WHITE ALBUM2〜幻想は雪に覆われて〜 作:ソナ刹那
潔いな北原。 そんなぬるい根性であたしを口説こうとしてたわけ? …5年早いね
---助っ人---
♫イルミネーション・タウン
「・・・意外だな。お前、こういうのは礼儀正しいんだ」
「ずいぶんと失礼な物言いだな」
集合時間の5分前に来たら、あろうことか冬馬がいた。
「だってな?遅刻・サボり常習犯の冬馬が、五分前行動だなんて想像できないだろ?」
「そこで私に同意を求めるな、本人に」
意外といいやつという、春希の言ってることもあながち間違いじゃないということだ。
「なんだ、2人とも来てたんだ」
「遅い。何やってた?」
「待ってるの分かったなら、さっさと走ってこい、ゆとり」
「いや、今3時ちょうどだし。というか俺がゆとりだったら、お前もだろうが」
いいや、実際の俺は大学生だ。と言っても、そう変わらないけど。
「五分前行動は基本じゃないのか?」
「ぴったりってのも春希らしいけど、けどやっぱり春希は30分前にはいてほしいよな」
「・・・好き勝手言い放題だな、お前ら」
そして、当の立案者がやってきた。
「ごめん、ちょっと遅れちゃった〜」
「俺は別に構わないけど・・・」
「俺も特に気にしないけど、冬馬は?」
「・・・裏切りもの」
裏切りというか、さっきから俺は『春希』の話をしていたんだ。春希だったら、という話をだ。
「どこ行くんだ?そっちで決めて。とりあえず、しばらく付き合うから」
「じゃあカラオケボックスとか・・・」
「え・・・」
「いいの?」
「おい、春希。新しい嫌がらせを開拓してんじゃねえよ」
「だって、冬馬がどこでもいいみたいなこと言ったから」
「どこまで腐った人間なんだ、お前は・・・」
「・・・今の会話で、間違いなく酷い扱いされたの私だよね?」
気づかないうちに、小木曽をディスってたな。けど、マジでそれは勘弁だ。なんだかよく分からない空気になるのは、あからさまだし。引き笑いしか出来なくなるって、絶対。
「いやね、もう行く場所は決めてるの」
じゃあなんで聞いたし。
「それじゃあ・・・南条くん。このカゴ持って?」
「お、おう・・・カゴ?」
「店長〜、お久しぶりです」
以前、小木曽が働いていたスーパーだった。
♫いつか見た景色
「ねぇお母さ〜ん、片栗粉ってどこだっけ?」
「・・・・・・」
一向が訪れたのは小木曽家、自宅。
「・・・いつになるのやら」
「多分、時間かかると思いますよ、ご察しの通り」
俺らの目の前にいるのは、小木曽雪菜の弟、小木曽孝宏。今思えば、WHITEALBUM2にカジー出てたんだよな〜。あれ、ラジオにゲスト出演してたっけ?
「三年。姉ちゃんとは三つ違い」
「ってことは、もう受験かぁ。やっぱり
「成績的には大丈夫だろうけど、経済的にね・・・」
「そ、そう・・・」
「どっちにしろ、俺たちとは入れ替わりかぁ。さすがに留年する気ないし。・・・一人除いて」
いつもみたいに余計な一言を言ってみたところ、
「・・・・・・」
「・・・何緊張してやがんだ、お前は」
「ごめんな、孝宏君。この人、物凄い人見知りだから」
「あ〜いやぁ。・・・ちょっと怖いけど、大丈夫」
「な、な、な・・・」
一人っ子だし、家族との関わりも少なく、それに加えて持ち前のコミュニケーション能力。年下の男の子と話す機会なんてのも、経験ないんだろう。
「にしても、姉ちゃんが友達連れてくるなんて久しぶりだなぁ」
「・・・あぁ」
ミス峰城大付の影響によりついた、『お嬢様』のイメージ。簡単に友達を呼べなくなってしまった。
弟くんの話では、誕生日パーティーにクラスの女子を全員読んでいたらしい。この決して広いとは言えない、極一般的な部屋に。
「それにしても、卒業半年前になって急にどうしたのやら」
「あぁ、それはさ・・・」
「俺たち四人で、かなり大事な話があってな。だろ?」
「あ、あぁ・・・。そう、じっくり話し合わなきゃいけないことがあって・・・」
「・・・四人で?」
「うん。俺たちで、何としても冬馬を説得させようって」
