この夜。
《告。リンがよく寝てしまうのは保有する魔素量に対して所持するスキルが強力すぎることが関係していると思われます》
「そういうのあるの?」
リンのことについて悩んでたら、大賢者が解説してくれた。
《リンが保有するスキル、『
つまるところ、スキルを使ってないのに魔素を使ってるから、それが通常よりも魔素を使ってしまうことになると。
スキルが人になればスキルを使っていることになって、負荷が解消されて負担も減ると。
やればいいのに、なんでしないんだ?
「なんでしないんだ?」
《他二つはともかく、『
それでもなんかリンが大変そうだな。
どうにかしてあげたい。
「それってリンにすごい負担じゃないか?んー、大賢者。リンのユニークスキル『
《可能です。その場合『
ん?遠回しにこれって大賢者が『
「おいおい、なんでそんな物騒な言い方するんだよ。スキルが可哀想だろ」
すると、大賢者から警告が入る。
《
「洗脳される危険があるから心配してるのか。ありがとな、大賢者。というか、支配無効化、洗脳無効化なんていつとったんだよ。リンのスキルか?」
《リン=テンペストが所有していたスキルです》
「あ、はい……。というか、大賢者。当たり前のように喋ってるけど、リンが持ってるスキル俺も使えるな?」
《はい。使用できます。》
「リンは俺の持ってるスキル使える?」
《はい。同様に。ただし魔素不足のため満足には使えない状態です》
「なんだ、やっぱり俺自分で人になれるじゃんか……って愚痴はおいといて、まずは『
と、リムルが話した途端再度大賢者が警告した。
《リン=テンペストが『
「そこで、リンの介入?!まじか」
驚く。もたもたしていると――――
「当たり前だわ、何目の前で人のスキル拉致ろうとしてるんですか、お兄ちゃん」
半ギレ気味のリンが目の前に。キレると俺のことお兄ちゃん呼びするんだ。いいな。ってそうじゃない。
説明しなきゃ。
「いや、別に奪うわけじゃないから安心してくれよ。ちゃんとリンの中にもあるだろ。俺はその、リンの負担を少しでも軽くしたくてな」
きょとんとした様子のリンが、少し間を置いて、仕方ないなという表情をしたあと、しょんぼりしながら話す。
え?なんで仕方ないななの?落ち込むのは分かるけど。
「……俺だってまだまともにアイとかみんなと話できてないのに」
「え、アイって『
「そうだよ。っていうかそれも知ってるのか、誰から聞いた?大賢者か?」
「え、ミオから……」
あ、確かに大賢者に聞けばリンのスキルの詳細分かるのか!また今度聞いてみよう。
アイって、ほら。あのときミオが、アイちゃんなら使っていいからねとか言ってたような気がするけど、記憶ないのか?それか本当に別人格?すげぇな二重人格って。
「ミオか――……ミオならアイちゃん使っていいって言いそうだな。はぁ。いいよ。さすがに3人分抱えるのそろそろ限界だったんだ。3人でよかったとは思ってるけど、きっかけさえあれば何人でも増えそうだし。」
「え?どういうこと?」
「俺の前世は――言っても信じないだろうけど、世界を創ることができる神様だった。だからユニークスキル『
「じゃあ、もしかして国が丸ごと焼けて滅んだりしても、魔素さえあれば再建できるってことか。」
「当然。完全再現する場合バックアップを事前にとっておく必要があるけどな。それにこのスキルは、例え世界が滅んでも、スキル所有者さえ生きていれば世界丸ごと再生だってできるはずだ」
「そんなことが……」
「できるようになるはずだ、リムル。俺はそういう神様だった。信じる信じないは好きにしてくれたっていい。ただ双子だからというのと、大賢者のおかげで俺たちはお互いのスキルを使えるようになった。俺のスキルを使うなら、俺のことを知ってから使って欲しい。それだけだ」
そう力説するリンに、嬉しくなってリムルも答える。
「おう。ありがとな、リン。話してくれて。全然リンの前世とか分からなかったからさ」
「俺もリムルの前世あんまり知らないんだよな。また今度教えてくれ。俺の前世の名前は加藤義光って名前だった。」
「お。じゃあ俺も。俺の名前は三上悟って名前だったよ。普通のサラリーマンしてた」
「そっか。じゃあ多分だけど、リムルって普通に俺らより年上だよな。」
「うん。2人が早死しすぎなんだよ。俺もまぁ……死因は通り魔に刺されて出血死なんだけどさ。」
そんなたわいもない会話をしながら、リンはユニークスキル『
「やっぱ分離するの難しいか、前世もそうだったもんな。ちょっとアイは小難しいとこあるんだけど大丈夫だから。俺ら、元々3人で一人の存在だったんだ。形的には二重人格の俺らにもう一人が強制的に憑依するみたいな感じだけど、悪いやつじゃないから安心してくれ。ほんと、リムルが使うより先に俺が使ってよかった。」
「ちょ、リン?!」
リンの容姿が変わっていく。
今度は足まで伸びた茶髪の長髪に、青瞳の少女になって。もし『
だからリンの奴、止めてくれたのか。
「――面白い世界に転生したのぉ、義光。
「……な、なんか思ったより厄介そうなんですけどぉ?!」
義光!!俺が悪かったよ!軽率に『
見るからに悪者オーラ全開じゃん!魔王っぽい!
