WHITE ALBUM2〜幻想は雪に覆われて〜 作:ソナ刹那
---隣を歩いた少女---
♫イルミネーション・タウン
「・・・・・・」
「また、そんな顔しやがって」
「今日から、軽音楽同好会に加わることになった、冬馬がずさだ。みんなよろしくな」
歌姫と俺の拍手が響く。というかお嬢、なんか言いなよ。
「で、こっちが飯塚武也。うちのギター兼会長」
「いや、逆だろう委員長。てか、お嬢と会長ていちよ知り合いだよな」
会長がナンパして、盛大に蹴り飛ばされたという、極ありふれた関係。
「ホントに連れて来やがった・・・」
「・・・・・・」
「よ、よろしく・・・」
「・・・・・・」
「は、ははは・・・」
「・・・・・・」
「は、春希ぃ〜」
可哀想なやつ。
「で、こっちがボーカル担当の小木曽雪菜。って、知ってるだろうけど」
完全に私情でフォローしない委員長。
「よろしくね冬馬さん。あと、わたしは雪菜でいいからね」
「あたしのことはかずさでよくないから」
「俺のことは桜太でいいぜ、歌姫?」
「・・・うん!よろしくね、桜太くん」
・・・・・・(脳内真っ白)。
「北原くんも、わたしのこと・・・」
「どうした小木曽?」
「・・・・・・」
「雪菜ちゃ・・・」
「武也ぁぁぁぁ!」
「っ!」
委員長の咆哮とお嬢の蹴りと俺の拳が、非情にも武也に襲いかかった。
「それではミーティングを始めます」
なんで俺が仕切る?
「さて、メンバーも揃い・・・大丈夫だよな、お嬢?」
「・・・まぁ、最悪ドラムはいるから」
「OK。だとしたら、曲だな」
ベースはいないが、まぁいいだろう。どうにかしてくれる。主にお嬢が。
「はい!わたし、やりたい曲あるんだけど・・・」
「何?」
「分かんないかなぁ〜」
「分かんないかなぁ〜」
「・・・桜太は分かったのか?」
「逆になんですぐにピンとこないんだよ?」
「・・・あ」
ほら、お嬢も分かった。お前らを繋いだ大切な曲だろう。
「ヒント1!」
「・・・『WHITEALBUM』」
♫あの頃のように
「だよな〜」
「2人とも正解!」
「また、随分と懐かしい曲だな・・・」
「あ、会長。いたんだ」
「・・・泣くぞ?」
泣けば?
「けど、言われてみればそうだな・・・。何年前だっけ?」
「おいおい、不朽の名曲だぞ?」
「んなこと分かってるって。俺だって好きだもん」
WHITEALBUM。
この物語を語るには欠かせない一曲。前作『WHITEALBUM』との強いて言える共通点。丸戸さんが今作を作るに当たって、出された課題の一つ。
「もうすぐそんな季節だね〜」
「学園祭の頃には、白い雪が街に優しく降り積もる、なんてことはないだろうけど」
「知ってんじゃん」
一昔前には文字通り、一世を風靡した冬を代表する一曲。・・・のはず。実際は俺知らないし。
「けど、緒方理奈派かな」
「ミーハー」
「メジャー志向」
「だね〜」
緒方理奈の話で盛り上がる三人。
「・・・かずさ?」
ずっと、独り言呟いているお嬢。
「・・・ん?」
「何をかずさは考えているのかなぁって」
「何をってそりゃバンドの・・・南条!」
「をっと危なっ」
「がはっ!!」
俺が避けたお嬢の蹴りを武也が食らう。・・・ご愁傷さん。
「何すんだよ?」
「お前、今、なな名前で・・・」
「一回読んでみただけじゃん。そう切れるなって『かずさ』」
「っ!!」
「ぐふっ!!」
ある意味赤い糸だな、武也。
「で、バンドのことで考えてたって?何を?」
お嬢が落ち着いたところで聞いてみる。
「・・・部長」
「・・・お、俺?」
お前以外に誰がいると?
