね」

「けど、今の歌姫の様子だと、『歌姫は周りにいつもいた人がいなくて、不安のあまり自分の仕事に手がつかなくなってた』って。それ聞いたら、委員長は説教するだろうし、お嬢は呆れるだろう。それでいて、二人して自分たちのこと責め始めるだろうな」

「っ……」

 

委員長は当然のこと、お嬢も根は優しいやつだから、責任を感じてしまう。体調管理なんて難しいものだし、お嬢を責めるつもりなんてない。結局は、あいつらにも傷ついて欲しくない。

 

「それと、いい加減勘違いはやめてくれないか?」

「勘違い?」

 

何回も言ったはずなんだけどな……。

 

「俺はいつだって歌姫の側にいる。寂しいなら、不安なら、怖いなら……俺に言ってよ。なんのためのナイトだよ?」

「桜太くん……」

「……というわけで、ご理解していただけたようなので、依緒?あとは頼んだ」

「……これだけ目の前で胸焼けするようなラブコメ見せられた後に、わたしに投げるの?」

「そこは頑張ってくれよ?……言っとくけど、俺がイタイやつでナルシストだっていうことは、俺自身よく分かってるから」

「だったら少しは抑えてよ……。けど、うん。任された。ほら、雪菜!さっさと着替えるよ!」

「い、依緒っ!…また、後でね。桜太くん」

「おう。楽しみにしてる」

 

教室の中に入っていく歌姫たちを見送って、これからどうしようか考える。

 

「クラスの準備でもするか………あれ?」

 

クラスに向かおうとすると、見覚えのある姿が二つ。

 

 

♫あの頃のように

 

 

「……よ、委員長に会長」

「おう、桜太。雪菜ちゃんといたのか?」

「あぁ、今さっき準備しに行ったところ」

 

そう言って、委員長に目を向ける。

 

「随分と……久しぶりだな、委員長」

「……あぁ」

「様子から見るに、歌姫のことは聞いたみたいだな」

「…あぁ」

「……ちょっとムカついてんだ。一発殴らせろ」

「あぁ。……っ!!」

 

そして思いっきり蹴飛ばす。

 

「お前……殴るって……」

「悪い。手より先に足が出た」

 

見事腹に入ったようで、腹抱えてうずくまっている。

 

「元より、お前たちが悪いとは思わなねぇ。電源が切れてたことに気づかないほど、余裕無かったことも理解出来る。……けど、結果として歌姫を心配させた。大事なところでお前はいなかった。それが俺は許せねぇ」

「……すまなかった」

「別に謝ってほしいわけじゃない。謝るとしても、相手が違う」

「…そう、だな」

「それに、別にそんなに責めてるわけじゃない。反省してるのが分かればいい」

「え?」

「……ただの嫉妬、だから」

 

俺が、『同好会のドラム担当』という立場でしかないということに。所詮1ピースなのだということに。

 

「それより、お嬢の様子は?お前、弾けるようになったのか?」

「……そんな些細なこと、気にしていられない」

「俺が言うのもあれだけど、些細じゃないから、絶対」

 

ギリギリの状態なんじゃないかよ。

 

「というか、もう俺たちのクラス通り過ぎてるだろ?何しに来た?」

 

ここはA組の前。歌姫目当ての列が出来ている周辺。

 

「……分かってるだろ?歌姫は、正真正銘学園一なんだ」

「だからこそ、慎重に判断しろよ、お前ら。明日、あの子を守れるのは……」

「……分かってるさ、そんなこと。雪菜の側にいられなかったこと、雪菜のことを甘く考えていたこと。何より俺たちのこと」

「言っておくが、俺は問題無いから」

「……あぁ、分かってる。そうすると余計、このメンバーでやりたい」

「春希……」

 

確かに真っ直ぐな目をしていた。

 

「なんとかなるんだな?」

「あぁ、なるに決まってる」

 

そっか。なら、安心だ。

 

「じゃあ、なにをすべきか分かるな?」

「もちろん」

 

そう言い、列に向かって声を出す。

 

 

♫Dear Friends

 

 

「はい、散って〜!今から並ばない〜!持ち場に戻れ〜!」

 

さすが委員長だ。自分のクラスは全く意識せずにA組来たというのに、よくもまあそんなことを言える。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……よ」

 

委員長と歌姫の久々の再会。

 

「おはよう、雪菜」

 

周りが騒ぎ出した。まぁ、今更だけど。

 

「昨日、リハーサル出られなくてごめん」

「ううん、仕方ないよ。それよりわたしの方が、力になれなくて……」

 

 

 

 

 

 

「みんな、聞き耳立てず手を動かそうね〜」

「無駄だって、姐御」

「あぁ。誰の手も止まってる」

「……他所でやってくれないかなぁ?営業妨害だっての……」

「無駄だって依緒、聞いちゃいない。……というか桜太、いいのか?」

「うん?あぁ、今くらいいいんじゃない?さっき蹴って少しはスッキリしたし」

 

相変わらずそういうことに関しては鋭いやつだ。

 

「でさ、話は変わって……」

「うん?」

「A組の皆さまには、大変ご迷惑をお掛けいたしますが……」

 

委員長が雪菜の手を取ろうとしたのを遮って、俺が掴む。

 

「あっ……」

「そこまで譲ったつもりはないぜ?ここからは俺の担当だ」

「あぁ!さて……」

 

 

♫WINTER VACATION

 

 

「行くぞ、歌姫!」

「え?え?ちょ、ちょっと桜太くん!?」

「すいません!許されるとは思ってないけど、雪菜貰っていきます!」

「会長!後は頼んだ!」

「うおい!待て!」

 

委員長が言った提案。練習時間確保の為に、歌姫を拉致。

 

「やっぱり最高だわ、春希!」

「そりゃどうも!……はい、通してください〜!あと走らないで〜!」

「走りながら言ったって説得力無いっての」

 

人混み掻き分けて、廊下を駆け抜ける。

 

「これって、どういうこと!?」

「不安なら、練習するしかないだろ?」

「幸い、本番まで30時間くらいあるしな」

 

寝なずにやればだけど。

 

「この格好で外に!?」

「仕方ないんだ。時間がない」

「舞台の上で緊張しないための、いい練習になるって」

「ポジティブすぎるよ〜!」

 

そして見事、女給さんの強奪に成功した。

……あとでなんでも奢ってやるからな、会長。

 




新年一発目です。お待たせしました。

麻里さんの誕生日祝いました?僕もいくつかスライドをツイッターに投稿したりして、おおいに盛り上がってました。

さて、今回はどうしても桜太くん目線の話なので、冬馬家のくだりはカットさせていただきました。知らない人は、ぜひDVD等ご購入して補完してください。

さて、もう眠いのでここまで。次回はいつになるでしょう?まず、どこで区切ろうか?

何はともあれ、本年もよろしくお願いいたします!
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