転生した現代人に異世界は辛すぎた   作:抹茶好きの紅茶

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中世と紀元前を混ぜたような、割りと謎なこの異世界
その原因の主は勇者と王様


勇者って一歩間違えれば化物よね

 「う"ーーーあ"ーーーー!」

 

 

 腕あがらーん!腰いたーい!づーがーれ"ーだー!

 

 ぜってー6歳児にやらせる作業じゃねぇって!

 

 だだっ広い農地で二人、筋骨隆々の爺さんと共に、小さな子供が、額に汗を浮かべながら土寄せ作業をしていた

 

 あ、どうも、腰痛めたーとかぬかしといて、私以上に動いてる爺さんを睨んでいるエイリルです。

 

「ハッハッハ!流石のやんちゃ坊主も限界みてぇだな」

「なにおう……まだまだぁ……」

「無理すんな、そら、間食用意したから休憩ついでに食いねぇ」

「あ"ーい"……」

 

 中耕土寄せ草むしりetc……休憩含め8時間ほど働いてダウンした私の目の前でガッハッハと豪快に笑いながら作業を続ける爺さんの名はタエフさんという

 あ、このイチジク甘くて美味しい、沁みるわぁ……

 

 先日、マザーから突然、このお爺さんの手伝いをして欲しいと言われ、まあやることも無かったので了承したまでは良いのだが……

 手作業農業マジ辛い。

 魔法で耕しゃ良いだろうがー!異世界だろー!?成長促進させる魔法とかねぇのかぁー!

 ハイ、発狂おしまい。無い物ねだりしたところでしょうがないからね

 

「……タエフさん、腰痛めたんじゃないの?」

「おうよ、だが6歳の小僧に任せっきりじゃ終わらねぇからな。

 そもそも俺が腰を痛めたからって自然様が待ってくれる訳じゃねぇし、別に下半身吹っ飛んだ訳でもねぇ、無理はしてるが、まあ普通に動ける範囲だ」

「私要らないじゃん!」

「そりゃな、だがマザーに頼まれたんだよ、小僧が毎日突拍子もない行動をとってハラハラするから、動けなくなるまで扱いてくれってな」

「マザェー……!」

「フハハ、なぁに彼女も心配なんだろうよ、買い物中によく愚痴ってたぜ?エイリルが心配だ、エイリルを1人にすると危ないって」

「私にどんなイメージをもっているんだマザーは……!」

「そりゃおめえ、あれだろ、目を離すと変な行動する小僧」

「どうしよう、完全には否定しきれない」

「フッハハ!なんだそりゃ、面白ぇ小僧だなぁ。

お、食いきったか、そら休憩は終わりだ。マザーが迎えに来るまでキビキビ働けよ、終わったらさっき食ったもんもう2個やっから」

「……ぅ"ーーあ"ーーー!」

 

 オラァー!草ども覚悟しろぉー!根っこから引きちぎってやらぁー!

 

 

 

 

 

 

 

 

 日が暮れ始めた頃、もう腕が上がりそうにないと、もう嫌だと、心の中で本日何回と分からない愚痴を吐きまくっていた

 

「づーがー……ぁー」

「おつかれさん、今日のところはもう良いぞ。

小僧が思った以上に働いてくれたから早めに終わったしな」

「……ぅーー」

 

 返事が適当になっているが許して欲しい、疲れすぎてもう動けんのだ……そのまま気が抜けたのか、ペタリと地面へと倒れこんでしまう。

 

「おいおい大丈夫か?まあ取りあえず、迎えが来るまで俺ん家で休むぞ、ほら立てるか?」

「むり」

「こりゃ相当だな、よっと」

「……腰痛めてんじゃないの」

 

 片手で担ぎ上げたぞこの爺

 

「ハッこの程度、普通だ普通。そんな衰えてねぇよ」

「そっかぁ」

 

 突っ込むのも面倒なので思考放棄気味に返事をする

 そのまま俵持ちされた状態で、木製の一軒家へと辿り着いた

 恐らくここがタエフさんの家なのだろう、中へと入り、私をゆっくりと下ろし、椅子に座らせた

 そしてノータイムで身体の力という力が抜け、机へと突っ伏した

 

「……あり……が、と……疲れたぁ……」

「ブッハッハ!どういたしまして、だな。それにしても改めておつかれさん。子供の癖によく働いたじゃねぇか」

「ツラい……」

「フハハハハハ!こりゃ本当にマザーの要望通りだな。まー、1ヶ月は手伝って貰う手筈だからな、さっさと慣れた方が良いぜ?」

 

 

 

 は?

