WHITE ALBUM2〜幻想は雪に覆われて〜   作:ソナ刹那

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しょうがないだろ?
…あたしはお前と違って我慢強くないんだよ
---最初にくちづけした人---



15 祭りの後

♫Dear Friends

 

 

「おっす、姫」

「桜太くん!?」

 

ライブ後、速攻で姐御に連れ去られた姫は、ライブ衣装のまま自分たちのクラスの催しの仕事をしている。つまり大正的な雰囲気のお店の中、1人天使が混じってるということだ。

確かに、2時間待ちになるわけだ。

 

「ど、どうしてここに!?」

「どうしてって……絶対に来るって言ったじゃん」

「それは…そうだけど…」

「あ、言っておくけどちゃんと並んだからな?」

 

確かにちょっと譲ってもらったりしたけどな。主に女子に。ちょっと視線がキツかったけど。男子からも女子からも。

 

「そういうことじゃなくて……」

「ん?」

 

なんかモジモジしてる。というか、その格好寒くないのか?今更だけど。

 

「恥ずかしい、というか…なんというか…」

「恥ずかしいって、今更でしょ?本番は一緒にステージの上でいろいろやってたじゃないか?それも大勢の観客の前で」

「……その妙な含みを持たせた言い回しはわざとかな?」

「わざとじゃなかったらそれはそれでイタいだろ」

 

顔を赤らめながら、上目遣いでこっちを見てくる姫。本当にこの子は……。

 

「けど、実際そうだろ?なんで今更恥ずかしいの?本番終わって落ち着いて冷静になっちゃった?……それとも」

 

少し腰を屈めて姫の目線に合わせる。

 

「こうやってまじまじと見られると、照れちゃう?」

「…っ!!」

 

慌てて俺から離れようとする姫。だが、急に仰け反ったことでバランスを崩して、後ろに倒れそうになる。

 

「…っと。ったく、何やってんだよ姫」

「ありがとう…って言いたいけど、少なからず原因は桜太くんにあるからね?」

「悪い悪い。ちょっと調子に乗った。雪菜が可愛いくて」

「お、おお桜太くん!!」

「ははは」

 

自分から言っておいて、それでもやっぱり名前呼びに慣れていないみたいで、呼ぶとすぐに声を大きくして可愛い反応をする。

 

「……ハイハイ2人とも、公衆の面前でイチャイチャしないでね〜思いっきり営業妨害だから〜」

「あ、姐御。迷惑だった?」

「それ、言われないと分からない?」

 

よく分かってます、はい。

 

「ほどほどにしておけよ〜桜太。前にも言ったろ?そこそこ人気なんだから、お前」

「……いたんだな部長」

「……いたよ」

 

なんか普通に席に座って普通に飲食している。……頼むから姐御と面倒なことしないでくれよ?

 

「それは……答えづらいな」

 

確かにさっきから、というかさっきよりも女子からの視線が強くなる。人気者は辛いなぁ〜〜とか、言うほど俺は神経図太くない。

 

懸念があるとすれば、姫の身に何か怒らないかということ。自意識過剰だと気持ち悪がられるならそれに越したことないが、また昔のようなことを起こさせるわけにはいかない。

 

少なからず反省するべきところがあったな。

 

「分かった、自重する」

「おう、そうしておけ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

♫あの頃のように

 

 

「ほら、缶コーヒー」

「サンキュ。…金出さんぞ」

「いいよ。たかが130円。というかケチぃなお前」

「部長ほどじゃねぇよ」

「どういう意味だよ……」

 

いや、深い意味はないけどな。

 

「……終わったな」

「あぁ、終わったな……」

 

姫たちにもてなされた後、屋上に部長と来た。フェンスに寄りかかって、部長に奢ってもらった微糖の缶コーヒー片手に、沈んでいく夕日を眺めている。

いかにも青春!って感じる俺は古いのだろうか?だが、綺麗だっていう感性は、どちらかで言えば世論だと思う。

 

「お前は…さほど苦じゃなかったか。経験者だしな」

「まぁ、言っちゃえばな。けど、こんなに1日1日を練習に費やしたのなんて初めてだ」

 

なんとも密の濃い時間だった。ここに来る前もこんなにドラム叩いたことなんてなかった。

 

「ついでに言うと、合宿なんてするのも初めてだ」

「…凄かったな、あれ」

「あぁ、ホント凄かったな…」

 

