リムルさんと双子らしいですよ   作:篠原えれの

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三日後

 

 リムルが武装国家ドワルゴンに到着した頃、リンが目を覚ました。

 

 「あれ、サリエルが抱っこしてくれてたの?嬉しい」

 

 ニコニコ笑顔で、

 スライムから人に戻ったリン(ミオ)はぎゅーっとサリエルを抱きしめて離さない。

 ニコニコと表現したが

 その様子は誰から見ても異常とわかるぐらいサリエルにうっとりとしていた。

 

 リン(ミオ)はすっかりサリエルに魅了されていた。

 

 「(義光じゃなくてミオなんだ、この状態のミオも可愛いけど、待て待て。ミシェルに見つかったらドヤされるところじゃない)」

 

 指パッチン。

 サリエルはミオにかけてしまった魅了を解除すべく、

 自分の性別を男から女へと変化させる。

 こうしないと、サリエルはリン(ミオ)にかけてしまった魅了を解除することができない。

 過去の自分を悔やみつつ、サリエルも女性になる。

 少しでもミオへの贖罪になればいいのだが。

 

 「もう終わっちゃうの?サリエルのケチ!」

 「ケチじゃないケチじゃ。ほんとにこの状態よくないから。俺の言葉しか聞けなくなるんだよ」

 「それでもいいもん〜!ふわふわして、心地よくて、ね〜!サリエルに戻ってよ〜!エリちゃん〜!」

 「ダメなもんはダメ!エリちゃん呼びすると男に戻ってあげないし、ミシェルだけじゃなくて、義光にも怒られるよ」

 「え、ごめん……。やめるから、元に戻らないとか言わないで〜。ひっぐ」

 「あー、俺が悪かった。だから泣かないでくれよ〜」

 

 毎回こうするとがっかりされて、元に戻ってと駄々をこねられる。

 それで女の状態の自分をエリちゃん呼びされる。イラっとしてしまい、怒ってしまうと泣かれる。

 

 分かっていたが、辛い。

 

 でもこうしないと色々収集つかなくなるし。

 離脱症状に苦しむリンも見たくないし。

 実際今も少し当てられただけで離脱症状があるのか、泣きながらダルそうにしてるリンが見てられないので話題を変えてみる。

 

 「あまりしんどいならスライムに戻れば?それならほら、抱っこしてあげられるし」

 「ほんと?抱っこしてくれるの?スライムって嫌なんだけど……それならいいかも!ありがと」

 「(あ、スライムなの嫌だったんだ。嫌なのにスライムに戻れば俺に抱っこして貰えるって悪知恵教えちゃったな)嫌なら無理にスライムにならなくてもいいんだよ?」

 「やだ!エリちゃんに抱っこしてほしいもん!」

 「……ほんとに俺のこと好きだね、はぁ。魅了解除されてるのかしてないのか、よく分からないや」

 「♪」

 

 スライムに戻ったミオが満足そうにサリエル(♀)に抱っこしてもらう。

 もはやすっかり自分の世界に入っていてこちらの言葉も聞いて貰えるような状態でもない。

 魅了は解除できてるはずだが、まるでできてないような状態だ。

 

 「(スライムに戻れば抱っこするよって、言わなきゃよかったなぁ)」

 

 途方にくれていると、ミシェルがやってくる。

 

 「……スライムでよく分からないけど、この状態のリンは義光じゃなくてミオだね。サリエル、またやったね?」

 

 怒られてる!覚悟はしてたけど、とりあえず言い訳してみよう。

 

 「仕方ないじゃないか、起きたと思ったら義光じゃなくてミオで、すぐ俺にあてられてたから俺だってやばいと思って女になった」

 「……努力したのはわかるよ。はぁ、だからあの時素直に僕と寝とけばこんなことにはならなかったのに」

 「それとこれとはまた違うだろ?!なにしれっとセクハラかましてんだキモい。というか、ミオの状態が前より酷くて……スキルに戻ろうと思ったんだけど戻れない」

 

 困り果ててるサリエルと、サリエルがスキルに戻るという言葉にすっかり涙目なミオ。

 その様子は完全に親子のような感じで、ミシェルも可哀想だなと同情する。

 サリエルに関しては自業自得なのであんまり同情してない様子だが。

 

 「……やだ。帰らないで、帰らないで」

 「そうだね。君が意固地になるとサリエルは戻れないだろうから、ミオのこの状態だけでも落ち着かせよっか」

 「頼むよ。これに関してはミシェルにしかできない」

 「やだ、やだ、ミシェル嫌い。なんで、エリちゃんから離すの、やだー!」

 「サリエルも困ってるでしょ。ワガママ言わないの」

 「やだ!エリちゃんと一緒にいるの、いる...」

 

 ミシェルがリンに手を翳すと、泣いてたリンがあっというまに落ち着いて、泣き疲れたように寝てしまう。

 

 「……ミカエルの眷属として、洗脳しないと自分の主人を落ち着かせれないのは困ったものだけど。こうでもしないとまた昔に戻ってしまうよ。今でこそサリエルはもう君を利用したりとかしないけどね」

 「毎回嫌われ役任せてしまってごめんよ」

 「もう慣れたから大丈夫……ってのは嘘でちょっと傷ついてるけどね。僕だってミオに好かれたいのにサリエルだけズルい」

 「俺のはもう呪いなんだから仕方ないだろ、何回でも言ってるけど、ミシェルだって好かれたいならやればいいんじゃんか。やらないと身がもたない時はやれよ。病むぞ」

 「……それはなんか僕のポリシーに反するからやだ」

 「お前もほんと頑固だよな」

 

