君と奏でる幸せの音   作:賀茂川泰伸

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この作品を書いた理由として、あくまでもこの作品は「ミリオンライブでP(プロデューサー)じゃない人が主人公の二次創作ってなくない?」という僕の思想とこういう作品を作ってみたいという考えによって作られております。
作品を読んでいただいてる皆さんには感謝してもしきれません。
というわけで第11話をどうぞ!


第11話 二度目のスクールライフ

劇場から帰ったその日の夜、幸哉は相河家の人々と共に食卓を囲んでいた。テーブルの上には天ぷらにサラダ、唐揚げといったおかずに白米、味噌汁が4人分並んでいる。

 

「そんで、今度から学校行くって言ってんだな?」

 

そう聞いてきたのは慶一の父―義智(よしとも)である。

父親の言葉に肯定するように慶一が言った。

 

「そうなんだよ。家まで課題を送ってもらうのも申し訳ないし、何より前に進みたいって言っててさ」

 

そう言っておかずの芋天を箸で掴む。サクサクした感触を噛み締めていると、横にいる幸哉が口を開いた。

 

「みんなから励ましてもらったから、前を向こうって思えたんです。だから、学校にも復帰しようと想いました」

 

前向きな決断。その表情に相河夫妻の顔が緩む。

 

「よく決めてくれたねぇ!最初会った時は死んだ方がマシみたいな顔してたのに」

「立ち直るってえのはいいことだ。だからしっかり前に進めよ!」

二人から励ましをもらい、思わず笑みを見せる幸哉。

 

「ありがとうございます。社会復帰、いけそうです」

「そうかそうか、でもなんでまだ敬語なんだ?」

 

その疑問が出るのも当然ともいえる。元より幸哉は血のつながりのない他人である慶一に助けられ、彼の実家で暮らしている身である。だからこそ、彼の家族との距離感を測りかねているのも当然であると言える。

 

「血がつながってた前の家でもあんな環境だったからねぇ。しかも『あの出来事』のせいでお母さんなんて呼べるかって感じだけど」

「……」

 

下を向いて俯く。「あの出来事」という言葉を聞いた途端に、である。

「まあまあ、折角立ち直るお祝いなんだから、沢山食べなよ、幸哉!」

 

雅恵が調子を取り戻さんと明るい声で言った。義智も賛同するように

「俺達は幸哉の父ちゃんと母ちゃんみたいなもんだ!遠慮なんてすんなよ!わっはっは!」

 

豪快な笑い声で場を盛り立てる。

 

「はいっ!」

 

すっかり明るい調子を取り戻し、卓上の唐揚げを箸で掴んだ。

 

――――――

 

数日後、

 

「ここが、新しい学校……」

 

幸哉は中学校の門の前に立っていた。

真新しいブレザー制服に身を包んだ表情は、心なしか固い。

目の前には教員と思しき人物が手招きをしている。招いた教員のもとへ向かった。

 

「君が転入生ですね」

「はい。今日から通うことになった今永です。よろしくお願いします」

 

教員はそれならと校内へと案内し、部屋へと通される。資料に目を通していると校長と名乗る壮年の男性が現れて目の前に座り、

 

「今永くん。そちら側の事情は聞いているので、安心して学校生活を送ってくださいね」

 

校長に対してはい、と返事をして、紹介された担任とともに転入先の教室へと案内される。

ドアの横に立ち、呼ばれるのを待つ。

 

「それでは、今日からこのクラスの一員になる人がいるので、紹介していきます」

 

その言葉が聞こえた瞬間、担任の男性教師に呼ばれ、教室の中へ入る。

教卓の前に立つ教師が説明するように口を開いた。

 

「えー、今日からこのクラスに入ることになった今永幸哉くんだ。皆よろしく頼む」

「今永幸哉です。よろしくお願いします」

 

そう言った後、幸哉は白いチョークで黒板に自分の名前を書いた。

 

「彼は事情があってクラスに合流するのが遅れてしまったが、皆で彼を助けてあげてほしい」

「先生、僕の机はどこにありますか?」

 

幸哉の質問に教師が空いた机を指差して答える。

 

「席は…ああ、伊吹の隣だな。さあ、座って」

 

そう言われ、席に座るため動こうとしたその時、見たことのある顔を見つけた。

 

「あっ!」

 

