WHITE ALBUM2〜幻想は雪に覆われて〜   作:ソナ刹那

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うん、大丈夫。できるよ、北原なら。
---妥協は許さない実質リーダー---



7 2曲目

♫WHITEALBUM(Guitar ver.)

 

 

「じゃ、5分休憩」

「お疲れさん、2人とも」

「うん、お疲れ〜」

「あたしはともかく…小木曽、喉大丈夫?」

「大丈夫。いつも3時間歌いっぱなししてるし」

 

いや、それは休め。

 

「はちみつレモン飲む?」

「あたし、喉使ってないから」

「四人分あるのに〜」

「じゃ、俺はありがたく…」

「…うん、どうぞ」

 

ご厚意はありがたく受け取っておくもんだぞ。…いや、なんでこっちを睨む?お嬢よ。

 

「…気持ちいい風」

「寒くないのか?」

「あたしは寒い」

 

窓の外から聞こえてくるのは、まだ拙いギターの音色。一人頑張っているようだ。

 

「……」

「……」

「……」

 

俺も…寒い。

 

「そろそろ北原くん、こっちに呼べば?」

「全然、まだまだ」

 

確かにミスは少なくなった。けど、テンポが安定しない。そういった指摘を、お嬢はピアノを弾きながら告げる。

 

「…冬馬さん」

「なに?」

「結構我慢してるんじゃない?」

「…なんで」

 

それは委員長と合同練習するということを、か?

 

「だって、合ってるよ。北原くんのギターと」

「…あ」

 

ホントだ。いつの間にかお嬢は、いつものように、『北原くんのギター』に合わせるようにWHITEALBUMを弾いていた。

 

「お嬢って、ピアノの上では素直だよな」

「っ!」

 

まるで暴れ狂うかのように、鍵盤を弾き鳴らしていた。そういう反応をするから、からかわれるのに…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

♫静かな冬の夜

 

 

「桜太、小木曽と何かあったのか?」

 

別れ際に委員長からそう聞かれた。

 

「……」

「……」

 

側から見てもそのように見えたらしく、どこか距離を感じる。

 

「……」

「……」

 

現に今も、無言が続いている。いつもは歌姫の方からいろいろと話を振ってくれたのに、その面影が全く見えない。

 

「…歌姫?」

「なに…?」

 

返事はしても、そっけない。

 

「…どうか、した?」

 

いや、理由なんて分かっている。

 

「やっぱり、あのことだよ…な?」

「…どう、接したらいいのか、分からなくなっちゃって…」

 

あの夜の衝動的な行動のせいで事実、歌姫との距離が微妙になっていた。

ずっと避けられてることは分かってた。

 

「どうって…別にいつも通りに、って無理か」

「急だったから…」

「嫌だった?」

 

我ながらズルい質問だと思う。

 

「ううん。どっちかって言えば、嬉しかったよ。でも…」

「急だったよな。悪い、あのことに関しては全面的に俺が悪い」

「それはわたしを思ってくれてでしょ?だったらわたしは、むしろ感謝しなきゃ…」

「でも、仕方が悪かったろ?側から見れば、襲ってるみたいだし」

「別にわたしは…」

「ん?なんか言った?」

「…ううん。何でもないよ〜」

「そ、そっか」

 

気まずいことに変わりはない。けど当然このままでいいわけがなく。

 

「仲直りしないか?」

「…別に喧嘩はしてないと思うんだけど?」

「まぁな。けど、少しでも早く元通りの仲に戻りたいし。じゃないと俺、姫の騎士でいられないし」

「確かにね…、うん!」

 

少し声を大きく出して、歌姫はこっちを向いた。

 

「それじゃあ桜太くんを、騎士として再雇用します」

「…ははっ。ええ、ありがとうございます、姫。いつであれ何処であれ、お護りいたします」

 

笑顔でそういうことを言ってくれるもんだから、

 

「…この命に代えても」

 

ついつい本音が溢れる。

 

「…あっけなかったね」

「あっけなくていいんだけど。やっぱり歌姫とはワイワイ楽しくやりたいし」

「だね〜。まだまだこれからだし、楽しくやらないと」

「あぁ」

 

思っていたほど困難ではなく、いとも簡単に2人は元の2人に戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……できた、よね?」

「…だな」

「…ん。できたね」

「っ!」

 

WHITEALBUMが成功した。

 

 

♫綺麗で儚いもの

 

 

「できた!できたよ、北原くん!」

 

委員長が喜ぶより先に、歌姫が喜ぶ。

 

「やっぱり、北原くんはやれば出来るんだよ!」

 

