彩られた日々の中で、僕らは地に足着けて生きている。   作:晴口 丸

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 春のうららかな朝日に照らされ、ひらり、はらりと舞う桜の花びら達は僕たちの新たな制服姿に上機嫌に鼻歌をうったているようだ。そんな雰囲気に当てられたのか、周りを歩く同じ制服に身を包んだ生徒たちも楽しそうに談笑している。

 

「あ、ハルミ。おはよう。なんか機嫌が良さそうじゃないか」

 

 僕は「そうかもね」と軽く受け応える。彼、ヒロヒコことヒロは僕の中学からの友人だ。何かと器用でよく便利屋だったり何でも屋だったりと言われている。かくいう僕も何度か助けてもらったことがあるが、その度に色々と奢らされたので中々ガメツイな、と思いつつもなんだかんだ憎めないやつだ。

 

「クラス発表されたけど、俺ら同じ一組だ。今年も色々、よろしくな」

 

 彼の人好きする笑顔と「色々」の部分を強調するのに、はは、と小さく苦笑いしつつ教室に向かう。

 

 

 

 教室に入ると、自分達はかなり遅れてきていたのか、七割ほど埋まった席に座る同級生が、ほぼ一斉にこちらを向く。そんな雰囲気に気圧されながらも、僕たちは自分の席を探し腰を落ち着けた。席は名列順になっているようで、僕は「ミズノ」、ヒロは「コズエ」なのでかなり離れてしまい、少し孤独感を覚える。とはいえ、時間になるまですることもないので、なんとなしに隣の席に話しかけることにした。

 

「あー。僕、ミズノハルミ。北中出身なんだ。よろしく」

 

 フレンドリーを意識して、つとめてさわやかに話しかける。

すると、相手も少しぎこちないながらも、笑顔を返してくれて、

「ああ、よろしく。僕は花沢優」

 

顔をよく見ると、いわゆるイケメンと呼ばれる部類であろうその顔は、少し緊張しているのか頬がこわばっていた。

 

さて何の話をしようか、と思ったあたりでスーツに身を包んだ先生が入ってくる。ちらほらと挨拶をする人が増え、場の雰囲気が和んだところが、一気にシーンとなる。

 

 独特の緊張感に先生は満足げな顔をし、教壇についた。

 

教壇に手をつき、教室を見回す。男にしては華奢な体格がえっちらおっちらと動き回り、黒板にその名前を書く。

 

「はい。私がここ、一組の担任をすることになった、東野陽毬です。担当は数学だから、その時にはよろしくね」

少し教室がざわついた。彼、いや彼女であったらしいその人は、少し苦笑いをして、

「はは、ごめんね。私女性なので」

きっと彼女もそれについては慣れているのだろう。軽く手をひらひらと振り、ざわつきに応答する。

そんな軽い驚きはあったものの、それ以外はスムーズに進み、僕らは無事陽白高校の一年生となった。

 

 

 

放課後になり、新しく仲間になったメンバーであろう人々が固まっていき、取り残された僕は途方に暮れた。

 

「あっ、ハルミ君、一人かい? 一緒に帰らない?」

 

後ろから声をかけてきたのは先ほどのユウともう一人、じっと見つめていると、

 

「ああすまない、紹介が遅れたね。彼、湊空。同じ中学出身なんだ」

 

紹介された彼はユウとは違うタイプのイケメンだった。類は友を呼ぶとはこの事か。

ソラは落ち着いたクールな感じの雰囲気を醸し出し、軽く口角を上げて「よろしく」と言った。……意外と硬いやつではないようだ。

 

「ミズノハルミだ。よろしく。ソラって呼んでもいいか?」

 

そう言うと、彼は少し目を輝かせ、

 

「じゃあこっちもハルミって呼ぶよ」

 

何故かユウがニコニコしていた。

 

僕はあえてそれに言及せず、教室を後にする。出る前にヒロを見ると、いろんな人に囲まれていて、ここでも便利屋としてやっていくようだった。

 

 

 

 家につき、玄関を開け、奥に「ただいま」と声を変えると、おかえりの代わりに「遅ーい!」と甲高く、子供っぽい声が返ってきた。そんな怒号に軽くため息をつき、リビングのソファーにどっかりと腰掛けた声の主に話しかける。

 

「なあ、コハルよ。ただいまの返事は遅いじゃなく、おかえりなんだ」

 

妹のコハルはぷいとそっぽ向いたかと思うと、今度はきっと睨みつけてきて、

 

「冷蔵庫のアイス、ラムレーズン味だけ全部食べたのオメェだろ!」

 

となかなかに汚い言葉遣いで詰問してくる。

 

「しょうがないだろ。風呂上がりにアレを食べるのがいいんだ。それに、前回ばあちゃんにもらったケーキを半々じゃなくて勝手に一二で食べたの誰だ」

 

コハルは一瞬怯むものの、

 

「いいじゃん、優しさでしょ。小さい人」

 

……これ以上は無駄だな。そう思い「はいはい悪うございました」と適当に流して、その場を撤退する。するとキッチンに立っていた母が、

 

「おかえり〜。入学式どうだった?可愛い女の子いた?」

 

と、ポワポワとした雰囲気で口角を上げながら問いかけてくる。

 

「……別に、まだみんな探り探りって感じだし、よくわからん」

 

あえてぶっきらぼうに返すと、それが悪手だったのか、さらにニヤニヤとしながら、

 

「ハル君、よく、高校生になったら彼女の一人や二人ぐらいできて当然だろ。余裕だぜ、なんてよく言っていたもんね〜」

 

……そこを掘り返すのは本当にやめて意頂きたい。小学校六年生からいわゆるラブコメというものにハマった僕は、何故かそれらの主人公が皆一様に高校生だということで、誤った認識をしてしまい「高校生になったら、自然と彼らと同じように素晴らしい恋愛劇の果てに一生を誓いあえるような伴侶に会うことができるのだ」そう思っていた。いや、思ってしまったのだ。

 

それを心の中にとどめておくだけならまだしも、何と親や妹もいるようなシチュエーションでその妄言を垂れ流してしまったのだ。

 

僕がそのことについて軽く頭を抱えていると、コハルは右手をひらひらとふり嘆息しながら、

 

「あんた、まさかまだそんなこと考えているわけじゃないでしょうね?自分から行動しないバカがそんな幸福を享受できると思わないことね」

 

全くもって耳に痛い。ここは分が悪いと撤退した。

 




初めまして、晴丸です。拙文をお読みいただきありがとうございます。しばらくは、書き溜めをゆっくり投稿していきますので、どうぞよろしくお願いします。
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