ミリシタのアプデの「ライブ再演」機能、めちゃくちゃ便利。
作業しながらできるの、なかなかイベント回すのに役立ちますね。
というわけでぶった切りの前話から新しく展開していく18話、始まります!
第19話 目覚めの後に
「……う、うぅん…」
目をゆっくり開き、取り巻く状況を自覚する。
未だ筋肉痛で軋む体に力を入れ、上体を起こした。
服装は女装を解かれ、私服を着ていた。どうやら着替えさせられ医務室に搬送されたらしい。
思い起こせば、初めてのライブの後桃子に正体を暴かれ、疲れと極度のストレスによって倒れたことだけは覚えている。
あの一件でライブの成功を最後の最後で台無しにしてしまったことが頭に浮かぶ。
そして、もう一つ。彼女たちに嘘をついたこと。自らの素性を隠して、別の人間である「優希」としてステージに立ち、その後の件で迷惑をかけたことである。
―正直に謝らないと。
その思いが頭をよぎるが、謝罪したところで許してもらえるかどうかはまた別の問題。拒絶され、彼女たちと二度と会えなくなる可能性だってある。それでも自分がやってしまったことの謝罪をしない選択肢は、幸哉の頭になかった。
立ち上がろうとするも足に力が入らない。そうして何もできずにいると、ドアが開いた。
「おはよう。調子は…、悪そうだね」
「霧生さん……」
入ってきたのは霧生であった。騒ぎを聞きつけてやって来たらしい様子である。
「僕は…いったいどうなって……」
「あぁ、昨日の夕方から一晩中寝ていたことになるね」
確かに時計は午前を示しており、普通なら授業を受けている筈の時間であった。
「それと……」
「どうやら正体がバレてしまったみたいだね」
「あぁ……!」
計画が最後で崩壊したにもかかわらず、余裕のある表情であった。それを見た幸哉は霧生と対象的に顔は青く、今にも泣きだしそうな顔をしていた。
「どうしたらいいんですか……噓ついてまでアイドルやるんじゃなかった!」
悲痛な叫びに対してけろりとした表情の霧生。幸哉の方をじっと見て話しかける。
「まあ、起きたことを悔やむのは止そう。君を巻き込んでしまい本当に申し訳ない。ただし」
「なんですか……」
「私は『自分から明かすな』と言っただけで正体を明かすことは最初から計算に入れていたよ。これで計画がパアになったとは思っていない」
「でも僕は噓をついたんです!もう謝っても許してもらえない……みんなを裏切ったんだから!」
最後はほぼ泣きながら叫ぶように思いを吐き捨てた。それを見て霧生はうーんと何か考え込むような素振りを見せていたが、ベッドに横たわり泣きじゃくる幸哉に向かった。
「君は少し背負いすぎている節がある」
「えっ?」
その一言で幸哉の涙が止まる。それを見て霧生が続けて言った。
「謝っても許してもらえない、か…君は少々、思いこみ過ぎではないかな?」
「どういうことですか?」
幸哉の質問に対して霧生が顎に手を当てながら答える。
「我が社のタレントは他人を悪く言うような真似はしない。それは今まで、君が交流してきたからこそわかっているはずだ」
「でも……」
なおも躊躇い続ける幸哉に、霧生はいつものような余裕そうな顔ではなく、至極真面目な表情をしていた。
「幸哉くん」
「動かなきゃ、状況は何一つ変えられないぞ。どうすればいいか、分かるかな?」
「……っ!謝る、ことですよね……」
確かにその通りである。彼女たちは何も知らないし、知らされていない。それを伝えなければ、状況は前に進まないのは明らかだ。ならば真実を打ち明け、詳らかに話す方が最適解ではないか―。
考えが改まろうとする最中、入口のドアが開いた。
「……慶一、さん……」
「あぁ…おはよう」
彼の表情も沈んでいる。罪悪感を背負っているせいか、生気がなく、ぼんやりした顔をしていた。
「ここに来たのはな、これからのことを話そうって思ってさ。とりあえず、みんなで話をしよう」
そう言って誰かに連絡を入れしばらく待った後、ドアが開いて三人ほど部屋に入って来た。
「―ぁ」
その姿には見覚えがあった。以前会話をした風花とこのみ、そして公演で一緒の舞台に立った歌織だった。
二人はまだしも、歌織に至っては「幸哉」としての自分を知らない。そのせいか、歌織もきょとんとした顔をしている。
このみが一歩前に出て、幸哉に声をかけてきた。
「大丈夫?幸哉くん、いえ―
『優希ちゃん』?」
