アイドルグランプリ実装されましたが、ゲームの難易度的にそこそこの難しさがあると思います。
初代アイマス(ゲーセンの筐体)での要素がスマホに移植されるって事実が滅茶苦茶技術の発展を感じてます。
あとミリシタ本編だとプロデューサーの一人称が「俺」と男性のみだったのがアイグラでは女性Pが選択できるのもすごいし、性別で台詞に差異があるのも作りこみすごいと思います。
それでは、第6話をどうぞ!
トレーナーの号令を皮切りに、皆がウォーミングアップをはじめる。その様子を見て、トレーナーが声をかけた。
「準備体操は大事だからね!万一怪我したらステージに立てなくなるから、しっかりやるように!」
皆が柔軟、ストレッチを行う中でトレーナーが幸哉の方を見る。
「こうして準備体操してからレッスンに臨んでるの。何もしなかったら怪我のリスクがあるからね」
「そう……なんですね」
「体育だと授業前に必ずラジオ体操で体を動かすでしょ?」
「なるほど……」
トレーナーの言葉に、思わず感心する。佐竹飯店で初めて会ったときの奈緒の言う通り、レッスンはアイドルにおいてとても重要なものであると、目の前の風景から理解できる。現にふざけたり、手を抜いていたりする者は見当たらない。
その様を見て、幸哉がぽつりとつぶやく。
「すごいですね、みんな」
「もうすぐここで定期公演があるの。だからみんな最高のステージにしようって真剣になってる」
「定期公演?」
「この765プロライブシアターは、765の事務所のアイドルたちが公演するためにできたの。アイドルはここで定期的にライブしてるのよ」
「専用のステージを持ってるってことですね」
「そうだ、君も準備体操してみない?」
「えっ?僕ですか?」
会話の最中、邪魔にならないように場所を移動しようとすると、トレーナーが誘いをかける。それに乗っかるように未来がなぜか静香に話を振った。
「一緒にやろうよ!ねっ、静香ちゃん!」
「えぇ!?何言ってるのよ未来!?」
「幸哉くんと一緒にやってみたいな〜。いいよね静香ちゃん?」
「翼まで!?」
翼も話に加わって来た。
「二人とも……最上さん、いいかな?」
トレーナーが静香に頼み込んだ。依頼された静香はしぶしぶといった表情で了承した。
「二人が言うなら…、準備体操だけよ。他の時は私たちの邪魔はしないで」
幸哉の方を向き、言う。
「邪魔はしないよ。約束する」
「そう、わかったわ」
またもや冷淡な態度。もしかして自分のことを嫌っているのかと不安になる。
心中を悟られないように顔を上げてアイドルたちの横に間隔を空けて並ぶ。
トレーナーがラジカセをセットし、再生ボタンを押す。
体育の授業の準備運動でお馴染みの体操の音楽である。
ラジカセから流れる指示に従い、腕を回したり、屈伸、伸脚といったりの動作を一定の回数繰り返す。
準備体操を終えると、息は切れて足も震えていた。
そんな様子の幸哉を桃子が見ていた。
「幸哉さん、運動したらどう?」
「は…、はは、そうだね」
「あらら、運動苦手なのかな」
年下にまで指摘されてしまうほどの体力不足。改善するをしかと誓い、体操を終えたため再び移動する。
_______
トレーナーがアイドルたちに指示を出す。
「今日はダンスレッスンを行います。今回は全体曲を重点的に行うので、フォーメーションや振り付けを意識してのぞむようにしましょう」
「「はい!」」
返事を返した後、アイドルたちが相談のため一旦離れていった。
幸哉とトレーナーの二人が会話を交わしていた。
「そういえば、名前を聞いてなかったね」
「名前ですか……今永幸哉です」
「なるほど……今永くん。今日は見学させてもらっているんだったね」
「はい。春日さんたちが見に来て欲しいというから来ました」
「そうなの?」
「そうですけど…、もしかして、邪魔になってましたか?」
トレーナーは首を横に振る。
「ううん、そんなこと思ってない。むしろ彼女たちにプラスになると思ってる」
「プラス?」
「そう。どんなに歌やダンスが上手くても、見る人がいないと意味がないの。だからこそ君のような人の目が必要になってくるわけ」
「アイドルは見てくれる人、つまりファンがいないといけないってことですね」
「そういうこと。だから見ててあげてね」
しばらく間が空いて、アイドルたちが戻ってくる。
「さて、レッスン始めましょう。次の公演でする曲は何ですか?」