お嬢の家が、自分の同級生の家だなんて、正直今も半分信じれていない。さすが冬馬家。…なんて言ったら怒られるかもな。

 

「大変で、辛くて、キツくて、けど……すっげぇ楽しかった。今までの人生で、一番」

「17年しか生きてないくせに。同感だけど」

「……いろいろ…迷惑かけたな」

「いいって。俺も楽しかったし。……何度か仲間ハズレだったけど」

「本当にごめん」

 

陰ながら支えてくれた部長の存在の大きさは、俺たちが誰よりも分かってる。照れ臭いから、俺やお嬢は素直に言えないけど。

皮肉っぽくなるけど、部長が柳原を連れてきてくれなかった、この物語は始まらなかったわけだし。そういうところでも、感謝かな。

 

「……お前って、不思議なやつだよな」

「なんだよ急に?」

 

コーヒーを一口飲んで呟くように部長は言う。

 

「最初にお前が出した条件。正直無理だって思ってた」

「……まぁ、な。現実味がないのは事実だな」

「こうなること……分かってたのか?」

「……超能力者かよ、俺」

 

なんとも鋭いことを言ってくる。見事にその通りだが、肯定することは到底できない。

 

「不思議なんだよ……」

「だからなにが?」

「なんて言うんだろうな。お前は確かに目の前にいるのに、なんかいないみたいな……」

「………」

「いないというか……近くても遠いみたいなことよく言うじゃん?ああいう感じ。なんかふっといなくなっちまうみたいな、上手く言えないけど」

「………」

 

それは見事に的を得ていた。その通り、俺はもともとこの世界(ここ)の住人じゃないから。

原作でこの時部長がなにしてたかはわからないけど、屋上に来てない可能性だってあるわけだ。俺以外の誰か、もしかしたら1人だったかもしれない。

だから感じる違和感。本来の働きとは違うから、そこにズレが生じる。それに朧気ながらも本能的な部分で感じているのだろう。

 

けど……

 

「ここにいるよ」

「桜太?」

 

どうでもいい。今この瞬間が、数時間前のあの瞬間が、幻だとか作り物だとか紛い物だとか、どうやって信じるっていうのか?

 

「俺は確かにここにいるよ。今確かにお前の隣で、緩くなってきたコーヒー飲んで、フェンスにもたれて立って、半分以上沈んだ終わりかけの太陽見て、今日1日を思い返している。確かに俺だ。俺以外の、何者でもない」

「……だな」

 

俺の言葉に静かに耳を傾けていた部長が、吐き出すように言った。

 

「悪いな、変なこと言っちまって」

「構わないって。今はそういうセンチメンタルになりやすい時間だって」

「そっか…」

「そうだよ…」

「………」

「………」

 

ピアノが鳴っている。冬になりつつある冷たい空気に、響いて外へと伝わっていく。

 

「WHITE ALBUMの季節、か……」

「ん?そうだな…」

 

秋が終わり冬が来る。きっと雪だって降るだろう。

 

誰にも、罪なんて犯させやしない。償う罪なんて作らせやしない。変える。あいつらのためにも……。

 

そして何より、収まりつかなくなった自分のためにも。

 

「……そろそろ戻るか?暗くなってきたし」

「だな。本格的に寒い……」

 

きっとお互いに思うことがあっただろうけど、言わなかった。

いや、言えなかった。

言っては……いけないと、そう思ったから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……お嬢?」

 

きっとみんないるだろうと、馴染みの音楽室に足を運んでいた時だった。

 

「…っ!?……南、条」

 

こっちに走ってくるお嬢がいた。

 

「おい、どうしたって……」

「……悪い」

「おい!!待てって!!お嬢!!」

 

俺が掴んだ腕も、振り払って校舎の中を駆けていった。

 

「……そんな時間か」

 

そう、物語の重要な時間。この時間にかかっている。

 

「………いた」

 

そして、見覚えのある姿が。

 

「……あっ、姫!!」

 

音楽室に入って行こうとする彼女に慌てて声をかける。

 

「…桜太、くん……?」

 

ここで呼び止めて、変えなければいけない。この物語を。

 

「…話……が、あるんだ……」

 

伝えたいことがあるんだ。

 

 





終わり方が前回とほとんど同じですが、気になさらない方向で。
次回!いよいよ!!この作品の目玉!!!
そのためより期間は空くかな?
気長にお待ちください。
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