「……そんなに怯えなくともいいと思うのじゃ。確かに、妾は前の世界で魔王と呼ばれても仕方のないぐらい悪役非道の限りをつくしてきた。国一つ滅ぼしかけたしの。それを止めてくれたのがあの勇者じゃ。あの勇者のおかげで、今の妾はこうして普通に過ごせてるのじゃぞ?」
「……あれ、なんか優しい?」
「そうとも!妾は優しい!妾は言わばヴェルドラのようなものじゃ!……竜種ではなく、妾はミカエル様の眷属じゃがの」
「それでスキル名に
リムルの反応にふふん、と誇らしげな表情を見せつつもアイは他のスキルの心配をする。
「ミシェルの奴も気の毒にの。スキルにされてしまって。沈黙を貫いておる。義光も、はやくミシェルやサリエルをスキルから元に戻せばよかろうに。スキルを使っていないのに、魔力――魔素の減りがはやくて叶わん」
「あ、やっぱりそれは分かるんですね」
「分かるってレベルじゃない――むしろ魔素の無駄が過ぎてイライラするレベルぞ。ありがとうの、リムル。妾を呼ぼうとしてくれて助かったわい。義光のヤツめ、こういうところじゃぞ。自己犠牲も大概にせんかい」
あ、怖ったのは魔素の減りがあまりにも速かったからぽい。自分のスキルに怒られてる
「スキルを人に戻すのは妾でも出来る。召喚するが、構わんよな?」
「あ、はい。大丈夫です……。むしろしてもらいたくて、やらないならこちらがやろうとしたぐらいなので」
「本当に義光はいい兄をもったの。前世とは大違いじゃ。妾は嬉しいぞ。ふむ、では実行する。いでよ、サリエル、ミシェル。今世でも義光を頼む」
すると、現れたのは赤髪赤目の青年と青髪赤目の青年。
赤い方が『
「頼むって言われても、めんどくさいだけなんだけど……あと、申し訳ないし。まだ俺スキルのままでいいよ。こんなボロくさいとこに放り出されてもだし」
それ義光聞いたらショックでスキルのままにしそうだな。やめてくれよー。なんでそんな我儘言うんだよ。
「またサリエルは好き勝手言って……。僕の心労が増える発言はやめてほしいんだけど。 」
お、こっちの青髪はまともっぽい。話通じそうだな。
赤髪の方はまだめんどくさそうだし。
「俺がいたって迷惑なだけじゃない?召喚してくれたのがアイでよかったよ。義光ならちょっとめんどくさそうだったから」
「そんなありのままに本音話さないでよ。ほんとに君は昔から変わらないね。僕だって、あまりにも義光が僕を呼び出さないから無理にでも出ようとしたところなんだから。まったく。初めまして、こんな初対面でごめんね。ミシェルです。よろしくお願いします」
「サリエルだ。本名は別にあるけど、まぁ別に名乗らなくてもいいよね。本名嫌いだし。天名便利だからさ」
「君は相変わらずだね……」
ミシェルが呆れてそれ以上言わなくなったけど、ちょっとまって。天名ってどこかで聞いたことがあるぞ。
《告。リンが話していました。天族が成人した時に貰う名前が天名のようです。》
「え、天名って君も義光と同じ天族なのかい?」
それなのにスキル?なんだか不思議な存在だ。
「そうだよ。半分だけね。俺は義光が創った世界の住民と天族のハーフなのさ。それで一応成人してるから、天名も持っててサリエルを名乗れるわけ。義光のスキルとして転生してるのはほとんど俺があっちの住民だったからだね。これでも一応、義光が創った世界で王様やってたから、俺。」
「そ、そうなんだ。ちなみに何のハーフなんだい?君が普通の人間じゃないのは分かるけど。耳長だし」
「普通に天族とエルフのハーフだよ。親父が王をぶっ殺して王妃誘拐して寝とって生まれたのが俺」
「うわぁ……初対面でそれ話していいもの?ちょっとリムルさんドン引きなんだけど」
