WHITE ALBUM2〜幻想は雪に覆われて〜 作:ソナ刹那
---次にくちづけした人---
17 最終日
♫冬の街路樹
「……え?」
後夜祭が始まるまで、雪菜の教室で待機させてもらっている。幸い、他のモb……あまり知らない雪菜のクラスの連中は、それぞれ何処か回ってるのだろう。いるのは姐御だけだ。……部長は、いつものやつだろう。
「今、なんて言った……?」
「委員長、その年で難聴か?今までの見返りがない奉仕活動で、疲れやストレスが溜まってたのか?」
「いや、そう言うのじゃなくて、素直に聞き入れるのが難しいから改めて言って欲しいだけだから」
現実逃避?
「いやだから、俺と雪菜付き合うことになったから」
「………」
「………」
「………」
おいなに黙ってんだ。いい加減反応しやがれ。
「噛み締めて理解したか?もう言わないぞ。いや俺は何度だって言いたいけど」
「お前のその自慢じみた惚気はもういい」
お前が聞いたんだろ。
「……なんで俺に?」
「なんでって…お前は大事な仲間だからな。言っておくのは普通のことだろ」
「それもそうか。…えっと、おめでとう?」
「なんで疑問系なんだよ。素直に言えよ」
「ふふふ、ありがとう春希くん」
こういう展開に慣れてないのか、驚いたような馬鹿な顔をしている。
「いつそうなったんだ?」
「お前がスヤスヤと寝ている時。その間に俺が雪菜に告白して、多分快く承諾してもらった、多分」
「なんでそこに自信ないんだよ。というか昨日の話かよ」
「大丈夫だよ桜太くん。私、嬉しかったから。それに…私も…好き、だから……」
「…そっか、ありがとう」
恥ずかしがりながらそんなことを言ってくれるなんて、本当に可愛いくて愛おしい。思わず頭を撫でてしまう。
「…堂々とイチャつかないでくれないか?さすがにどうすればいいか俺分からないから」
笑えばいいと思うよ?優しい目で。
「というわけだ。これで迷いもねぇだろ?」
「…迷い?」
♫静かな冬の夜
「そう。正直あったんじゃないのか?ずっとしていた恋か、新たにしかけてた恋か」
「…お前には何を言っても無駄だって、なんとなく理解したしな。でも、普通ここで言うことか?」
「それは謝る」
確かに雪菜の前で話す内容じゃない。けど、これくらい追い詰めないと、こいつは絶対チキるから。
「結果としてお前の選択肢を絞ってやったんだからな?このチャンス、しっかりものにしろ」
「…お前も結構お人好しだよな」
「春希ほどじゃねぇ。それに誰にも親切ってわけじゃない」
俺のことを優しいって思うなら、それはお前たちだからだ。本来、お前と一番愛し合う人かもしれなかったから。その可能性を摘んでしまったから。お前らのため、なんてただの言い訳に過ぎない。
「……春希くん」
「雪菜?」
「頑張って。冬馬さん、結構手強いと思うから」
「…あぁ、それはよく知ってる。そもそも前提として、脈ありかもわからないしな」
鈍感。でも確かに、あの素直じゃない性格は勘違いさせるには十分か。本人からしてみれば。
けど結構側から見てると分かるものなんだよな。お嬢がいくら優しいからって、春希がいくらしつこいからって、本当に嫌いだったら相手にすらさせてない。
「まぁ振られたら、思いっきり笑ってその後なんか奢ってやるから。学生ならドンと行け、ドンと」
「笑われたらさすがに立ち直れないから。あとついでに言ってることがオジさんっぽい」
実際大学生だからな、精神年齢的に。
「……そう、だな」
よいしょと言いながら立ち上がる。その動きの方がオジさんくさいわ。
「いろいろありがとうな、2人とも。ちょっと行ってくる」
「おう。明日朝冬馬家に行ったら、中から出てきたのが春希、なんて状況期待してるからな〜」
「どう転んでもそんな状況にならないから、安心して雪菜と後夜祭楽しんでいろ。…小木曽の方がいいか?」
「今まで通りでいいよ、お前なら。何よりいきなり苗字呼びに戻るなんて、雪菜が嫌だろうし」
「うん。雪菜、がいいな」
「…分かった。じゃあ、また明日」
春希は教室を出ていった。残ったのは俺たちだk…いや、もう1人いた。
「…で?いつまでわたしは空気役をやってればいいの?」
