地獄ペルソナ~地獄でバトルロイヤルする8人のペルソナ使いたち~   作:XX(旧山川海のすけ)

96 / 101
第96話 別れ

 斎藤正史よ……

 お前はこの戦いに勝ち残り、現世に復活する権利を得た。

 お前の魂は、死の運命が決定されたときまで巻き戻り、そこから人生をやり直す。

 

 ここでお前は、大きな学びを得た。

 2度と同じ過ちを繰り返すことはあるまい……

 

 

 

 その声は穏やかで。

 優しかった。

 

 ……俺はいつの間にか、宇宙空間のような、暗黒の空間に居た。

 光も何も無いけど、何も見えないわけじゃ無く。

 

 このまま、ここで現世に戻るまでの間、待機をしてろってことなのか。

 

 そのまま俺は思い返した。

 この地獄の戦いで経験した、様々なことを。

 

 明智さん……ミルファ……

 

 俺はここに来る前、自分は何も間違っていなくて、そして悪党っていうものは、人の心なんて持っていないどうしようもない奴らだと思っていた。

 いや、もっと言うと人だと思っていなかったんだろう。

 

 奴らは人間に生まれたのが間違いの、欠陥人間だ。

 そう思っていたんだと思う。

 

 でも……ここに来て。

 そんな「善い人間」と「悪い人間」の境界線。

 それを判断するのはほぼ不可能に近いんだと思うに至った。

 

 世の中、100%の善人も、その逆もそう居ない。

 そんなことを、口では分かっていたフリをして、本当は分かって無かった。

 

 これを知って、俺は現世でどう生きるか……

 

 そう、想いを馳せたとき。

 

「優勝おめでとう。あなた」

 

 ……最後に聞きたい声がした。

 

 いつの間にか、サイドテールの大人しそうな女の子。

 俺の奥さん……斎藤(さいとう)美瑠葉(みるふぁ)

 彼女が目の前にいて。

 

 彼女は微笑んでいた。

 この空間では、魂だけの存在だからなのか、俺たちは裸で。

 

 まあ、別に今更恥ずかしくも無いんだけど

 

 ちょっとだけ、触れるのに躊躇いがあった。

 

 もう、これでお別れなのに。

 

 俺は

 

「ありがとう。最後まで助けてくれて」

 

 まずお礼を言う。

 抱き締めたい衝動があったけどさ。

 

 彼女は

 

「当然のことですよ。……だって私はあなたに勝ち残って貰いたいってずっと思ってたんですから」

 

 ニコニコしてくれる。

 ……その笑顔に泣きそうになる。

 

 俺は衝動に耐えられず彼女を抱き締め

 

「もっと一緒に居たかった。これでお別れなんて……嫌だ」

 

 どうしようもないことだけど、本音を口にした。

 すると彼女は

 

 俺の腕の中で困ったように微笑んで

 

「……私のことは忘れて下さい。どうしようもないんですし」

 

 そんなことを言って来て。

 俺が、無理だ、と言いそうになると

 

「私は自分の犯した罪に相応しい償いの機会を与えて貰えるんです……そこでまた綺麗になれるんですよ」

 

 だからあなたも喜んで私を送り出して。

 私を愛してくれてるなら、お願いします。

 

 ……それにもしまた生まれ変わる機会を貰えたなら、私はあなたに会いに行きますから。

 それは人じゃ無くて、鳥かもしれないし、虫かもしれないですけど。

 

 必ず……会いに行きますから。

 

 そう、彼女は優しい口調で言ったんだ。

 

 ミルファの言葉を俺は……

 

「分かったよ……」

 

 そう返すしか無かった。

 彼女の辛さを感じ取ったから。

 

 自分の痛みだけを訴えるのは違うよな……

 

 だから

 

「ミルファ、愛してる」

 

「私も愛してます。マサフミさん」

 

 そう、互いの愛を口にして。

 最後にもう1回、キスをした。

 

 ……ミルファ……

 

 そして唇を離した。

 そのときに

 

「……マサフミさん……大好きです。ずっと、生まれ変わったとしても、あなたを愛して、幸福を祈っています。だから必ず幸せになってください……」

 

 彼女の満面の微笑みと、その言葉。

 それを受け取ったとき。

 

 俺の意識が光に飲まれ、途絶えた……




ここで最終章終了。
次回からエピローグです。

本作を読んでいただき感謝です。
続きが気になる、面白かった。
その場合は評価、お気に入り、コメント等を頂けますと嬉しいです。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。