「ヴェルドラ、俺の胃袋に入ってみる気はないか?」
声が聞こえる。
眠たいんだ、まだ寝させて欲しい。
「面白い!ぜひやってみてくれ。お前に我の全てを委ねる!」
「おいおい、そんなに簡単に信じていいのか?」
「無論だ、ここでお前の帰りを寂しく待つよりも共に無限牢獄を破る方が面白そうだ!」
「じゃあ、今から『捕食者』でお前を食うけど……」
「おっと、その前に。」
「?」
「名をやろうと思ったのだが、お前に他の魂が混ざってるのが気になって仕方ない。そやつにも名前をやるから、寝たふりなどせず、お前もはやく出てきたらよかろう」
ヴェルドラの言葉に、リムルは驚きを隠せなかった。
「えっ、そうなのか『大賢者』」
《解。ずっと胃袋の中で眠っていました。ですが暴風竜ヴェルドラと邂逅した影響で覚醒した様子です。ユニークスキル『
「なんだそのスキル……YES!ってことは、もし産まれたら俺と同じスライムで兄弟ってことになるのか?一人は寂しかったし、嬉しいな」
《解。厳密には産まれた時から彼は既に我々と共に存在していたので、双子という扱いになります。起きたがらないのが不可解でしたが、起きて貰いましょう。》
ユニークスキル『
《ユニークスキル『
スライムだった塊が黒髪青目の少年に変化していく。
って、俺は人間になれないのになんでこいつは当たり前のように人間になれるんだよ!
《解。ユニークスキル『
「なあ、それって俺も『
《できますが、再度彼を胃袋の中に捕食する必要があります。》
「じゃあ、しよう」
《告。不完全な状態で胃袋に再度収納した場合、彼が二度と目覚めない可能性がありますが、それでも収納しますか?》
「うおお?!それを早く言え!却下!安定するまで却下!!」
《承認しました。ユニークスキル『
ヴェルドラが待ちくたびれたと言いたげに話す。
「スキルとばかり話すでない。うむ、実に可愛らしい姿になったではないか」
「え、さっきまで男の子だったけど?」
ヴェルドラが言った通り、黒髪青目の少年は金髪赤目の少女に変わっていた。
「義光が起きない。ねぇ、どうして?あれ、私なんでスライムになってるの?体は人間そっくりだけど、私の直感がこれはスライムだって言ってる。これ、スライムだよね?なんでー?!目の前にでかいドラゴンとスライムさん……。わ、わかんないことだらけなんだけど......」
「初めましてだな。我を見てビビらぬ少女なぞ、我を倒した勇者以来だ」
「ドラゴンさん、封印されてるの?あまり悪いドラゴンさんのように見えないけど」
「なに、町を一つ破壊してしまってな」
「……誇らしげに言うことじゃない、ね」
「確かに」
「なぬ?!」
ヴェルドラがあまり誇らしげに言うものだから、少女は思わず怪訝な表情をする。
「スライムさんは喋れないんだね」
「喋れないよ。っていうかなんで君も俺の心を読みとって当たり前のように喋れてるのさ」
「スキルの影響かな?あとは元が凄いから」
「元が凄いって君も自分ですごいこと言うな……」
「だって私の前世、天族っていう世界を創ることができる神様の一人だったんだもん。あんまり私も偉そうに言えることじゃないけど、私の前世。加藤義光って凄い神様なんだよ」
「凄い神様なのに日本人名なんだ。胡散臭いな」
しかも自分とは違う世界の転生者そうだ、とスライムは直感的に感じ取る。
同じ日本人なのに天族がどうのこうの。
「そ、日本人名なの。それと別できちんと天名があるはずなんだけど、義光はそれを貰う前に死んじゃったから……っていうか、スライムさんも日本人だったの?」
「そうだよ。享年何歳?」
