WHITE ALBUM2〜幻想は雪に覆われて〜 作:ソナ刹那
---ヒトカラの女王---
「ボーカル含めて2人以上って・・・きついこと言うなぁ、桜太も」
「けど、そうでもしないと成り立たないだろう?ギターとギター見習いとドラムって、ちょいとアブノーマルだろ」
「見習いで悪かったな!」
第一音楽室。軽音楽同好会が週2日、練習を許可されている部屋。本来なら数少ない練習日で、ステージまで1カ月をとっくに切っているというのに、肝心のご本人たちはため息ばかりついている。
「たとえお前が一丁前に弾けたとしても、不自然であることは変わりないだろう。まあ、いざとなったら武也がベースでもやればいいんじゃない?」
「おい、何勝手なこと言ってんだ?」
要は人数不足。バンドを曲がりなりにもやるには、明らかにメンバーが足りない。
とあるボーカル担当の女子が、メンバー全員を手玉に取ろうとして、失敗。置き土産にサークルクラッシュ。
「それで武也?メンバーの調達は?」
「スルーかよ・・・。やっぱこの時期に楽器できるやつは、皆組んじまってるよ」
1クラスに1人彼女がいるともいう武也が見つけられないなら、そういうことなんだろう。まぁ、好都合だが。
「真剣に探したのかよ?」
「あったり前だろ?ミス峰城大付の有力者を中心にバッチリ「帰れ探しに帰れ黙って帰れ」ひどっ!?」
「同じことを繰り返すつもりか・・・?」
「いやあれはあの子だったからで・・・」
「ボーカルには容姿より歌唱力を求めろよ、残念系イケメン」
「桜太・・・いちいち毒があるよな、お前の言葉って」
実際そうだろ。いくら本命に振られて、タラシになったからって長ぇよ。「俺みたいになるなよ」って、春希に言うのはいいけど、己がその努力しなよって話。
「けどまぁ、楽器できるやつが見つからないにはなぁ・・・」
ため息をつく武也。
「春希、やっぱ無理かもな」
「・・・ずいぶん弱気だな、部長」
「まったくだ。らしくない」
「さすがになぁ・・・春希を誘ったのは俺だし、桜太も協力してくれるかもしれないって話で、悪いとは思ってるけど・・・」
事実、かなりのがけっぷちであることは確かだけど。普通諦めるよな、当日まで三週間ちょいしかないのにメンバーいないって。
「エントリーの締め切りは明日までだろ?もう少しくらい探してみろって」
「・・・だな。というか、お前が素直に入ってくれればいいんじゃないか?」
「俺はやるならとことんと本気で、だ」
それはBADエンドなんだよ、武也。俺にとってはな。それこそ、ライブが出来ないことよりも。俺がこの世界にいる意味が無くなっちまう。
「まぁ、さっきお前が言ってたみたいにこの3人じゃ、笑いもんになるのがオチだろうしな。・・・もうちょっと探してくるわ」
武也が教室を出て行く。残ったのは、俺と春希だけ。
「さて、と・・・」
「・・・何してんだ?」
ドラムの前に腰掛けた俺に、春希が問いかける。
「何って・・・ドラムの練習だろ?」
「だって、お前・・・」
「もしメンバーが揃った時に、条件突き出した俺がお話にならないようじゃダメだろ?」
春希の言葉を遮って言う。
「あんなこと言っといてなんだけど、お前らとバンドやりたい気持ちは嘘偽りないから。ただやるにはあの条件が絶対なわけ。理由は言えないけど、そこはわかってほしい」
「・・・分かった。俺も必要以上の詮索はしない。お前がやりたいって思ってくれてるだけ、十分ありがたいよ」
・・・男くさい青春もいいかもな。あくまで、最終手段だけど。
「さて、もしかすると春希のラストステージかもしれないし、ちょっくら混ぜてもらおうかな」
「ん?それって・・・」
「噂の『お隣さん』とのセッション。WHITEALBUMだよ」
正直、俺が参加したら、向こうは参加してくれるのか怪しいとこだが、やってみたいという気持ちが大きいのだから仕方ない。あの名シーンに携われるなんて、それこそ夢のようだと思う。
「安心しろ。お前に合わせてやるから、どんだけリズムめちゃくちゃでも」
「・・・一言一言毒があるよな、お前って」
だってあいつはどれだけめちゃくちゃでも、合わせてこれたんだ。俺は天才じゃないけど、ドラムに関してはそうそう簡単に譲れない。
「けど、なんでやってくれるんだ?」
「・・・な〜に、ちょっとした対抗心だよ」
「?」
「ほら、さっさと弾け」
「お、おう・・・」
そう言って春希はギターを奏で始める。
「・・・・・・」
・・・うん、まぁ、あんまりなのは知ってたけど、急に遅くなったり速くなったりと、安定しないな。
