君と奏でる幸せの音   作:賀茂川泰伸

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年始からほんとにミリオンライブはブレーキかけないなとミリシタやりながら思ってました。正月からアイドルがスモック着て踊るとは誰が予想したか。
現在開催中のミリシタの無料十連でshs静香と美也を両引きできたこともまた予想出来ませんでした。
(1月4日のこと)


第4話 劇場(シアター)は出会いのはじまり

奈緒と美奈子と出会い、一緒に夕食を食べた明くる日の朝。

幸哉は恩人たる慶一のマンションの部屋にいた。朝食に買って来たマーガリンの塗られた食パンを(かじ)り、慶一が話を始める。

 

「俺の家族と話し合って決めたんだけど、実家に住まわせることが決まったんだ」

「どうしてですか?」

「昨日も説明したけど、俺はプロデューサーしてて、アイドルたちに付き添うこともあるんだ」

「はい」

「テレビの収録とか撮影で泊まりがけになることもあるんだ」

 

さらに慶一が続ける。

 

「こうなったら家を何日も開けることになる」

「なるほど」

「だからこそ、一人で過ごすのは心配だから、実家に預けることになった」

 

慶一が言うことには、一人にしておくのは幸哉の精神面にいいとはいえないため、誰かと過ごすことが本人も安心できるのではということだった。

しかし、幸哉の表情はやや曇っていた。

慶一が自分を助けてくれたとはいえ、自分を向こうの家族は迎え入れてくれるのか。そこで酷い目に遭ったりしないか。その面が心配事であった。

心配を見透かすように語りかける。

 

「もうすでに話は通してあるんだ。心配しなくていい」

 

そう言って、立ち上がり出かける準備をはじめた。

 

それからというもの、荷物をまとめて実家へと向かい、家族への挨拶をした。驚かれはしたものの、慶一の説明により受け入れが決定した。

 

_____

 

相河家に住み始めて数日、幸哉の生活は安定したものになっていた。食事は三食出るし、理不尽に叩かれることもない。身の安全は保証されるようになっていた。

それでも、幸哉はこれからの生活に少なからず不安を感じていたのである。

もとより、「家族」という単語に少なくとも良い印象を持つことが難しくなっていたからだ。

 

脱出以前の生活は地獄といってもいい状態だった。無関心を貫かれ、失敗をしようものなら罵倒、食事抜きといった虐待。この有様であった。

今こそこんな状態から解放されたものの、心では不安が渦巻いていた。

 

引っ越してから数日経った土曜日、自分にあてがわれた部屋で買ってもらったスマホで動画を見ていた最中、部屋のドアが開く。

 

「幸哉。ちょっと用があるんだけど、いい?」

 

「はい。どうかしましたか?」

 

慶一の母親―雅恵(まさえ)が顔を出した。彼女は幸哉を受け入れてくれた人であり、親代わりとなってくれた人物であった。

 

「ちょっと届けて欲しい物があってね……」

 

そう言いながら持って来たものを差し出した。

鞄にしてはやけに小さい、持ち手のある袋であった。

 

「なんですか?これ」

 

幸哉は質問した。

 

「お弁当だよ。あの子、あんたのことが心配でこないだからうちで暮らしてるでしょ。だからお弁当作ったけどさ、忘れていったんだよ」

 

慶一は幸哉の世話と様子を見るために数日は実家で暮らすと言っていた。話が続く。

 

「放っといたらご飯を疎かにするかもしれないから、届けに行って欲しいんだよ」

 

確かに、忙しいことを理由に食事を摂れないことも芸能関係ならありそうである。成人しても息子を思う母親の鑑である。

 

そんなことを考え、了承するように返事する。

 

「わかりました。でも、芸能関係で勤めてるとしか聞いてなくて……」

 

届けようにも職場の場所がわからなければ届けに行けない。

そんな言葉に答えるように行き先を教えてもらった。

 

「ええと……765プロって事務所のシアター?ってとこで働いてるみたいだよ」

 

場所を教えてもらい、出かける準備のために階下に降りる。

リビングの据え置き電話の近くの棚に背表紙に「重要」と張られているプラスチック製のファイルを見つけた。中身を見てはいけないと思いながらもそれを開いた。

中身は会議に使う資料のようだった。それを流し読みしていると、雅恵が声をかけてきた。

 

「何読んでるの……ってこれ慶一のやつじゃないの。勝手に読んだらダメでしょ」

「でもこれ、会議の日付が今日になってますよ」

 

資料の一部分を指差し、幸哉が伝える。

 

「なんだって!?重要なのになんで忘れたのさ!?」

 