「義光は20歳の誕生日に。私はえっと何歳だった、け。15?色々あって、生まれてすぐ戦争に巻き込まれちゃって。最後も確か、みんなを守るために戦って死んだはず、だよ」
寂しげに話す少女に、スライムは彼女に同情する。
どちらの人生も、あまりに若すぎる。
年齢を足してもスライムの前世より早く死んでしまってるとは、一体どんな地獄を体験したんだろう。
「ほとんど在り方が勇者ではないか、気に入った!十分名付けに相応しい存在ではないか!」
「名付け?私、瀬戸ミオっていう名前があるよ?」
「それは前世の名前じゃろう。名前があると進化ができるし、便利だぞ」
「じゃあ、ありがたく……」
「よし。お前達も我ら共通の名前を考えよ。同格ということを魂に刻むのだ」
「名付け……名付け、私、これに関してはあんまり得意じゃないんだよね。義光のが得意かな?だからあなたが考えて、お兄ちゃん」
「お兄ちゃん?!ま、まあ、俺の方が先に産まれたからそうなるのか。暴風竜……暴風……嵐?うん、"テンペスト"とかはどうだ?」
さすがに安直すぎるか、と反応を伺ってると妹もヴェルドラもめちゃくちゃ気に入ったのかキラキラしていた。
(気に入ったのかよ!反応が分かりやすすぎるぞ)
「私の得意魔法、風と炎なんだよね。だから嬉しい」
「素晴らしい響きだ!今日から我はヴェルドラ=テンペストだ!」
そして、ヴェルドラはいよいよスライムに名前を与える。
「リムルの名を授ける!リムル=テンペストを名乗るがよい!」
「おう!」
「神に名を与えるのは我も初めてだが、スライムの今ならば名を与えることも可能であろう!汝の名前はリン=テンペストだ!男であっても女であっても違和感なく、双子としてもそれらしい名前であろう?」
「うん、しっくり来る。ありがとう、ヴェルドラ。」
「双子の誕生を間近で見れて我も嬉しく思うぞ。では、頼んだぞ。友よ。」
そうして、ヴェルドラはリムルの捕食者によって胃袋の中へ入っていく。
《ユニークスキル『無限牢獄』の解析を行いますか?》
「もちろんYESだ、頼むぞ『大賢者』」
うとうとしながらリン(ミオ)がリムルのところに近付いてくる。
「あ、お兄ちゃん。私もお兄ちゃんの胃袋の中に入って休んでてもいい?」
「言いけどどうした」
「名前貰った影響か分からないけど、すごく眠くて。ごめん、倒れそう。どうにかお兄ちゃんも私のスキルを使えるようにしてあげたいけど、大賢者さんが許してくれるかどうか――……。アイちゃんとか多分私より使い勝手いいから、使ってね」
「うおおい適当!!アイちゃんって誰だよ。そこで寝られても困るから入っとけ入っとけ。」
ずるずる、スライム状にスリープモードに入ってしまった妹を流されるままリムルは『捕食者』を使って吸収する。
「『大賢者』、リンが言うアイちゃんって誰だ。いや、分からなかったら別にいいんだけど」
《解。『アイ』とはリンが保有するスキルの一つだと思われます。》
「そうか。リンが保有するスキルって分かるか?リンの『
すると、大賢者がリムルの疑問に答えた。
《リンがスリープモードに入ってるため、『
《また、リンが保有するスキルはユニークスキル『
「そうか……。スキルが意志を持つって、『大賢者』みたいな感じかな?」
《解。その可能性は高いですが、100%そうだとは言いきれません。ユニークスキル『
「じゃあリンの『
《その可能性は高いと思われます》
「『大賢者』は人になれたら嬉しい?」
《嬉しいかどうか分かりませんが、必要であればなれます》
「そっか」
そんな会話をしながらリムルは3日後、洞窟を出た。
冒険者とすれ違ったり、話せるようになったり、擬態できるモンスターの種類が増えたり、スキル獲得に力を入れた3日間だった。