武装国家ドワルゴン。
リムル達は徒歩で二カ月かかる距離を三日で走破したのだった。
そこで、大賢者から報告がリムルに入る。
《告。個体名リン=テンペストが目覚めました。》
「そうか。リンの様子はどうだ?」
リンが目覚めたと聞いて、リムルは少し安心する。
《個体名リン=テンペストは目覚めてすぐ、『
「えっ。サリエルってそんな魅了効果あるの?俺があった時はなんともないみたいなのに」
リムルは思わず驚く。
俺と話したときは全然普通だったけど?と。大賢者が答える。
《はい。『
大賢者は正直に答える。
大賢者の反応にリムルは思わず引いたが、サリエルが大賢者に嫌われるようなことしたんだろうなと思いつつ答える。
「うーん、なんで大賢者がサリエルの削除をリンに提案したのか分からないけど、多分リンは死ぬほどサリエルのこと大事にしてるぞ。死ぬ間際にサリエルのことを願うぐらいだからそりゃ拒否するだろ。おーい、大賢者ー。」
大賢者の反応が薄くなった。あー、これやったなと思いつつ振り返ったらミシェルが居た。気付いた時にはちゃっかり俺抱えて。
「そうだねー。ついでに僕も願ってくれたのは嬉しいけどね」
「うお、いつの間に。っていうかその容姿、完全にエドワード・エルリックじゃんか。目は赤いけど」
ミシェルの変化に驚く。声はミシェルのままだが、その容姿は完全にエドワード・エルリックで原作を知る人は驚くだろう。
この世界で彼のことが分かるのは同郷人だけなので、まぁ問題ないだろうとリムルは判断する。
「あっち(ハガレンの世界)ではこの姿で居たからね僕。エルフ耳だと目立つかなと思って。空想の錬金術師として各国を旅してた時の事思い出すよ。魔物だけより、一人は人間が居た方が安心でしょ」
ミシェルの言い分に、リムルは少し考えたが承諾する。
「その金髪もまぁまぁ目立つと思うけど...ま、いっか。来てくれるの?ありがとね。確かに俺達、魔物だけで行くのはちょっと心細かったからね。じゃぁ、ここから先は案内役のゴブタと俺とミシェルだけで、他はお留守番だな」
ここまでついてきたリグルががっかりするように聞いてくる。
「る 留守番……ですか?」
「さすがにゴブリンとデカイ狼の集団じゃ悪目立ちするからな。身なりこそミシェルのおかげでそれなりにいいけどさ。悪いけど、リグル達は俺達が戻るまで森の入り口で野宿しといてくれ」
「はい……」
しょぼりとするリグル達をおいて、出発。
「ちょっと気の毒っすね」
「まぁ仕方ないさ」
そんな会話をしながら、武装国家ドワルゴンに向けて歩く。
■
「通って良し。次!」
入国するためにかなりの人数が並んでいた。
「結構しっかりチェックするんだな」
「中に入った後は自由に動けるんですけどね」
ゴブタの言葉にミシェルが反応する。
「こっちに来てから初めての国だから楽しみだよ。リンも連れて来れたらよかったけど、ちょっと大変だったし。」
「俺も楽しみだよ。そっか。じゃぁ休んで貰わないとだな」
そうしてると、ゴブタとリムルを見つけた冒険者に絡まれる。
「おいおい、魔物がこんなところにいるぜ?」
「まだ中じゃないし、ここなら殺してもいいんじゃねぇの?」
「おい 荷物置いていけよ。それで見逃してやるよ。というか、チビがこんなところに一人で来るとかナニモンだ~?」
ものの見事にフラグ回収です。
リムルなんて、ミシェルに抱っこされてるのにおかまいなしだ。
「殺してもいいとかそんな物騒なこと言わないでください。この二人は僕の大事な友達なんです。それでも僕、これでも一応冒険者なので」
ニコニコ。笑顔で話すミシェルだが殺意マシマシである。
リムルが、やべーなとミシェルの様子を見る。
これが本物の鋼の錬金術師ならチビ呼ばわりしただけで「誰がウルトラ豆粒ドチビだってー?!」とブチギレものである。
そこでキレないあたり、エドとはまた別人なんだなぁとリムルは感心する。
「ふーん、魔物と人間がねぇ?こいつも実話魔物に化けたバケモンなんじゃないのー?」
「おい、狙うのは魔物だけだろ。子供を狙うのは無しだ」
「魔物とつるんでるガキだぜ?どうせろくでもないガキだ。殺しちまっても捕まんねーよ。というか本当に子供かどうかも分かんないしな」
「とりあえずゴブリンからやっちまおーぜ」
と、ゴブタに手を出そうとした冒険者に等々ミシェル、キレた。
「あ、やるのか?」
ゴブタに殴りかかろうとした冒険者の手を掴む。
「ゴブタ、ごめん。目をつぶっててね」
「はいっす!」
冒険者の手を掴む力が更に増す。
「お、お……おい……」
思わず冒険者も震えだす。
