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第1話 さよなら、世界
「行ってきます」
そう言って少年—
顔は俯き、表情は暗い。重い足を引きずるようにして道を歩いていた。
駅に向かい、改札をくぐり、電車に乗る。朝の電車は混雑がひどく、人が無造作に詰め込まれていた。乗り込んで数十分、人の詰め込まれた車両から抜け出し、また歩き出す。
やっとの思いで学校にたどり着き、教室に入る。机の上には「まだ」何もされていなかった。机の中を確かめる。その中には
『死ね』『ウザい』『消えろ』
などの罵詈雑言の書かれた紙が無造作に突っ込まれていた。
その紙をまとめて捨てる。その最中に周りからひそひそと話す声が聞こえた。
「なんで学校来てるんだろうな。嫌なら休めばいいのに」
「マジで何なんだろ」
「助けたら俺らもやられるしな……」
「ほっとこうぜ。関係ないし」
周りにいるクラスメイトが噂をする。傍観しているだけでどうにかしようとする気はないらしい。朝の会が始まり、授業を経て、昼休みになる。
「おい!」
クラスメイトの男子生徒に呼ばれた。
「ちょっとこっち来いや!」
と叫ばれ、腕を掴まれる。そして人気のない場所へ連れ込まれ、殴る、蹴るの暴行。殴った男子生徒には複数の取り巻きがいたが、誰も助ける者はいなかった。
「だっせー!蹴られてんのにやられっぱなしかよ!」
「おい、ちょっとぐらい抵抗してみろ!」
「弱虫!なんとか言ってみろおい!」
「やめてよ……なんでこんなことするんだ……」
「負け犬が偉そうな口きくなよ。うざいからに……決まってんだろ!!」
「ぐぁっ!!」
「次変なことしやがったらこんなんじゃ済まないぞ。聞いてんのか!?」
とどめに横っ腹に一発、悪意を含んだ蹴りをくらった。その後彼らのサンドバッグにされ、殴る、蹴るの攻撃を食らい、ボロボロになった後に解放された。
その後、授業を終え、家に帰宅する。幸哉の家族は彼を見るなり、テストの答案を見せるように言った。答案用紙を一瞥し、彼を否定するような言葉を吐く。
「なんだ?この点数は」
「でも、僕なりに……」
「ふざけるな!普通に努力していたらこんな点数なぞ取れるわけないだろう?」
「80点は取ったのに……今回のテストは平均がいつもより低かったから……」
「言い訳は聞きません。そんな子には今日と明日、ご飯は出しませんからね」
「それじゃあ勉強できなく……」
「ああもううるさい!あんたにそんなこという権利あるの?」
「……」
「だったら早く勉強しなさい。勝手にご飯取ったらお仕置きするから」
「殴られなかっただけ感謝するんだな」
「はい……」
「全く、なんでこんな出来損ないを育てているんだか……」
「本当に甘ったれで困るわね。ただでさえ何もできないのに」
幸哉に対する罵詈雑言は彼がリビングを離れても彼の耳に入っていた。
学校では理不尽に虐げられ、家に帰っても罵詈雑言を浴びせられる毎日。
彼に味方する人物は、このように誰もいなかった。
翌朝、いつものように登校し、いつものように他人の悪意を受ける。その中で一つの結論にたどり着いた。
―――もう、終わりにしよう。
そう思い立つと授業が終わったあと、逃げるように教室を飛び出す。そして、駅の切符売り場で家とは逆方向の行き先の切符を買い、改札を通り、電車に乗り込む。
電車に揺られること数十分、駅に到着する。もう財布には家に帰るための金銭は残っていない。帰ることのできない、文字通りの片道切符だった。
駅を離れて何の気もなしに周りを歩き回る。ぶらぶらと足を進め、橋のかかる大きな川の河川敷に出た。辺りは茜色に染まる夕暮れ時。夕方になって遊びから帰る子供達や、夕飯の買い物から帰る主婦の姿が目に映る。
幸哉はそんな周りの様子を見て、背負ったリュックサックを地面に下ろし、川を背にして立った。
(さよならだ、こんな世界。)
(お父さん、お母さん、ごめんなさい。僕は幸せになれなかった……)
そう考えながら、水面に倒れこむ。水の中に体が沈んでいく。意外にも川の水深が深く、どんどん体が沈んでいく。
もう少しで息が途絶えそうになる。その瞬間、
―大丈夫だ!
今……助けるっ!
そんな声が聞こえた途端に、何者かに水中から引っ張り出された。
全くアイマス要素がないうえ暗すぎる一話でしたが、これからの展開を明るくしたいと考えています。
感想、評価お待ちしています。
※加筆修正を行いました(2/26)