ブルアカ4周年おめでとうございます。(1ヶ月遅れ)
というわけで第四話です。どうぞ()
タイトル変えました。内容に変更はないです。
「「ひゃっ、100万!?」」
三人で廃駅を巡り宝探しを行った日から数日、私がその成果をユメ先輩とホシノに発表すると、二人は歓声なのか悲鳴なのか判断に難しい声を上げた。その時の二人の顔が目も口も大きく開いて、何とも間抜けな表情で可笑しかったものだから私は先日の行いに非常に満足していた。
「まさかアビドスの歴史にここまで価値が付くとは思いませんでした。このチカゲの目をもってしても!!」
「あなたの目は⋯⋯いえ、まあ大したものですね」
いつものように私が適当な軽口をたたくと、ホシノは反射的に反論しようとしたが、彼女にしては珍しく素直に私の言うことを認めた。それもそうだろう、駅の備品に価値を見出したのも私、それをオークションに出してお金に変えたのも私、自分で言うのも何だがこの大金はおおよそ私のお陰なのだ。これには反抗期真っ盛りのホシノも素直にならざるおえないだろう。もう少し悔しがってくれたらなお良かったのだが。
「凄いねチカゲちゃんは。私じゃきっと、こんな方法思いつかなかった」
しかし私の期待とは違って、少し悔しそうにしているのはユメ先輩の方であった。アビドスを背負って立つ生徒会長であるというのに、ぽっと出の後輩ばかり活躍するというのは思うところもあるのだろう。ないとは思うが、それで無理をされて死なれても困るので、一応フォローはしておくことにする。
「いえいえ、私一人の成果ではありませんよ。お二人の力添えあってこそです」
「嫌味にしか聞こえませんね」
「もちろん、半分くらいは本気ですよ」
「ほらやっぱり!」
「ふっふっふー、もっと褒め称えてくれも良いんですよ」
「ありがとう、優しいねチカゲちゃんは」
私は気まずくなって「あはは⋯⋯」と、どこぞの平凡な女子高生のような反応で誤魔化した。内心を見透かされてなけなしの善意を褒められるのはどうにも気恥ずかしい。嫌いというわけではないのだがどうにもやり辛い、ホシノのように反発してくれた方が揶揄い甲斐があるというものだ。
「でも実際、駅の備品を出品する前に、先輩が昔の資料を探し出して、ホシノちゃんが売り文句を考えてくれたからというのもありますよ。こういうのは背景が大事ですからね、余所者の私ではこうはいきません」
「それをお願いしたのもチカゲちゃんだけどね」
「そうでした。じゃあ全部私の手柄ですね!」
「先輩!コイツが調子に乗るので褒め過ぎないでくださいよ!」
何にせよ借金を少なくすればユメ先輩が無理することもあるまい。ということで私は次なる一手を用意した。
「さて、そんなわけでアビドス高等学校は300万円の大金を手に入れたわけですが、現在のアビドスの借金は約8億円。文字通り桁違いです」
「うん、そうだね。でもこの調子でいけばすぐだよ!」
「残念ながらそう上手くいかないでしょう。私達のやっていることは言わば歴史の切り売りです。それは過去の生徒会もやってきたでしょうし、いずれ尽きるでしょう」
「おお、いつになくまともなことを言ってますね」
「だからこそ私達は新しい方法で大金を稼ぐ必要があります。最もフィジカルで、最もプリミティブで、最もフィティッシュな方法──」
二人は固唾を飲んで私の次の言葉を待っていた。私が言わんとしていることに対する反応はある程度予想はつく、きっと落胆するだろう。そう自信を持って宣言した。
「それは、ギャンブルです!」
「はぁ、もう無視しましょう先輩。たまにはまともなこと言ったかと思えば直ぐこれですよ」