自分の席が、まさかのアイドルー伊吹翼の隣だったのである。

翼が小さく手を振っている。それを目にして隣へ移動し、椅子へ腰を下ろした。

 

「久しぶり!ねえねえ、元気?まさかうちの学校に来るなんてね」

「うん…、久しぶり。伊吹さん」

「も~、そこは『翼』って呼んでくれないとやだな~」

 

「今は朝の会の最中だぞー。おしゃべり止めるように」

 

担任が翼に注意をした。

 

「えへっ、ごめんなさーい」

 

反省してるのかよく分からない謝罪をして、黒板の方へと向き直った。

――――――

 

「起立!気を付け、礼!」

 

級長の号令で朝の会が終わり、生徒たちが準備のため散らばっていった。

授業の準備をしている最中、翼が話しかけてきた。

 

「朝の会の時はあんまり話せなかったけど、今日からクラスメイトだねっ!これからよろしくね~♪」

「よろしく。というか、とんでもない偶然だなあ」

「でしょ~♪今日はお仕事もないから、いっぱいおしゃべりできるね」

「いや、勉強もしようか。慶一さんも勉強しろって言ってくるでしょ」

 

「おい!そこの転入生!」

 

そんな声が後ろから聞こえてきた。気づいて後ろを振り向くとそこには幸哉より少し背の低い男子生徒が立っていた。

 

「なぁんで伊吹と親しそ~に話してんだよぉ!」

「え?」

 

疑問をよそに、まくしたてるように話を続ける。

 

「このクラスの男子連中でもあんま話したことねぇってのに、どうやったらこうなるんだっ!あと、今日転入のはずなのになんで昔っからの知り合いみたいに話できるんだ!?」

「ええ?」

「あと伊吹とどういう関係なんだよ!?」

 

そこまで言うと、翼が爆弾じみた発言を投下する。

 

 

「わたしと幸哉くんは友達で~、あと連絡先も交換してま~す♪」

 

 

「なっ…え、連絡先……?」

 

男子が凍りつく。無理もない。アイドルの連絡先など全国のファンが大枚はたいてでも入手したいだろう。それを一介の男子生徒が入手しているから驚愕もやむを得ないといえる。

 

「まあそういうことだから、騒ぐのを止めてくれないかな」

「そう言ったってよぉ……やっぱり納得がいかねえ!」

「えぇ~……」

 

そんな応酬を続けていると周りの生徒たちが一斉に背の低い男子に口撃を浴びせる。

 

「もうやめとけよネズミ。転入生が困ってるだろ」

「そうだよ!翼ちゃんとほんとに友達かもしれないじゃん!」

「いじめるなんてサイテー!今永くんがかわいそう!」

「そうだ!そうだ!」

 

「ああもうわかったよ!悪かったって!あとオレはネズミじゃねえ!」

 

それにひるんだのか、ネズミと呼ばれた小柄な生徒は周りに引きずられるように離れていった。

 

「大丈夫?嫌な思いしてない?」

「全く、ネズミの野郎、ちょっかいかけやがってさ。もう大丈夫だからな」

「まあ……大丈夫。ちょっとびっくりしただけ」

 

ふぅ、と息をつき、椅子に座る。翼も隣に座り、話しかけてきた。

 

「大丈夫そうだね!だって、いろんな子から話しかけられてたから」

「果たして大丈夫なのかな、それ……」

 

まるでこの状況を楽しむかのような翼の態度。

それでも、前の学校で目が合ったという理由だけで暴行されるようなことは無いだろう。そう考えていると、チャイムが鳴り、授業の始まりを告げた。

 

―――――

時計が午前の授業の終わりの時間を告げていた。教師の説明を聞き、板書を取るといった授業は幸哉にとっても久々の体験となっていた。

 

「んぅ……」

 

腕を伸ばして凝り固まった体をほぐすようにして、緊張を解く。

昼食を食べるために手洗いを済ませて教室に戻ると、翼が待ち構えていた。

 

「あっ!来た来た!ねえ、お昼ご飯一緒に食べよっ!」

 

誘いを持ち掛ける翼。それに対して幸哉は一瞬驚いたような表情を浮かべた。

 

「ええと……」

「もっと幸哉くんのこと、聞いてみたいな~。ねえ、いいでしょ?」

 

またもやおねだり攻撃。幸哉は一瞬躊躇いの表情を見せるものの、

 