「は?」
「あ・・・」
なんかすっげー誤解されてる気がする。原作通りの三人だったらまだ分かるけど、四人ってどんだけ複雑なんだよ。
「どうしても、俺たちの気持ちを理解してほしくて。こっちの桜太にも、改めて俺たちがどんだけ本気か知ってほしくてさ。・・・冬馬は、何度言っても分かってくれなくて」
「・・・それって、もつれた糸をほぐそうとかいう・・・」
「あ、いや・・・」
「言っちまえば、そういうことだな。なかなか頑固でな、こいつが。俺はいちよ納得してんだけど。俺も、2人とも大事だし」
「なっ・・・!?」
目を見開く冬馬。その目は、悪ノリしている俺に向けられている。
「なんで煽るようなことを言う!?」
「・・・面白いじゃん?」
「収集つかないことになったらどうする・・・」
俺にしか聞こえない声で、そんなことを言ってくる。いいよ。いざとなったら、春希に全てなすりつける。
「お待たせ〜って孝宏?どうしてここにいるの?」
♫Dear Friends
「あ、やべ」
「やべ?」
そう『やべ』だよ。明らかに勘違いしてるぞ、弟くん。
「お姉ちゃんたち、大事な話があるんだから、ほら早く出てって!今すぐ!」
「おぉ・・・」
「お姉ちゃん・・・」
「マジでそうなんだ・・・」
そして、瞬間的に仲直りする小木曽姉弟。だが、弟くんの残した言葉が、
「円満に解決するといいな」
と・・・。
「なんの話?」
「さぁ?」
「理解しない方が幸せなことだってある」
俺は必死に笑いを堪えてましたとさ。
♫あの頃のように
「どうしても駄目かな?」
「・・・何をしたって無駄」
小木曽の教科書通りの普通に美味い手料理を食べた後、冬馬の説得タイムになった。
「というより、南条はどうなんだ?」
「俺?」
「正式参加じゃないんだろ?」
「あぁ。でも、冬馬が参加してくれたら俺もやる」
「・・・なんで?」
我ながらズルい言い方かと思うが、実際そうだ。だから、冬馬の質問に、
「そういう約束だった、てのもある。けど今は、そういう理屈は抜きで、ただこのメンバーでやりたい。・・・武也込みで」
他三人は黙って聞いている。・・・こういうシリアスなのは苦手なんだけど。
「春希のギターだって拙い。それはもう、泣けるくらいに」
「・・・泣けるくらいで悪かったな」
「小木曽の歌だって、所詮、素人の延長だ」
「・・・まぁ、確かにそうなんだけど・・・」
「俺もあくまでそこそこ弾けるに過ぎない。そこらの学生と変わらん」
全て事実。本番まで約一カ月でこの状況というのは、ぶっちゃけなくてもピンチだ。
「正直、まともに上手いて言えるのは、冬馬の音楽の才能だけだ」
「・・・私はやらないぞ?」
プロじみている、一人だけ次元が違う。それは事実で、俺たちがそこのレベルまで辿り着けるか、言うまでもないだろう。
「でも、このメンバーでやれるなら、それはきっとこの上なく幸せなことだって思う。・・・武也込みで」
「・・・・・・」
「南条くん・・・」
「桜太、お前・・・」
俺は介入者だから、もしかしたら途中退場なんてこともあるかもしれない。だからこそ、少しでも長くこの時を味わっていたい。あわよくば・・・。
「お前がどうしても駄目なら、少なくとも俺は諦める。迷惑なら、春希たちも止める。けど、今は諦めるつもりはない」
諦めてしまったら、俺がここに来てしまった理由がなくなる。俺自身の興味だけじゃなく、
「だって・・・」
だって・・・。
「俺がお前らとバンドをしたいからだ」
俺がお前とバンドをしたいからだ。
「・・・桜太、そんなに本気で・・・」
「泣きそうになっているところ悪いが、少し黙ってくれ」
そうして部屋内の面子を静かにさせる。
「・・・小木曽、なんか聞こえないか?」
「え?・・・あっ」
そして、小木曽が部屋のドアを開ける。
「どうにかしてほしいのはこっちだよ!」
「「うわぁっ!?」」
♫Dear Friends
部屋の前には、小木曽弟と小木曽母がいた。修羅場見たさに盗聴か。
「ほら春希、お前の紛らわしい言い方のせいで、あの2人歌姫に怒られてるぞ」
