転生した現代人に異世界は辛すぎた   作:抹茶好きの紅茶

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続いてしまった。
今回はマザー視点です


頭脳は大人、見た目は子供って怖くない?

 私はそろそろ、お役御免かね

 

 火のついた蝋燭を前に、壮年の女性は一人ため息をついていた。

 誰も居なくなった孤児院は、どこか何時もよりも暗く感じる。

 育てていた最後の子が村を飛び出して以来、ずっとこの調子だ。

 育てる子も居なければ、貯蓄も少なくなってきている。

 それにきっと、もうこの孤児院が潰れるまでに新しく入ってくる子は居ないだろう

 というのも、もし身寄りのない子供が居たとして、その多くは死んでいるか、奴隷になっているかなのだ。

 運良く無事に生きていたとして、孤児院まで足を運ぶ人は少ない

 20年間、一人で運営を続けてきたが、もう私もいい歳なのだ

 腰も悪くなり、目も悪くなりつつある、最近では目眩や耳鳴りも酷くなってきた。

 

 ……もう、十分だろう?

 

 そもそも、孤児院を運営する理由も、私を慰めるために始めた偽善のようなものなのだ、それに……

 ああ、駄目だ駄目だ、どうしても暗い気持ちになってしまう

 頭を振り、嫌な考えを消そうとするが、意識し始めたものは早々消えるものではなく、次々とネガティブな思考が浮かび続ける

 頭を抱えつつ、今日何度目かのため息を吐き出していた

 無理矢理にでも気持ちを変えようと、隠しておいた秘蔵の酒に手を伸ばそうとしていたその時、正面玄関の方から扉を開ける音が聴こえた

 はて、こんな時間に来客が?と不思議に思いつつ、椅子から立ち上がり、玄関までいそいそと歩いて向かう。

 

 そうして向かった先には、冒険者と思わしき4人の男女が慣れない様子でキョロキョロと辺りを見回していた。

 何故こんな所に……と思いつつよく見てみると、その4人の内1人は布に包まる赤ん坊を抱えていたのだ。

 

 こんな辺境に、しかも赤ん坊を抱えて?と疑問符を浮かべながら、盗人の類いではないと判断し姿を見せる。

 そうすると、4人の中で一番年長と思わしき青年が此方に気づいたようで安堵した顔で口を開く

 

「あの、孤児院はここであってますか?」

「ええ、ようこそアタデア孤児院へ、どういったご用件でしょうか?」

「赤ん坊を預けたくて……実はこの子を森の中で見つけ、見たところ生まれて直ぐに捨てられた様で放っておけず……

かといって、危険な旅に連れていくわけにもいかないので、どうしたものかと悩んでいたのですが、人伝でここに孤児院があると聞きましたので」

 

 経緯を聞き、私の中で、様々な感情が入り乱れているのが分かる。

 しかし、決して表にそれを出さぬよう、冷静に受け答えをする

 

「……分かりました。その子を受け入れましょう」

 

 冒険者達は、私の言葉を聞くや否や、彼らの強ばった表情が解れてゆく、恐らく私が断らないか心配だったのだろう

 

「本当ですか!よかったぁ、それじゃあこの子の事、お願いします」

 

 冒険者から赤ん坊を渡され、その子を優しく抱き抱える

 

 赤ん坊を見ると、ヘソの緒が未だついており、お腹が出たり引っ込んだりしている。

 恐らく本当に生まれたての赤ん坊なのだろう。

 久々に抱えた赤ん坊は、ほんのり暖かく、なんと愛おしい事か。

 幸運な事にこれといった傷はなく、奇病を患っている訳でもない。

 親は何を思ってこの子を置き去ったのか、腹の底から無性に怒りがこみ上げてくる。

 

 ……これは、後日拾った冒険者の方々に聞いたことなのだが、違法に奴隷商を運営している者共を追っている時に、この子を見つけたらしい。

 見つけた場所は、丁度奴らの逃走ルートと被るため、恐らくは……ということだ

 

 この子の親がどうであれ、親は親、子は子なのだ。

 私がこの子の親代わりとして、しっかり導いていかなければならない

 

 

 

 

 私の最後の仕事として

 

 

 


 

 

 

「名前、どうしましょうか」

 

 赤ん坊を引き取り、ヘソの緒が自然に取れた頃、未だ中々決まらぬ名前について頭を悩ましていた。

 んー、思いつかない。今まで十数名の名前を考えてきた私だが、いや、考えてきたからこそのというべきか、うーむ……

 ……ずっと同じことを考え続けていても、良い考えは出ない

 そう結論づけ、頭を切り替える為にもと、逃避気味に窓へと視線をやる

 ふと、外に咲いている強く反り返った紅く鮮やかな花が目に入る

 そういえば、確かあの花には……

 

「……エイリル、そう、貴方の名前はエイリル アタデアよ」

 

 赤ん坊(エイリル)にそう話し掛けると、それに呼応するかのように、まるで天使のような微笑みを私に返した

 

 

 

 

 

 


 

 

 エイリルの面倒を見ていて、少し困ったことがある。

 この子、中々泣くことがないのだ。

 

 赤ん坊が泣くということは、親に何かを知らせるための合図なのだ。

 お腹を空かしたとか、お漏らしをしてしまったとか、構って欲しいとか

 確かに、泣かれすぎるのも困りものではあるが……

 

 もういっそ、ベルでもつけて用がある時だけ鳴らして貰おうか、置いたところで遊び道具になるだけのような気もするが

 と、駄目元で吊り下げベルを赤ん坊ベッドに付けてみたところ、なんと本当に用がある時だけ鳴らしてきたのだ。

 

 

 

この子……天才だわ!

