「よし、再度イフリートをシズさんに憑依させてってと。これでもうあんたは大丈夫なはずだ」
「あ、ありがとう……。
(一瞬すぎて、何が起きたかよく分からないけど、イフリートごと私も取り込まれた?
それで無事って。身体が以前よりも楽になってる。
イフリートは沈黙を貫いてるけど、前みたいに暴走する気配も感じられない)」
シズを解放する。
リンは『捕食者』を使ってイフリートをシズごと取り込んだので、イフリートはもちろん当然シズが保有しているスキルなども『大賢者』を使って複製できる。
《告。イフリートを取り込んだ際にイフリート、シズエ・イザワ両者のスキルを獲得。ユニークスキル『
「(おう。その他の便利そうなのも追加で頼むわ。兄貴にもいいかどうか聞いといて)」
《既に承諾を得ています。続けて、スライムの固有スキル『溶解、吸収、自己再生』を統合して『超速再生』を獲得しました》
「(はっや。なら大賢者。『
《可能です。イフリートを複製します。成功しました。炎の最上位精霊『イフリート』をスキルとして召喚できるようになりました》
「(よし。これで兄貴になにかあっても大丈夫っと)」
やったぜ。イフリートの人権なんてあってないような状態にはなったけど。精霊だしな。
俺も兄貴もむやみやたらイフリートを召喚しようとは思わないし。
ほんとに非常時のバックアップぐらいの存在でいいんだよな。
ちょっとまだ即キルスキルを使わないでヒナタといい感じに戦うの不安だし。
いくら勝てるからってヒナタ殺しちゃったら元も子もないもんな。
そう思いつつ、他の冒険者の方を見る。
冒険者の一人カバルが限界と言わんばかりに、やつれながら地面に座り込んだ。
「よ、よく分からないけど、どうにかなったならよかった。まさか俺達、爆炎の支配者シズエ・イザワと一緒に旅してたなんてな……。もう動けん……」
「ご、ごめんなさい。隠していたつもりはなくて……」
カバルの言葉にシズがハッとして謝る。
そうである。この三日間、戦えるのにイフリートの暴走を恐れてただ逃げ回っていただけなのでシズもさすがにバツが悪くなったのだ。
カバルも思うところはあったが、シズがいなければどの道体力が力尽きて死んでいた。謝りだした彼女をフォローするように話す。
「そんな謝んな。どうにかなったなら別に大丈夫だし。調子が悪くて動けられなかったんだろ。にしても、ほんと動けねぇ……」
それを見たエレンが呆れるように話し出す。
「もう。くたくたなのはわかるけどそんな干からびないでよ。
しかも助けてくれたシズさんに文句まで言って。
元はといえばカバルが
シズさん、怪我はない?精霊さんが表に出てきちゃって、
大変なことが起きたのはなんとなくわかるから。
私達が弱いばかりに無理させちゃってごめんなさい」
おろおろしているシズに対して、エレンも謝る。
巻き込んだのは自分達。しかも助けようとしてくれたのだからこれぐらいは普通と言わんばかりだ。
「あー……結構逃げ回ってた感じか、あんたら」
その様子を見ていたリンがエレン達に話しかける。
疲労困憊だったので、もう一人の男――ギドが話し出して。
「そうっす。あっしら三日も
「荷物は落とすし、振り切ったと思って休めば寝込みを襲われるし」
「装備は壊れるし、くたくただしお腹ぺこぺこだしぃ。
この状態でシズさんまで倒れちゃったら、ほんとに危なかったよぉ。
ほんとに、助けてくれてありがとうございました。」
と、事実確認をしていく。
疲れ果ててるエレン達を見るとほっとけない気持ちになった。
お礼も言ってくれているし。
リンは原作通り。四人を街を迎え入れることにした。
「分かった。大変だったのは理解したから。簡単な食事でよければご馳走するし、客人用の風呂……温泉と寝床だって案内する」
それを聞いたエレンが飛び上がるように喜んで。
「お風呂!?お風呂があるのこの近くに?!
温泉がどんなのかよく分からないけど、シャワーがどんなに恋しかったことか……じゃない、あの。
あなたは、この辺に住んでいる人なんですか?
