アイとの接続が切れて、急に元に戻ったと思ったら意識の混濁。この感じ、魔素切れか?ミシェルあたりが多分派手にやったんだろうな。これ以上魔素を消費しないように大賢者が調節してくれたのか。ありがとう、大賢者。
あれ、誰かにもってもらってる。
落ちつくなぁ。
◾︎
「スライムに戻った……?!大賢者なに……魔素切れ?リンが目を覚ますのは3日後!?じゃあ俺はあのちんちくりんの魔素で動いてるのか。……リムルをちんちくりん呼びしたぐらいでそんな怒るなよ大賢者。実際そうだろうが、流されやすいところとか特に。魔素節約のために俺ら呼び出したくせにミシェルのお人よしが過ぎて結果使い過ぎてるんじゃ意味ないだろ。だからそう怒んなって。はぁ、ごめん義光。止めたんだけどね。効率がいいからってミシェルとアイが張り切っちゃって」
「大丈夫……。アイがミシェルとサリエル呼び出した時点でなんとなくそうなるのは予想ついてた。だからアイと喧嘩したしな」
「話せるのか」
「目とかなんも見えないけどね。俺抱えてるのサリエル?ありがと。落ち着くな――……」
意識が完全に落ちた
普通にこれセクハラじゃんと気付いてさっと煩悩を払った。
「……そういえば、俺はまだこっちに来てから義光にまともに会えてなかったのか。」
「だからってスリープ状態の義光を好き放題していい訳じゃないからね、サリエル。まともに会えてないのは僕だってそう」
ひょいっとミシェルに義光――リンをとられ、触り心地がよかったのにとサリエルは思わずがっかりする。
「わかってるよ。前と違って最初から俺ら仲間なんだからそんな警戒すんな変態」
「変態はどっちのセリフかなー。義光が君に魅力されやすい体質なのわかって触ってたでしょ」
「それは……それを言われると何も反論できません」
ぐうの音もでないと言った感じに落ち込む。
「まぁ、君は本当に義光が融通効かなくなった時の最終手段だけどね。多分だけど、義光は今世も殺しは駄目だから。前も死にそうになりながら戦ってたし。もし義光が戦わないといけなくなった時君の力は必要だよ。だから、よろしく」
「分かってるよ。」
「あ、今夜も一緒のベッドで寝てもいい?」
「今夜もってなんだよ相変わらず気色悪い!!」
「だって僕ら夫婦だし、当然じゃない?」
「そうだけど今お互い性別男!自重しろこの変態野郎」
「君が女の子になればいいだろ〜」
「それはお前もそうだろ!?」
ぴしっ。
様子を見に来たリムルが今度こそ悲鳴をあげた。
「サリエルとミシェルが夫婦ってどういうこと――!?」
説明できる人はスリープモードで寝ていた。
丁寧に作られた専用のベッドの上で。
「バレたね」
「そりゃバレるよ。こんな義光ほったらかして俺押し倒してたら」
ミシェルとサリエルがそれぞれやっちまったという表情で話す。
「なんでもいいからきちんと説明しろ!大混乱だわ!」
「えっと、前に僕が国の宰相してたって話しは聞いたことあるよね」
「うん」
「俺が王様やってたってのも聞いてるよな?」
「うん」
「そういうことだよ」
「分かるかー!!もっと分かりやすく説明しろ!」
リムルの叫びに、ミシェルとサリエルが順番に答えたがそれでも分からないというのでサリエルは頭を抱えて説明する。
「この際だから説明しとくけど、俺の真名――まあいわゆる本名なんだけど、本名はサイラス・エルサイアだ。国を司る神精霊ミリィに選ばれて、エルサイアという国の4代目国王をしていた。」
「神精霊ミリィ?」
「そ。俺の世界――義光が創った世界「エマ」の国には神様が宿るんだ。王は神が選ぶ。そういうしきたりが決まっていて、神精霊ミリィは俺の国の神様。因みに俺、王族でも6人兄弟の下から2番目。形式的には性別を変えることができるけど、やっと産まれた長男って感じだけどね。上がみんな女なんだ。あと、義理の姉と弟以外みんな戦死してる。(親父と俺が殺したようなもん、とは黙っとくか)」
「なんか、すっごいドロドロ内政国家の気配がする……」
「あ、気付いた?それ大体正解だから」
「いばるな。解決するのすごい大変だったんだからね」
ミシェルの声色がマジだ。無茶苦茶大変だったんだろうな……。
