WHITE ALBUM2〜幻想は雪に覆われて〜   作:ソナ刹那

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傷ついて、傷つけられて…
---残りの一人---



8 合宿

「〜〜〜〜♪」

 

「トラベルセットトラベルセット……あっ、あったあっ…」

 

「あれ?……青?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

♫穏やかに過ぎゆく時

 

 

「うわ…」

 

午前一時。

会長はシンセの打ち込みのため、2曲目が決まると、さっさと帰ってしまった。

現在歌姫がお風呂中なので、俺とお嬢と委員長で練習している。……さすがに行かないよ?

 

「どした?」

「指つった…」

「あ〜、ちょっと休みなって。お前ぶっ通しでやってるだろ?」

「ちょっと貸してみな」

 

お嬢が委員長から、ギターを借りる(というか奪いとる?)。

 

「ーーーーーー♪」

 

SOUND OF DESTINY を弾いて、委員長に返す。

 

「……冬馬には情けとかそういうの無いのか?」

「サディストだな。俺以上にサディストだな」

 

ものの見事に委員長の心を、わずか数秒でズタボロにした。

 

「ホンットお嬢てなんでも出来るな」

「全くだ」

「北原も南条も勉強出来るじゃない」

「俺はあくまでも『お嬢より』だからな。ここの勉強オタクとは、レベルが違う」

「…俺もそこまで勉強に心酔しているわけではないぞ」

 

テスト一カ月前から、テスト勉強してる奴がか?それほとんどeveryday テスト期間じゃねぇか。

 

「正直、あたし卒業危ないよ?」

「知ってる」

「でも、カッコイイことはみんな冬馬の方が上だよ」

 

人によって何がカッコイイかということは、それぞれ違っている。幼い頃から音楽に触れてきたお嬢にとっては、別段カッコイイことでもないのだろう。むしろ、ずっと携わってきたんだから、当たり前だと。

 

「俺にとってのカッコイイてのは、ギターとか、ピアノとか、…冬馬とか」

「…………お前」

「ちょ、ちょっと返してくれ」

「あ、あぁ……」

「……ったく、イチャついてんなっての」

 

お前らもう付き合えなんて、そんな軽いことを言うような二人じゃないか。

 

 

♫いつか見た景色

 

 

「……あたしが弾けるようにしてやる」

「お嬢……」

「お前の言う、カッコイイ男にしてやる」

「っ…」

 

……入り込む余地なんて無い。再びそう思った。

 

「その変わり、終わるまで寝られると思うなよ」

「あ、あぁ」

「……夜風当たってくる」

 

俺の居場所が分からなくなって、その場を去った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

♫静かな冬の夜

 

 

時々忘れることがある。ここは、本来俺がいた世界ではないのだと。

 

「………ふぅ」

 

缶コーヒーを飲んで、息を吐いた。

 

今更「今までのは全部夢でした」なんてオチを認められるわけがない。

関わりすぎた。別に後悔しているわけじゃない。けど、ふと不思議な感覚に落ち入る。

転生とかだと、以前の知識がない状態でやってくるというのが、大多数だと思う。けど俺には知識がある。最後までプレイ出来ていないが、大体のは。

 

「…………」

 

分からなくなるんだ。ここが現実なのか違うのか。現実て言うのは、俺が元々いた世界のことだと思う。だったらここは夢なのか?幻なのか?虚像だっていうのか?

 

「……んなこと信じられるかっての」

 

分からない。分からないから、考えるのは止めることにする。

元々だとか今だとか、どうでもいい。俺が今いるのは、確かにこの世界だ。俺が見ている景色は、確かにこの世界の景色だ。俺があいつらとバンドするのも、確かにこの世界でだ。

そんなことは分かっていたんだ。ゴチャゴチャ考えるから、迷うんだ。やるべきことなんて分かっているのに。

 

「…………寒ぃなぁ」

 

くだらないこと考えると、またお嬢に怒られる。なんでか俺の心読めるみたいだし。こんなこと考えてるなんて知られたら、一体どうなっちゃうんだろう?

 

「戻る、か……」

 

休憩終了。そろそろ戻らないと本当に怒られる。早くお嬢と委員長と歌姫と……あれ……?