「ご、ごめん依緒!」
「別に存在感消してくれなんて言った覚えないぞ?」
「だからってあの会話に参加する余地なかったでしょ?」
「別に否定しない。ついでにすまない」
度々視線を感じていたし、視界に何度か入ってた。それでいて話を続けてたのだから、確かに意図的だろう。特に理由はないが。強いて言うなら、あの3人じゃないからかな。
「…そっかぁ、桜太と雪菜かぁ」
「姐御?」
「いや、少し意外だったというか…。さっきあんな話してたから、てっきり雪菜は春希かと……」
「依緒、それは…」
「確かにな」
「え?」
♫言葉にできない想い
確かに、その同意の一言を零したのは、他でもない俺だった。
「正直それは俺も思ってた」
事実そうなるはずだった。
「雪菜からすれば、消去法って部分もあったと思う」
「そんなこと…!」
「…うん、ありがとう。でもとりあえず聞いてくれ」
雪菜には一度言ったこと。武也は言わずとも知っていたこと。だから、依緒にも言うべきこと。
「…雪菜に告白したのは、俺たち…俺と春希たち3人が最悪にならないようにするためだった」
「…なにそれ?」
依緒の口調には、ほんの僅かに怒気が含まれていた。
「別に雪菜のことをなにも思ってないわけじゃない。その時には、正真正銘雪菜に惚れていた。これは嘘なんかじゃない。神にだって誓える。…けど、最初は策略めいたものだったのも、紛れもない事実だ」
「……つまりあんたは、自分と雪菜が付き合えば、メンバーの仲を取り持つことができるって、そう思ったわけだ」
「あぁ」
「…っ!」
ガタッと音がして、姐御が目の前に迫っていた。俺の胸ぐらを掴む姐御の目は、間違いもなく俺を睨みつけていた。
「ちょっと依緒!」
「雪菜は黙ってて」
「………」
「…今の話を聞いただけで、どうやってあんたが雪菜を道具として使ってないって信じればいいの?ねぇ教えてよ」
冷淡な声。けどそれは友情によるもの。
「…雪菜のことは気になってた。同好会として触れ合っていくうちに、どんどん惹かれていった。けどそれは春希も同じだった」
「…それ、は」
「春希がもともとお嬢を好きだったのは知ってた。その分、危ないって思った」
「…自分が雪菜と付き合えば、自然に春希は冬馬さんを選ぶだろうって?」
「ああ」
我ながら酷いことを言ってるものだと、痛々しいほどに実感する。だからこそ知ってもらわないといけない。
「……やっぱり都合いい風に使ってるとしか聞こえないわよ!」
「最後まで聞けって!」
「っ!?」
胸ぐらを掴んでいた手を突き放す。
「…最後まで聞けよまずは。……最初はそうだった。最初はそうだったけど、今は違う。確かに今でも、こうなれば何も起こらずに幸せなまま今日を終えられるって思ってる。この先も一緒にいられるって思ってる。けど今雪菜と一緒にいるのは、好きな人と一緒にいたいっていう気持ちだ」
「…信じていいの?」
「信じてくれ。もし裏切ったらその時は、俺を殺してくれて構わない」
「……!」
「お、桜太くん!」
「ふざけてないぞ。命なんて既に、一方的に勝手に捧げてる」
気持ち悪い言葉をよくもまあ、こんなにも言えるものだと客観的に思う。
「…さすがに重いわ、桜太」
「よく実感してる」
呆れてるような声。けど、そこには先ほどみたいに、俺を突き刺すような鋭さはない。
「…あーあ、わたし何やってんだろ。こんな馬鹿が、人のことを道具になんて出来るわけないって分かってたのに」
「…その馬鹿とやらの俺でも、それは褒めてないって分かるぞ」
「だってあんたさ。まだあんまり長い付き合いじゃないし、そんなに親しいわけでもないし」
「事実でもそういうことは言わないものだろ」
確かに事実だ。現にさっきまで信頼を失っていた。一瞬で失った。
まだそれほどの仲という証明だ。
「でもあんたは、見た目慣れてるようなフリしてるだけの、とんでもなく不器用なやつだって。器用に何人も想ったりできない、一途にしかなれないやつなんだって、それだけは分かったから」
「姐御…」
それが正しいのかなんて俺には分からないし、仮に事実だからってどうというわけじゃない。けど、贔屓目なしの俺の印象がいいのは、俺としても救いようがある。