「打ち込み出来る?」
「そ、それって、その、えぇっと・・・」
動揺しすぎだろう、会長。
「シンセ出来るかってことだよな?お嬢?」
「あぁ。時間が欲しいから早く答えて」
「そ、そりゃまぁ、それなりに」
「OK部長。じゃあ・・・」
♫WINTER VACATION
「うおおおおおおおぉぉぉぉぉぉっ!!」
・・・ホント、報われないやつ。俺も、委員長を見習って敬礼しておくか。
このバンドに足りないもの。それは、楽器パート。ベースはもちろんのことWHITEALBUMには、サックスもある。今更どうこう出来るわけじゃなく、普通なら反則じみているシンセサイザを使用するとのこと。シンセについて分からない人は、Google先生にでも聞いて。
ただ、ギターの腕ならそりゃ武也の方が上だ。だから委員長がシンセ担当のはずだが・・・。
「その事実、小木曽にちゃんと説明出来るの?」
お嬢の言う通り、あくまで歌姫は『あの時のメンバー』でバンドをすることを望んでいる。そうすると必然的に、委員長が裏方という選択肢は無くなるわけで、武也が泣き叫びながら部屋を出ていった今につながる。
「途中で逃げ出したら殴るから」
「OK、任せとけ」
いきなりお嬢が仕切っちゃってる。妥当だけど。
「それじゃさっそく・・・」
「あ、ちょっと待って。今準備するから」
「・・・なんで北原を待つ理由がある?」
「え?だって今から合わせるんだろ・・・?」
「北原は自主練。隣も借りてるんだろ?今の腕だったら、正直足手まとい。今日は小木曽と南条の腕をみたい」
「・・・ホント遠慮ねぇな、委員長には」
「っ!」
おいおい、そんなに睨みきかせるなよ。
「うおおおおおおおぉぉぉぉぉぉっ!!」
・・・敬礼。さらば春希。あれは・・・そう、一種の愛情表現なんだよ。ツンデレみたいな?・・・頑張れ。
♫穏やかに過ぎゆく時
お嬢からの評価は思ったよりも良かった。
「・・・うん。小木曽の歌は問題なし。素人なのは事実でも、充分形になる。南条の方も、正直驚いた。全然問題ない。忘れないように反復練習だけしといて」
「イエッサー」
リアルの方でも、WHITEALBUMは何回か叩いてたからな。さほど困難ではない。
「じゃあ小木曽。細かいところ言ってくから・・・」
「うん、よろしくお願いします!」
小木曽も問題なし。だとしたら・・・。
「やっぱり委員長か・・・」
「うん?何が?」
駅でお嬢と委員長と別れて、今は歌姫と歩いている。
「いや、俺も歌姫も大きな問題があったわけじゃないじゃん?だとしたら、唯一の不安要素はギターかなぁって」
「あ〜・・・」
なんだかんだ言って、会長はちゃんとやってくるだろうし。あれほど仲間想いなやつ、そうそういないって。
「北原くんなら・・・きっと、大丈夫だよ」
「その心は?」
「う〜ん・・・勘、かなぁ?」
「勘なのかよ・・・」
けど、まぁ否定はしない。設定がどうとかじゃなくて、あいつならやれるって確信に近い何かを感じている。
「にしても、歌姫もこっちの方なんだ?ていうか徒歩通学だったんだ」
「うん。あまり誰かと帰るってことしてなかったから、なんか懐かしい。・・・桜太くんとは、会ったことないかな?」
「・・・記憶の限りではないな」
というか、ほとんど最近の記憶しか無いんだから、以前の話なんて分からない。
「多分無いんじゃない?あんま興味無いけど、ミス峰城大付の小木曽雪菜だったら、見かけたらすぐ分かるだろ」
「そう?」
「多分な。ていうか、ミスじゃなくても、そんだけ可愛いかったら意識しなくても分かるって」
「・・・ホントに、桜太くんってズルいなぁ・・・」
「そうやって頬を膨らませてる歌姫も、十分ズルいっての」
ホント可愛いすぎるだろ。
「今更だけどさ」
「うん、なに?」
「こんな時間まで良かったのか?」
今左腕の時計に目を向ければ、短針は既に8を通り過ぎている。
「歌姫ん家って、門限とか厳しそうだけど」
「10時までだから大丈夫」
「いちよ門限はあるんだ」
「うん。でも10時以降に外出する理由もないから、そんなに苦じゃないかな」