けれど、そんな不安定なメロディーに特になんともないようにその音はーーー
「・・・よし!」
極自然に混じってきた。
「・・・すっげ」
もちろん春希がではない。ピアノがだ。いともたやすく音色を変えるその技量。優しく響いたり、踊っているかのように跳ね回り、春希のギターに合わせて奏でられている。
まるで、春希を、一緒に弾くことで指導しているかのような。まぁ、実際そうなのだが。
「さ〜て・・・、そろそろ俺も」
二人がノってきたところで、俺も参加するとしようか。
「・・・おっ!?」
そんな素っ頓狂な声を上げている春希。ははは、もっと賞賛しろ、青年?こっちはお前に合わせるので、精一杯だってのに。
「・・・さて、そろそろか・・・?」
そう、そろそろ声が聞こえてくるはず。仮面を被った歌姫の声が・・・。
「・・・・・・え?」
「・・・来たか」
ギターとピアノとドラムとそして・・・、
「歌っ・・・てる?」
このセッションに「歌」という要素が追加される。
「ーーーっ!」
春希は音楽室をダッシュで出ていった。
「・・・行ったか」
ここから始まる。二人に一人が加わり、楽しくも悲しい物語が。
「・・・やっぱり弾いてくれないか」
気づけば、先程まで一緒に音を奏でてたピアノの音が聞こえなくなっていた。
「んで?どうだった?」
「何が?」
「どうせ、さっき歌ってた子をスカウトしに行ったんだろ?それともなんだ?ただのナンパか?」
「・・・後者に関しては触れない。けど、その通り。誘いに行ったよ」
セッション後、少ししたら春希が戻ってきた。まあ、様子を見るに上手くいかなかったみたいだけど。聞かなくても、すぐ分かる。
「それで?誰が歌ってた?」
いや、知っているが。
「それが、あの小木曽雪菜だったんだよ!まさか、あんな歌が上手かったなんて・・・」
「とりま、落ち着け。けど、小木曽か・・・」
知っていたが。
「けど、意外だったなぁ・・・」
「なんで?」
「いや、なんとなく、そういう目立つようなことは苦手かなぁと・・・」
「ミス峰城大付を二連覇しているような子が?確かに、そんな気もするけど」
その通りなのだが。
「なんにしろ、諦めるつもりないんだろ?」
「・・・あぁ!お前を参加させるためにもな」
「おう、頑張れ」
小木曽雪菜。この物語を始める上で、始まりのキッカケ、重要なファクター。春希と小木曽が出会うことで、物語が始動する。
「・・・なんとしても巻き込めよ」
俺自身のためにもな。
翌日。
「・・・・・」
「そう見るからに『私驚いてます』みたいな顔するなよ、武也。いつもよりアホに見えるぞ、二割増しで」
「だってよ・・・」
水沢が連れてきたのは、例の通り、小木曽雪菜。おそらく昨日の件について、途中で逃げてしまったことと、その返事だろう。
「ねぇねぇ、桜太。いつの間に春希のやつ、雪菜と知り合ったの?」
水沢依緒とは、それなりに仲が良かったんだろう。こちらのことを下の名前で呼んできたし。
「ん〜?さ〜?俺もよく知らない」
実のところ、よく知っているが、あえて言わない。だって、そっちの方が面白そうだし。
「というか、小木曽に関しては依緒の方がよく分かってるだろう?」
「!・・・急にどしたの?いきなり下の名前で呼ぶなんて」
「・・・あぁ」
あれか?思春期特有の、彼女でもないのに下の名前で呼べるかってやつか?思春期じゃなくても、そうなのかもしれないが。だが、今の俺は大学生だ(中身は)。もう、18越えてんだ。思春期なんて、とうの昔に忘れてきた。
「そっちが下で呼んでくれるんだから、こっちもそっちの方がいいかなって」
「ふ〜ん、まぁ構わないけど。私もそっちの方が気楽だし」
依緒がさっぱりした性格で助かった。変に詮索されると答えられない。俺自身よくわからないのだから。
「戻ってきたぞ、春希」
「おっ、さっそく問い詰めなきゃ」
せいぜい頑張れ、春希よ。
結果として、ごめんなさいとのこと。
けど確かこの後、春希がスーパーに行って、その後小木曽のヒトカラに付き合わせられて、あの名セリフだよな。
まぁ、明日に期待だな。
それよりも・・・
「おい、冬馬」
「・・・・・・なんだ南条」
「ヤキモチ妬いてんのか知らないが、春希をジーッと見過ぎ」
「っ!?適当なこと言うな!!」
「お〜お〜これは申し訳なかった」
そういう反応こそが、ってな。案外分かりやすいもんだな。
ちなみに作者は高校生です。桜太くんは、まだcodaはプレイしていないという設定です。ネットなどでなんとなく内容を知っているだけです。とまぁ、作者自身もこれからCCの雪菜ルート突入ってところですが。
感想等お待ちしています。