「ふふん、そうでもないですよホシノちゃん。ギャンブルには勝ち方ってものがあるんです」
「あのですね、そういう所はズル賢い大人が仕切っているのでそうそう儲からないですよ」
「チッチッチ、大人が手強いなら私達と同じ生徒を相手すれば良いのですよ」
呆れ果てるホシノと流石に微妙な表情を浮かべる先輩。あまりに予想通りすぎて、私は自分の頬が上がっていくのが分かる。そして予想通り反発するホシノだが、こちらとて無策ではない。私は一枚のチラシを取り出し勢いよく机に叩きつけた。
「ゴールデンフリース号、オデュッセイア海洋高等学校が運営する豪華カジノクルーズです」
「うわぁ、すっごい豪華⋯⋯。でもチカゲちゃん、こんなとこ行くお金なんて無いよ」
チラシを見てこれもまた予想通りお金の心配をする先輩に私の口角は最高潮に達していた。そう、全てが計画通り。私は鞄からあるものを取り出すと机の上に置いた。
「あるじゃないですか、ここに」
そこには、先日の宝探しの成果物である札束が鎮座していた。降って湧いた一攫千金のチャンス、手段もある、目的もある、二人の揺れる瞳に私は語りかけた。
「さあ、一気に借金返済まで駆け抜けましょう。まさに脱兎の如く!」
・
「あの」
「はい何でしょう」
「何ですかこの格好は?」
ゴールデンフリース号の客室、私とホシノはバニーガールの格好をしていた。ユメ先輩は着替えに手間取っているのかこの場には居ないため、暇を持て余した私はさも当然かのように答えた。
「バニースーツといってカジノでの正装みたいなものです。学校には制服、パーティーにはドレスといったように、こういった所にも相応しいドレスコートがあるのですよ。⋯⋯まさか知らないのですか?」
「そ、それぐらい知ってますよ!」
煽るように教えてやると、彼女はムキになって知ったかぶりはじめる。そんなんだから悪い大人に騙されるんだぞ。もし彼女が三年生になって、先輩面している時であれば余裕綽々で着てくれそうであるが、刃物のように尖っている今の彼女が恥ずかしがりながらこんな格好をしているのが実に滑稽で面白かった。
「フッ」
「おい、何を笑ったか聞かせて貰おうじゃないか」
「いえ、可愛らしい子兎だと思いまして」
「よし、喧嘩ですね。高値で買いますよ!」
はてさて何を勘違いしたのか、彼女は血相を変えて襲いかかってきた。ちなみに私の方が幾らか発育は良い。そうして襲いかかってくる彼女を揶揄いながら戯れあっていたが、いよいよ取っ組み合いになったところで救いの女神が現れた。
「ね、ねぇ⋯⋯、これで合ってるかな?一番大きいサイズを選んだんだけど⋯⋯」
「「──!!!」」
ようやく着替えを終えた先輩に視線を向けると、私達は取っ組み合いしていることも忘れてその姿に魅入っていた。少し窮屈そうにバニースーツを整えながら近付いてくる先輩は、元々服というには心許ない衣装がより一層際どく、今にも色々とまろび出そうであった。要するに、ケツとタッパとそれからバスト、みんなデカくてみんないい、ということだ。
「似合ってないかな⋯⋯って、どうしたの二人とも、鼻から血が出てるよ!」
「恐るべし梔子ユメ、これこそがキヴォトス最高の神秘でしょう」
「とても良くお似合いです先輩。先輩に比べたらコイツなんてカスみたいなもんですよ」
私が素直に褒めたのに対し、ホシノは先輩のことを褒めつつも私の方を見て鼻で笑っていた。全くみみっちい奴だ、どうやらタッパの小さい奴はケツの穴も小さいらしい。
「カスって何ですか!あと、そういうのは私のセリフなんですけど!」
「自分も大したことないクセに、人様を笑うようなあなたの性根をカスだと言ってるんですよ」
