地獄ペルソナ~地獄でバトルロイヤルする8人のペルソナ使いたち~ 作:XX(旧山川海のすけ)
「この私のセラフに矛を向けますか咎人の少女よ!」
松山のセラフのバルカン砲の銃口の矛先が、俺たち2人から水畑さんに切り替わる。
俺と明智さんより、水畑さんの方が危険であると判断したのか。
「私に逆らうことは、天の父に逆らうも同じ! 悔い改めなさい!」
同時に無数の銃弾が水畑さんを襲う。
だが、水畑さんのスレイプニルは
駆け出し
空中に舞い上がる。
「なっ!」
松山の顔が驚愕に染まる。
翼も無いのに飛行するだなんて……!
「……スレイプニルは北欧神話の主神オーディンの馬だ。世界を駆ける脚を持つと言われてる……そりゃ、飛行能力ぐらいあるだろうね」
明智さんの言葉。
そっか……
すごいな……!
進化した水畑さんのペルソナの強さに、震えが来た。
ペルソナはもう1人の自分であり、本人の象徴らしい。
だから、ペルソナが進化したということは、本人の在り方が変わったということ。
射撃を全て空を駆け抜け躱し切り。
水畑さんはその銃撃の隙間を縫って、右手に持った槍を高く掲げた。
すると……
ただの飾り気のない長槍が、大仰な装飾のついたものに変わる。
あれは……!
「喰らいなさい!」
水畑さんは叫ぶ。
その技を。
「……グングニル!」
グングニル……!
確か、オーディンの槍の名前……!
水畑さんの声と共に投げ放たれた槍は、凄まじい速度で松山に向かっていき……
そのまま、松山の右腕を二の腕の部分で貫いて、ぶっ飛ばした!
「グウウウウウウ!!」
左手で、途中から先がブッ千切れた右腕を押さえ、悲鳴をかみ殺す松山。
松山のセラフの右手首も、同時に塵になって消失した。
「……お、おのれ神の敵め! 呪われ穢れた娘が!」
脂汗を流しながら呪詛を口にする松山。
だけど水畑さんは厳しい視線を崩さない。
彼女が投げ放ったグングニルは、松山の右腕をぶっ飛ばした直後に空気に溶けて消え
再び、光の粒子から槍に変化して、水畑さんの手の中に戻っている。
……何度でも投げられる、高威力の手投げ槍……!
スゲェ……!
その様子に、松山は
「セラフ! 救世主を立ち上がらせる祈りを! メシアライザーです!」
強く叫び、指示を出す。
おそらくは……
その声に応じ、セラフが残った左手を高く掲げ
同時に松山と久保の身体が太陽光のような暖かい光に包まれる。
……松山の、右腕の出血が止まって行く……!
そして
「……ここは引くとします。作戦を練り直さねば!」
「ミカエル様! 置いて行かないで下さい!」
そう言い捨て、松山は逃走する。久保も同様だ。
……松山は右腕を失ったけど……多分、生えて来る。
俺だって、魔法で親指が再生したんだ。
腕だって生えるだろ。
だから今、畳みかけて倒さないと……!
だけど
水畑さんは追撃を掛けなかった。
じっと、逃げ去って行く松山と久保を見つめていた。
そして2人の姿が消えた後。
ゆっくりと地上に舞い降りて来て。
ペルソナ召喚を解除した。
ガクリ、と崩れ落ちる。
俺は慌てて駆け寄り、彼女を抱き起した。
……ペルソナの進化を行ったせいで、大幅に消耗したのか……!
俺の腕の中で
「……良かった……救えた」
水畑さんは微笑む。
これまでの習慣化した笑顔じゃ無い。
本当の笑顔に思えた。
俺は
「……ありがとう。頑張ってくれて、助かった」
彼女がペルソナ進化を起こさなければ、危なかったと思う。
礼を言う以外無い。
だけど
「水畑」
「……ミルファ」
俺が彼女の名前を呼ぼうとしたとき。
被せるように言われたんだ。
……彼女の下の名前を。
えっ、と思う。
言葉に詰まる俺に、彼女は
「……さっき叱ってくれたとき、下の名前で読んで貰えて、嬉しかったです」
……今まで、そんなことを普通の男の子に言われたこと無かったから。
彼女の言葉に
ああ、あのとき。
つい勢いで、彼女を呼び捨てにした。
それを、思い出して……
一気に恥ずかしくなった。
俺は彼女に悲劇のヒロインを気取るなと叱責するようなことを言ったけど。
俺は俺で、糾弾する立場に酔っていたのかもしれない。
……少し、反省した。
だから
ゴメン、と言おうと思ったけど
(あっ、それは違う)
彼女は嬉しかったと言った。
だから、ここは例え立場に酔っていたのだとしても。
謝っては駄目だ。
だったら
「……助かった、ミルファ」
少し勇気が要ったけど。
そう言い直した。
すると彼女は嬉しそうに微笑んで
「どういたしまして、です」
そう返し、そして
「……マサフミ君」
俺の名前を呼んだんだ。
……単純だとか、チョロイって言われるかもしれないけど。
俺はこれまでの人生で……一番、ドキッとしたんだ。
ここで第4章は終了。
次回から第5章です。
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