それは、その。助けて貰ったしほんとうにありがたいお誘いなんですけど」
「温泉……本当にありがたいけど、本当にあるの?」
「シズさんは分かるんですか?」
「私の故郷にあるからね。でも温泉があるってことは、そこそこ豊かな街があるってことになるけど……」
「こんな辺境の地に人里なんて聞いたことない……」
ごくり。夢物語のような誘いに喜ぶが、あまりに理想的な宿泊地すぎてエレン達はリンを警戒してしまう。
まぁ、普通は警戒するのだろう。
場所が場所だけに全く警戒されないのも困った話だが。
原作よりも町が発展してる分、イフリートに町を壊されたくなかったのもあってリンは今回先手を打つことに決めたのだ。
よく考えたらシズさんって原作通り殺す必要なくない?と。
シズが生きてることでヒナタフラグなくなるかもだし。
代わりの別のフラグが発生しそうな気もするが、そこはまぁどうにかするのが自分達の役目ってことでリンは開き直った。
魔王レオンに会わせてやりたい気持ちが全くない訳でもないし。
スキル系はシズとイフリートさえ『捕食者』で飲み込めばどうにかなるじゃんと。
兄貴の人化しかり、進化するのに必要なスキルだったり。
その辺はとっくの昔に解決できているはずだ。
魔王種をうっかり取り逃がしたり……とかあるかもしれないが、
仲間たちが死ななければ兄貴も無暗やたら魔王になろうとはしないだろう。
仲間が死んでしまって、生き返らせるためになりたいって言われたらちょっと考えるけど。
ここだけの話。
実話俺が持ってる技術だけで、蘇生技術が全くない訳じゃない。
もちろん鋼の錬金術師の人体錬成とかじゃなくて。
大賢者に知られたくないけど、創造神を使ってイフリートを創造しちまった時点で多分もう人の生き返らせ方事態は分かってるんだろうなって思う。
『大賢者』と『捕食者』を使って 『死体を飲み込む』『魂を回収する』。
『創造神』を使えば死んだ者を俺達のスキルにして『人』にすることができるって。
果たしてそれを人と呼べるのかは分からないけど。
これらのよくないところはそこに死者を縛ってしまうことだ。
スキルだから子供とかも産めなくなるし。
俺達に取り込まれてスキルとして生き返った者は一生俺達が死なない限り成仏することもできない。
代わりに、死んでしまっても俺達が生きていればまた生き返ることができるという仕組みだ。
――要は今のミシェルとサリエルのことである。
俺は意図せず、二人をこの世界に縛ってしまっている。
友達でいたいという俺の勝手な願いのせいで。
だから、できればこれをシオン達に使うのはやめてもらいたいと願うばかりだけど。
本人たちは喜びそうだけど、罪悪感がすごいと思う。
なんならクローン人間も創ろうと思えば創れる。
趣味じゃないからやらないけど。
現段階で出来るのはシズさんのクローンか。
スキルによるクローン人間作製は捕食者で『魂の回収』ができなかった場合に発生する。
精霊と違って人間や魔物は魂の確保できないと、全く同じ容姿とスキルをもった違う人格の人間が出来上がってしまうから大変だ。
身近な作品で例えたらとあるシリーズのシスターズみたいな感じになってしまうんだな。
精霊は記憶の並列化とか全然できちゃうからなぁ。
捕食者を使って飲み込んでしまえば思考を強制的につなぐとかできるけども。
多分兄貴、魔王じゃなくて下手したら神にもなれそうな気がする。
だって俺のスキル『創造神』が既に神になるための種子だ。
兄貴は魔王にならなくたって十分強い。
魔王ルートか神様ルートかは選んで貰わないとだけど。
その辺はきっとなるようになるだろう。
と、色々考えながらエレン達に説明していく。
「それはまぁ。つい最近引っ越したばかりだからだな。そこのお姉さんみたいにもう勘づいてるとは思うけど、俺は人じゃない。それでも良ければ俺達の町に案内するよ」
そういって、リンは人の姿からスライムの姿になる。