「はい!」
「それじゃあ田中さん、答えてください」
「『Brand New Theater!』が最初の曲です」
「やっぱり田中さんはよく分かっているね」
琴葉が手を挙げて質問に答える。顔から滲み出る真面目さは、性格にも表れている。
「はい」
静香が手を挙げる。
「ここにいるメンバーのソロも公演の曲ですか?」
質問に対し、トレーナーはジャージのポケットから紙を取り出して、その紙を静香に渡した。
「プロデューサーさんたちから今回の公演のセトリをもらっているから、まずはそこを見て」
渡された紙を静香が見ている最中、幸哉は質問をした。
「質問ですが、セトリって何ですか?」
その疑問には桃子が答える。
「セトリっていうのはね、ライブでやる曲のことだよ」
発言を琴葉が引き継いだ。
「簡単に言えば、運動会のプログラムをライブ版にしたもの…、っていえばわかってもらえると思うの」
「なるほど……」
思わずセトリに興味を抱き、紙に視線を移したが、それに気づいたのか
「見せないわよ」
と一言。
「もー、そんなにピリピリしないでいいのに」
「見学するだけと言ったはずです。余計なことされたくありません」
恵美がたしなめようとするも、毅然とした対応の静香。
何か気に障ることでもしたのか、と不安になってしまう対応。
その様子を知ってか知らずか、トレーナーは切り替えようと発言する。
「それじゃあ、曲の動きの確認からはじめましょう。まずは春日さんたちから」
「「はい!」」
レッスンルームに備え付けられた大きな鏡の前に未来、静香、翼、桃子の四人が立った。
後ろでは
トレーナーが音楽を再生し、曲が始まった。
『とびらあけて さあ 行こうよ』
『私たちの Brand New Theater Live!』
イントロが流れ、未来が溌剌とした歌声で歌いはじめた。
歌い出しと同時に、四人が動きだす。
フォーメーションを変え、歌唱を静香や翼、桃子にパートを代わりながら曲は進んでいく。サビの部分に入り、四人の手が重なる。
『サンキュー!』『ウェルカム!』『ドリーミング!』
『ウィーアー ミリオンスターズ!』
サビに突入し、アイドルたちの動きはさらに大きくなる。
一挙手一投足がきらきらに輝いて見える。
息の合ったパフォーマンス、人々を惹きつけるような歌声、そして振り付け。その姿に幸哉は目を離すことができず、釘付けになっていた。
そして曲は終盤にさしかかる。
『きらめく出会い きらめく世界』
『私たちの Brand New Theater Live!』
曲のアウトロが終わり、ポーズをとり、アイドルたちの動きが止まる。
その瞬間、思わず拍手をした。幸哉の称賛に気づいたのか、それに応えるように未来が手を振った。
「さあ、次は田中さんたちの番」
トレーナーが伝え、未来たちは後ろに下がる。
琴葉、恵美、エレナが前に出る。
曲が流れ、歌い出しは琴葉が担った。
未来とは違う伸びやかな声であり、違いを感じさせる。
歌唱力に優れた琴葉、惹きつけられるビジュアルの恵美、ダンスで躍動するエレナ、といった具合にそれぞれが違う自身の持ち味を存分に発揮していた。
そして曲を終え、琴葉たちが戻ってきた。
「どうだったかな。まだ、練習している段階だけどね」
汗を拭きながら聞き、それに未来が感想を述べ、
「すごく良かったです!琴葉ちゃんみたいに綺麗に踊ったり歌ったりしたいです!」
「ありがとう。でも、未来には未来の良さがあると思うから……君はどう思う?」
幸哉の方を向く。
「はっ…はい!田中さんのパフォーマンス、良かったと思います。これからも頑張ってください…!」
「ありがとう。その言葉が一番うれしいな」
琴葉が微笑む。それを聞いた翼が若干不満そうにしていた。
「琴葉さんばっかりずる〜い!わたしのこともほめてよ〜っ!」
その言葉を皮切りに、
「ねえどうだった!?アタシたちのパフォーマンス!」
「私の歌とかダンスも見てくれたよね!?」
「ちょっと!桃子の方はどうなの!?」
「ワタシの方も見てほしいヨ〜!」
一斉に感想を求める声がなだれ込み、困ったような表情になる。
トレーナーも困ったのか、感想を求めてくる。
「今永くん、言ってあげてくださいね」
こちらを見るトレーナー。
「う…、ええと、皆すごいパフォーマンスだったと思う」
