陰謀論者系エセお嬢様ダンジョン配信者、世界の真実を暴く。   作:メーイソウマン

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陰謀論者系エセお嬢様配信者

 ダンジョン。数年前突如として世界中に入口が現れ世界を恐怖のズンドコに陥れた諸悪の根源。

 内部は魔物、あるいはモンスターなどと呼ばれる魑魅魍魎跋扈する不思議空間。

 

 非日常溢れる剣と魔法の世界は、くたびれた現代人たちを強く惹きつけた。だからこそ急激に勢いを増し、確固たる地位を築いた娯楽こそが『ダンジョン配信』だろう。

 

 使う魔法や戦闘スタイル、ダンジョンに挑む装備に本人の容姿。本人の内面というスパイスを加えて完成するのがダンジョン配信者だ。しかし、確固たる地位を築くと共にダンジョン配信者は一瞬にして飽和した。かつてVtuberがそうであったように、より安全に、より手軽に始められる土壌が整うにつれ人口はぶくぶくと膨れ上がり、ついには十万人を超えるとも言われる時代となった。

 

 攻略、料理、景観、ASMR、魅せ、解説、DIY……ひとえに配信者と言っても戦場は星の数ほどある。その中でどこを選び、どう戦っていくか。この大ダンジョン配信時代を生き抜いていくための生存戦略である。

 かくいう私はといえば……

 

 

「ククク……世界中に無数に発生したダンジョン……これは旧体制を破壊せんとする反乱軍(レジスタンス)の仕業!!世界政府やフリーメイソンの支配は終わりを告げ!!新たなる秩序が築かれるのですわーー!!」

 

“おお”

“また言ってるよこの子……”

“下手に視聴者獲得しちゃったから引くに引けないの笑う”

“ちくわ大明神”

“アルミホイル巻け”

“なんだ今の”

 

《陰謀論者系エセお嬢様配信者》平たく言えばバカだ。なまじこれで配信の収益化が通ってしまったばっかりに引くに引けなくなってしまった。視聴者もそれは理解していると思うし、その上での『キツさ』を楽しんでいるのは理解しているし私もそこそこ楽しんでいる。が、たまに()()()()が釣られちゃうこともあって割と困る。

 

 ただ、ふと思うことがある。大怪我や死亡事故なんかの『放送事故』が頻発するこのジャンルが野放しにされている現状、おかしくない?ホットなジャンル故に登録者数を伸ばしやすくはあるものの、果たして命を賭けるほどの価値があるだろうか。いやない。()()()()()()()()()なら私はこんなことしない。

 法や倫理はダンジョンが絡んだ途端にバカになる。それはもう3の倍数でバカになる彼のように。魔物とてダンジョン内に生息する原生生物だ。これを殺めてエンタメとして消費することに異を唱える人間が極端に少ないのもまた恐ろしい。

 

 

 とどのつまり、この世界は狂っている。おかしくなった世界をおかしいと思っている人間がいないのだ。

 政府の陰謀か、世界を裏で操る闇の組織か。それとも下等生物(にんげん)の愚かさを嗤う理外の怪物か。どちらにせよ、こんなことを考えちゃう私自身にも()()()()の気があるのかもしれない。けれどもし、そんなものが実在するのであれば。それを解き明かした暁にはきっと面白いことになる。だから私は今日もお嬢様に扮し、ダンジョン下層へと潜るのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、ぼちぼち上がりますか……」

 

 今日のタスクは現在このダンジョンで到達されている最下層の調査及びマッピング……する私を映しながらの雑談配信だ。最下層で配信している人間は物珍しいため、そこそこ新規も流入してきた。配信的に美味しいハプニングこそなかったものの、探索の成果や数字的に言えばホクホクの結果と言っていいだろう。

 

「しっかし、不気味なほど静かですわね……強力な魔物が潜んでいると見て間違いはなさそう……有象無象の魔物が息を潜めているあたり攻撃的な可能性あり……縄張り意識が強いのでしょうか?うーーん……」

 

“また始まったぞ”

“いつものテンション感で最下層ソロアタックかけられても困る”

“自分を陰謀論者お嬢様だと思い込んでる一般人”

“逸般人定期”

“言いたい放題で草”

“下層攻略中は滅多にコメント見ないしアーカイブも見ないからヘーキヘーキ”

“下層誰か他にいんの?”

“配信中のは誰もいないぞ”

 

 

 配信も長引いてきたし、危険な目に遭う前に退散しよう。ここまで静まり返っているとなるとボスフロアの可能性大だ。出くわす前に帰るが吉と見て小走りで階層移動用のテレポーターへと向かう。

 

「グオオオオオッッッッッ!!!!」

 

 そうして無心でマラソンを続け、テレポーターまであと少しといったところで、腹の底から揺さぶられるような咆哮が響いた。

 

「……チッ確認に行きますわ」

 

“舌打ち?”

“舌打ちしたよね今”

“お嬢様とは(哲学)”

“お嬢の配信は初めてか?力抜けよ”

“こういうとこ含めて味があるんだよなぁ……”

“本性が隠しきれてないんよ”

 

「見てるぞコメント」

 

“ヒェッ”

“圧やばくて笑う”

“ゾクゾクしますね”

“変態混ざってるぞ”

 

 言いたい放題のリスナー共に軽く圧をかけて咆哮の元へと急ぐ。これが魔物同士の小競り合いなら無視して帰ればいいが場所次第ではテレポーター付近の安全確保を目的として討伐が必要になるかもしれない。何より降りてきた人が襲われてる可能性が一番怖い。リスキルは害悪戦法の基本、偶発的にその状況に陥り成績トップクラスのチームが全滅しましたなんてこともあったぐらいだ。私とて単独で最下層をほっつき歩ける程度の実力はある。足手まといにはならないだろう。

 

「……急ぎますわ」

 

 万が一の状況に備え、私はさらに足に力を込めるのだった。

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