「・・・お前、分かってて言ってたろ?」
当たり前だ。
「・・・マジでホームドラマみたいだよなぁ。俺らとは、大違いだな?」
「・・・あぁ、なんか拍子抜けというか・・・」
「・・・・・・」
その後小木曽が必死で謝ってきたが、別にどうでもいい。むしろ、俺は面白いからおk。他2人も、構わないと言っている。半分呆れてるかのように。
「あんたらの計画には無理がある」
「いや、いけるだろう。ボーカル、ギター、ドラムにキーボード。ほら、見事にバンドだ」
「だから勝手に私を入れるな」
「でも、お嬢が入れば委員長も歌姫もモチベーション上がるし、俺自身もやる気になるていうか、参加できる」
「ちょっと待て、お嬢てなんだ・・・?」
「お前の呼び名。今決めた」
「なんで『お嬢』?」
「雰囲気。なんだ?それとも姉御とか姉貴の方が良かったか?」
「いやなんでそんな選択肢しかないんだ・・・」
というか、今はあだ名云々はそれほど重要じゃない。
「ともかく、今言った通り無理ではない。お前が入ったら、だけど。ただの人数合わせじゃないぞ?俺たち、特に委員長がお嬢のピアノの熱狂的な信者だから」
「桜太、本人の前でそういうこと言うなって・・・」
「いや、まずは否定しろ」
気持ち悪いと呟く冬馬に、春希が悲しそうな顔をしている。
「というわけで、お嬢が来れば万事解決、オールオーケーだ。なにがそんなにヤなんだよ?」
「っ・・・」
「お前のことだから、ビビってるてわけでもねぇだろ?なにがお嬢を縛っている?」
「・・・北原、あんた似合わないよ」
さりげなく話をそらされて、委員長に話をふる。
「似合わない?」
「あぁ、らしくない。超現実主義者の北原らしくない」
側から見れば、ひどく乾いた人間。何事も安定していることを求める春希がいつも通りなら、確かに今の春希は絵空事をリアルと勘違いしている、イタイ人間かもしれない。
「一カ月くらいいいだろ?似合わない、イタイ人やったって、別にいいだろ?」
「・・・だな」
そう言って、委員長の肩に手を回してお嬢に言う。
「お嬢、あんたみたいな人生過ごしてた奴には分からないかもしれない。・・・悪い、言い方がちょっとなかったわ」
でも、やっぱりこういう奴は報われるべきで、応援したくなる。
「どんなに不恰好でも、情け無く惨めでも、何かに向かって頑張ってる奴ってカッコいいんだよ」
俺とは違う。未だに何かに一生懸命取り組んだっていう自覚がない俺にとって、こいつは眩しい。だから、こんなピンチがむしろ心地よい。・・・マゾじゃないぞ。
「だからお嬢もカッコいいんだよ」
「え・・・?」
「なんだかんだ言って音楽、特にピアノに対しては真剣だろ。真剣に、楽しそうに演奏しているお嬢は誰が見てもカッコいいよ」
「っ・・・!」
いろんなことがあって、ピアノと向き合うことが辛い時があったかもしれない。いや、今もそうなのかもな。でも、ずっと一緒に過ごしてた
「ほら、春希」
「お、おう。・・・冬馬、俺たちは本気だ。真剣だ。残りわずかでどうこう言えないけど、俺はそう簡単に諦めるつもりはない。桜太の言った通り、俺は今の軽音楽同好会に冬馬を加えたそのメンバーでバンドをしたい。嫌われても構わない。けど嫌いでも、仲間になってもらうからな!・・・できれば」
「だから言い切れよ」
「・・・ちょっと待ってよ。あたしは別にあんたのことが嫌いだなんて一言も」
「え?」
「おっ」
お嬢の発言に俺と歌姫が反応したその時。
「雪菜、話がある」
原作通り、ピンチが訪れる。
♫いつか見た景色
「・・・正直、過保護過ぎる気もするなぁ」
「ははは・・・」
緊急家族会議。事前に親に相談するとか、高校生でそれはキツそうだよなぁ。
「今来てる3人とさ4人でユニット組むんだって。友達のお姉さん、すっげ〜カッコいいんだよ」
などと冬馬にお褒めの言葉。
「さすがお嬢」
「評価高いな冬馬」
「うるさい」
ちょっと不機嫌な気がする。こんな状況は冬馬にとっては、いろいろ思うことがあるのだろうか?
