WHITE ALBUM2〜幻想は雪に覆われて〜 作:ソナ刹那
先日かずさ誕生日記念のトークショーがありまして、自分は運良く当選したため参加させていただきました。
そこで初めてWHITE ALBUM2の製作に携わった4人にお会いして、また普段SNS上でお話しさせていただいているこの作品のファンの方々ともお会いしまして、改めてこの作品は愛されているな、素晴らしいなと思いました。
今回はそんなわけで短文で駄文でありますが、この作品に出会えたこと、この作品を通じて得た人との繋がりや経験に感謝して書かせていただきました。
そしてなにより……
お誕生日おめでとう、かずさ。
君が生まれた日〜あったかもしれない、そんな幸せの可能性〜
その日は特別だった。きっといろんな大切な日があるだろうけど、その中でもかなり特別な日。
「なぁ、ホールケーキ一個ってお前本当にあたしを祝う気があるのか?せめてもう一個用意するべきだ」
「いくら祝われる側だって図々しいぞ、かずさ」
……例えこんな女の子の誕生日だとしても。
俺の左隣に座る女の子が、肩に頭を置いて甘えた声で甘える。
「えぇ……いいじゃないか、年に一度のおめでたい日だぞ?彼氏のお前が盛大に祝わなくてどうするっていうんだ」
「一学生になにを求めているのか知らないけど、ホールケーキ一個でも十分盛大だ。少なくともただの庶民の俺からしてみたらな」
「時々嫌味ったらしいよな、お前」
事実ホールケーキを2人で食べるというのが、どうも馴染みなくて変な遠慮が生まれる。そもそも食べきれるビジョンが見えない。
「なに言ってるんだ?三食ケーキにすればなにも難しくないだろう。なんだったら一食でも大丈夫だぞ」
「それは糖分の過剰摂取だ、自重してくれ。……全く、それほどのカロリーを口にしててどうして太らないんだ?どこに行ったんだよ……」
「ん?分かってるだろ、ほら」
左手を掴んで自分の胸に当てる。初めて会ったときよりも膨らみを増したそれに思わず上ずった声が出る。柔らかいなぁなどと呑気に考えそうだったが正気に戻す。
「どうだ?大きくなっただろ?」
「そ、そうか?」
「そうだよ。あたしが今でもスタイルを悪くすることなくいられるのが、こいつが全部持ってってくれるからだ。それにあれだけお前に触られたら当然……」
「あーはいはい分かった分かったから!もう離してくれって……」
「ふふ、やーだ」
自分のスタイルの良さを否定することなく、俺の手首を掴んで離さない。力づくで振りほどくこともできるが、それをすると後で怖いので大人しく諦める。それにさほど今の状況も悪くないと、正直な俺がそう言っている。
「かずさ、お前酔ってるだろ?」
「さあな、でも今最高に幸せだぞあたし」
「……さいですか」
酔ってるにしても、ここまで珍しく素直に胸の内を表現されるとどう受け止めればいいのかわからない。仮に酔ってないとしたら大問題だ。心臓がもたない。空になったワインの空き瓶を恨めしく一瞥した。
「なぁ、ケーキ、食べさせてくれよ」
「……分かったよ」
数センチの距離で口を開けて待っている子が目の前にいる。あれだけ憧れたその顔だけど、きっと今の顔を知ってる奴らはいなくて。そんな特別な側面を俺だけが知っているという事実が、たまらなく俺を高揚させる。
「もちろん口移し、な」
「……はい?」
もちろんの意味を理解しているのか疑問に思いながら、首を横に振って拒否の意を示す。対して目の前の娘も首を横に振って応える、迫力ある両目で睨みを効かして。長いようで短い沈黙という争いを経て、素直に降参の代わりにケーキを口に含む。その様子にあからさまに破顔してみせるからずるい。イチゴのショートケーキというありきたりな代物をフォークで一口大に切り分けていく最中、なんでショートケーキという名称なのだろうと、つまらない疑問を頭に浮かべて気を紛らしていた。生クリームのくどいくらいの甘さを舌の上に転がして、同じくらい甘そうなその小さな口の中へと注ぎ込む。
「んっ……」
柔らかいスポンジを歯を使わず、お互いの舌ですり潰すようにして噛み砕く。2人の唾液が混じり合ってドロドロしている。それは決して不快なんかじゃなくて、むしろ目眩がするような甘美をより助長していた。もはや最初の目的であるケーキを食べる行為から既に逸脱して、ただ互いに互いの体温を貪っていた。相手の口内を蹂躙しようとお互いがひたすらに舌を忙しく動かす。行き届いていない酸素の供給はとっくに頭の隅に追いやって、この苦しみすら幸福だと味わっていた。しかし限界はどうしようもなくやってきて、血液に回す空気を欲して一点で結ばれていた温もりを離した。
「はぁ……はぁ……」
満身創痍で肺を働かす目の前の女の子の目は蕩けきっていた。そんな様子がまた俺の枷を一つ壊したような、そんな音を催すような心のざわつきがあった。
「……甘いな」
こちらの目を艶やかに見つめながら発せられた彼女の呟きに、思わず華奢なその身体を抱きしめる。壊れてしまうのではないかという不安と、むしろ壊れてしまえという利己的な欲求の間で悶えながら、愛しい温もりと香りと感触を全身で感じていた。
「……なぁ、プレゼントがほしいよ」
「昨日あげたじゃないか、雪菜たちと開いた誕生日パーティーで」
「ううん、もう一つ欲しいんだ。みんなが一個ずつくれて、彼氏のお前も同じく一個だけなのか?みんなと同じ?」
「……物による」
そういう言い方はずるい。別にこいつは俺に愛されてないとも思ってないし、俺に対して不安になってるというわけでもなく、ましてや本心ではプレゼントの数を気にするようなやつでもない。ただ飢えているんだ。決して幸せに対して満足しない。その欲求は尽きることなくひたすらに求め続けて、それは際限なく続く。俺があげられるものを全てあげてしまうまで。
「お前が、欲しいよ……」
その一言でとうとう俺は我慢をやめた。細い身体を押し倒して、押し潰すようにその唇を犯した。自分のしたいように、自分が欲する本当の温度を得るために。そんな俺を彼女は自分の舌を絡めることで肯定する。後先考えない刹那的な快楽にまた身を溺れさせる。この息苦しさが馬鹿みたいに心地いい。呼吸するという人間の最低限度の行いすら煩わしく思ってしまうほどに。
「……かずさ」
「……なんだ?」
「おめでとう」
「……うん」
俺はもう一度唇に触れた。先ほどとは違い焦ったいとも思えてしまう、そんな柔く優しい口づけを。
本編の方を楽しみにしていただいている方々には申し訳ありませんが、続きの執筆は未定です。もし更新されたら運が良かった程度に思ってくださるとありがたいです。
ではまたどこかで。