「あ、ぁ…」
瞬間、悟ってしまった。正体を見破られたこと。そして恐ろしい事がやって来るのではないかという恐怖を。
そのことが頭を支配し、目頭から涙がとめどなく溢れ出す。
「うっ…ぐすっ……。ごめんなさい…。噓ついて…、ごめんなさい……!」
罪悪感とこれから来ることの不安に押し潰され、思わず声をあげて泣き出してしまう。それを見た大人たちは狼狽えて何をすればいいかわからない状態だったが、その中で歌織とこのみが幸哉に歩み寄って来てゆっくり話しかけてきた。
「とりあえず落ち着いて。話はそれからにしましょう」
「あなたの話を聞かせて……私たちは責めたりしないから」
三人の優しい表情、仕草、そして声。
それを見聞きして彼女たちに敵意がないことを感じ取ったのか、涙を拭って話し合いのテーブルにつくため、ベッドから立ち上がった。
この場にいた全員が椅子に座り、話し合いを始める。
最初に口を開いたのは歌織だった。
「まずは名前から教えて欲しいな。私は桜守歌織。アイドルをしています」
「……今永幸哉です。本当に、ごめんなさい……」
こんなにも優しい人を騙していた罪悪感を抱え込み、またも涙が溢れ出す。
それを見た風花がハンカチを差し出して来たのでそれを手に取り、涙を拭う。
話はお互いの境遇、そして隠していた理由が主な話題となった。
「幸哉くん、だったかしら。あなたが優希ちゃんで間違いないのよね?」
「……はい」
「ライブは、どうだった?あの場所に立ってみて思ったこと、聞かせて欲しいの」
「……そう、ですね。とってもキラキラしてて、別の世界に立ってるみたいでした」
「それならよかったわ。あの時の思い出は嘘じゃなかったみたいね」
歌織がぱあっと笑顔になる。対象的に幸哉は暗く、鬱屈とした表情をしている。
「でも、なんで女の子の格好をしてたんでしょうか……?」
風花の疑問に対して、霧生があぁといった調子で答えた。
「それは我が社が女性しかアイドルがいないことに起因しており、男性たる彼が違和感なく加入するにはこうする方がいいという次第です」
「なぜそうしたんですか?」
「このようにした方が良いのでは、という結論です。これに関しては彼も了承を」
そう話を続けようとするも突如としてバン、という音が部屋に響き渡った。音の発生源はこのみであり、彼女が机を叩いたことで鳴ったのである。まさに怒り心頭といった表情をしていた。
「なんでこんなことしたの……!他に方法はあったはずじゃない!?」
凄まじい剣幕にこのみ以外の一同がびくりと震えた。特に渦中の人たる幸哉は恐れをなして涙を浮かべる。
「僕のせいです……僕が悪いんだ……。アイドルなんてやろうとしたから……!」
またも泣き出そうとするのを見て、このみが宥める。
「怖がらせてごめんなさいね。私は別室で話をしてくるから、歌織ちゃんたちとお話できる?」
優しい問いかけに、涙ぐみながら黙って頷く。このみは席を立ち、プロデューサー二人をこっちに来るようにと手招きし、部屋を出ていった。部屋には幸哉、風花、歌織の三人が残される。
取り残された雰囲気の中で、次は風花が話を始めた。
「あなたは前に会ったことあるけど、私のこと覚えてる?」
「覚えてます。豊川風花さんですよね」
「うん!覚えてくれてありがとう♪幸哉くん、っていう名前よね。体調の方はどうかしら」
「はい……まだ体が痛くて…。でも……」
「なんで僕のことを、心配するんですか?」
「えっ?」
二人が目を丸くする。そんな彼女たちをよそに俯き、顔を合わせることなく話を始めた。
「僕はみんなに嘘をついて、裏切ったんですよ……なのに……なのに……!」
「なんでそんなに、優しくできるんですか!」
行き場のない感情を、八つ当たりのごとくぶつける。二人は一瞬驚きを見せていた。
「二人とも……、特に桜守さんはこんなことがどうして……!」
できるんだ、と言おうとするも、言葉が続けられずに途切れる。
なおも涙を流す姿を見て、二人は口を開いた。
「……幸哉くん。あなたが噓をついてるとは思ってないの」
「……え?」
「自分のことを隠さずに、正直に話してくれたじゃない」
「こんなにも苦しんでる人を見捨てるなんて、私たちにはできないわ」
「あなたを絶対に責めたりしないから、話してみて」
「……」
目の前の二人―歌織と風花は自分を見て糾弾するどころか、むしろ気遣うような優しさを見せていた。