「ところで、それがなんで夫婦と繋がるのさ。俺はてっきり義光とミシェルが付き合ってるのかなーと。正確にはミオとミシェルが。仲良いし、幼馴染だし……」
「盛大に振られたんだよな、痛い。叩かないでよ」
「うるさい!もっと他にいいようがあるでしょサリエル!僕まだ引きずってるんだから!!」
「引きずってるのぉ?!……さすが色欲、あきらめないんだ。」
「当たり前だろ、僕まだ納得してないから!」
「そう言われると俺が傷つくんだけど……」
「君がそれ言う?!」
「だから、なんで君達そんな仲悪いのに夫婦なんだよ!聞きたいのそこ!いい加減教えなきゃスキルに戻すぞ」
「「はい」」
リムルが脅しに脅してようやく聞けたのがこれだった。
「片方が死んだらもう片方も死ぬ呪いをサリエルがかけた?!それで渋々協力関係に?!」
「あとダメージとかも共有するから、どっちかがやられたらやばいかも。」
「僕は再生能力あるけど、サリエルがやられちゃうと傷が塞がらないから再生しても永遠に傷が塞がらないんだよね。だから、もし回復するなら先にサリエルの方から優先してほしいかなってぐらい。まだこの世界で試してないからアレだけど……試してみる?」
「まてまて。そんな自殺行為しないの。大賢者、この呪いってどうにかならないか?」
「解。サリエルはこの呪いをコマンドカースと命名していますが、そのコマンドカースにも人格が存在するため、消去するのは不可能です。『創造神』を使ってコマンドカースを人として召喚することができますが、しますか?」
するとミシェルが驚いたように話す。
「あっ、シェルを呼べるの?大賢者すごいね。義光が聞いたら喜びそう。シェルヴァって名前なんだけど、彼女には罪がないから。できれば消すのはやめてあげて」
「あ、会ったことあるんだ……。呪いに関してはそれでもいいの?」
「もうこれに関しては腐れ縁だと思って諦めてるよ。護らないといけない人が一人から二人に増えただけ。それに僕振られちゃったからね。リンも大事だけど、今はサリエルも同じぐらい大事だよ」
仲が悪いのか仲が良いのか。どちらかといえば悪いのだろうけど、呪いで無理やり家族に近い関係になってるせいで、喧嘩してもすぐ仲直りするようだ。そりゃ、命が繋がってるような関係だったら嫌いでも護らないと死ぬし、そうしてるうちに本当に大切になってきて感覚がバグるんだろなとリムルは感じとった。そこは若干ミシェルに同情であるが、さっきのあのまんざらでもなくサリエルを容赦なく押し倒してたのを見ると同情もどこかに行く勢いだったので、とりあえず話題を変えた。サリエルがイケメンだし髪ほどいたらかなり美人だってのはわかるので。
「そっか……。とりあえず、魔素使い過ぎて俺も倒れる訳にも行かないしリグルドとかにいい方法がないか聞いてみるよ」
リムルの言葉にミシェルが申し訳なさそうに話す。
「ごめんね。必要最低限生活に困らない程度には調節したけど、建物や森が破壊されたとき『創造神』を使って修復するためのバックアップ分の魔素まで多分残らないかも。それしたら多分今度こそリムルまでスリープしちゃうから……。そうならないように、どうにか彼らだけで町を作る、修繕する方法が分かればいいんだけどね。簡単な修繕作業なら教えてはいるけど武器とか細かなとこまではまだ教えてなくて」
「うん。その辺の指導者探しも頑張ってみるよ。全部俺たちでやってもみんなの自立に繋がらないからね。というか、錬金術の指導とか、そこまでやってくれてるの本当にありがたいよ。家造りだけじゃなくて。元も子もない話だけど、大賢者がリンの魔素切れ起こしてでもやりたがるのが少し分かるような気がする。ありがとな」
「どういたしまして。」
そうして次の日。
リムルは一旦町の護衛をミシェル達に任せて武装国家ドワルゴンに向かったのであった。
ミシェルの話によると、ミシェルとアイは召喚されていても別の場所で同じ存在を同時に召喚できるらしく、困ったら呼んでねとニコニコしながら話され、「そ、そうか」とその高スペック振りにリムルは若干引きながら頷いた。困ったら呼ぶかもぐらいに思いつつ。ミシェル達があまりに便利すぎるから。