「あぁ、わかったよ」

効果は抜群だ。あっさりと了承してしまった。

 

「やった~♪」

 

翼は楽しそうに、自分の机と幸哉の机をくっつけさせ、向かい合って座れるような形にした。

机に弁当箱を出し、いただきますの挨拶を済ませて、会話が始まる

 

「まさか同じクラスで、隣の席に同士になるなんてね」

「本当にびっくりしたよ…。まさか隣の席に翼がいるってことが」

「あっ!名前で呼んでくれた!」

「未来たちに言われたからね」

 

名前で呼んでくれたことに嬉しそうな反応をする翼。ファンがアイドルを名字呼びすることはやはり不自然に思えるのだろう。しかしなぜ朝にネズミと呼ばれた生徒がアイドルたる翼を名前で呼んだのか。その疑問を口にした。

 

「朝、僕に突っかかって来た人いたよね。あのネズミって人」

出水(いずみ)くんのことが気になるの?」

「そういう名前なんだ」

「出水くんはね、わたしたちのファンなんだ♪いつもライブに来てるみたいなんだよね〜」

「なるほど……」

 

どうやら彼女のファンらしい。でもなぜ名字呼びなのか、その理由を問うことにした。

 

「なんで翼のことを名字で呼んでいるんだろう」

「単純に恥ずかしいんじゃないかな?ライブの時に席の方から『翼~~!!』って聞こえてくるんだ」

 

まあアイドルといえ、クラスメイトに対して熱をあげていると知ったらどう言われるかわかったものではない。

そのあたりは熟知していたのだろう。

 

「ねえ、このクラスになじめそう?」

「まあ…、何とかやれそうだよ」

「未来たちから話は聞いてるから、安心していいよ。わたしも味方だからね」

 

翼がにこやかな表情を見せる。

 

「ありがとう…。前の学校だとこうしてくれる人なんていなかったからさ」

「先生もわたしたちのことわかってくれるし、困ったら相談したらいいよ!」

 

そういって笑顔を見せる。

 

「そうだね。困ったら言うことにするよ」

 

二人は会話を交わしつつ、昼食を食べ進めていく。周囲は穏やかなムードが流れていた。

 

――――――

765プロの劇場ではなく、本社のあるビルの事務室内で二人の男が仕事をしていた。―慶一と彼の先輩にあたる霧生である。

 

「いやあ、立ち直れてよかったじゃないか。自らの足で進むと言ったのは素晴らしいことだよ」

「最初は言わなくてもいいんじゃないかと思ったんですけど、自分の過去を敢えて言うことって、とてもやりづらいことだと思うんです。特にあいつは、過去に辛い思いをしたみたいですから」

 

そう言いながら向かい合ってパソコンのキーを叩く慶一。それを聞きながら霧生はあることを思いついたように口を開いた。

 

「なるほどねぇ…、そうだ。今度のミリオンスターズの公演、彼を招待しようと思っているんだ」

「彼って、誰なんですか?」

 

慶一が問いかけ、霧生が当然といった表情で答えた。

 

「勇者くんだ」

「勇者くん?」

「ああ、私がそう呼んでいるだけだった。幸哉くんといったかな」

「そうですけど、なんでそう呼んでるんですか?」

「それは彼がアイドルを魔の手から救った勇者だからさ」

 

当然といった表情。それに霧生は続ける。

 

「彼はライブに行くと約束したらしいじゃないか。その約束を果たすためにも、ね」

「そうですね…」

 

ファンが増えることは慶一としても喜ばしいことである。霧生が話を続ける。

 

「そのためにも、チケットを送るから彼の住所を教えてくれないか?」

「わかりました。幸哉は俺の実家の両親に預けてるんです」 

「そうか。君、彼の親戚とか言ったけどあれは―」

 

「違うんじゃないか?」

 

急に霧生の表情が変わる。その変化は先程まで軽い調子で話していたものと違い、目は真っすぐに慶一を見据えていた。

 

「それって、どういう……」

「まず親戚なら顔のどこかしらが似ているはずだし、そもそも彼の両親については何も聞いていないのかい?」

「—っ!それは…」

「そうか、まぁ下らない詮索と思って忘れてくれ。チケットの準備してくる」

 

そう言い残して、霧生は事務室を出ていった。その姿を慶一は黙って見ることしかできなかった。

 