その言葉に委員長は、微妙な表情を浮かべる。それもそうか。実際には、『一人』じゃないから。

 

「だね。少し侮ってたみたいだ」

 

だが、そのことを2人とも言おうとはしない。

 

 

 

 

 

「合宿!?」

「お、本格的だな」

 

今日は早く練習を切り上げて、明日の10時に集合のこと。この土日に泊まり込みで練習するらしい。ついに、冬馬家にお邪魔するのか。

 

「やっぱり徹夜しないと、学園祭って感じしないよね〜」

「そう、か?」

「俺は同意。その感覚はよく分かる」

 

元の俺の時は、泊まり込みで学園祭の準備なんてのは禁止されてたし、そもそも学校に泊まってなんてのは、フィクションだけの話だと思ってた。…あ、ここフィクションか。

 

「…それで、北原。小木曽のためにも、お前には大事な使命がある」

「…俺?」

 

…あぁ、説得か。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

♫Dear Friends

 

 

「…ホント、あいつの論破術は大したもんだよなぁ。ホンットに、相手にしたくない」

 

現在委員長は、歌姫の家族に合宿を許可して貰えるように説得中。こういう時、委員長の口の達者ぶりが惜しみなく発揮される。

ドアを少し開ければ丸聞こえな歌姫の部屋で、会話を聞きながら待っている。委員長の家庭事情なども聞こえている。

 

「…いいのかな?うちの家族会議に参加させちゃって」

「ああいう面倒くさいことに関しては、北原には遠く及ばない。…安心して任せればいい」

「頼むからお嬢、今の発言を歌姫の家族の前で言うなよ。ついでに委員長の前でも」

 

というか信頼する場所が、あまりにも捻くれてねぇか?もう馬鹿にしてるのと同じだろうよ、ほとんど。

ていうかさ…、

 

「…ん?なんだ南条?」

「なんでもねぇよ、甘党」

 

空になったスティックシュガーが3本転がっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

♫イルミネーション・タウン

 

 

「……」

 

武也はいつもの如く唖然。

 

「す、すごいね…」

 

ホントにな、歌姫。それしか出ないよな。

 

「そ、そうだなぁ〜…」

 

お前は不自然だ、委員長。

 

「さすが…と言うべきか?」

 

知ってるとはいえ、実際に見るのと画面越しで見たのとは、全然違うなやっぱり。

 

 

 

 

「……」

 

さすがにこれには俺も唖然する。

 

「なんだよなんなんだよこれ!なんで普通の家にこんなのがあるんだ!?」

 

いや、普通の家じゃないことは家に入る前から分かってたことだろうが、さすがにこれはインパクトデカい。軽くカルチャーショックだ。

地下に降りていき、扉を開けた先に広がっていたのは、極一部の家庭にもあるか分からない非日常な部屋。ミュージシャンがレコーディングするときに使ったりするような部屋。天井からマイクがぶら下がってるような部屋。ピアノにギターにドラムなど、様々な楽器が置いてある、まさにミュージシャンの部屋。

 

「さっそく準備始めて」

 

1人、若干無駄に不自然なやつがいるが、こうして合宿は始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「マジかよ…」

「…マジだよ、武也」

 

武也の前で別に緊張なんてもんはしないが、無事に成功した。

 

 

♫Dear Friends

 

 

「春希!お前ギター弾けたんだな!」

「…次は無いからな」

 

機嫌が良くて良かったな、武y…あ、会長だった。

 

「打ち込みよく出来てるよ。後はこっちでやっとくから。ありがとう、部長」

「……え?」

 

お嬢が感謝している。…ライブ当日まで、地球残ってるかな?

 

「…南条が何か失礼なこと考えてるのは置いておくとして」

「そうしてくれると、大いに助かります」

 

ナチュラルに人の心を読むな。眼力がおかしいんだって。眼で人を傷つけられるよ、あれ。

 

「次の曲だけど…」

「もう次の課題?」

「一曲じゃ時間余るだろうし、せめて一曲は」

「残りを考えると、一曲かねぇ。他は3曲くらいあるだろうけど」

 

残り一週間。委員長の経験があるWHITEALBUMでも、これだけ時間がかかった。とすれば、やはり一曲が限界ってところだろう。

 

「…こそこそと人を褒めるな」

「あ、悪い。聞こえてた?」

「油断も隙もありゃしない…」

 

委員長と会長にお嬢が言う。そりゃ、お嬢だって人を褒めるくらいするって。こんなでも、お嬢だって立派な人間だから。

 

「…そろそろ蹴り飛ばすぞ、南条?」

「ホントマジですみませんでした!それだけは勘弁してください!」

 

だからなんで、俺の心読めるんだよ…。

 