その瞬間、驚いたような声がリビングに響いた。会議資料という重大な物品を置いて行ったことに驚きを隠せていない様子。

 

「だったらもうお弁当と一緒に届けに行っといで!お金はこっちが出すから」

 

資料がどのようなものかはわからないが、置いていたままでは慶一に良からぬことが起きるのは理解出来る。

 

「わかりました……行ってきます!」

 

 

早く早くと催促され、書類と弁当を持たされたリュックに詰め込んで家を出た。

出かける前にスマホで勤め先であるシアターの場所を調べ、目的地を目指して電車に乗るため駅へ急いで足を進めた。

 

 

電車に乗ること三十分程度、勤め先であろうシアターの最寄りに到着した。電車からおりて迷惑にならない程度に急いで小走りになりながらシアターを目指す。

休日ということもあり、人が多く歩いていた。その中をかき分けるように進んでいた最中、

 

「うわっ!」

「きゃあっ!」

 

人にぶつかってしまった。

急いでいると言えど、謝罪をしなければなるまいと幸哉はぶつかった人の方を向いた。

 

ぶつかった人は女性であり、その姿を見た人の殆どが振り向いてしまうほどの美人であった。

腰のあたりまで伸ばした青い紫陽花のような色の髪。

ぱっちりとした水色の瞳に陶器のような色のシミ一つない肌。

着ている服は薄い青の上着と膝近くまで覆うスカートという出で立ちである。

まるでどこかの令嬢を思わせる姿だった。

そんな女性が、ぶつかったときに当たったのか頭をおさえていた。

 

女性に向き直り、謝罪の言葉を述べる。

 

「ごめんなさい。急いでてぶつかってしまって…ケガとかないですか?」

「いえ…、こちらこそ申し訳ございません……」

 

女性の方も謝罪をしてきた。

その姿を見て、幸哉は口を開いた。

 

「どうしても届けないといけないものがあって……ぶつかって本当に申し訳ございません……」

 

二度も謝罪の言葉を口にすると、女性が口を開いた。

 

「急いでいるのであれば……早く行かれた方がよろしいかと」

「そうですね……すみませんでした。それでは」

 

会話を切り、女性と別れて目的地へと向かって歩いていく。

駅を出て歩くこと5分程度、海の近くの公園に着く。公園の緑に囲まれるように大きな長方形の建物が目についた。建物の上部分に人の目を引くように「765 LIVE THEATER」の看板が載せられていた。そこが目的地だと確信し、近づく。

 

入口の赤い大きな扉を開け、中に入った。赤いカーペットに花の立てられたスタンド、アイドルと思しき女の子のポスター、グッズを売っている店にチケットを売るカウンターといった内装であった。

エントランスには物を売るスタッフなどはいなかった。勝手に入るわけにもいかないので、人を待つことにした。

待つこと数分。廊下から従業員と思しき緑の服に赤い髪の女性が姿を見せた。幸哉はその人を呼び止めるように声をかけた。

 

「すみません!」

 

女性が気付き返事を返す。突然、取引先でもアイドルでもない、ただの一般人の少年がやって来たことに驚いている様子。

 

「どうかしましたか?」

 

質問に対し、自分が来た目的を伝える。

 

「ここに相河慶一さんという人はいませんか?」

「相河さん……わかりました!探してきますね!」

 

女性は廊下の向こうへと走っていった。しばらくの間待っていると、女性が幸哉の方へ戻ってきた。

 

「相河さんは今……席を外しているみたいで…、何かご用でしたか?」

 

問いに対して幸哉は背負ったリュックをおろして資料入りのファイルを取り出して言った。

 

「この資料、会議に使うものみたいで……忘れ物を届けに来たんです」

 

来た目的を伝えると、入館証を渡され女性はこちらへどうぞとばかりに歩きながら手招きをした。

廊下を歩いて「控え室」と扉の横に書かれた部屋の前に着く。女性がドアを開けた。

 

「しばらくここで、待っててくれるかな?」

 

そう言って女性は去っていった。

 

控え室に案内された後、暇つぶしにスマホをさわっていると、扉の向こうから声が聞こえてきた。

 

『ふ~っ。今日のレッスンは一段と難しかったわね』

 

『でも、このみ姉さんそんなこと感じないくらいセクシーに決めてたわよ!風花ちゃんはどう思う?』

 

『ええと…、二人ともとても素敵だと思いますよ』

 

どうやら若い女性が三人で会話しているのが壁越しにわかる。

そんな会話が向こう側から聞こえると、控え室の扉が開けられた。

 

「あら?」

 

