「よし。捕食者で街を回収してっと。創造神で森を再建っと。短い間だけど、お世話になりました。まったく。これぐらいリンでも出来るだろー」
蒼銀の長髪に、金色の瞳の容姿をしたリムルが呆れながら作業をこなしてく。
納得いかないという表情をしたまま。
リン(義光)に文句を言う。
「だってさ。兄貴にやってもらった方が、負担がそんなにかからなくてエコなんだよ」
「エコって……まぁ確かに魔素しか使わない作業多いから別にいいんだけどさ。それでもだよ。あっちの姿気に入ってたのに」
むすっとジト目でリンの方を見られ、思わずリンもバツが悪くなったのか慌てて話す。
「まぁ、まぁ。みんなの名付けが終わったらいくらでもどんな姿で居ていいからさ」
「ほんとか?!いや、まぁこの姿もかわいいから別に嫌いじゃないんだけどね。
確かに、リンや大賢者が言うように、こっちの方が負担が軽くて楽かもしれない」
「よかった。そっちの方が魔素の消費もエコだし。
大賢者は合理的なのに関しては即OKしてくれるからありがたいわ」
「珍しくリンと大賢者の意見が一致したもんな。
俺の意見は?って感じだけど。
こちらの方がエコです。って一刀両断されちゃったし。
何がエコなのかよく分からないけど
言わんとすることは少し分かったような気がするよ。
よし。気合入れてあとは名付け作業だ」
リンに名付けが終わったら好きな姿で居てもいいと言われたリムルは少し機嫌をよくして、およそ500人のゴブリンたちを名付けて行く。
「さすがに疲れた。
スリープしないように調節したけど、ほんとギリギリじゃねぇか。」
「お疲れ様!移住先まで移動できたらお祝いしようぜ」
「お。いいねそれ」
ヘトヘトになりながらも少し休んで。
リムル達は新天地を目指したのだった。
■
数日後。
新天地に辿り着いて、色々住処など調節できたリムルはあることに気付いた。
「そういや、サリエルとミシェルはどこに?姿見えないなって。」
リムルがふと、思い出したように大賢者に話す。
そういえば彼等が姿を見せないようになって近しいのだ。
気になって尋ねる。
《告。個体名リン=テンペストの影の中に入ってます》
「そっか。それなら一応スキルを使っているっていう扱いになるのか。便利だね」
姿が見えない=スキルに戻ってる=またリンに負担がかかる。
この図がすっかりできていて、
思わずリンを心配したリムルだが、もうあまり心配する必要はないみたいだ。
リンの影に入ってたミシェルが、リムルに呼ばれたのもあって話してくる。
「こうやって、
リムルとも好きに会話できるから
もし用事があったらリンだけじゃなくて
リムルも好きに呼んでくれて構わないからね」
「わぁ!?」
リムルの背後に青髪赤目の容姿をしたミシェルが現れて思わず驚く。
「便利でしょ」
「というか、それでいいの?もっと自由にしてくれてていいんだよ」
「僕はわりと自由にあちこち探索させて貰ってるよ。
でもサリエルはリンが居るとあまり自由に行動できないから」
どこか寂しそうにミシェルが話す。
「あー……リンが魅了にかかってしまうからか」
サリエルに付き合ってミシェルも影の中に居ると。
あんまり堂々とは言わないけど、夫婦だもんねとリムルは納得する。
「うん。サリエルも性別を変えたら問題ないみたいだけど、
キャラじゃないみたいで。引きこもりがちなんだよね。
ちょっと大賢者にかけあって調節してもらってるところ」
「調節?というかキャラじゃないってどういうこと?」
「サリエルの性質が少し厄介で。
サリエルのリンへの魅了を解除にするには、
彼の天族としての力を封印しないといけなくて」
「うんうん」
「サリエルの場合、天族の力を完全に封印してしまうと、
性別が変わる他に、彼の容姿が赤髪赤目から金髪青目に変わっちゃうんだよね。
それが嫌みたいで。どうにか容姿だけでも元の赤髪赤目に保てないかって。
それで少しでも元気になってくれたらって」
その言葉に、リムルはなるほどと納得する。
「最初からあんまり表に出てきたがるタイプじゃなかったもんねサリエル。
それで余計でてこなくなったら確かに心配だ。
性別を自由に変えられるのって、結構すごいことだと思うんだけど。
嫌いな容姿になっちゃうじゃ可哀そうか。
大賢者、サリエルが元の姿のまま性別を変えるのはできそうなのか?」
リムルがそう聞くと大賢者から返事が返ってきた。
《告。個体名リン=テンペストとかけあっていますが、
サリエルが天族として力の調整ができたら
元の容姿のままま性別を変えられるのではと話していました。
『天族』という概念が現在理解できないため、
私は何もすることができませんがリン=テンペスト曰く、
天族の力を少量しか使わないのは至難の業のようです》
「……そうか。今後の課題だな。」
「僕も天族だったらなぁと思う時があるのはこれだね。
僕も天族じゃないから、助けてあげることができなくて。いだっ」
