WHITE ALBUM2〜幻想は雪に覆われて〜 作:ソナ刹那
北原が詞を書いて、あたしが曲をつけて、小木曽が歌う…三人のためだけの歌だ。
---お隣さん---
気づいたらそこは、見覚えが無く、かと言って知らないわけでもない、そんな妙な違和感を感じるところだった。
「授業中・・・?」
確かに自分は学生だ。けど、クラスの面子はこんなんじゃないし、黒板の前で教鞭をとっている教師のことも全く知らない。・・・いや、知らないけど
「おい、桜太。桜太ってば」
「へっ?」
隣の席の男子が小声で俺の名を呼んだ。
「北原・・・春希・・・?」
「・・・寝起き早々、「お前がなんでここにいる?」みたいなギャグは受け付けないぞ」
いや、待て待て待て。なんであの北原春希がいるんだ。おかしいだろ、というかありえないだろ。ここはあの世界だとでも言うのか?この教室もこの生徒たちもあの教師も。全部あのWHITE ALBUM2のだって言うのかよ・・・?
「本当にあの北原春希なのか?」
「次は「お前誰だ?」か?そろそろシャキッとしろって。・・・いちよ言っておくけど、俺は北原春希以外の何者でもないから」
「・・・マジかよ」
どうやらマジで、WHITE ALBUM2の世界のようだ。だったらなんでここに俺はいる?転生?いや、俺は死んだ覚えはない。というか死んだとしても、そんなの認めるか。
だとしたら、夢?にしては、ちょっとリアルすぎる。なんでこんな感覚は鮮明なのか。あまりにも
「おい、南条」
「あ、はい」
そんなことを考えていたら、担当の教師が俺に声をかけてきた。
「ここの問題は?」
要するに答えなさい、と。
いちよ俺は大学生だ。いや、今はなんでか高校生だけど。
「ーーーです」
「・・・正解だ」
そこそこいいとこ行ってるんだ、これでも。今更高校の勉強なんて正直、そんな苦じゃない。
「・・・桜太。お前、それ答えれるようになったのか?」
「・・・これくらい普通だろ」
北原春希の口調からすると、俺とこいつはそれなりの仲らしい。だとしたら、以前の俺はそこまで頭の出来が良かったわけじゃないようだ。だとすれば、突然今まで出来なかったものが出来るようになったら、そりゃ不思議に思うだろう。というか、以前から親しい親友の振りをするのはなかなかに辛そうだ。
「へぇ〜お前も勉強するんだな」
「・・・・・・」
本当、以前までの俺ってどんなだったんだろう・・・。
「おい、冬馬。お前も起きろって・・・」
「・・・・・・うるさい」
・・・やっべえーっ、リアル冬馬かずさだ。リアル生天目さんボイスだー。マジで髪長ぇ、黒くて艶やか〜。肌も白いし、綺麗な顔してるよなぁ、本当。これは惚れるよ。
「春希〜何言ってもしょうがないって」
「そうは言うけどなぁ親志、学級委員長として見過ごせないだろ」
「学級委員長として、ねぇ・・・」
「・・・なんだよ」
「い〜や、相変わらずうちのクラスのリーダーは真面目さんだなあと」
「それ、絶対本当はそんな風に思ってないだろ」
側から見れば、あんがい分かりやすいものだ。俺に関して言えば、ただ知ってるからかもしれないが。
親志と言えば、アニメでは原作以上の存在感を発揮してたっけ。まぁ、スギ様だし。
あの武也よりも早く打ち解けたともあったし、思っている以上に春希のことをわかっているのかもしれないな。
「なぁ、桜太」
「なんだ、きt・・・春希?」
下の名前で呼ぶことに慣れないながらも、そう続きを促す。
「頼みがあるんだけど・・・」
「なんだ?」
それはとても申し訳無さそうで、俺に言うことさえ躊躇っているようにも見える。
俺の存在自体、この作品ではイレギュラーなのだから、何が来るのかと案外心の中ではビビっている。
「頼む!もう一度バンドのドラムのこと考え直してくれ!」
「・・・は?」
つまりあれか?サークルクラッシャーがサークルをクラッシュさせたあの時のバンドメンバーに俺がいたと?いや、確かにリアルでドラムはやってたけど・・・。
「つまり、俺にドラムをやれと?」
「失礼極まりないのは承知の上でだ!実際、連れてきたのは武也で俺じゃないけど、止めなかった俺にも原因がある。けど、あの子はもういない。あんなことになることはもうない・・・たぶん」
「いや、そこは言い切れよ」
柳原朋は確かに同好会を去った。けど、同好会に与えたダメージも尋常じゃない。原作では残ったのは北原春希に飯塚武也だけ。この時点では、だけど。
「・・・・・・」
本来、タイムスリップなどした場合、その時間帯での出来事を変えてはいけない。タイムパラドックスなることが起こる可能性があるから。
しかし、ここは過去だとか未来だとか言う以前に、そもそも別世界だ。ここで、俺が加われば間違いなく何かしら原作とは違ったストーリーとなるだろう。・・・いや、既にこの世界に紛れこんでしまった時点で、もう遅いのかもしれないが。
「分かった」
「ホントか!?」
「あぁ。ただし、条件がある」
「条件?」
そう、それはこの物語を進めるうえで欠かせないファクター。出会わなければ、深く関わらなければ、誰も傷つかないかもしれない。それこそ、根本からきっかけを断つのだから。それでも・・・。
「お前に武也がギターやるとして、俺がドラム。さすがにこれじゃ迫力に欠ける。あと一人二人くらい楽器出来るやつを探すこと。それに・・・」
「それに?」
「ボーカル。バンドやる以上最も欠かせない役だ。つまり、ボーカルを含めて二人以上新メンバーを確保すること。それが俺のバンドをやる条件だ」
「・・・・・・」
まあ、結構無理難題を言ってるのは分かっている。けど、ここで春希に行動させなければ、話が進まない。
「・・・分かった」
「あてでもあるのか?」
「・・・半分半分かな?どちらにしろ可能性は低いけど」
親志の質問に苦笑しながらそう答える。
「まあ、待ってる」
「おお!顔洗って待ってろよ!」
「どこの悪役のセリフだよ・・・」
だがまぁ、お前なら出来るよ、春希。だってお前は・・・。
キーンコーンカーンコーン
「お、始業のチャイムか」
「次なんだっけか?」
「・・・・・・」
もし、彼らが誰一人傷つくことなく、優しく暖かい日々が続く日常を過ごしていけるとしたら・・・?そんなifのことを考えている。
あくまでここはフィクションなのだから、定められているレールの上を歩くしかない。それが二次元の世界の住人の絶対覆されない決まりだ。
だが、今その二次元の世界に俺はいる。異端分子として、この世界に介入している。
元々の、切なく苦しく儚くて、そして美しい。そんな恋物語。それを否定するつもりはない。むしろ、そんな物語に自分がとても感動したのは事実だし、それもジャンルの一つとしてあるべきで、俺は好きだ。
でも「もしこうだったら」というのを考えるのは、極自然なことで、それが自分に出来るなら・・・。
「・・・寒く、なってきたな・・・・・・」
秋も終わりに差し掛かり、随分と冷え込んできている。冬が近づいてきている。
WHITEALBUMの季節が、近づいてきている・・・。
小説最終巻を読んで、衝動的に書いてしまいました。
続きを書くかも怪しいですが、気紛れにやっていこうと思います。
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