「まあいいよ。あんたに雪菜を託す」
「…依緒」
「お前は雪菜のなんなんだ…って聞くだけ野暮だな」
これだけ雪菜のことを考えている。少し雪菜を悪く言っただけで、すぐカッとなる。いかにも体育系だ。
それでもって、大親友だ。
「ごめんね、雪菜。あんたの彼氏に変なことしちゃって」
「ううん。私のためにしてくれたんだもん。ありがとう、依緒」
「…うん。……あ」
♫静かな冬の夜
放送が流れる。実行委員会のアナウンスが聞こえてくる。
「もうこんな時間か」
昨日のライブを終えて次の日の学園祭最終日。昼間は春希たちといろいろ周り、日が暮れる頃になってやっと俺たちのことを伝えられた。
やっぱりチキンだったのだと実感する。春希に言えることじゃなかった。
最終日には後夜祭がある。定番のファイヤーダンス…というよりかは、ただ踊ったりするくらいだが。
「じゃあ、あんたたちは後夜祭行って来なよ」
「依緒は?」
「わたしは…適当に武也でも探して適当に駄弁ってるから」
「姐御も踊ればいいじゃん」
「やめてよっ。カップルじゃあるまいし」
「…一応俺は、そうなることを望んでるんだけど?」
「………」
詳しい事情までは知らない。けど、そろそろこいつらも、いい加減前に進めべきだと思う。
「…本当あんたも、春希に負けず劣らずのお節介焼きだね」
「このメンバー限定の、な」
「……まぁ、その…せいぜい頑張りな」
そう言ってぎこちなく教室を去っていった。
「…今のはどういう意味か、いろいろ候補あり過ぎて分からねぇよ」
都合よく解釈しておくぞ?前向きに考えてしまうぞ?
「じゃあ、雪菜。校庭行くか」
「うん。……ん」
「ん?」
雪菜がなにか手を差し出してる。なにか欲しいのか?
「………んっ!」
「手を繋ぎたいなら繋ぎたいって素直に言えばいいものの。まぁ分かってたけど」
「…だったら素直に手を繋いでくれてもいいんじゃないかなぁ」
「むしろこっちのセリフ。何を今更手を繋ぐくらいで、恥ずかしがってるんだよ」
未だに俺の目を見れないで、斜め下に俯いたままの彼女。その姿も堪らなく可愛いのだけど。
「…違うもん」
「え?」
けど雪菜は、小さくても力強く呟いた。
「彼女になって…初めて繋ぐんだよ?特別だよ……」
「…雪菜って時折、すっごくロマンチックなこと言うよな。そこが可愛いんだけど」
「そういうことを躊躇いなく言える桜太くんも大概だと思う」
「大丈夫、自覚してるから」
手を繋ぐ。キスだってしたのだから、特別なことでもない。けどこんな風に思ってくれるのは、本当に素敵だって思わせるには十分過ぎて。俺が単純なのかもしれないけど。
「……ほら」
「……うん」
何を恐る恐る手を握ってるのか。
「……あったかいね」
「雪菜が冷たいんだって。……ほら」
「あっ……」
繋いだ手を引っ張って、雪菜は俺の胸の中に収まる。
「こっちの方が暖かいだろ?」
「う、うん…」
「…少しくらい、遅れてもいいか?」
少し力を入れて抱きしめる。
「ごめん。もう少し…こうしていたい」
「……ん」
小さく頷いて俺の中でジッと静かになる。
「………」
「………」
お互い特別会話したりするわけじゃない。ただこうやって、お互いの体温を知り合って、触れて確かめて、俺の大好きな人がここにいるって刻み込みたい。俺がここにいるって、刻み込んでほしい。
「…雪菜」
「なに…?」
「…好きだ」
「…私も、大好き」
「………」
「………」
静まり返った空っぽの教室に2人。
やがて外から、音楽が聞こえてきた。
久しぶりの投稿。
こっからはいろいろ周りを動かそうといろいろ考えながら、ひたすら雪菜とイチャイチャしていきます。
キャラ崩壊とかしちゃってましたらすみません。
桜太くんは、あくまでキャラ崩壊がデフォルトなので、ご了承ください。
次回は一度、原作通りに春希目線で冬馬邸でのことも書こうかなって。
さすがにオリジナル部分を脳内補完してくださいは、丸投げだと思うので。
では、次回はいつになるか分かりませんが、気長にお待ちください。
感想等お待ちしています!!