するとサリエルが影から出てきてミシェルの頬をつねる。
「人の心配より自分の心配しろ。俺は俺で大丈夫だから。
これでも前よりかは負担が軽くなったんだからな。
俺が自分の容姿を維持できないのは俺のせいでいいから」
ほぼ別人。サリエルだと言われないと分からないぐらい。
金髪青目の少女がむすっとしながらダルそうに話す。
「うおお、びっくりするぐらい別人」
あまりの違いっぷりに驚く。
「俺のこれは母親似なんだとよ。髪が赤いのも、金髪なのも。
どっちも母親からの遺伝。ちえっ。
この姿を見せるならリムルをいきなり驚かせたかったのにミシェルのお人好し」
「だって心配だったんだよ。食事だってとれるのに参加しないから」
「だからってミシェルまで俺に付き合わなくていいだろ」
「だって……」
そこで、ミシェルもサリエルも魔物と冒険者の気配に気づく。
「ん?」
《告。ここから少し離れた場所に巨大妖蟻(ジャイアントアント)の群を確認。
冒険者の数を4人確認しました》
大賢者もリムルに警告する。
「これ。僕が張った結界があるから町は大丈夫だと思うけど。
「
冒険者が自分達に襲い掛かってきたモンスターを他の冒険者達に押し付けていく行為。
元ネタはダンまちである。サリエルが驚いてツッコミを入れる。
「だって。近くにゴブタ達が居るから心配で。
しかもよく見たらリンも居るし。ちょっと行ってくる」
「まってって。俺も行く。リンが居るなら俺もすぐ駆けつけられる」
「結局みんな行くじゃんか。仕方ないなー」
リムルもミシェルの後を追うように姿を消す。
サリエルも後を追う。
■
そうして駆けつけた時には。
「こういうのって柄じゃないんだけど。ほっとけないんだよね」
シズが倒し損ねた巨大妖蟻(ジャイアントアント)をリンが風魔法を使って切り裂いていた。
「(間に合わなかったらどうなってたんだこれ。
下手したらこの場でイフリートこんにちはとか?
やってられねー。そうしたら捕食者でイフリートを吸収するしかないのか。
そういやあの時占いとか、はやめにベスターのフラグが立ってしまって
あの店でできなかったしな。
俺らには見知った顔だけど、兄貴は誰君って感じだろうし)」
でも、シズは間違いなくリムルにとってこの世界で初めて見る同郷人だ。
シズだって魔王レオン・クロムウェルに召喚された転移者なのだから。
「シズさん、大丈夫?」
イフリートが暴走しそうで、抑え込むのにやっとなのだろう。
座り込んだシズを心配して少女――エレンがかけつけた。
「すごい……突風だったな」
「あ、ありがとうございました。(こんなところに人?それも一人で……怪しすぎるだろって思ったら魔物と一緒に居るのか。人間のフリしてる魔人かなにか、か?襲われたら対処できねぇぞ)」
カバルがリンに礼を言いながらも、
リンがあまりに得体が知れない少年すぎて警戒が解けない様子だった。
「リン様ー!大丈夫ですか!」
「これぐらいは全然。相手魔物だし。
それよりもそこの女の人の方がちょっとやばい状態かな」
「は、はあ」
リグルやゴブタ。
嵐牙狼族が近くまでよってきて、その不安がより一層表に出て来てしまう。
「あんた。人間でその力量だと、かなり名をはせる冒険者だと見るけど、
それを抑えるのきついんじゃないか」
「えっ」
リンが近くまでよってきて、シズを見る。
「……わかるの?」
「あぁ。それを放置したまま俺たちの街まで来られても困るんだ。
今なら喰ってそいつを暴走しないよう調教することができるが。どうだ?」
「喰って調教――そんな魔王みたいなこと、できるわけ、離れて。あぶない!」
この一言で、イフリートはこちらを殲滅すると決めたのだろう。
シズを乗っ取るように。彼女に憑依して現れた。
「だから全て後手なんだよ。
兄貴じゃなくて俺に出会った時点でお前の負けだ。イフリート」
「嘘だろ。シズって――爆炎の支配者シズエ・イザワ?!
引退したんじゃなかったのかよ!」
リンはイフリートが完全に出てくる前に『捕食者』を使って
イフリートをシズごと捕食する。
一瞬あたりが炎に包まれたがリンはそれすらも捕食した。
「ミシェル、居るな!イフリートを暴走しないように調教しろ。
彼女を蝕む原因となるのものを取り除け!」
「了解!任せといて」
その処理時間、わずか0.14秒。
イフリートがむやみやたらと暴走せぬよう、
シズの言うこともきちんと聞くようにミシェルは調教する。
「今日から僕が君の主だよ。
きちんとシズと僕の主人の言うことを聞くように。――――――よろしくね」
「――――我が主よりも遥か上位の存在が、
何故こんなスライムに降臨している?
理解不能」
そうして、完全にイフリートを調教したあと。
ぽつりとミシェルはぼやいた。
「それはね。後々知ることになると思うけど、
この二人こそが始まりの神だからだよ。イフリート。
僕はこの人だからついていくんだ」
とても、満足そうに微笑んだ。