先手はメリオダスが仕掛けた。ガランが振り向くと同時に飛び出し、首をめがけロストヴェインを振るう。上体を逸らし、そこから血が吹き吹き出て来てくるが、次の瞬間にはガランのハルバードがメリオダスの胴体を貫いた。
ディアレイスは何かを言いそうになるが口を噤み、メリオダスを見るしかない。だが、正面から二人のメリオダスが切りかかる。どういう事だと疑問に思うが、すぐにガランに薙払われる。斜めから切られた死体となり転がるが、すぐに姿を消し無かったように消えた。ディアレイスはそれを見ることで分析をする。
(実像がある残像……か。三千年の間に器用になった……とは違うな。あれは、メリオダスが持つ剣の特性か?
残像と言えど、メリオダスが殺られる様を見ていい気はしていない。手に力が思わず入る。だがそれよりも
(どういう事だ?本当に"あの"お兄様なのか?今の私より弱い……いや、ガランより弱いとはどういう事だ?いくら御父様の呪いがあるとはいえ……)
「後ろ……と見せかけて上か」
ガランが分身を見破り、リーチを生かした腕で、メリオダスの首をつかみ締め上げていく。残った分身はガランを攻撃するが、分身の闘級はしれているため、ガランは意図も簡単に分身を刺し殺し邪魔をさせない。
メリオダスは抵抗するが拘束され、抵抗するがびくともせず締め上げる。ガランは疑う様に
「……お前さん本当に―――あのメリオダスなんじゃろうな?どうなんじゃ?ディアレイス」
「私に聞くとはどういう了見だガラン?」
ディアレイスは眉をひそめながらガランの質問に逆に問い返す。ディアレイスの内心を知ってか知らぬか
「いや、あまりにも、歯ごたえがなくてのう。準備運動にもならんとはあのメリオダスか疑いたくなってくるのは当然じゃろう?」
つまらなさそうにガランはそう吐き捨てる。その間もメリオダスを締め上げ続けていた。
「ぐっ……がふっ……!」
首をへし折らんとばかりに握りしめているガランに対して怒りが込み上げてくるが、今更どの面下げて助ければ良いなんてディアレイスは分からない。それゆえ
「ああ、……私のお兄様である、メリオダスに相違ないぞガラン」
「お主がそう言うのなら、本当なんじゃろうが……」
つまらんと言い捨てるガラン。兄を悪く言われていい気はしないし、殺されそうになっているのに助けない自分は何をしているのかと怒りを覚えるが……。動けないでいた。
「まずいわ……このままじゃ!」
スレイダーがメリオダスの状態を見て言う。ディアレイスは思わず動きそうになるがそんな中ディアンヌは団長を助けるべく走り出す。
「団長を……」
マーリンはそのタイミングでディアンヌに掛かってる魔法を解除しディアンヌの服と神器を転送する
「
「放せ!!」
ディアンヌは元の巨人族の肉体に戻り、巨人族の衣装を纏い、神器のギデオンを振りかぶり、ガラン目掛けて振り下ろす。が……
「カアッ!!」
圧倒的差の前には巨人族の一振は一蹴に付す。相手をろくに見ることなく振り下ろされる一撃をガランは蹴り返す。巨人族の並外れた力を大地を割る一撃を持ってしても、ガランには届かずいとも簡単に蹴り返される。
打撃部分がディアンヌの頭部に命中してディアンヌは仰向けに崩れ落ちる。
マーリンは想定を遥かに超える戦力差に状況を立て直そうと行動に出る。
「一旦作戦を立て直すぞ!!」
ガランに向かって指を鳴らす。ガランの姿はその場から消え、メリオダスが解放される。よろよろとメリオダスはディアンヌに歩み寄り安否の確認をする。それを見て
(……私は……また、見ているだけか?それだけしか……できないのか!?)