入ってきた三人組のうちの背の低い、髪を結んだ女の子が幸哉に気付く。

 

「あ、お構いなく……。……人を待ってるだけなので」

 

そう声をかけると、今度は金髪のロングヘアの女性が話しかけてきた。

 

「人を待ってる…ってもしかしてお客さん?良かったら私たちとお話しない?」

 

ウェーブのかかった髪の毛の女性も話に加わる。

 

「待ってる間、少しだけでいいから……ね?」

 

_____

 

部屋に置いてある椅子に入ってきた三人組が座った。

背の低い女の子が話し始めた。

 

「取りあえず、自己紹介からよね。私は馬場(ばば)このみ。ここでアイドルしてるのよ」

 

金髪の女性も続く。

 

「私は百瀬莉緒(ももせりお)!このみ姉さんみたいなセクシーなアイドルになるのが目標なの!」

 

ウェーブヘアの穏やかな表情の女性が最後に自己紹介した。

 

豊川風花(とよかわふうか)です。私もアイドルなの」

 

三人の紹介を聞き、今度は幸哉の番となった。

 

「今永幸哉です。14歳です。よろしくお願いします」

 

自らの自己紹介を終えて、三人に向き直った。

まずはこのみが話しかけてきた。

 

「14歳ねえ……とっても丁寧で礼儀正しいじゃない!ここのアイドルの子にも14歳の子たちがいるのよ」

 

莉緒が続いて来た。

 

「ねえねえ、今日はどうしてここに来たの?」

「どうして…ですか。今日は慶一さんに用事があってここに来たんです」

「慶一さん…ってここで働いてるプロデューサーくんのことよね?」

「その人に忘れ物を届けたくて来ました」

「忘れ物ねえ……気づいて届けに来るなんてえらいわね」

 

このみが称賛する。そんな彼女をそれとなく幸哉は見つめる。小さいのに、しっかりとした話し方をしている。

どこか大人びた彼女に目を向けていると、このみが話しかけて来た。

 

「なぁに?お姉さんのセクシーさに見惚れちゃった?」

「いえ、そうじゃなくて…もしかして、同僚の方ですか?」

 

場が静かになる。もしかしてまずいことを言ったのではないかと身構えた次の瞬間、

 

 

 

「同僚の方ですって!?

 

 

 

 

 

そんな風に言われたのはじめてだわ!!」

 

このみが色めきだった声を出した。自慢気に胸を張っている。

 

「やっぱりわかる子にはわかるのね!私のオトナの雰囲気に!!」

 

嬉しそうな素振りを見せる、そんな状態に困惑する幸哉。風花が横からフォローした。

 

「このみさん、背が低くてよく子供に間違えられてるから…だから嬉しかったと思うの」

「まさか初対面で姉さんがオトナだってわかるなんて……キミすごいのね!」

 

莉緒も会話に入った。興味を持って話しかけてくれている。

 

「そんなことがあるんですね……」

「そうよ!このスタイルのせいで子供に間違えられちゃうの!私24歳なのに!」

 

自らを「お姉さん」と称するようにどうやらもう成人した大人だったようだ。

そんな会話を続けているうちに、さっきの緑制服の女性がやってきた。

 

「あの~、相河さんが帰ってきましたよ!」

「あら美咲ちゃん!お仕事ご苦労様♪」

 

美咲とよばれた女性は莉緒に声をかけられる。

 

「皆さん何されてたんですか?」

 

美咲が聞いてくる。

「さっきまで幸哉くんとお話してたのよ。美咲ちゃんもお仕事お疲れ様。とりあえず、美咲ちゃんも自己紹介してみたら?」

 

このみが勧めてきた。それを聞いて美咲も自己紹介をした。

 

「私も自己紹介しなきゃ…というわけで私は青羽美咲(あおばみさき)といいます!765プロライブシアターの事務員をしてます!」

 

溌剌とした声で自己紹介を終える美咲。それを聞いて幸哉も自己紹介し、美咲に質問する。

 

「青羽さん、慶一さんは今どこにいますか?」

「事務室にいますよ。案内しますね」

 

自分について来るように美咲が言う。

それに従って、三人と別れて美咲の後を追った。

 

_____

 

 

「ここが事務室ですよ」

 

そう案内され、三回ほど美咲がドアをノックした。

 

「相河さ~ん!いらっしゃいますか~!」

 

朗々とした声で在室しているかどうかを確認し、返事がドアの向こうから返ってきた。

 

「はい!いますよ!」

 

返事を確認し、ドアを開ける。

 

