地獄ペルソナ~地獄でバトルロイヤルする8人のペルソナ使いたち~   作:XX(旧山川海のすけ)

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第55話 明智の過去

「……立てる?」

 

 蹲っている水畑さんに手を差し伸べる。

 

 彼女は俯いていた。

 そして

 

「……お騒がせしました」

 

 少し躊躇(ためら)いのある声でそう言い

 

 俺の手を取り、立ち上がる。

 

「良かった。無事で」

 

 明智は、敵意も悪意もまるでない笑顔で、俺たちを見ていた。

 彼がこの場に現れなければ、俺たちは多分終わってた。

 

 だから、礼を言うべきだ。

 

「助かった。ありがとう」

 

「どういたしまして。……君への閻魔の制裁は無かったね。君は認めたのかい? すごいな」

 

 明智は俺にそう言って、俺を褒める。

 ……えっと

 

「何で、助けてくれたんだ?」

 

 分からない。

 明智にとって、俺たち2人を倒すチャンスだったはずだ。

 

 それなのに

 

 だから、訊ねずにはいられなかった。

 

 俺のそんな問いかけに

 

 明智は

 

「……そりゃ、君らのどっちかには生き残って欲しいからさ」

 

 ニコニコしたまま、そう言ったんだ。

 

 

 

「僕はね、政治家の隠し子だったんだ」

 

 そして彼は、少しその場を移動して。

 語ってくれた。

 

 自分の身の上話を。

 

 何かの企業のオフィス。

 そのなれの果て。

 

 汚れた机の前に放置されていた椅子に腰かけて、にこやかに語った。

 

 ……悲惨な話を。

 

「獅童正義って知ってるよね? 政治家の」

 

「ええ。総理の越水さんとよく国会でやり合ってたあの人ですよね。知ってます」

 

 ……驚きだった。

 

 やたらと勇ましく、企業の内部留保の貯め込みがどうとかとか、不良外国人が引き起こした犯罪がどうとか。

 フツーの人目線で、何とかして欲しいことに対する議論を総理に吹っ掛ける、出来る政治家だと思っていたのに。

 

 ……愛人がいて、隠し子がいたなんて。

 

 なんだか、少し凹んだ。

 別に俺は獅童氏の熱心な支持者じゃなかったんだけどな。

 それでも。

 

「……ああ、やっぱりアイツは普通の人にはそれなりに支持されてるんだね。……腹立つなぁ」

 

 にこやかに、明智……いや、明智さん。

 

 そして笑みを口元に浮かべたまま

 

「アイツはね、愛人だった僕の母が妊娠したと知った瞬間、母を捨てたんだ。お前では総理大臣の妻を務めることはできない、なんて勝手なことを言って」

 

 ……ひでぇな。

 妊娠するような行為をしておいて、妊娠したらポイなんて。

 

 普段は「皆が生きることに誇りを持てる社会を創らねばならない!」なんて、立派なことを言ってたくせに。

 

「一応、口止め目的か、お金は定期的にくれていたみたいだけど、母が若くして死ぬとそれも途絶えてさ」

 

 僕は孤児院で育ったんだ。

 笑みを浮かべたまま明智さんはそう告白した。

 

「……で、僕は」

 

 そして

 

「中学生のときにペルソナ能力に目覚め、父に会いに行ったんだ。僕の力を使ってくれませんか? って」

 

 そう語った明智さんの目は、どこか自嘲している光があった。

 

「明智さんはペルソナ能力を向こうでも使えたんですか……それも気になりますが……それより……何で会いに行ったんですか?」

 

 色々聞きたいことがあったけど。

 俺はそれを確認した。

 

 憎いはずの実父に、何で自分を売り込みに行ったんだ?

 この人、お金や権力欲しさに強者に媚び諂う人間では無いと思うんだけど……

 

「アイツの本性は知ってたから、僕の能力を見たら、悪用するに決まってる。そうして、堕ちるとことまで堕ちるところを見てやろう……そう思ったんだよ」

 

 そう返して、ニコリと笑う。

 眼は笑ってなくて、冷めていたけど。




次回も明智のパート。

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