恥ずかしそうに、しかし真っすぐアイドルたちに感想を伝えた。それを彼女たちは嬉しそうに笑顔を見せながら、口々に感謝を述べる。
「やった〜!見てくれてありがとう!」
「すっごい集中して見てたね〜。ありがとね!」
「どう?桃子のこと、少しは見直したでしょ?」
「嬉しいな〜。これからも、応援してね?」
「あははっ……喜んでくれてよかった……」
好意的な反応に思わず顔が綻ぶ。
「あれ?今の顔、いい感じじゃん!」
恵美が服の袖をちょいとつまみ、幸哉に備え付けの鏡の方を向けさせる。
大きな鏡には、はにかんだような表情が映っていた。
アイドルたちが楽しそうに歌い、踊る姿を見て、思わず楽しくなっていた。
「私たちの歌が心に響いたのかも」
「えっ?そんな顔になってました?」
「なってたなってた」
「ええっ?」
「幸哉くん、私たちのことすごいキラキラした目で見てたの、見ててわかったもん」
「それくらい楽しんでくれたってことかな」
そんな会話を締めるようにトレーナーが口を開く。
「それならよかった。おしゃべりはここでおしまい!次の曲行きましょう!」
「「はい!」」
____
この後もレッスンを見学させてもらい、気づけば日が傾きかけていた。
トレーナーも察したのか、終了を宣言した。
「今日はこれで終了します。復習を忘れないようにしてくださいね」
「「ありがとうございました!」」
各自がレッスンルームから退出し、着替えを済ませ帰り支度を始める。幸哉も置いている荷物を持って帰ろうとしたところ、未来に呼び止められる。
「幸哉くん、まだ時間ある?」
「どうしたの?春日さん」
未来は手に持ったスマホを差し出してくる。
「連絡先交換しよっ!」
「えぇ!?」
今日初めて会った相手から連絡先交換の誘い。そんな対応に幸哉は面食らう。
「僕たち、今日会ったばっかりだし…いきなりそんな……」
「大丈夫だよ!悪い人じゃないってわかったから」
「うん……まあ……」
自分でも彼女たちの気分を害することはしていない、と思っていると、
「それいいじゃん!」
と横から恵美たちが姿を現す。同じようにスマホを差し出してきた。
「所さんまで…、どうしたんですか?」
「今日一日、一緒に過ごして楽しかったよね」
「はい」
「そういうこと。一緒にご飯食べたり、レッスン一緒になったよね」
「そうですけど……」
「だから、もっと仲良くなりたいから、連絡先交換しようよ」
「アタシたち、『友達』でしょ?」
友達。その言葉に幸哉はこれまでに感じたことのないものを抱いた。
周りに助けてくれる人もおらず、親しい人もいなかった。
目の前の女性は自分を受け入れてくれようとしている。
その言葉を信じ、スマホを差し出す。
「いいですよ。交換しましょう」
「ありがと!」
「春日さんも交換…、しない?」
「うん!」
「ねえ〜私とも交換しようよ〜」
「伊吹さんまで!?」
幸哉の周りに未来たちが集まってくる。
「もっと幸哉くんのことが知りたい……私もいいかな?」
「ワタシもお話したいヨ〜!」
「しょうがないから桃子のもあげる」
「みんな……ありがとう!」
思わず心が温かくなる。
幸哉も差し出して、連絡先交換が成立した。
一気に六人もの連絡先を登録した後、未来が思い出したように口を開く。
「あれ?静香ちゃんは?」
「まだ自主練するって」
思えば、今日一日、あまり静香と話すことができなかった。
名前も呼ばなかったし、対応もどこか冷淡だった。
「また今度交換してもらえばいいよ」
恵美が言った。今度会えたらまた違う表情を見せてくれるのか。
そんなことを考え、帰り支度を済ませ、劇場のエントランスにたどり着いた。
アイドルたちも見送りのために集まった。
「今日はありがとう。また今度のライブ、見に来るから」
「うん!楽しみに待ってるよ!」
「それじゃあ、もう帰るよ。じゃあまた来るから!」
「うん!バイバイ!」
未来たちが手を振って見送る。その姿が見えなくなるまで彼女たちは別れの挨拶を述べた。その言葉を幸哉は一字一句聞き逃さなかった。
エントランスのドアを開けると、雲一つない夕方の茜空が広がっていた。
今回の話はいかがでしたでしょうか。今回歌詞を使用したことで楽曲コードは入れましたが、もしもハーメルンの規約に抵触してたらご指摘をお願いします。
これからも質が高いと思ってもらえる作品を目指して執筆していきますので、感想、お気に入りお待ちしています。