書類の入った棚やパソコンの置かれた机、ホワイトボードといったオフィスのような内装であった。

そこでスーツをきた慶一ともう一人のスーツの青年が座って仕事をしていた。

 

「幸哉!どうしてここが分かったんだ?」

 

突然の来訪に驚いた表情を見せる慶一。それに対して幸哉は答える。

 

「雅恵さんに聞きました。お弁当と……それに書類を忘れたみたいですね。それを届けに来ました。」

 

リュックから弁当入りのランチバッグと書類の入ったファイルを手渡した。渡された慶一の表情が驚きつつもほっとしているのが分かる。

 

「あぁ!どうりでどこ探してもなかったんだ!!本当助かったよ。ありがとう!」

 

そのやり取りを見たもう一人のスーツ男が慶一に声をかけた。

 

「重要資料を忘れ物にするとは……相河。今後は気を付けるようにしろ」

 

「すみません……氷室(ひむろ)さん……」

 

氷室と呼ばれた男は幸哉へ視線を移した。二人の目線が合う。

 

「……」

「……っ」

 

しかし氷室は興味がないように視線を外し、背を向けた。

 

「午後からは会議だ。行くぞ」

 

「……、はい!」

 

氷室について行って慶一は事務室を出ていった。

 

その寸前で振り向いて、

 

「忘れ物届けてくれてありがとう!じゃあ行ってくる!!」

 

と感謝を述べて急いで事務室から出ていった。

 

 

_____

 

慶一たちが事務室から出て行って、部屋は幸哉と美咲の二人だけになった。

 

「これから、どうするの?」

 

美咲の質問に対して

 

「取りあえず、用事は済んだので帰る予定です」

 

と答える。

「じゃあ、入口まで送って行きますね!」

 

美咲と連れ立ってエントランスへと歩く最中、誰かに肩に手を置かれた。

 

置いた人を確かめようと振り向く。

振り向いた目の前には、以前食事を共にした横山奈緒の姿だった。

肩から手を放し、こちらを見る。

 

「久しぶりやな~」

「よっ、横山さん!?」

「そんなびっくりせんでええやろ!?なんかこっちが悪いみたいやん!?」

「奈緒ちゃん、驚かせちゃダメですよ」

「えへへ~ごめんなさ~い」

 

美咲が奈緒をたしなめ、奈緒が幸哉の方を見て言った。

 

「今日ここに来たんはなんでなん?」

 

質問を繰り出した。

 

「慶一さんが忘れ物したから来ました」

「そうか〜。プロデューサーさんもおっちょこちょいやな。これからどないするん?」

「これから家に帰るつもりです」

 

帰宅の意を告げると、奈緒が驚いた表情を見せた。

 

「えぇ!?もう帰るん!?」

「はい。用事が終わったので帰ります」

「いやいや、もうちょっと遊んでったらええやん」

「でも、皆さん忙しいでしょうから」

「えぇ〜」

 

帰ろうとする幸哉とまだまだ話し足りない奈緒。両者の話は平行線を辿っていた。

奈緒がふっと何かを思いついた表情になる。

 

「せや!」

「……?」

 

幸哉の表情が疑問を持ったようなものになり、奈緒が口を開いた。

 

「だったら、昼ご飯ここで食べへん?」

「え?」

「帰って外食するよりここで食べたほうが安上がりやで?」

 

奈緒が追い打ちをかけるような言葉を放つ。

 

「美奈子がちょうど作ってるとこやねん。食べたいやろ?」

「……っ」

 

幸哉は迷っていた。迷惑をかけまいとすぐに帰ろうとしていたが、またあのチャーハンのような料理を食べたいと思っていたのも事実であった。

 

心の中で選択を迷っていると

 

「どないするん?」

 

と声をかけてきた。

迷いながらも意思を固め、

 

「それじゃあ…、お言葉に甘えて……食べます」

 

そう答えると待ってましたとばかりに

 

「そうやな!ほな一緒に昼ご飯食べるで!美咲さん、それじゃあ幸哉連れて行きますんで!」

「は~い!わかりました!」

 

奈緒が手を引いて自分の方へ誘導する。

 

「こっちやで!ついて来てな!」

 

かくして、劇場(シアター)で昼食を食べることが決定した。




だいぶん時間かかった上に長くなったので食事シーンは次回に回します。
この作品に感想をくれたりやお気に入りに入れてくださった人がいました。手を合わせて拝むくらい感謝しております。
次回のお話ではアイドルたちが多数登場する回になります。
次回も楽しみに待っていてください!
※(2/8)大筋に関わらない範囲で修正、オリジナル人物の名前を追加いたしました。
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