「……りたいです」
「どうしたの?」
「謝らなきゃ……でも、怖くて勇気が出ないんです」
泣き続ける幸哉を見て、歌織が声をかけた。
「大丈夫。私は騙されたなんて、少しも思ってないから」
「え……?」
「あの時、ステージに立つあなたはとっても立派だったし、皆を騙して引っ掻き回そうなんて見えなかったの」
「しっかり話せば、みんなわかってくれるはず。背負い過ぎる必要はないの。だから……」
「……」
歌織の言葉を、ただ黙って聞いていた。風花も続いて言葉を投げかける。
「私は歌織さんについて来たんだけど……あんなに苦しんでるのを見て、見捨てられないって思ったの」
「そう……ですか」
騙したという負い目を背負った自分に、二人は咎めることなく優しく話しかけてくる。
この人たちなら助けてくれるのではないか。そう思って話しかける。
「僕を、助けてくれるんですか……?」
おずおずと二人に問いかける。その表情を見た歌織と風花は微笑みを浮かべ、優しい声をかける。
「そうね♪困ってる人を見捨てたりできないから……助けるわね。幸哉くんのこと」
「私も歌織さんに賛成。だって……何も悪くないのに、責められるのはかわいそうだと思ったの。だから、味方になるね」
何度目なのか、また涙があふれる。ハンカチで目元を拭い、二人に頭を下げる。
「……ありがとう、ございます……」
「よかった……もう大丈夫そうね」
ようやく泣き止んだ幸哉を見て、二人は笑みを浮かべる。
そんな二人を見て、幸哉も落ち着きを取り戻した。
「それで、これからどうするの?」
風花が聞いてくる。
「取り敢えず、許してくれるかわからないけど皆に謝りに行きます」
「うん、それでいいと思うわ。きっと未来ちゃんたちも待ってるはずだから」
「風花さん、歌織さん……話を聞いてくださってありがとうございます」
歌織も笑顔を浮かべている。
二人に見送られて、部屋を出た。
―――
「やれやれ、ものすごく絞られた」
「今回はプロデューサーに責任がありますからね?なんですか『ルール上の問題はなかった』って」
「そうだろう。そもそも『男子を加入させてはならない』ということは誰も言ってないんだ。そこを突かせてもらった」
「まーたご自慢の屁理屈ですか。相河さんもですけど、特にあなたは反省しなければいけないんですよ!?」
「本当に申し訳ない。
「はぁ……ほんとにそう思ってるのかしら」
「それじゃ仕事に戻らせてもらうよ。反省として今日は働かなければ」
――
歌織と風花、二人と別れたところで部屋から廊下へと出る。
廊下を歩くこのみと三つ編みに眼鏡の女性がこちらに気づく。
「お話、終わったみたいね」
「このみさん、彼は一体誰なんですか?」
眼鏡をかけた女性がこちらに気づく。このみが幸哉の方を見て答えた。
「彼が例の新人の子よ。今永幸哉くん」
眼鏡の女性があぁと納得したような声を出す。
幸哉の方を向き、挨拶をした。
「なるほど……あなたが新人ね。
「よろしくお願いします。この度はご迷惑をおかけしました」
謝罪のために頭を下げると律子はこちらが申し訳ないとばかりに頭を下げてくる。相当振り回されている苦労人であることが伺える。
「こっちこそごめんなさい!プロデューサーに振り回されて……大変だったでしょ?」
「いえ……貴重な経験をさせていただきました」
律子はふっと微笑む。
「私たちの後輩ということになるのね。これからよろしくお願いします」
「はい、って後輩?」
「私もアイドルなの。実はこのみさんたちの先輩って立場なのよね」
「そうそう。律子ちゃんは『765プロオールスターズ』のメンバーよ。私たちミリオンスターズの先輩ね」
思わぬところで先輩と出会ってしまった。ここは後輩として礼儀正しくしなければと思い、頭を下げて挨拶する。
「律子さん、ご迷惑をおかけすると思いますが、これからよろしくお願いします」
「うん、よろしく。一緒にステージに立つのが楽しみね。ところで……」
「
「はい……」
しばらくの間、幸哉の話に律子は相鎚を打ちながら聞いていた。
「なるほど……そういうことなのね」
「変……ですよね。女装でアイドルなんて」
その言葉を聞いた律子は静かに首を横に振る。
「いいえ、変だとは思わないわ。すごく立派に務めあげたみたいね。そんな後輩ができて、むしろ誇らしいわ」
このみも話に加わる。