何も出来ていない自分が情けない感じた。それこそ、自分が握る手から血が出ても気付かない程に。周りが瞬間移動でガランを移動させたと安堵している時にディアレイスはガランがマーリンの魔力圏内から出た事を察し、咄嗟にマーリンに
「後ろだ!」
叫んでいた。その直後、マーリンの後ろにはガランが居た。
「お前さんのような小賢しい魔術士が1番嫌いなんじゃよ儂わ」
ガランがマーリンを薙ぎ払おうとするがスレイダーが間一髪入り込み
「
自身の魔力である威圧を放つが、逆にガランの圧力に押し返され薙払われる。
「スレイダー!!」
マーリンを守る者は居なくなる。
「まて、取引といこう」
「ほう?」
「十戒のガラン、貴殿の手並みと強さは想定以上だった。……なあガラン殿。貴殿がその気になれば、我らを殺すことなど容易かろう。どうだろう、ここは一度引いてもらえないか?代わりに私は十戒が最も欲するものを与えよう。そなた達に必要なものだ。私なら用立てることが――」
ガランをこの場から立ち去らせるために交渉に出るマーリン。やり過ごすための嘘だ。やり過ごせたら作戦を立て直すだけの時間は取れると踏んでのことだが……相手が悪かった。
「マーリン!ダメだ……ガランには嘘は……!」
「お主嘘をついたな?」
ドクン!!!
呪いが発動する。体を侵食し動かなくなっていく。やがてマーリンは石像へと成り果てた。
「そ……んな……マーリン!!」
アーサーが絶望したようにマーリンの名を叫ぶ。マーリンは物言わぬ石像になり何も答えず動かない。
ガランの戒禁は"真実"。 嘘、偽りを口にすれば誰であろうと身を石にする戒禁である。それが十戒の真実のガランだ。
「大魔術士マーリン様が石像に……!!」
「魔神の王より与えられしこの戒禁に抗うすべは無し。さあ、粉々に砕け散れい!」
「やめろ……!やめてくれ!!」
砕こうとするガランを止めるべく、メリオダスは魔神化し飛びかかる。目の色が変わり、額には紋様が出ていた。
「メリオダスの闘級が4400に!!?」
その言葉とメリオダス魔神化の姿を見てディアレイスは勝てないと確信した。4400のメリオダスではガランの2万6000には届かない。
兄は犠牲が出てでも加減して戦うような人物では無いと言うのは知っている。故に、今のメリオダスではガランには勝てない。鏖殺されるのは目に見えた。そうなれば……
(お兄様が死ぬ……また、見殺しにするのか?今度は友人諸共見殺しに……。私はまた……)
ゆっくり目を瞑り、あの光景を思い出す。兄と兄の想い人である女神族の死体。魔神王に叫んだあの日の事。そして、3000年前の戦いで封印される間際に感じた虚しさを。
(もう、繰り返してたまるか……!)
ゆっくり目を開き歩き始める。メリオダスが攻め込むのと同時に、キャメロットの騎士達も突撃する。
その前に立ち、腕を横薙ぎに振るい、キャメロットの騎士達を薙ぎ払う。
「うぉぉおあああ!!?」
突撃した騎士の全てを
「大丈夫か!?」
「はい、我々は……あれ!?傷一つ無い!?」
騎士達は驚く。それもそのはずガランよりも高い闘級の魔神族の攻撃を受けたのに関わらず無傷の自分達に。そして手心が加えられている事にも驚く。明らかに殺す気が無かったからだ。
ディアレイスはアーサーとエリザベスの方を見て騎士達が無事なのを見届けて、石化したマーリンを見据えていた。その行動にガランとメリオダスも驚いていた。
「何のつもりじゃ?ディアレイ……!?」
次の瞬間、ガランの腹部に掌底が突き刺さる。
「おぐっ!?」
口から血を吐き出し動きが鈍くなるガラン。掌底からそのまま握り拳を作り、そのまま突き出す。骨を砕く音を響かせガランを吹っ飛ばす。
「ガァァアアア!!?
ガランは何度もバウンドしながら更地にした街の端まで転がる。
「ディアレイス……お前……」
メリオダスは自体を飲み込めない様子でディアレイスを見る。ディアレイスは倒れているスレイダーの服を掴み引きずり、同じ手でメリオダスを掴み空いた手でマーリンの石像を掴み、騎士達の近くまで移動し、スレイダーとメリオダスを放す。
「今のお兄様ではガランの相手にはならないだろう」
その言葉を聞き、メリオダスは肩を少し落としながらに言う。
「そうだな……お前に言われたら仕方ない」
騎士達にマーリンを丁重に預ける。それこそ膝をつき丁寧に。ディアレイスはゆっくり立ち上がり、ガランの方を見る。後ろに居るメリオダスは分かっていると言わんばかりに
「任せたぜ!ディアレイス!!」
手を挙げて言う。ディアレイスは高鳴る胸を抑えて大きく深呼吸をしてから言う。
「ああ、期待に応えるとしよう……!」
そう言った。兄と友を守り3000年前の因縁に決着をつける為、少女は十戒に反旗を翻す。
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