「成功させるわよ・・・北原くんも冬馬さんも南条くんも、皆すっごく上手いんだから」
「いや、俺は・・・」
「そう思うなら、なんで突き進む?」
「男にはそんな時があるんだよ、お嬢」
そして、小木曽家はこれから本格的に家族会議を始めるらしい。今時珍しいな、こんな家族。
「帰る、か」
「だな」
「・・・ん」
♫綺麗で儚いもの
「ふぅ・・・」
「・・・寒くなってきたなぁ」
秋だと感じる冷たい夜風。冬が近づいているのだと、極自然なことだが、星月夜を見上げそう思う。
「お待たせ」
「待った」
「同じく」
「大丈夫。申し訳ないとか思ってないから」
「あ、そ」
「ホント、女王様だよ」
俺が歩くと、お嬢と委員長も隣を歩き始める。・・・照れてんじゃねぇ、春希。
「・・・小木曽、謝ってた。半泣きだった」
「全然気にしてない」
「半泣きとか、ホント可愛いらしいなぁ〜歌姫は」
「・・・北原のは伝えておいた」
「・・・サンキュー」
「ま、だよね」
後日きちんと伝えておこう。
「でも、あれは正直キツいわ」
「確かに、な・・・」
「ホント、何あれ・・・」
歌姫のお父さんは真剣に俺たちに謝ってくれた。俺たちにも明らかに原因があるのに、こちらには叱ることなく。
「あんなに家族に干渉されて」
「しかもそれを当然だと思ってて」
「・・・あたしはごめんだ・・・あんなところに自分がいるなんて」
「想像できないよなぁ。俺もだわ」
委員長もお嬢も、どちらの家庭事情もありきたりと言えばありきたり。ちょっとブルジョアじみてるが。
「俺はどっちかて言うと、歌姫寄りかな。あそこまで、干渉されないけど。ふっつうに親は2人ともいるし、会社のお坊ちゃんでもないし、有名ピアニストでもないし」
だいたいの人が、『普通の家族』と聞いて思い浮かべるような家族。なんの面白みもない。
「あの子とは、きっとずっと、同じ価値観を共有なんてことは無理だと思う」
あまりにも2人の過ごしてきた日々は違いすぎるから。
小さく、震えて、怒ってるのか、笑ってるのか、泣いてるのか、それ以外なのか。その声に込められた思いは、到底たかが知り合いには理解できなくて。
「・・・不倶戴天の敵、それとも・・・生涯の大親友。そのどっちかだと思う」
「・・・え?」
「お嬢・・・」
ふと、お嬢に目線を向けると、
「帰り、小木曽と約束してきた」
まるで、イタズラを仕掛けた子供のようで、とても妖艶な少女らしい笑みを浮かべていた。
「あんたが説得し切れたら、軽音楽同好会とやらに入ってやってもいい・・って」
♫いつか見た景色
「・・・え、え、えぇぇ!?」
「・・・ホンット、カッコいいぜ!お嬢!」
北原の作戦は、お嬢の逆鱗に触れたかと思われたが、どうやらそこ以外にも触れたらしい。
「ありがとう・・・」
「今日ばかりは、どれだけ感謝されても、され足りないかな」
「ありがとう、ありがとう、本当に、ありがとう!!」
「マジでお嬢カッケェっす!ホントイケメンっす!マジリスペクトするっす!」
「・・・やっぱりウザいよ、あんたら」
けど、その顔は全然嫌そうじゃなくて、
「お嬢」
「ん?」
「・・・マジで、ありがとう」
「・・・うん」
俺の心からの言葉に、お嬢は笑みを浮かべてそう答えてくれた。
はい、今回は長めです。原作と照らし合わせながらの観覧を推奨します。
さて、私事ですが、もう間も無くテスト期間に突入ということで、しばらく(約二週間ちょっと)投稿できないと思います。申し訳ありません。
それと、やはり今シーズン中には無理だと思います。今年はホワルバクリスマスしようと思ったので、投稿スピードも下がると思います。だって、早くcodaやりたいんですもの!他のゲームも溜まってますもの!
・・・感想等お待ちしています。