 

 

 なーんて、私が暢気だったら良かったのだが、流石に可笑しくないかとも思ってしまう

 まあ、これといって困ったことはないのだけれど……

 

 

 

 


 

 エイリルが4歳になる少し前の頃

 

 エイリルは賢く、好奇心旺盛な子として、すくすくと育っていた……のだが、同時にエイリルは、その、ユニークな子供である

 というのも、子供とは思えない程に聡明であるのだが、時には並みの子供以上に好奇心旺盛で、すこし抜けた行動をするのだ

 

 今日も、勝手に孤児院を抜け出しては、足を血だらけにして帰ってきた

 大方、近場の草原を走り回ったのだろう。

 この近辺にはマザハというトゲトゲしい植物が多く生えているため、素足で走りでもしたら当然そうなる。

 

 色々な事を知りたいというのは良いことなのだが、勝手に孤児院を抜け出したりするのは流石によろしくない。

 今は村の中ぐらいしか移動できないと思うが、もし村の外に行ってしまえば、野生動物に襲われてしまう可能性もあるのだ。

 

 今回は大丈夫だったが、最悪の場合、命に関わる可能性があるので、キツめに叱っておいた。

 叱られたエイリルはしゅんとなり、ごめんなさいと謝ってきたので、今後、勝手に抜け出す事は無いだろうと信じたい。

 

 手当てとして、傷だらけになった足を軽く水で洗い、備えてあった軟膏を塗っている最中、ポーションの話題を出したら、思いの外エイリルが食いついてきた。

 

 たまに、私が思った以上に聞かれることもあるのだが、不意に全く考えたことが無いことまで聞かれて、此方が驚かされる事もあるので、こういう時は私としても楽しく教えられる。

 この歳になっても、新たな発見や、違った視点を持つと面白く感じるものだ、子供ならではのアイデアもあるので、エイリルとお話をしていて飽きることは無い。

 

 といっても、まさかポーションの作り方を教えてなんて言われるのは予想外だったが……

 流石にそれは知らないし、考えたことも無かった

 それに、冒険者でもなければポーションのお世話になることは少ないので、一般知識ぐらいしか話せなかったのが、もどかしく思えてしまう

 だが、やはりエイリルは面白い考えをしている。

 まさか火傷や切り傷に使うなんて発想は、少なくとも私には無かった

 ポーションは高価だし、即効性はあるが、自然治癒を待った方が良い時もあるのだ。そうポンポンと使うものではない

 それを話したら、「へぇー」と、分かったのか分かってないのか曖昧な反応を返された。

 

 その後直ぐに「ほんよみたい!」と、言い出したので、思わず笑いそうになってしまった。

 ポーションの話はもう良いのかエイリルや

 

 最近のエイリルは、本を読んで文字を覚える事に夢中で、暇があれば直ぐに「おしえてー!」とねだってくる。

 そういう事情もあり、今では読みは日常で使われているものであれば、大体読めるようになってきた。

 なんなら、ここ一ヶ月は、地面に文字を書く練習を行っているのだ

 

 エイリルが孤児院に来て、もうそろそろ4年が経つ。

 時の流れは早いものだと思うと同時に、プレゼントとして練習用のノートを渡すのには良い時期なのではないかと妙案が浮かぶ。

 一瞬、4歳に書き物を渡すというのはどうかと思ったが、大丈夫だろう。

 子供というのはいつも変わり身が早いが、エイリルに限ってそれは無いだろうからね

 

 ……なんたって、初めて喋った言葉が、「まざー、ほんよみあい!」だったのだから

 

 思い返してみて改めて思うが、もうちょっと、こう、ほら、別に言うことは無かったのかなエイリルよ……

 

 

 

 


 

 

 時が経つのは本当に早いものだ。

 エイリルを育て始めてから、もう6年が経った

 

 最近では私の手伝いを積極的に行ってくれるので、助かるのだが……

 元気が有り余っているせいなのか、昔以上にやんちゃに磨きかかっているのだ

 料理や洗濯などの時にエイリルから目を離せば、直ぐにでも、重い岩を動かそうとしていたり、急に走り回ったり、大きな棒を振り回したりと、落ち着きがない。時には此方がハラハラしてしまう行動を取ることもあるので、心臓に悪い。

 どうにかして落ち着かせる事は出来ないだろうかと頭を悩ましていると、そういえば、買い物の時にタエフのお爺さんが、腰をやって畑仕事が出来ていないから、手伝いが欲しいと言っていた事を思い出す。

 

 ……そうだ、畑仕事をやって貰おう

 

 朝から晩まで働いていたら、流石に危ないことはしようがないだろう。

 食べ物の大切さも知れるし、労働の体験も出来る。

 うん、我ながら良いアイデアね。

 そうと決まれば、早速タエフさんに話を通しておこう




農業、良いですよね。
サ○ナヒメとか銀○匙とか見てこれ無理だなと思ったけど
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