「スライムさんなんだ!?でも、それよりも魔物が街ってことにびっくりなんだけど。」
「怪しいけど……」
「でも、悪いスライムじゃなさそうですよ」
この流れは……あれだな。
兄貴の代わりに俺がする必要がありそうだな。
あの、スライムと言えばのあの名セリフ。
「俺の名前はリン。『悪いスライムじゃないよ!』」
全力で誤魔化してみた。
そしたらシズさんが笑ってくれた。
そうだろ、これが分かるとそんな反応するだろ~。
《告。急激な魔素の消耗を確認。スリープモードへ移行します》
へ?なんでそんなまた、遅れてスリープ……意識が遠のく……。
「君もだいぶ、無茶したんだね。」
シズはスリープしてしまったリンを抱っこする。大事そうに。
久しぶりの同郷者だ。シズはドキドキしていた。
「ーーーミシェル、シズさん達の案内頼んだ。こんな情けない姿見せて、ごめん、よ」
「任せといて。(君がリンを抱っこするのか。久しく僕だって抱っこしてないのに!)」
むむむ。とリンを抱っこできずに、思わずシズに嫉妬するミシェルであったが、ここでリンを取り上げるのは可哀そうだったのでぐっと我慢する。
「君は?精霊さん?」
「僕はリンのスキルだよ。性質としては精霊のそれに近いと思うけど。ところで、君のその仮面はもう必要ないと思うけど」
「あ。そ、そうだね。ごめんね、つい癖で」
ミシェルに言われて、シズは仮面を外す。
イフリートの制御ができている現在、この仮面はもうシズにとっては不要だ。
「これ、預かって貰える?リンに持っといて貰いたいんだ」
「え。いいけど―――。(リンが持てればリムルも仮面事態は持てれるし、大丈夫か)」
「君がイフリートの制御をしてくれたのかな。なんとなくそんな気がして。ありがとう」
シズがぺこりと、改めて礼を言う。
「僕だけじゃなくて、みんなで制御したけどね。僕が今こうやって動いてるのはリムルのおかげだし」
「リムル?もしかして、もう一体スライムさんがいるの?」
「そうだよ。リンのお兄さんなんだ。双子なんだって」
後ろから、ゴブタやリグルを引き連れてリムルがやってくる。
「おーい、ミシェルー!リン、大丈夫そう?」
「スリープしちゃったからね。こういうとき助かるよ」
「どういたしましてっと。何々?この人たちを町に案内するの?」
久しぶりの人間だー!とリムルはテンションをあげてサトル仕様の人間になる。
「スライムが増えた。しかも人になったよ。さっきの子よりイケメンだしー!」
「(黒髪に金の瞳……やっぱり。リン君も黒髪に青い瞳だったし。日本人の転生者なのかな)」
「あはは。どういたしまして」
「うん。というかそっちの姿なんだねリムル」
ミシェルからすかさずツッコミが入る。
「いやだって、あっちの姿だと、あまり大きな声で言えないけど、なんかこの人と容姿似てるような気がして……」
「あー、言わんとすることは分かるよ。リンになんて言われるか分からないけど、別にその姿でもいいんじゃない?」
「そう言って貰えると助かるよ。ありがとう!」
そらそうである。目の前に自分と似てる人が居れば変化もしにくい。
この時ばかりは、ミシェルもさすがにリムルに同情した。
「もう一つの姿は私と似てるの?」
「かなりね。瓜二つだよ」
ミシェルの言葉に、ふーんという反応をするシズ。
「俺の弟がな、こっちの方がエコだからって譲らなくて。確かに楽でいいんだけどね」
バツが悪くなったのか一瞬だけリムルはシズ達に蒼銀の髪の方の姿を見せる。
「わぁ。確かにシズさんそっくり」
「やっぱ恥ずかしいからこっちで」
エレンの反応みるなり、すぐサトル仕様に戻る。
「似合ってたのに」
「そ、そう?なんか照れるなぁ。まぁ、そういうことでよろしく」
惜しまれつつも、すっかりリムルは照れてしまってサトル仕様の姿から戻る気配がない。
これはやってしまった……かなぁとミシェルは思わず苦笑いした。