「1……ヶ月……???」

「おう?……あー、その感じから察するに聞いてねぇのか」

 

 鳩が豆鉄砲食らったような顔のまま、無言で頭を縦に何回も振る。が現実は非情なり、絶望……!農業生活、1ヶ月……!

 

「クッ……ブフ、いや、おまえさんひっでぇ顔してんぜ?」

 

 おい今笑いを堪えきれてねぇ奴、大きくなったらぶん殴ってやる……!

 

 とまあ決まったことに文句言っても仕方がないので、色々と歓談しつつ、多少の余裕も生まれキョロキョロと家の中を見渡す。

 なんだか、必要最低限の家具だけって感じだが、掃除は行き届いているようで綺麗だ。整理整頓してあるのは正直意外である。

 

 その中で、ふと目に留まった物がある

 それは傷だらけの盾だ。少なくとも今の私以上に大きな盾。

 それによく見たら、弓や剣、そして大量の長槍が置いてあるのだ。

 手入れはされているようで、なんだかこういうのを見ると、こう、上手く言い表せないが、とってもワクワクする。

 

「……ねー、タエフさんって冒険者だったの?」

「あん?なんだ藪から棒に……ああ、成る程な。そりゃ坊主の年頃を考えると気になるかコイツらが」

 

 と私の視線の先を見て、察しがついた様な反応を見せたタエフさんは、軽々と盾と長槍を持ち出し、机へと置いた。

 近くで見ると、やはり大きい。

 よくもまあ軽々と持てるものだ。

 

「今じゃ軽い手入れだけで使ってはねぇが、昔はブイブイ言わしてたのよ。そうそう、聞いて驚け。この盾の深い傷、なんと勇者の野郎につけられたんだぜ?」

「……勇者に?」

 

 うっそだー、と言いたかったが、こんな分厚い盾にバッサリと斬られた後のようなものが残っている。盾は見るからに固そうな金属で出来ているというのに、一体全体なにをどうしたらこうなるのか……

 そも私自身、勇者のことは50年以上前の人だという程度の認識で、あまりよく分かっていないのだ。

 なんでも、ここから北の方にある国が異世界から召喚した。

 ということと、異世界の知識を伝え、様々な場所を冒険したぐらいしか私は理解していない。

 

「勇者ってどんな人だったの?」

「……あーアイツはなぁ……なんつーか、強ぇ癖にオドオドとした奴だったな、ソルダレナ王に良いように使われてたっつうか……」

「へぇー、なんか想像と違う……そういえば、なんでその王様は異世界から召喚なんてやったの?国が攻められてたとか?」

「いんや、なんでも代々伝わる呪文だったらしくてな、本当に異世界から勇者を召喚出来るか試したかったから、だそうだ。」

 

 えぇ……試したいから勇者召喚なんてそんな軽い感じでやっていいものなのだろうか。それに聞いている限り勇気ある者なんて肩書きが似合いそうに無いのだが。

 

「あの王はな、こう、豪快というべきか、行き当たりばったりというべきか、勇者横断の話は知ってるか?」

「勇者横断?」

「ああ、ソルダレナ王が世代交代で3代目に移るや否や、勇者連れて世界を横断したっつー話だ。海を渡ったり、砂の大地を越えたり、雲を突き抜ける山を登ったりして、30年掛けて国へ戻ってくるっーつーやべぇ事をやったのが、そのソルダレナ王さ」

 

 訂正、やっぱ勇者さんパネーッス

 

