地獄ペルソナ~地獄でバトルロイヤルする8人のペルソナ使いたち~   作:XX(旧山川海のすけ)

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第58話 もう私は逃げない

「危ない! 散れェ!」

 

 咄嗟に叫ぶ。

 言葉なんて選べない。

 

 バルカン砲が火を噴いた。

 ブイイイ、というガスが洩れるような音を立て、怒涛の銃弾の雨を撃ち出して来る。

 

 バルカン砲の発砲音って、迫力が無いな。

 そんなことを言ってる場合じゃ無いのに、必死で逃げながらそんなことを考える。

 

 松山のペルソナ「セラフ」には2つの手がある。

 そしてその手それぞれに、バルカン砲が。

 

 バルカン砲はつまり2門。

 

 それが向かう先は

 

 俺と……明智さん。

 松山は

 

「久保君。……さあ、今です」

 

 俺と明智さんをバルカン砲で封じ込め。

 その隙に

 

「浮いた駒を潰しなさい」

 

 ……水畑さんを狙うのか!

 

 松山の言葉を受け、久保は

 

「分かりましたミカエル様!」

 

 笑みを浮かべ、スパイクがついたバットのような武器を手に、水畑さんに向かって突き進んでいく。

 

「や……」

 

 やめろっ!

 

 水畑さんは暗い表情で立っている。

 手に、長槍を持ったまま。

 

 さっきの会話でも、彼女は全く喋らなかった。

 

 閻魔と遭遇した際のショックを、彼女はまだ引き摺っている……!

 

 まずいっ!

 

「逃げてくれッ! 水畑さんッ!」

 

 そんな俺の叫びは

 

 次の瞬間、水畑さんから発せられた衝撃……波動によって、かき消されてしまった。

 

 

 

 そう……

 

 水畑さんから凄まじいエネルギーの衝撃波が発生し。

 彼女を襲おうとした久保を吹き飛ばしたんだ。

 

 ……一体、何だ……?

 

 その様子に……

 

 松山が攻撃を中断していた。

 俺も、明智さんも、足を止めた……

 

 その場にいた人間は、皆水畑さんから目が離せなかった。

 

 水畑さんは……

 

「……私、自分の罪と向き合います……」

 

 もう、逃げない。

 

 力強い声だった。

 

 そして、力強い目だった。

 

 ……こんな、力強い水畑さんははじめて見た気がする……

 

 水畑さんは、いつも微笑んでいて、他人の気分を害さないことに気を遣っている女の子だった。

 彼女の過去を知った今、それは何のためだったのかは理解したけど。

 

 そこに俺は彼女に同情し……

 ある意味、対等の存在として見れなくなったかもしれない。

 

 彼女は、大変なんだ、と。

 

 だけど……

 

 今、彼女は。

 断じて、同情されるべき弱者では無かった。

 そんな目をしていなかった。

 

 とても強い目で。

 自立した人間の目で。

 

 己の亡者の腕輪に触れ

 

 叫んだ。

 

「来て! ペルソナァァッ!」

 

 その声に応じ。

 エネルギーが集まり、彼女の傍に形成される

 

 黄金の弓を手にし、隙間なく黄金の甲冑で身体を包んだケンタウロス。

 

 彼女のペルソナ……ケイローン。

 

 今思えば、彼女の境遇を象徴したペルソナ……

 野蛮人、外道揃いのケンタウロスで、ただ1人正しくあったケンタウロスの賢者……

 

 その彼女のペルソナが

 

 変化していく……!

 

 ケイローンの甲冑が、弾け飛ぶ!

 

 思わず顔を庇う。

 甲冑の下の存在は、光の中で形を変える。

 

 人の部分が無くなって、脇腹の部分から、新しくまた脚が生える。

 腕だった部分が脚になり、そして……

 

 光が消えたとき。

 そこには、全然別のペルソナが出現していた。

 

 それは純白の金属で出来た機械仕掛けの馬(マシンホース)……!

 ただし、脚が8本。

 

 これは……!

 

 ペルソナが……進化した……? 

 

「……いくよ。スレイプニル」

 

 厳しい表情で、彼女は

 

 ケイローンから進化したペルソナ・スレイプニルにひらりと跨って。

 跨ると同時に発生した、輝く光の手綱を槍を片手に握りしめ。

 

 強い意思を込め、言い放つ。

 

「……アイツらを蹴散らすよ!」

 

 そんな彼女の声に、スレイプニルが機械仕掛けの嘶きで答えた。




ヒロインのペルソナ「ケイローン」が鎧を着けてたのは、聖闘士星矢の射手座の聖衣(クロス)のイメージもあるんですが、同時にヒロインが「自分は悲劇のヒロインであって、本来は裁かれるべきではない同情されるべき存在」という思いで自分を守っていた、という意味合いがありまして。
そこから進化する際、鎧がぶっ飛ぶのは当然の成り行きですわ。

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