「私、観客席からあなたのこと見てたの。初めてのステージ、堂々としてて素敵だったわよ♪」
「見てたんですね。でもなんで僕が優希だってわかったんですか?」
「それはね……鈴葉ちゃんが情報を吐いたのよ。写真を見て、どこかで見たことがあると思って」
最初からお見通しだったというわけである。でも正体がわかる人がいるなら、証人になってくれるかもしれない。
協力を仰ぐように、幸哉は口を開いた。
「本当にすみません。巻き込むようで申し訳ないですけど……協力してくれませんか?」
「?」
「実は……」
幸哉の話が続く。その話を二人は頷きながら聞いていた。
「なるほど……騙したことを謝りに行きたい、と」
「それで立ち会ってほしいって言うのね?」
「はい。歌織さんたちは責めないって言ってくれましたけど、一人じゃ不安なので……」
うーん、と考え込む二人。その後に納得したように頷いて答えた。
「よし!その勇気に免じて証人、引き受けましょう」
「えらいわね。そのまま黙って逃げるよりはマシだと思うわ」
このみと律子、二人が快く承諾してくれた。それを見て幸哉も頭を下げる。
「ありがとうございます。あと、ごめんなさい」
再度、感謝と謝罪を述べる。二人は何も言わず、ただ微笑んでいた。
―――
「謝りに行く予定なのよね?」
「はい、そうです。でもまだ未来たちは学校に居るかも……」
時計の方向に目をやると、針はまだ正午を少し回った辺りの時刻を指していた。
「なら、もう今日は帰って休みなさい」
「え?」
このみの提案に、思わず呆けた声が出る。そのまま彼女は続ける。
「歌織ちゃんから聞いたけど、終わった後桃子ちゃんに詰められた時に倒れたみたいね」
「はい……とっても怖かったです」
「疲れが残ってるかもしれないから、少し休んでからまた来た方がいいわ」
確かにあの時、目の前が真っ暗になってからの記憶がない。
おそらく意識不明のまま朝まで眠っていたからか、またライブの疲れで今は体が痛く、心の整理も完璧にはついていない。
一旦帰った方がいいと判断したのだろう。
「そうですね……また明日、来ます」
「それじゃ、お家まで送ってあげるわね。律子ちゃん、社用車使っていい?」
「どうぞ。いってらっしゃい」
―――
劇場の地下駐車場に留めてある一台の白いバンタイプの車に二人は乗り込んだ。
このみが運転席、幸哉は助手席に座る。
「このみさん、運転できますか?」
「できるわよ。免許なら持ってるわ」
そう言って免許証を見せつけてくる。
免許証を戻すと、顔には若干の悔しさをにじませていた。
「こんな見た目だから子供扱いされることが多くてね……」
「あぁ〜……」
背の低さが理由で苦労しているのが伺える。
カーナビに自宅までの案内を入力し、エンジンをかけた。
「お願いします」
「OK。安全に送っていくわよ!」
―――
車を走らせ、相河家の近くに到着する。その場で降ろしてもらい、自宅へとたどり着いた。玄関で何があったかを説明し、その日はすぐ横になって休息をとった。
結局、翌日も学校を欠席し昼頃に目を覚ました。
謝罪のために劇場へと出向くため、準備を始める。
今回は女装抜きで支度を整えた。
『優希』の正体が自分であることを明かし、騙してしまったことへの謝罪をするために『幸哉』のまま出ることにした。
いつものルートで劇場にたどり着き、中に入場する。
そこには歌織、律子、このみといったアイドルと慶一が待っていた。
「ごめんな、お前含めて皆に迷惑をかけてしまって……」
「そうね。幸哉くんは正直に言ってくれたけど……相河くん、あなたも皆に真実を伝える必要があるわ」
「このみさん……本当にすみませんでした」
「相河さん、謝る相手は未来たちですよ」
「行きましょう、プロデューサーさん」
「はい……」
一行の姿は劇場の会議室の扉の前にあった。
「ここに皆を集めた。準備はできてるか?」
「……はい。何があっても受け止めます」
「わかった。行こう」
慶一はそう言って、扉を開ける。
「みんな……お待たせ。連れて来たぞ」
「……こんにちは」
「えっ……?」
「幸哉くんが……なんでここに?」
部屋の中にいた未来をはじめとしたアイドルたちは、皆怪訝そうな表情をしていた。
というわけで19話でした。
あとがきのネタ切れが深刻化しつつある今日このごろ。
次回はシリアス?な場面に突入する予定です。
次のお話もお楽しみにお待ち下さい!