 

「歌姫、は……?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

♫Dear Friends

 

 

「んじゃ、昼にすっか」

 

二日目。

WHITEALBUMよりも早く合わせたSOUND OF DESTINY 。昨夜ボロボロだった委員長だったが…。

 

「うん、形になってきた」

「どこが!?」

「隣で声張るな。耳痛い」

「けど実際そうだろ?俺以外は完璧だったかもしれないけど」

 

いや、実際完璧だから、俺たち。

 

「そうかな?皆合ってたと思うけどなぁ」

「そうだぞ委員長、謙遜しなさんなって」

「そういう桜太たちこそ、慰めはいいよ。自分の演奏は自分が一番分かってる」

「……自分が一番分かってる、か。随分と言うようになったね、北原」

「ぐはぁ…」

 

情け無い声出すな。

 

「確かにソロは酷い」

「メロディ、リズム、最後までやり遂げない。例を挙げればキリない……ほどもないけど」

「ぐはぁ……」

 

けど、委員長。

 

「けど、歌がある部分に関しては十分。小木曽に迷惑かけてない」

「……マジ?」

「マジ、だよ春希くん!やっぱり上手くなってるんだよ、ギター」

「…全然覚えてない」

「つまりそういうことだよ。いちいち練習内容を覚えてなくても、それ相応のレベルのなら、パパっと弾けるレベルに達したっていうこと、委員長が」

 

お嬢の『毎日10時間練習』の成果が出たということだろう。

あれは、『WHITEALBUMを弾けるようになるために10時間練習』ではなくて、『委員長がギターを弾けるようになるために10時間練習』ということだ。見事にお嬢の手の平の中だったというわけ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

♫イルミネーション・タウン

 

 

「は?そんな大道芸をあたしにやれと?」

 

委員長の提案。歌姫と委員長は目立つのに、お嬢が目立たないのはおかしいという、委員長の考えから。完全に委員長の私的目的による発案だろう。まぁ、異議はないが。

 

「というか、その理屈だと南条だってそうだろ」

「俺はいいよ。てか、ドラムにソロなんかねぇし、他に楽器が弾けるわけでもない。俺はあくまで『お前ら3人』の引き立て役。それに…」

「……?」

「…お嬢のカッコイイ姿、俺も見たいな。皆に知ってほしい」

「………」

「だから、委員長には同意。お嬢のことを舐め腐ってる連中に、どっちの眼が腐ってるのかって教えてやらねぇと」

「……その意見には俺も同意だが、桜太。口走るなよ、それ」

「お前ら……」

「なぁ、どうしても無理か?」

「お嬢の腕的に、出来ないなんてこと無いだろう?」

「…………当たり前だ。余裕に決まってる」

「だよな!」

「よし、じゃあ昼から早速別構成でやってみよう。問題無いよな、お嬢?」

「あぁ、別に問題無……って、いや、やるとは言って……」

「んじゃさっさと昼飯買って、練習再開しようぜ!」

「おう!」

「………う、うん!」

「いや、だからあたしは……」

 

こうして委員長の『とある提案』は採用された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

♫あの頃のように

 

 

「寒くない?」

「ううん、別に」

「そう…?」

 

11月中旬。暦ではもう冬だっけ?なんにしろ寒い。もうちょっと厚着をしてくるべきだったと、絶賛後悔中。

 

「疲れてる?」

「ううん、別に」

「……そう?」

 

午後の練習が軽くて、早めの解散になったのは、皆が疲れてるのをお嬢が考慮して。などとこの委員長は考えているのだろう。

昼から妙に歌姫がノッてないのは、別の理由があるというのに。

 

「……大丈夫か、歌姫?」

「うん。特に何ともないよ、別に」

「……そっか」

 

ただ、なんで俺にもこんな素っ気ないのか分からない。

 

原作通りに話が進んだのなら、俺と委員長が外に出ている間に歌姫とお嬢である会話がされていたはず。

歌姫が、お嬢と委員長が合宿前から、二人で泊まり込みの練習をしていたことを隠していたこと。それをお嬢に問い詰める。

これが原因のはずなのだが。合ってたら、なおさらなんで俺も委員長と同じように扱われているのか?