 

 

 

「で?2曲目、リクエストある?」

「俺的には…」

「……」

「はい、すみません」

 

哀れだ、会長よ。

 

「いや、うん。部長の意見も聞こう」

「え?」

 

なんか今日は、妙にお嬢が優しい。会長に対して。…これ以上は何も言わない。

 

「雪菜ちゃんの声だと…」

「……」

「……」

「小木曽ちゃんの声だと…」

 

哀れだ、会長よ。

 

「森川由綺とくれば、緒方理奈。聞いてみたいよなぁ?」

「ホンット、会長ってさ」

「いつも無難で」

「ミーハーで」

「メジャー指向で」

「ダメ、か?」

「そして、最高だ」

 

大賛成。軽音楽同好会の総意だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

♫イルミネーション・タウン

 

 

「緒方理奈はいいとして、理奈の何をやる?」

「はい!またリクエスト、いいかな?」

 

ボーカルの意見第一。他も異議なし。

 

「ヒント。一曲目が『WHITEALBUM』だから…」

「…『SOUND OF DESTINY』」

「桜太くん、正解!」

 

WHITEALBUMと同年に発売され、緒方理奈の代表曲の一つとなった、これまた有名な冬の定番曲……らしい。レコード大賞?音楽大賞?そんなようなのに受賞していたはず。

確かに知らない奴なんてそうそういないだろうし、カッコいい曲だから盛り上がると思うけど…。

 

「『SOUND OF DESTINY』って、え?」

「おい、春希」

「うん。いいじゃん、『SOUND OF DESTINY』。絶対盛り上がるって」

「いや、そうだけど…」

 

よ〜く考えろ?なんでその曲は盛り上がるんだ?なんでカッコいいんだ?

 

「北原……いいのか?」

「後悔、しないか?」

「え?なんで?かっこいいじゃん。冬馬も武也もどうしたんだよ?なんか桜太も俯いてるし」

 

憐れみとか悲しみとか、そういう感情も顔に出てるんだろうけど、何よりも笑いを堪えるのに必死です。

 

「……ぷっ」

「え?」

「はぁ……」

 

お嬢が笑い、会長がため息をつく。俺は笑いを堪えるのに必死です。

 

「っ、く、くく…っ、ほ、ほんとにいいんだな?」

「だからいいって言ってるじゃないか」

「おい、春希ってば」

「会長」

 

会長の肩に手を置いて、首を横に振る。

 

「委員長がやるって言ってるんだ。やらせてやろうぜ」

「でも、あの曲は…」

「委員長は今までも、惜しみない努力で何とかしてきただろ?信じてやろうぜ」

「…本音は?」

「委員長がお嬢にいろいろ罵詈雑言言われながら若干喜びつつ必死になって苦労している姿って面白そうじゃん?」

「……清々しいくらいに自分の欲望に素直だな、このサディスト」

 

というか会長、もうお嬢がさ…。

 

「うん決定。やめてって言っても聞かないからな。ははは…っ」

「あ、あぁ…」

 

逆にこれだけの反応見て、何も気づかないのか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

およそ5分後。

 

春希は

 

思い出す。

 

なぜこの曲が

 

かっこいいのかを。

 

 

 

 

 

 

 

♫SLAPSTICK STREET

 

 

「……さっきの、訂正しちゃあ…ダメかな?」

「……」

「……」

「……」

「……」

「……頑張ります」

 

こうして2曲目は『SOUND OF DESTINY』に決まった。





はい、テスト期間中ですが、少しずつ時間見つけて書いてたのが溜まったので投稿します。次は、12月以降です。

さて、毎度毎度「感想下さい!」と言っていますが、毎回書いて下さる方、ありがとうございます。ぜひ、もっと多くの人からも欲しいなぁ、なんて思っています。
大体日が変わる頃に投稿して、翌日マイページを覗くと、通知が来ている。これが、本当に嬉しいんです!正直、これのおかげでモチベーションを維持できてます。
ささいな事でもいいんです。5分ほどの時間をくれたら嬉しいなと思います。

個人的な事なんですが、皆様の中の『桜太くん』ってどんな感じなのでしょうか?容姿や声、「このキャラクターをイメージしているよ〜」とか、「この声優さんの声で脳内再生しているよ〜」など。特に何かの参考にするというわけではないですが、気になったので。良かったら教えてください。イメージを崩したくないので、自分は言いません。

BGMも、今後オリジナルシーンも増えていくでしょう。そういう時、「ここのBGMはこっちの方がいいんじゃない?」とか、言って下さると助かります。
ホント、自分に音楽センスは皆無なので。

上記等、感想待っています。
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