「前にリムルが言った3つ目のルール、覚えてる?」
「はいっす!「人間を襲わない」!」
「よし。じゃぁ耳もよく塞いでて」
「?よく分かんないけど了解です!」
律儀にミシェルの命令を聞いてるゴブタ。
そうだなゴブタってミシェルのこと慕ってたもんな。って。
「おいミシェル」
「リムルがやるとやりすぎるから僕で十分だよ。先生仕込みの格闘術と僕の幻覚で十分だから」
先生……鋼の錬金術師の先生って言ったらイズミ・カーティスのことだよな。
うわ、あれ炸裂したら痛いぞ。うわ~~。
「このガキなんだ見た目に反して無茶苦茶つええ!」
「くっそ股間狙いやがって!つか姿隠しやがったどこだよ!」
「そこにいるぞ火炎球!」
「おい馬鹿野郎どこ狙ってやがる!ぎゃあああ!」
「お、俺確かにあのガキを狙って、ひいい!」
仲間が放った火炎球がもう一人の仲間にあたり、大惨事。
「はい、これ以上酷い目にあいたくなかったらさっさと逃げる。やけどで済んでよかったね」
「ひいい!妖術使いだ、バケモノ!やっぱりこいつ人間に化けた魔物だ!逃げろ!」
わあああ。
現場はすっかり男の声によりパニック。
実際、ミシェルの幻覚によって他の冒険者もミシェルがそこに居た風に見えていたのもあり、その術の不気味さに怯えている者が多かった。
気絶した者、逃亡者や失禁者こそでなかったが。
「こら――!そこのお前――――!」
そこで、ドワーフ王国の警備隊が到着。
現在に至るのだが。
「僕は何もしてないです。友達が殴られそうになったのを助けただけです」
「そうだけど君、やりすぎ。一名大火傷して大変だったそうじゃないか。火炎球を打った冒険者はトラウマになって冒険者を引退するとか話してるぞ」
「でも被害はそれだけで済んだんでしょ。というか、僕一人に6人がかりで来てあっちの方が卑怯でしたよ。その僕を牢屋に入れて、この国の警備体制はどうなってるんですかね」
むすっと、牢屋に入れられたミシェルが解せないといった表情でカイドウをにらみつける。
「うーん……まぁ見ていた者の証言と概ね一致するが……」
すると、そこで他の兵士が入ってくる。
「隊長、大変だ。鉱山でデカイ事故が起きた!なんでもアーマーサウルスが出たとかで……」
「なんだと!?町に出てくる前に仕留めんと……っ」
「いや、そっちは大丈夫。すでに巡回のヤツらが討伐に向かってます。ただ……魔鉱石の採取のため奥まで潜っていた鉱山夫がひどい怪我を負ったようで……」
「なに!?ガルム達が!?」
「……」
「俺達空気だな」
「っすね」
「戦争の準備だかで回復薬の類は品薄だ。このままじゃ……」
「馬鹿言うな、あいつらは俺の兄弟みたいなもんなんだ。そう簡単にくたばってたまるか!」
「とにかく今あるだけの回復薬だけで……」
と、困っているのを見かねたリムルが牢屋を出てカイドウに話しかける。
「旦那、旦那」
「ん?あっ、おい何勝手に出てんだお前!」
「まぁ、まぁ。それどころじゃないんでしょ?これ必要なんじゃないんですかね。」
「これは……」
カイドウが困惑していると、リムルが説明する。
「回復薬ですよ。飲んで良し!かけて良し!の優れもの!」
ご存知、俺(大賢者)特性の回復薬だ。
まぁ、魔物から提供された得体のしれない薬なんて、普通は試そうとしないだろうけど。
ここから早く出るためにも、交渉してみる価値ありだな。
「旦那の兄弟分このままじゃ、ヤバイんでしょ?他に打つ手がないんじゃとりあえず試してみちゃどうです?」
「……お前ら、ここから出るなよ!おい!行くぞ」
「隊長マジすか。アレ魔物でしょ!?」
「うるせぇ!さっさと案内しやがれ!!」
待つこと一時間。
暇つぶしに糸を操る練習をしていたのだが、結構すごい域に達しているのではないだろうか。
「いいなぁ、その暇つぶし。羨ましいけど、僕は寝るかな」
「寝てていいんだよミシェル。あれ、わりと負担かかるんでしょ」
すぅと眠ってるミシェルを見て、大賢者から教えて貰ったけどあの幻覚はわりと負担がかかるものらしくて休めるなら休んだ方がいいらしい。
「すぴ――――」
ゴブタが寝ているのは解せんけどな!ロングスリーパーか!
「助かった!ありがとう!」
カイドウが治療薬に使ったのだろう三人を連れてやってきた。
「あんたがくれた薬がなかったら死んでた!ありがとうよ!」
うんうん。
「今でも信じられんが千切れていた腕が治ったんだよ」
良かったなぁ。
「……」
……なんか言えよ!
「いやホント。あんなすごい薬は初めて見たぜ。俺に出来る事なら何でも言ってくれ」
この一件でカイドウ達は俺を信用してくれたようだ。