「なんか……よく寝たような。なんであのタイミングで急激に魔素が減ったんだ?」
起きて早々にリンは急にスリープしてしまった原因を探す。
確かに魔素はイフリートを創造した影響でわりと減っていたと思うけど、
それならイフリートを創造したタイミングでスリープしなければ変なのだ。
なんであのタイミングで……。
考えても仕方ないか。と思っていたら大賢者が申し訳なさそうに報告してきた。
《告。原因は私とユニークスキル『変質者』の影響かもしれません。スキルを統合していた最中でした。予想よりも急激に魔素が減り、それによりスリープモードへと移行した様子です》
「えっ。大賢者でも計算をミスることがあるのか。まぁ、無事に起きられたし。別に怒ってないよ。因みに、手に入れたスキルって擬態と超速再生の他にもあるか?」
《はい。様々なスキルを獲得しました。確認されますか?》
よくぞ聞いてくれました!と言わんばかりの声色で聞いてくる。
これは……原作通り張り切って作ったんだろうなとリンは苦笑いを隠せない。
「技の詳細だけでいいよ。どんな威力かは気になるけど、どうせ人前で使えないような強力すぎるスキルばっか創ったんだろ」
すると、むっと怒った大賢者がそれ以上答えなくなった。
よほど自信作だったのを自慢したかったようである。
「そんな怒んなよー。どうせ俺だけじゃなくて兄貴にも自慢してるんだろー俺が寝てる間に。
というかスリープしたの自分のせいって認めるならちょっとぐらい優しくしてくれよー、大賢者さんー」
《それとこれとは別です》
「えー。ケチ。ところで、シズさん達はまだこっちに滞在してるの?あれから三日ぐらい経ったのかな」
《はい。スリープしてから三日経過しています。リンが目覚めるのを待っている様子でしたがシズエ・イザワ以外のメンバーはギルドに報告しなければいけないとのことで名残り惜しそうに去って行かれました》
まぁそうだよね。休めたならここに長居する必要もあんまりないもんねー。
「そっか。温泉とか美味しいご飯とか堪能できてた?」
《はい。楽しんでました。特にエレン、カバル、ギドの三人組はとても興奮していたようで、ここに住みたい等話してました。ギルドに報告する際も悪い風には報告しないとの発言も確認済みです》
「そっか。満足してくれたならよかった。あの三人ならまたいつでも遊びに来てもらって構わないから。シズさんはまだこっちに居るんだね」
《はい。リンをとても心配されていましたので。今日はミシェルや警備隊と一緒に食料の調達にでかけています》
「ふーん。兄貴は?」
《私と一緒にスキルの確認をしています》
「そ、そっかぁ」
ルン♪とあからさま上機嫌で話す大賢者にリンは若干引きつつ。
「――リン!逃げて」
悲痛なミシェルの悲鳴を聞くまで。
異常が起きてると感じる頃にはもう遅かった。
「うーん、君も分身体か。というより、本体が存在しないのか。スキルっていうのは厄介だね。君はあくまでも分身体で、本体がリンとリムルだもんね。何回死んでも生き返るっていうのは厄介だな。まぁ、殺せないなら食べ続けるのみだね。」
気付けば、やっとの思いで逃げてきたのだろうミシェルはどうしようもすることもできないという表情をしたまま取り込まれている。
心底美味しくないと言いたげな表情をする、桃色の髪の青年によって。
リンはそれを見て、青年が誰かどうかすぐ理解した。
「……暴食?!なに、してんだよ」
「分からない?嫌いな精霊を食べてるんだよ。僕は
暴食は、ミシェルを捕食していた。
《
「暴食でいい。俺と同じミカエルの傘下に居る
「そう。僕の名前は暴食。これでも、僕にはレイっていう正式名称があるんだけどね。世界を食べる者として一番最初に産まれたからレイって名前なんだ。僕は君と、サリエルが大好きでね。食べたくて食べたくて、だからミカエルの傘下に入った」
《告。暴食は
「やめろ――俺からミシェルとサリエルを持って行くな」
《
リン(義光)を媒介に、強欲の少女 『アイ』が現れる。
それを見た暴食が、心底がっかりそうに話す。
「なんだ、ここに来ればサリエルに会えると思ったのに会わせてくれないのか」
「誰が会わせるか愚か者!よくもまぁ堂々と来たものよ。目的はなんだ。このバケモノめ」
警戒しながら、アイは構える。
殺されていないだけマシ、世界が消えてないだけマシ。
そう思いながら、冷や汗を垂らす。
目の前の男は、なんでも思い通りに全てを動かす力を持った怪物だ。
不要と判断された者はまず消される。
ミシェルの存在が完全に消えてないのは、辛うじて必要と判断されたか。
それでもムカつくからと姿を見せただけで一方的に捕食されている。
あのミシェルがここまで何もできないなんて。
これだから
アイは心底、暴食に恐怖しながらまずは彼の要求を聞くことにした。
「やぁ、久しぶりだね三人目。んーまぁ。ざっくり言うと僕は、僕の後継者が過ごしやすい世界を創ろうとしてるだけだね。だから、
後継?今、こいつは後継と言ったか。
後継と言えば、思い当たるのは一人しかいない。
「後継?お主は、リムルの奴を後継に選ぶ気か。」
「そうだよ。だって、この流れのままだと彼は暴食のスキルを得るでしょ。それに、そこそこ強いから彼はちょうどいいんだよ。他の世界の暴食と比べて彼は理性だってあるし、僕の好みなんだ」
暴食の言うことは、絶対である。
これは、自分達では覆そうにない案件だ。
「だから、彼がきちんと僕の後継になれるように手伝いに来ただけなんだって。言っても信じてくれなさそうだから覚えてなくてもいいよ。どうせ記憶消す予定だし。因みにミシェルを排除したのは、元々僕が彼の事が大嫌いだってのもあるけど、彼が居ると純粋に戦力過多なんだよね。シズエ・イザワも本当だったら排除したかったけど。お気に入りが望んだ展開を汚したくないから放置しといたよ。あと、この仮面もついでに渡しといた。つけといてね~ってお願いしとけばとりあえず、
お気に入りとは、リン(義光)のことだろう。
暴食がいつの間にか複製したシズの仮面をアイに自慢するように見せて。
確かに、それならば問題なく物語は進むだろう。
誤解もリムルが居ればどうにか解けるだろうし。
アイは聞きたかった。
何が目的でこの世界に来たのかとか、本当にリムルを自分の後継にすることだけが望みなのかとか。
そもそもなんでこの世界に来られたのかとか聞きたいことが山積みであった。
アイは思わないだろう。
何かあった時のために、と保険として自分で傲慢と暴食をスキルとして創造していて、そのことすら二人によって忘れ去られて自由行動を許してしまっているとは。
傲慢や暴食は単純に怒っていた。
これから起こりうる物語の崩壊や矛盾の後始末全て自分達に丸投げされたことを。
だから、やりたいことをする時は好きにこちらも利用するけど、基本的には放っておいてくれというスタイルである。
暴食は好き放題、自分の好きなタイミングで姿を現しては主役たちの記憶を消していくという遊びをしていた。
「(記憶処理が良い感じに効いてるのはいいことだな。あのキモイ(ミシェル)のも捕食したこと事態忘れて貰う予定だし。お気に入り達にも、此処に来たのも忘れて貰おうっと)」
暴食は満足そうに、見守っていた。
大きくなぁれと、祈るように。