 ぷいっと、好かれたいなら洗脳しろよというサリエルの言葉に傷ついたのかミシェルはそっけない素ぶりを見せる。めんどくさいなーとサリエルは思わず頭抱える。

 

 サリエルだって、自分の魅了はやめたくともやめられないのだから。

 だからこその、お前も洗脳しろよというサリエルなりの気遣いだったのだが。

 それはそれで違うみたいで毎回喧嘩になる。

 確かに、そこにリンの意見なんて皆無。

 ただ、明らかに洗脳する度に嫌われてるミシェルを見てると不甲斐なくなって、悲しくなる。

 だから多少のヨリを戻すために使っても許されるんじゃとサリエルは思うのだ。

 

 「……なんかよく寝た、ような……。あー、この感じ俺またやった?やったな?すまん、サリエル。毎回こんな感じで」

 

 土下座。目を覚ますなりサリエルが女性の姿でいて、ミシェルが拗ねていなくなってるのを確認したリン(義光)が察して人に戻るなりしたのがこれである。

 

 「いいよ。これは俺への罰みたいなもんだからさ。そんな謝らないでくれ」

 「どうする?サリエル戻るか?不本意だろ、今その状態でいても。」

 

  金髪の長髪に、青い瞳。

  あからさまに大きく変化したサリエルの容姿は、本人もあまり好きじゃないことをリンは知っている。

  今でこそ『創造神(クリエイター)』のおかげでサリエルは状態異常などない様子だが、前はその姿になると視力が見えない上に歩けない、魔法も使えないという、著しく天族としての力を振舞えない状態になっていた。

  女性になることで無理やり魅了やら特殊スキルを封印している今は、サリエルにとっても毒だということが義光にもわかる。

 

 「別にいいよ。ついさっきわかったことだけど、この姿でいてもすごく楽だしね。これで美穂がこの世界に来てもどうにかなるし。リムル驚かせたいからこのままでいるねー」

 

 さらっと話した美穂という名前に青ざめて義光が止める。

 

 「こえーこと言わないでくれよ。あいつミカエルの次に俺アンチだぞ。あともれなくその名前を呼ぶと親父も来るから言うな。(親父が美穂の奴監視してくれてるからもあるけど、ほんとなぁ。俺が死んでからもあっちはこっちの都合なんてほんとにおかまいなしだしなぁ)」

 「はいはい。」

 「のほほんとしてるけどサリエルだってあいつが名前を言っては行けないあの人並みに危険なの知ってるだろ。というか一番被害喰らうのお前だぞ。大丈夫か」

 「大丈夫ですぅ。……1時間ぐらいは持つしクソ姉貴じゃねーけど殿ぐらいはできるかな」

 「よくねーから!下手したら存在抹消されるぞお前。やっぱこの話禁句!不幸が来そうで嫌だわ」

 「はいはい。心配症だな義光」

 「心配症にもなるわ」

 

 そんな話をしながら、リムルの留守を任されたこの町にぞろぞろと庇護を求めてゴブリン達がやってきたので、住処を提供したりなどしたが、さすがに狭すぎて困り果てる。

 

 「こりゃ、広いとこに移動した方がはえーな」

 「こんなに沢山名付けもすると魔素枯渇しそうだしね」

 

 リグルドに手伝ってもらいつつ、サリエルとリンでその作業をする。

 

 「リムルが離れてる今は余計になー。魔素バンク(ヴェルドラ)いねーし。よし、『創造神(クリエイター)』を使って俺は町のバックアップだけして、町をそのままにする訳にもいかないし、リムルの『捕食者』で町回収してもらって『創造神(クリエイター)』を使ってこの場所の森を再建したあと新天地で町再建するか。アイのやつドライアドに配慮したのか分からんけど此処開拓する時にきっちり森のバックアップもとってくれてて助かるわ。そりゃ魔素切れ起こすわな」

 

 ぼそりとリムルとアイへの愚痴をこぼしつつ、リンは自分が寝ていた間のことをぽつぽつと思い出していく。リンの素直な評価に、サリエルは改めて創造神の便利性の認識を改めた。

 

 「ほんとに『創造神(クリエイター)』って便利だね」

 「だろー。というか、ミシェルが帰ってこないんだが。多分というかだろうなと思って大賢者使って確認済みなんだが、リムルのとこフォローしに行ったきりみたいだ。……はっきり言うわ。ミシェルだけずるいぞ!」

 「大賢者に頼んで俺らもリムルの方に召喚してもらう?できるんじゃね?」

 「聞いたらリムルの命令でだめだってよ。ケチ。大賢者ー!こっちにミシェルいないってこと一応リムルに伝えといてくれよー!頼むからー」

 

 と、話すと大賢者もムッとしたのかそっけなく返事が返って来た。

 

 《告。個体名ミシェルに関して、本人より今は大丈夫だからどうしても必要なら再召喚してくださいとのことです。》

 

 「ゲ、なんで大賢者そんなミシェルの肩持つんだよ。」

 

 そこは無音。完全スルーだ。

 

 「大賢者ミシェルのこと好き過ぎだろ?!都合が悪くなると答えないってなにがあった?!」

 「逆に俺はちょっと大賢者に嫌われてるよ」

 「まじか、なにしたんだサリエル」

 「リムルをちんちくりん呼びしたら嫌われた」

 「そら嫌われるわ」

 

  擁護しようがなかった。

 

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