地獄ペルソナ~地獄でバトルロイヤルする8人のペルソナ使いたち~   作:XX(旧山川海のすけ)

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第68話 彼女の想い

 この街は暴力禁止のルールがあるおかげで、油断してても他人に襲われることが無いし。

 お金も腕輪にカウントされるものだから、盗むのが不可能。

 

 なので……

 

 俺とミルファは、それぞれ別の場所に引っ込んで、浴衣に着替えることにした。

 

 俺は紺色の浴衣で……

 

 ミルファは

 

「お待たせしました」

 

 水色の浴衣。

 水色生地に、桜の花のデザインが入ってる。

 

 俺は

 

「良く似合ってるよ」

 

 彼女の浴衣を褒め。

 彼女は

 

「ありがとうございます」

 

 俺の言葉を喜んでくれた。

 

 

 そして線香花火だけだけど

 俺たちは花火をはじめた。

 

 水を水道で確保し。

 マッチでぶっとい白の蠟燭に火を点け、一緒にしゃがんで

 

 花火をした。

 

「……こういうの、憧れてました」

 

 ポツリ、と彼女は言う。

 俺は

 

「俺もまぁ、彼女が居たらやってみたいとは思ってたよ」

 

 そう返す。

 本心だし。

 

 ……本当に好きになれた女の子と、こうして一緒の時間を過ごせる。

 なんて素敵なことだろうか。

 

 言葉を交わさずに、黙々と線香花火を消費していく。

 綺麗な光を一緒に見つめ、幸せを感じる時間を共有する。

 

 それをどれくらい続けた後か。

 

 ポツリと

 

「……私がマサフミ君のことを、素敵だって本気で思ったの」

 

 自分の線香花火を見つめたまま。

 

 その言葉に、俺は動揺する。

 平静ではいられない。

 

 彼女に素敵だなんて言われたら……

 言葉を返せずに、黙っている。

 

 そんな俺を気にしないように、彼女は続ける。

 

「あの、鴨志田とかいう男性から私を助けに来てくれたときなんですよね」

 

 ……あのときか。

 俺は思い出した。

 

 あのときは、本気で焦ったんだ。

 絶対に助けないといけないと思った。

 

 正直、スゲー怖かったけど。

 相手は火炎使いのペルソナで、あのガタイで。

 しかも戦斧なんてえげつない武器で武装していたから。

 

 でも、見捨てるという選択肢は論外だった。

 あり得なかったんだ。

 

 俺の中で。

 

 彼女は語り続ける。

 

「……私にとって男性はお客さんで、私はパンみたいなもんだったんです」

 

 その言葉に、俺の胸が苦しくなる。

 彼女は親に尽くす奴隷として誕生し、この年齢になるまでそれが当たり前だった。

 悲惨過ぎる……

 

 俺は、彼女の両親が許せなかった。

 子供を労働奴隷にするために作った、見下げ果てた大人だと思った。

 

「ミルファ」

 

 だから俺は言葉を挟もうとしたけど

 

 彼女は

 

「私はパンなのだから、こういう男性がパン屋からパンを万引きしていくようなこと、まぁあり得るよね。そして、パンを取り返すためにマサフミ君が追いかけてくるのは期待しない方が良いな……」

 

 それには応じないで。

 まだ続けたんだ。

 

 あのときの自分の気持ちを

 

「そう、思ってました」

 

 告白することを……

 

 鴨志田のペルソナは、火炎攻撃を得意としていた。

 悪魔の傾向で、氷結魔法を使ってくる奴は火炎に弱い場合が多い。

 そこからの推理で、俺のペルソナの弱点が火炎攻撃なのは分かるだろうし。

 それで、余計そう思ったのかもしれないな。

 

 俺が彼女を助けるために、自身の天敵の可能性がある相手に戦いを挑みに来たりしない。

 そんなことを。

 

「でも、来てくれた」

 

 そこで、彼女の声が変化した。

 

「……しかも、死ぬ思いで手に入れた旺気(おうき)の杖を使ってまで」

 

 そこに、ものすごい感動と喜びがあったんだ。

 

「私がどれだけ嬉しかったか分かりますか……?」

 

 俺のあのときの選択……

 そっか……

 

 そんなに嬉しかったんだ……

 

 俺は俺で、やりたいことをしただけなんだけどな……

 

「ああ、絶対にこの人を、現世に復活させてあげよう。そのために自分はここに来たのかもしれない……そんな風に思えたんです」

 

 そこまで彼女の言葉を聞いた後、線香花火に視線を向けていた俺は。

 顔を上げた。

 彼女のその声が、震えていたから。

 

 俺は見た。

 

 彼女が涙を流しながら、微笑んでいるのを。

 

 その泣き笑い……

 俺の中で、衝動が湧く。

 

 だけど、その衝動が正しいものか分からない。

 

 でも……

 

(多分、ここで訊くのは正しくない)

 

 誰かに言われたわけじゃないけど。

 俺はそう思った。

 

 だから、言葉じゃ無くて態度で示した。

 

 俺の線香花火が終わった。

 バチバチ光を飛ばしていた赤い玉が、黒くなる。

 

 その終わった花火をバケツに放り込み。

 

「ミルファ」

 

 そう言って、彼女に近づく。

 彼女は顔を上げた。

 

 俺は……

 

 彼女の両肩を掴み、立ち上がることを促す。

 彼女は……

 

 俺の意図を察してくれたのか。

 

 スッと、目を閉じたんだ。

 

 だから俺は……

 

 思い切った。

 

 思い切って、俺は

 

 

 生まれてはじめて、女の子とキスをしたんだ。




俺の心の気ぶり爺が……

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