「そっか。なら、安心した」
「心配してくれたの?」
「そりゃな。うちの大事な姫なんだから。こうやって姫の家まで護衛するという、大変光栄な役割まで頂いて、騎士として心から幸せであります」
そしてそれっぽく、歌姫に深々と礼をする。それを見て歌姫は、鈴が鳴るかのような可愛いらしい声で笑ってくれる。
「うん、騎士様には期待しています」
そして笑顔でそう答えてくれる。
「ホント桜太くんがいると安心するよ」
「・・・・・・」
・・・そんな顔でさ。
「桜太くんは頼りになる人なんだって」
そんな声でさ・・・。
「出会ってばっかりなのに、安心しきっちゃってる」
そんなこと・・・。
「ふふっ、おかしいね」
言われたらさ・・・。
「わたし、危ないかな?」
抑えられなくなる。
♫言葉にできない想い
「え?」
「・・・・・・」
気づいたら、小木曽のことを壁に押しやって逃げないようにしてた。
「・・・桜太くん?」
「・・・・・・」
夜。風が吹く音だけが響いて、少しばかりの街灯と夜空の光だけがこの道を照らしている。
「えぇっと、その・・・」
「あぁ、危ないよ」
なんか自分でもよく分からないことになってる。
「俺のこと、信用してくれるのはありがたいよ。ぜひとも今後も、そうでいてほしい」
なにを喋ってんだ、俺の口は?
「けどさ、俺も男だよ?絶対に襲われないって決めつけられるの、ありがたいけど、ちょっと悔しい」
馬鹿なことばかり・・・。
「こんなことしといてあれだけど、襲うつもりはない。大切な仲間だって想ってるから」
「あっ・・・」
ここでやっと離れられた、小木曽から。
「けど、心配なんだ。今みたいなことが小木曽にあったらどうしようって」
「・・・桜太くん」
「自覚しなよ。小木曽は可愛いんだから。狙ってるやつだってたくさんいる」
「そんなこと・・・」
「そんなことある。俺はいつでも姫の騎士でいられるわけじゃない。俺の目が届かないところで、なんかあったらって・・・」
俺の
「怖いんだよ・・・もう、失うのは・・・」
「・・・・・・」
何を語ってるんだよ。痛いやつじゃないか。
「・・・行こっか?」
「うん・・・」
言葉を交わさないまま、小木曽宅に着いた。
「それじゃ。あったかくして寝ろよ?」
「うん・・・」
支離滅裂なこと言ったって自覚はある。無茶苦茶なことしたって。これからだってのに。
「・・・・・・桜太くん!」
「・・・小木曽?」
去ろうとした俺に小木曽が声をかけた。
「わたし・・・それでも、桜太くんのこと信用してる!だって・・・大切な仲間、だから・・・!」
「・・・小木曽」
向こうも、まとまってないのだろう。根本的なとこで、何処かズレているようにも聞こえる。
「サンキュ」
だとしても、いや、だからこそ。
「明日も頑張ろうな、歌姫!」
「あ・・・うん!」
そうやって見栄を張るんだ。
「あ〜あ、なにやってんだろ」
さっきまでの自分がやっていたことが、自分でも把握できない。
「マジで、わけわかんねぇ・・・」
関係ないだろう?もう、忘れただろう?
俺は・・・悪くないだろう・・・?
「ていうか・・・」
今日分かったことがある。
「俺って、マジ単純・・・」
案外、簡単な男だったってことが。
なんとか時間が取れたので投稿させていただきました。ここから約2週間、投稿も執筆も中断させていただきます。申し訳ありません。
さて、今回はなんでこんなことになったのか、作者自身分かりません。ただ、桜太くんの想いが爆発して、自分の中の何かを外に出してしまったようです。桜太くんの知られざる過去が分かって、作者もより深く桜太くんに感情移入が出来ると思います。ただ、今回の突然の展開、駄文に関しては申し訳ありません。
感想やアドバイス、御指摘を下さった皆様、ありがとうございました。一つこの場を借りて返答を。
歌詞の転載は禁止ですが、曲名の記載は構わないとのことでした。指摘して下さった方、ありがとうございました。
頂いた御意見等は、なんとか作中に反映させていくつもりですので、宜しければ今後ともよろしくお願いします。
感想等お待ちしています。