地獄ペルソナ~地獄でバトルロイヤルする8人のペルソナ使いたち~ 作:XX(旧山川海のすけ)
「……指輪でいいんじゃな?」
ドワーフの店主は俺にそう返してくれる。
俺の心がパッと明るくなる。
「……出来るんですか!?」
俺の言葉に
「ワシはドワーフじゃからな」
そう返し。
俺はそれに「知ってます」と心で返し。
さらに店主は言った。
「ただし、それなりにお代はいただくぞ?」
提示されたのは1万8000マッカ。
日本円で約18万円か……
俺の現在の所持マッカは……
6万5423マッカ……
まぁ、良いかな。
正直5万マッカくらいまで覚悟してたから……
「お願いします」
即答。
相場は良く分からないけど、ここで値切るのは出来ない。
ミルファにあげるものだから。
ヒトにあげるものを値切るなんて、非常識だ。
「少し待ってろ。すぐ仕上げてやるわい」
俺の言葉を聞き、仏頂面で店主はエメラルドを取って
「指輪を嵌めるのはそっちの嬢ちゃんか?」
その確認。
俺が頷くと……
店主はミルファの指のサイズを測ってから、奥に引っ込んでいった……
「まあ、少し待っているホー。店主は一時的に魔界に帰って、加工作業をしてくれるホー」
ジャックフロストが店番を交代し。
そんなことを。
俺は
「こういうこと、よくあるの?」
そう、ジャックフロストに訊ねる。
……地獄でそういうの、ほぼ無いんじゃないのかと思ったから。
そしたらジャックフロストは
「……あんまりないホー。ここに来る人間は、ほとんど自分のことにしか興味が無い人間ホー」
だから、誰かに贈り物なんて考えないホー。
……なるほど。
やっぱりそうなんだ。
でも
「だからこそ、そういうお願いが出た場合は、店主サンは全力で応えたいって思ってるホー」
他人にモノを贈りたいと思うのは、素晴らしいことホー。
頑張るホー。
……なんかエールを贈られた。
さすがにちょっとテレる。
俺は別に褒められようと思って決断したわけじゃない。
ミルファに喜んで欲しいからするんだよ。
色々、俺はミルファと恋人になって知った。
……贈り物って、相手のためにするんじゃなくて。
相手に喜んで貰って、それを見るためにするんだな、って。
そのまま、ジャックフロストと雑談をする。
この地獄に何故悪魔が居るのか?
……どうも、バイトだったり、ボランティアだったり。
そういう労働的な理由らしい。
その仕事の目的は「地獄に堕ちた亡者たちに最後の機会を与えるため」らしいけど……
そうすると、地獄に堕ちる人間ってそう多く無いのかな?
この地獄には、最初たった8人しか亡者がいなかったわけだし。
……まぁ、地獄はここだけじゃないのかもしれないけどな。
そうこうしていたら。
店主が奥から戻って来て
「ホイ。……お前さんから嬢ちゃんに渡すんじゃ。……分かるよな?」
……エメラルドリングを差し出して来た。
俺は唾を飲み込む。
指輪を入れるケースが無いのがちょっと気になったけど、上を見てもしょうがないし。
やって貰えたんだから
「ありがとうございます」
お礼を言って受け取って。
俺は
「ミルファ」
彼女に歩み寄り。
「左手、出して」
そう言った。
少しだけ勇気が要った。
拒否されたらどうしよう? って。
けど。
ミルファは左手を出してくれた。
指輪を嵌めやすいように、5指を開いて。
俺は震えた。
やってみたい……
この手に……
でもそれは、大きな意味があって……
ドキドキする。
したけど……
ここで決断しないと……!
スッと息を吸い。
俺は
ミルファの左手を取って、その薬指に……
エメラルドの指輪を嵌めたんだ。
……事前に測っているだけあって、ピッタリで。
ミルファはその指輪を真っ赤になって見つめてくれた。
……ホントはダイヤモンドの方が良いのかもしれないけど。
無いからしょうがない。
残念だけど。
でも、こんなに喜んでくれてるなら俺は……
そう思っていたら
そこに
「……エメラルドの石言葉は……」
明智さんが
言ってくれた。
エメラルドの石言葉。
それは……
幸福、幸運、愛、希望……
その言葉を聞いたとき。
ミルファは
「マサフミ君ありがとう」
俺にそう言って。ギュッと抱き着いてくれた。
俺はその背に手を回して、彼女に指輪を贈れたことが嬉しいと思ったんだ。
そして俺たちは満ち足りて。
ヘルタック商店を出たんだ。
だけど……
そこに
アイツが居たんだ……
そしてオドオドと声を掛けて来る。
気分が一気に悪くなる。
「お、おい……!」
それはクラゲ野郎。
自分しか見ていない、ジャージ姿のロクデナシ。
久保……。
お前……今更一体、何の用なんだよ……?
クラゲ野郎ってのは、骨が無い奴。
つまり自分が無い空っぽ野郎という意味の侮蔑ですね。
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