「喧嘩なら買いますよっ!」
「二人とも、こんな所まで来て喧嘩しないのっ!」
「「だってコイツが!!」」
どちらの立場が上か分からせてやろうとしたところで、先輩から待ったの声がかかり私達はお互いを指差合った。奇しくも同じ言動で何ともいえない気まずい空気が流れた。しかし、私にはこの場所においてとっておきの切り札がある、私はなるべく挑発する様にホシノに語りかけた。
「いいんですか?私に逆らうなら、ここでの必勝法教えてあげませんよ」
「結構です!あなたの手なんか借りなくても私は勝てますので」
ホシノはそう言うと私と先輩のどちらが止めるよりも早く、さっさと部屋を出て行ってしまった。あまりにもあっさりと彼女が引き下がったものだから、拍子抜けしてしまった。どうやら揶揄い過ぎたらしい。本当は彼女とも仲良くやりたいものだが、どうにも喧嘩ばかりしてしまう。友情とはかくも難しいものか。
「行っちゃった⋯⋯。チカゲちゃん、ホシノちゃんって負けず嫌いだから、あんまり意地悪し過ぎると喧嘩になっちゃうよ」
「分かってますよ。それに、喧嘩するほど仲が良いと言うではありませんか」
「それ自分で言うの⋯⋯」
「まぁ、何とかなるでしょう。もしホシノちゃんが失敗しても、我々が取り返せばいいだけです。先輩には私が手取り足取り教えてあげますからね!」
「それをホシノちゃんにも、言ってあげればいいのに⋯⋯」
それが出来れば苦労はしまい。素直でないのが悪いのだ、素直でないのが。
・
「やはり、カジノの華と言えばルーレットですよね!」
「そうなの?」
「だってほら、回転する円盤がお花みたいでしょう」
「確かに!」
そう他愛のない嘘をユメ先輩に吹き込んで、私達はゴールデンフリース号のプレイラウンジで、まずはルーレットに挑戦することにした。
「いいですか先輩。ルーレットは色や偶数奇数、特定の数字に一点賭けなど色々な賭け方があります。当然確率の低い賭け方はその分沢山の金が貰えますし、確率が高ければ貰えるお金も相応に少ないです」
「ふむふむ」
「今回はとにかく試行回数を重ねたいので、簡単な賭けから行きましょうか」
ルーレットについて簡単に説明を終えると私は席に着き、ユメ先輩は隣の席に座った。
「黒に5万」
「えっ!そんなに賭けるの!」
「はい。これを当てれば10万返ってくるので5万の儲けになります」
ディーラーが玉をルーレットの円盤に転がす。ルーレットと玉が逆方向に回転し、やたらと長く感じる待ち時間を固唾を飲んで見守っていると、結果は赤。
「ありゃ、外れましたか。黒に6万!」
矢継ぎ早に賭け金を増やして同じ黒に賭ける。しかし、またしても玉が入ったのは赤のマスだった。
「ムムム、早々上手くはいかないですね。黒に7万!」
「ちょっと待って、チカゲちゃん!さっきから負けてばっかりなのに、何で賭けるお金が増えてるの!?」
「ふふーふ、まぁ見ていて下さい」
そして回されるルーレット、玉がグルグルと円盤上を回り徐々に速度を失って最後に止まったマスは黒色のマスであった。
「よし、勝ちましたね。計算通り、かんぺき〜」
「でもチカゲちゃん。2回負けて1回勝っただけだから、まだ負けてるよ」
「チッチッチ、私が失ったのは11万で先ほど得た金額は7万の2倍なので14万。合計はいくらでしょう?」
「3万勝ってる!なんでぇ」
「数学は真実を導く、ということです」
私が説明をしても先輩は納得がいかないのか、首を傾げたままだった。
「ものすごく簡単に説明すると、負けた金額より多く賭ければ利益が出るという訳です。そして勝率はおよそ二分の一。つまり──」