「文句なら親父に言ってくれよ。スキル名にミカエルなんてついてるから、遅かれ早かれ問題になると思って話してんだ。俺だってこんな話したくない」
あまりにめんどくさそうに話すサリエルに呆気がとまらないけど、なんでそこでミカエルの名前が関係するのか。
もしかして。
「サリエルの親父さんって……ミカエルだったりする?」
「お、さすが頭いい!そうだぜ。クソ親父って話していいからな」
「なんでそこで元気になるんだよ……」
ミカエルがやばい奴なのは分かったよ。そんな誇らしげにクソ親父って自慢しなくていいじゃん。自分のお父さんなのに。
「だってクソだもん色々」
「そっか…」
「はいはい。ミカエル様の悪口言ってると本当にミカエル様が降臨しそうだからやめるのじゃ。シャレにならぬ。もしこの世界にミカエル様が降臨したら妾ら全員リムルの敵じゃ。なるべく抗ってみせるが、ミカエル様の絶対支配は逃れられぬからな。死ぬしかあるまい」
「俺は洗脳されないけど……全体的にスキルなのがよくないな」
「自死できるかどうかも怪しいけど、もしそうなったらほんと僕らを容赦なく殺してね。僕たちからのお願い」
え、急にどうしてそんな話。
3人とも覚悟決まったような表情して。
っていうかミカエルと会ったらもう対立するの確定なのかよそれも嫌だな。ミカエルと仲良くなるのすら難しいのか?
「ミカエル様のことじゃから、もし降臨なさったら我らの魂を回収するだけして、この世界を消すじゃろな」
「消すだろうな……不要とか言って。天族なのにもはやワールドイーターと変わらないもん、あの人」
アイとミシェルが諦めたように話す。ワールドイーターってさらっと言ったけど、また新しい用語だな。名前からして、世界を食べる怪物でもいるのか?
「だから対立確定なのか……」
「ま、もしこの世界が消えてしまっても大丈夫じゃ。リムルさえ生きておれば『
ミカエルと対立してしまうのはもう仕方ない。
それよりもっと嫌なことお願いされても困る。
「世界は『
リムルの言葉に、サリエルもミシェルも驚いたという表情をし、アイは耐えられなくなったのか等々笑いながら話し出した。
「あははは。ミカエル様の支配からどうにかするなんてこと言ってのけたのはお主が初めてよ。リムル。ミカエル様はデメテル様の次に天族が住まう地。ノヴァの世界を管理することができる神ぞ。どうにかできるとは思っておらぬ。その気持ちだけ、受け取っておく。ふむ。進化、か。できたらいいがな。強くなり過ぎて、妾は中々進化するのが難しくなっておる。それこそ再び国一つ滅ぼさないと難しいであろうな。それでも付き合ってくれるというなら考えよう」
「そんな笑うなよ!ミカエルってのがよく分からないけどすごい存在なのは分かったから!!なるべく殺しとかはしない方針で、みんなを助ける方法を考えるのに善処します!!」
「優しいのぉ、リムルは。さて、妾はそろそろ義光に体を返す。妾とは常に大賢者のように会話できるようにしたから、スキルに戻っても負荷は大丈夫であろう。以前より魔素の消費もマシになった。体が軽くなるのは気分がいい。」
「僕とサリエルはリムルや義光の影に入ってるから。また用事が出来たらよろしくね」
「おう」
よかった。とりあえず解決かな。
まだミカエルからの支配解放っていう問題は残ってるけど。
リンの魔素不足はこれでだいぶ解消されたはずだ。
仲間が増えるのはいいことだね。
まさかあんなにアイに助けるって言っただけで笑われるとは思わなかったけど。
やっぱりそれだけミカエルって強い存在なのかな。天使だけど神って言ってたし。
でも、どうにかできるならどうにかしてあげたい気持ちは本当!
よし。がんばるぞ!