「えぇ、なにそれ御伽噺?」

「いんや、本当の話。昔は本当に大変だったんだぜ?俺らが内戦してる最中に勇者達を連れた王が笑いながら突っ込んでくるわ、両者成敗とか言いながら三つ巴で俺達ボッコボコにして軍を壊滅させるわで散々だった。」

「人の形した災害か何かだったりする?」

「ハハハ!言い得て妙だな。実際、印象的には災害に近いな。1人で5万の軍を薙ぎ倒してくるもんだから、当時は悪夢だと頭抱えてたもんだ」

 

 5万かあ、一騎当千どころか5万薙ぎ倒すのかあ(遠い目)

 

「聞いてる限りだと、勇者というか兵器なんだけど……よくもまあ、そんな勇者を讃えるような本が沢山出版されたもんだね」

「ああ、まあ、世間一般で言われる"良い奴"ではあったからな。英雄的な偉業を残し、救われた人も多い。どこでも英雄譚や、冒険譚ってのは気に入られるもんだしな。

 それに、アイツらが突っ込んで来たのも、先にこっちが嫌がらせしたようなもんだったんだとよ。それにしてもアイツと戦った時の事を思い出すと、改めて肝が冷える。強さには自信があったが……上には上がいるもんだと嫌でも分からされた」

「ふぅん……タエフさんって強かったんだ」

「そりゃあな。それこそ、今言った"上"の奴等には敵わないが、それなりに強かったとは自負していたさ」

「じゃあさ!戦い方とか教えてくれない?実は冒険者になりたくってさ!」

 

 フッフッフ、妙案来たり!

 そう、今まで悩んではいたのだ。

 私に足りていない物、それは経験や教えてくれる人の不在!

 棒を振ったりトレーニングはしているが、完全な自己流であり、実戦経験も無いので直しようが無いのである。

 そ こ で !筋肉モリモリマッチョマンのタエフさんに鍛えて貰えれば良いのではと、あの武器を見た時にピーンと来たのだ。

 ……まあ、急にテンションマックスで教えてだなんて伝えたせいで、タエフさんはビックリしたような顔をしているが

 

「……まー、教える分には良いけどよ、条件がある」

「条件?」

 

 ……なぜだろう、嫌な予感がする。

 それを裏付けんばかりに、タエフさんは口元をニヤニヤとさせながら口を開く

 

「そう、条件……農作業、冬まで手伝え」

「嫌だ!」

 

 ハッ!?反射的に嫌だと言ってしまった……でも仕方ないじゃないか!冬まで5ヶ月ぐらいあるんだぞ!?

 

「ほう、断るのか?この村で実戦経験があるのは俺だけだが……ハッキリ言って、経験を積まないまま冒険者になるのは、無謀も良いどころだぞ?」

「ぐ……」

「たかが5ヶ月手伝うだけで、戦闘経験豊富な人に鍛えてもらえるだぜ?それに農業をしていれば、次第に体力もつく。破格な条件だと思うが」

「ええい……!それが6歳に突きつける内容か……!」

「ハッ!6歳とは思えねぇほど精神は成熟してんだろうが、それで、受けるのか、受けないのか、ハッキリ言って貰おうか」

 

 ……確かに、冷静に考えるのであれば破格な条件であろう、受けない手は無い。

 

 だがしかし!敢えて言おう、嫌だと!

 

 手作業の農業とか足腰腕手死ぬがな!マジやってみろってんだバーロー!

 ……が!ぐぅ!受けるか受けないか……!

 

 

「…………分かった!受ける!受けようじゃないか!」

「よぉし!よく言った!それじゃあよろしく頼むぜ」

 

 そう言いながら、タエフさんは右手を此方に差し出す

 

 それに答えるように、私も右手を差し出し、互いに握る。

 ……ああ、良いだろう、耐えきってやろうじゃないか……!5ヶ月間!

 

 

 

「………………」

 

 いつの間にか来ていたマザーは、握手をしている私達を見て、何処か呆れたような顔をしていた。

 




エイリルはヒートアップして気づいていませんでしたが、マザーは条件云々のタイミングで来てました

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