「ものすごいプラスになるやつだ!」
「あぁ、言われてしまいました」
「それにしても、よくそんなこと知ってるね。もしかして、こういう所よく行くの?」
「いえ、初めてですよ。お二人に良い顔したくて色々調べて来たんです」
「えぇ⋯⋯」
私が正直に答えると、ユメ先輩は困惑した表情になった。それもそうだろう。なにせ、今まで自信満々で教えを説いていた奴が、実は同じ初心者だったのだ。んふふ、いい反応ではないか。こうやって驚かせたくて、ギャンブルという方法を選んだと言っても過言ではない。
「さて、次はどこに行きましょうか」
「じゃあ⋯⋯、あれなんてどう?」
ユメ先輩が指差したのはこのプレイラウンジでも一際賑わう一角、カジノスロットであった。カジノスロットとは、スロットマシンと呼ばれる機械の回転する絵柄を揃えるギャンブルだ。一見してタイミング良く回転を止めれば当たりを狙えるように思えるが、実際は完全なランダムらしい。
「スロットですか、アレはちょっと⋯⋯」
「どうしたの?」
「何でも、運が良ければ一瞬にして億万長者になれるらしいですが、当たりっこないですよ。あんなの、ただの博打です」
「どれもそうだと思うけど」
「私は思い通りになる運命が好きなんです」
「言ってることが無茶苦茶だよ⋯⋯」
それから私は先輩と共にプレイラウンジを回り、色々なゲームの遊び方と勝ち方をユメ先輩に教えていった。ただし、肝心の収支はまずまずだ。なにせ教えながらなので、どうしてもテンポは悪くなるし、彼女の前でそこまで派手な事は出来ない。
「はあ、凄いね。大きいお金があっという間に行ったり来たりして、頭がおかしくなっちゃいそう」
「ふふふ、気をつけて下さいね。中には借金までしてのめり込む人もいますから」
「私達は元から借金が有るけどね」
「んふふ、勝てば良いんですよ。さて、次はどこ行きますか先輩」
「そうだね、うん。チカゲちゃん、別行動してみない?」
「おや、それはどうしてですか?」
「チカゲちゃん、ずっと私の為に付きっきりで教えてくれているでしょ。でも、あんまり後輩に頼りきりな先輩は情け無いなって、自分の力で頑張ってみたいの」
ユメ先輩は申し訳無さそうに、しかし僅かに焦りの見える顔でそう言った。きっと、後輩におんぶに抱っこでは先輩としての立つ瀬がないのだろう。私としては別におんぶに抱っこでも構わないのだが、ここは先輩の意向に沿って身を引くことにした。
「そうですか、寂しいものです。子供が自立していく親の気持ちとはこういうものなのでしょうか?」
「そんな大袈裟な」
「ふふふ、ではお気をつけて。次会う時は、ギャンブラーの高みです」
「うん、頑張ろうね」
こうして私とユメ先輩は別行動することになった。数奇な運命にあるあの人が、はたしてギャンブルで勝てるのかは甚だ疑問だが、もしその時はまた私が助けてやれば良いのだ。そう思い至った私は上機嫌で次のゲームに向かった。
○梔子ユメ
ブルアカでトップクラスの胸と善性を持つ女。その大きな懐で多くの先生とホシノの脳を焼いた。この作品の主人公が脳を焼かれる日もきっと遠くないだろう。ちなみに原作では故人、運営は人の心とかないんか?
→小鳥遊ホシノ
強くて頼りになる後輩。アビドスのことを真面目に考えてくれて嬉しい反面、真面目過ぎて周りから孤立しないかちょっと心配。その時はチカゲに助けてもらえばいいと思っている。
→奇星チカゲ(オリ主)
明るくて賢い後輩。一緒にいてとても楽しいが、普段の言動もあって何かやらかさないかちょっと心配。その時はホシノに止めてもらえばいいと思っている。