――――――

「起立!気をつけ!礼!」

「ありがとうございました!」

 

終礼が終わり、教師に挨拶を済ませ、生徒たちが帰ろうと教室を出ていき始めた。幸哉も例に漏れず、帰りの準備をしていた、その最中のことであった。 

 

「さっきは……」

「?」

「本当にすみませんでしたぁぁぁあ!」

 

突如、朝、幸哉にちょっかいをかけた男子生徒が幸哉の前で謝罪してきた。

 

「いや、急にどうしたのかよく分からないんだけど……」

「転校したばっかりだってのに迷惑かけました!本当すみませんでしたぁ!」

 

急激な謝罪に面食らったような表情の幸哉。どうにか収拾をつかせるために口を開いた。

 

「いいや、別に迷惑だと思ってないし怒ってもない。だから謝らなくていいんだ」

「ほんとか……許してくれんのか?」

 

問いに対し当然といった表情で答える。

 

「ほんとだよ」

 

そういうと男子生徒は頭を下げた。

 

「本当にありがとな!名前は…今永だっけ」

「ああ、そうだよ。僕は今永幸哉。君は?」

「オレはネズミ…、じゃなくて出水柊太(いずみしゅうた)!これからよろしくな!」

「よろしく、柊太」

ネズミ、もとい柊太はぎょっとした表情を浮かべる。

「てか最初から名前呼びかよ!」

「未来がそうしたらって言ったからね〜」

「伊吹!?」

横から翼が飛び出してきた。

「翼のファンだって聞いてるよ」

「えっ…どうしてそれを」

「本人から聞いた」

 

やはり本人が近くにいるとあまり言いづらいのかもしれない。話題を次に繋ぐ。

 

「僕もライブに行く約束をしてるから、会場で会うかもしれないね」

「ほんとかよ!じゃあ次の公演、チケット取れたらオレに教えてくれよ!一緒にライブ行こうぜ!」

「うん、よろしく」

「それじゃあチケットの当選確認あるから帰るわ。お前も当たるといいな!じゃあな!」

 

そう言って柊太はそそくさと鞄に荷物を詰めて教室を出ていった。

 

「仲良くなれそうでよかった!わたしたちのライブ、来てくれるよね?」

 

翼がこちらを見て聞いてくる。それに当然といったように返事する。

「応援するって決めたからね。見に行くよ」

「やった~♪精一杯頑張るから、目を離さないでね!」

鞄に荷物をしまい、教室を出る。

「翼も頑張って!さよなら!」

「うん!バイバイ!」

手を振る翼を後ろに教室を出ていった。

 

――――――

歩くこと十分程度、自宅へ帰りついた。

雅恵が玄関で出迎えており、手には茶封筒を持っていた。

 

「ただいまです」

「おかえり。あと765プロの方からあんた宛てに手紙が来てたんだよ。開けて確認しといてね」

「わかりました」

 

手洗いを済ませ、制服から部屋着に着替えて自室に戻り、そこで封筒を開いた。

 

『拝啓 今永幸哉様

 

春風が吹き、暖かい季節となっていますがいかがお過ごしですか。

この度は弊社所属のアイドルを助けていただいたことに、深く感謝を申し上げます。

御礼といたしまして、今度765プロライブ劇場にて開催される定期公演のチケットを同封致します。

開催の日まで紛失なされないようお願い申し上げます。

つきましては、ご多忙のところと存じますが、劇場に足を運んでいただき、アイドルたちの輝く姿を是非ともご覧いただければ幸いです。

最後になりますが、これからも765プロのアイドル共々、応援をよろしくお願いいたします。

 

敬具

 

765プロダクション社員一同』

 

封筒の中身として手紙の文面はペン書きで書かれており、チケットが同封される形となっていた。

まさしく招待状という単語がぴったりの手紙である。チケットを眺めていると、幸哉は思わず期待が高まっているのを感じていた。

紛失しないように机の引き出しにチケットをしまい、机の上にノートや問題集を広げ、出された課題を解き始めた。




オリジナル強めの回でしたが、いかがでしたでしょうか。
次回は遂に、ライブ回となります。
書いてる最中に奈緒の誕生日来てた…けど、誕生日をモチーフにした回は今は書けそうにないです。作品内の季節はまだ春なので。
誕生日会書きたいなぁ……
ってことで次回のお話も楽しみにお待ちください!
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