 

「北原くんってさ……」

「な、なに…?」

 

委員長の顔を覗き込むようにして言う。

 

「大してカッコよくないよね?」

「…………はい?」

 

普通。そこそこ。普遍的。などと人によっては毒にもなりうる言葉を連ねる。

しかも委員長の性格を八方美人だと切り捨てる。いや、人によってはそうかもしれんが……。

 

「ご、ごめん……」

「わたしの個人的な感想だから。謝る必要はないと思うよ?」

 

明らかに喧嘩腰だ。敵意向きだしになっている。…いや、してるのか。

 

「桜太くんもさ……」

「…俺?」

 

未知である俺への敵意。

 

「北原くんよりはカッコイイかもしれないけど、性格がねぇ……。優しいけど側から見れば、女たらしともとれるよね」

「は、はぁ……」

「時々甘いこと言って、かと思えば急に不良ぶったり、おちゃらけたり、クールっぽくしてみたり。自分でも、自分の性格というか、キャラクター?定まってないよね」

「…………」

 

何も言い返せない。全くもってその通りだから。

 

「あぁあ、いろいろと分かっちゃったなぁ…」

 

 

♫言葉にできない想い

 

 

「そんな……もの、だよね………。別にそんなに気にしなくても……いいよね……」

「あ…」

「え…」

 

立ち尽くす俺たちを置いて、駅までの道を小走りで駆け出す。

 

「おい、小木曽……」

「歌姫…歌姫ってば」

 

わけも分からず、ただ俺たちに出来たことは、同じ速さで追いかけること。

 

「じゃあね、二人とも。また明日」

「え……」

「ちょっとおい、俺も同じ駅だろう?なんでここでバイバイなんだよ?」

「…………明日」

「え?」

「明日になったら元通りだから。いつもの……わたしだから」

 

答えになってない。つまり今はほっといてくれってか?

 

「今日のことは忘れてくれると嬉しいな………」

「………嫌だ」

「桜太……」

「……なんでかな?」

 

今日を?忘れる?出来るわけない。だって

 

「なんで眼赤いんだよ……?」

「………」

「俺が!春希が!何かしたかもしれないていうのに!それを黙っていろってか!?」

「………」

「今日のこと忘れて、何が原因かていうことも考えることも駄目で、今俺たちが受けた言葉も全部無かったことにしろってか!?」

「おい、桜太、それくらいに……」

「んなのムチャクチャだろ……」

 

俺たちが犯した罪があるというのなら。それを知る権利もない?罰を受ける資格もない?……謝ることも許されないのか……?

 

「…………学園祭、頑張ろ」

「歌、姫………」

「絶対に、成功させよう?」

「小木曽……」

 

眼も、声も、俺たちのこの反応が悪なのだと、そう…語っている。

 

「じゃあ、おやすみなさい……」

「おい待てって」

「……なに?」

「降りる駅は一緒だろ。勝手に行こうとするな」

「……俺も送っていく」

「……北原くん、反対方向でしょ?桜太くんも、たまには北原くんと帰ってあげなよ。男友達との交流も大切でしょ?」

 

それこそ反対方向だ。

 

「いつもこのくらいの時間なら、1人で帰ってたし。大丈夫だよ」

「いや、送る。絶対に送ってく」

 

いつもの歌姫なら、これくらいの御節介を委員長がしたら、折れている。いつもの歌姫なら……。

 

「駄目」

「えっ……」

「そんなことをされたら、言えなくなっちゃう」

「何を?」

「…『北原くんも桜太くんも、女の子が暗い夜道を一人で心細く帰るのに、送ってもくれない最低な男の子たち』だって……」

「っ……?」

「な……?」

「さよなら……っ」

「あ……」

「おいっ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………いろいろ、言っちゃたなぁ……」

 

「……けど、これで良かっ「何がだよ?」……え?」

 

「……姫のことを傷つけたあげく、護衛も出来ないなんて、騎士失格だろ」

 

「なん、で……」

 

「俺は姫の騎士である以上、護衛を途中で放棄するつもりはない。本人の意思そっちのけでもな」

 

「桜、太くん…」

 

「悪いけど、姫」

 

歌姫を壁に追い詰める。

 

「まだ、1人にさせないから」

 

俺が姫の涙のわけを知るまで。

 

姫のあの笑顔が見られるまで……。

 





いやぁ、寒くなってきましたね〜。
もう雪が降りましたよ、積もるほどじゃないですけど。
初雪って例年もこんな早かったっけ?

WHITEALBUMの季節ですね〜。街もクリスマスムード。テレビもクリスマス特集。寒いのは苦手ですが、好きです、冬。切なくなってきます。

いつも通り、桜太くんの自己イメージ、BGMの指摘などなど、多くの方からの感想等、お待ちしています。
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