地獄ペルソナ~地獄でバトルロイヤルする8人のペルソナ使いたち~ 作:XX(旧山川海のすけ)
サイン会で俺は、俺のサインを求めて来たファンの人たちの顔をしっかり見ていなかった。
ある意味、義理でやってたしな。
慎ましく生きていけば、もう働く必要のない程度の貯金はすでにしてるし。
俺のこの行為は商売じゃ無くて、俺の人生の使命だから。
不愉快な態度は無論取らないけど、かといってファンに手厚い対応をするほど人気は意識してなかったからな。
……そこにいたのは。
無論、ミルファでは無かった。
雰囲気がだいぶ違う。
ミルファは大人しそうな女の子だったけど……
そこに居たのは、冷たい感じの容貌の、綺麗な女の子だった。
年齢は多分、高校生かな……。
着ている服は見た感じ上等の青いワンピースで、多分裕福な家の子なんじゃないかという印象を受けた。
で……
髪型がサイドテールだったんだ。
サイドテール……
ミルファと同じ髪型……
そんな……
まさか……
彼女は俺を見て笑った。
その表情に
俺はミルファの面影を見た気がした。
そして
「……虫でも鳥でもなく、ヒトの姿で戻ってきました」
彼女の小さい言葉。
俺はその言葉を聞いていた。
全て聞き取れた。
「……久しぶりですね。マサフミさん……18年ぶり」
……ミルファ!
サイン会が終わった後。
俺たちは場所を移して言葉を交わした。
ミルファは地獄の責め苦による罪の濯ぎを終えた後。
再び人に生まれ変わることを許して貰えた。
そして特例として。
記憶の保持を許して貰えたらしい。
「多分、マサフミさんのお陰です」
ミルファはそう笑顔で言ってくれた。
俺が復活後、他者のためにずっと動いていたから、放置するのが向こうとしても問題があると思ったんじゃないか、って。
ただの成り行きなんだけどな。
君がそう望んだから、そう生きたわけだし。
ただ、生まれ直すタイミングは「俺が現世帰還を果たした時間以後。それより過去は認めない」という限定があったらしい。
生まれ変わって彼女は、動けるようになるとすぐに俺を探したそうだ。
SNSで俺の名前を検索したり。
俺の住所を何とか割り出そうとしたり。
だけど出来なくて。
けれども……
「ふと、動画を見てたらあなたの配信を見つけてしまったんです」
その配信を見て、俺だと確信したんだそうだ。
そして
……やっぱり、あのときの人物「スレイプニル」は彼女だった。
そこで有料会員になって、どうしても確かめたいことを確かめて。
今日、ここに来た。
「マサフミさん……私、今肉体年齢は18才です……」
つまり、成人してるんです。
そう俺に強い視線を向けて言って来て
「結婚してくれますか……?」
そんなことを。
色々考えた。
今の俺は彼女と同年代の男子じゃない。
だけど……
彼女は俺のことを18年も探して、まだチャンスがあると思ったからか、今日、来てくれたんだ。
だったら言うことは決まってる……!
「もちろん」
世間的にどう言われようと、知ったことでは無い。
俺はミルファと結婚したいんだから。
だから即座に俺たちは役所に出向いて。
すぐに婚姻届を出したんだ。
その後は結構大変だった。
彼女の両親に会いに行ったら
娘を誑かしただの、子供を洗脳しただの。
色々言われそうになったけど
彼女の
「結論は決まってるのよ。父さん、母さん」
そこを譲らない言葉で、最終的には認めてくれた。
娘と絶縁されるのは嫌だったみたいだ。
……ちょっと申し訳なかったな。
俺の親は俺の親で、いきなり息子が結婚して連れて来た嫁が高3の女の子だったから。
お前、犯罪だぞと真面目に怒られそうになった。
まぁ、ミルファの態度からすぐにそれを引っ込めてくれたけど。
そして5年の時間が経ち。
俺は40才。
ミルファは23才になっていた。
「……ただいま」
家に帰る。
独身時代はワンルームに住んでいたけど。
今は家族が増えた関係で、家族で住めるマンションに引っ越した。
玄関ドアを開けると、妻のミルファ(法的な名前は別だけどな。当然だけど)が出迎えてくれた。
「お疲れ様。パパ」
彼女は4才の男の子と、2才の女の子を連れている。そして青色のマタニティウェアを着ていて。
……そのお腹に、今は3人目が入ってた。
子供が出来たらワンルームに居るわけにはいかないよね。
狭すぎるし。
彼女の最終学歴は高卒。
大学卒業を待っていたら、俺の方の精子が劣化するからということでさ。
彼女は進学を諦めて、今の道を選んでくれた。
だから俺は、彼女の人生に責任を持つ必要があると思う。
「……ママ、実は健康診断で肝臓の値がE判定だったんだ」
なので報告した。
健康診断の結果が思わしくなかったことを
すると
「……だったら、食事の内容を見直しましょうか」
ミルファは渋面でそう返して来た。
自分のお腹に触れながら
「……まだこの子が社会に出るまで、パパには現役で居て貰わないと困りますし」
ホントにな。
「パパ、死んじゃうの?」
……4才の息子が俺の言葉を誤解している。
どうも重大な病気が見つかったと思ったのか。
不安そうに俺たちを見上げていた。
「いやいや、そんなことじゃないからね」
それにミルファは優しく微笑み。
俺たちの息子の頭を撫でで、抱き上げる。
「こんな可愛い子を残して、まだ死ぬわけが無いでしょ」
……俺たちの子供を、きちんと慈しんでくれるミルファ。
俺は……
この幸せを最後まで守りたい。
心からそう思ったんだ。
<了>
次回、あとがき。
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