――流星市国。東京都内に位置し、以来三千年の歴史を誇る独立国家。面積こそ小規模ながら由緒正しいこの国は、世界に滅亡をもたらす脅威「リクリエ」問題の総本山として知られている。何故なら流星市国は三千年前の「リクリエ」を決着させた特異点――。
そして今そんな流星市国の中心には。
「流星学園」「新星学園」という、人間界の内外にその名を轟かせる、二つの学園が存在していた。
新星学園。少し前に創設されたリクリエに対抗する二校の内の一つ。
「緋宮クロトです。特殊な学園という事もあって色々分からないことも多いと思うので、よろしくお願いします」
「はい、よろしくね。ほら、みんな拍手〜」
奇抜な挨拶を避け、無難に締めると、小さくない拍手が返ってくる。
「まだ小さいよ。拍手、拍手! ほら、クロト君も」
教室はさらに大きな拍手に包まれた。俺はと言えば両手を掴まれ、強制的に拍手させられる。
「トワちゃん先生、緋宮君困惑してます」
「え、ごめ〜ん。じゃあクロト君はマトイちゃんの横ね。マトイちゃん、頼まれてくれる?」
「はい、問題ないです」
マトイ、と呼ばれた女の子は先ほどいた、盾を持った人だった。
「何はともあれ、この二年B組に新しい仲間が加わったということでみんな仲良くしてあげてね」
(転入生だって。珍しいね)
(しかもこの時期に?)
(結構強かったりするのかな?)
若者が統計的に星力が高いというのはよく言われることだが、それが発現する時期はまちまちだ。だから俺のように、転入してくる人もそれなりにいると思ったのだが、そうでもないのかも。
「よろしくね、私詠野マトイ」
「よろしく。それと今朝はありがとう」
「いやいいよ。これも星徒会としての仕事だから」
つつがなくホームルームが進行し、授業の準備に入る。詠野さんに教えてもらいながら準備して、学園に入って初めての授業へ向かう。
「次の授業は星騎士学だからアリーナに行くんだよ」
「星騎士学……?」
「まあそれは直ぐわかるから。あっちが食堂、こっちは部活棟。それでこっちからアリーナに行くんだよ」
「本当に広いんだね。こっちは?」
「そっちは附属の校舎だから。間違って入らないようにね」
この学校は本当に広い。それもある意味当たり前で、新星学園だけで生徒数はなんと二千二百四十五人もいる。その全てが星力を持った生徒だから驚きだ。
「あ、マトイ君にクロト君。今朝ぶりだね」
中庭のベンチで横になっていたのは今朝の星騎士。もう直ぐ授業が始まるが大丈夫なのだろうか?
「んん? まあ大丈夫かな〜。それより、自己紹介がまだだったね。私は
「よろしくお願いします、サキさん」
「うん、星徒会関係ならマトイ、リクリエ関係ならマトイ、勉強なら……あ〜サーシャにでも聞いてくれ。それ以外ならマトイだ」
「何でですか⁉︎ 私も勉強は人並みにできます!」
「だそうだ。じゃあ今から寝るから、サーシャに会っても私のことは言わないでくれよ」
そういうや否や、すぐに目を閉じて寝息を立て始める。詠野さんの表情を見る限り、よくあることみたいだ。詠野さんはすぐに携帯通信機器――DISCを取り出すと、手早く操作し、アリーナへ急いだ。
「詠野さん、さっき何してたの?」
「マトイでいいよ、おんなじ学年なんだから。それに、みんなもそう呼んでるし。さっきはサーシャさんにサキさんの居場所を連絡しただけよ」
小さく、あの人は……と呆れるマトイ。
周囲を見回すと、もう授業が始まるみたいでかなりの人数が集っていた。
「今日は合同授業だからね。……それより、今日の星騎士学の教師は教頭先生だから、初めて見るとちょっと、なんて言うか、びっくり? しちゃうかも?」
一体どんな授業なのかと少し楽しみになってくる。そうしてるうちに教頭がアリーナに併設されているホールに入ってきた。
「揃っているみたいだな、諸君ンッ!」
筋骨隆々な見た目、これでもかとかっ開いた瞳、そして特徴的な話し方に、些かギョッとしてしまう。
「今ッ、世界には巨大なッ! 三千年以来の脅威がッ、迫ってきているッ‼︎」
大袈裟に腕を掲げ、台上をダイナミックに動き回る様子に呆気に取られる。
「予兆もなく起こる異常気象の数々ッ、ありえない地震ッ、雷ッ! 街中に溢れ出す魑魅魍魎ゥ! これら全ての原因はッ、他でもない、我々が立ち向かうべき超常現象、ンンンンリィクリエェ……に起因するゥ……」
カッと目を見開き、「リクリエ」を強調する。……授業というより演説か?
――リクリエ。宇宙の摂理にして、人間界、魔界、天界、三界全てを巻き込んだ宇宙の再構築。三千年の歴史を経て今一度自分たちに牙を剥かんとしていた。
「人間界のみならず、魔族たちの住む魔界、そして神族の住む天界も! リクリエは全てを消滅させうる最大の脅威ィ!」
「しかァし! 三千年前、選ばれし戦士たち、『クルセイダース』はリクリエを退けたァ! だァがァ、その戦いによって世界から『霊力』は失われてしまった……」
教頭はわかりやすく肩を落とし、地に膝をつく。しかしすぐに飛び上がり勢いを取り戻す。
「なァればこそォ、女神様より賜りし、星力を持ったスターナイト諸君ンン! 君たちのような存在が求められているのだァ!」
三千年以来の滅亡の危機。クルセイダースはもう存在しない。彼らに変わり、リクリエに抗うべく台頭したのが
世界の終焉に抗う戦士――。
こうして改めてそれを告げられると、武者震いにも似た寒気が込み上げてくる。
(そうか、俺はもう……
「どうかしたの?」
隣のマトイが小声で話しかけてくる。
「いや。改めて、これから俺も
モンスターに追われる日々を変えたくて、目の前の、手の届く人々を助けたくて、今日まで過ごしてきた。
普通の学校に通いながらバイト、トレーニング、バイト、トレーニング……の辛い日々だったけど。
こうして新星に通えるようになったと思えば、あの頃の毎日が報われる。
「あはは、じゃあ一緒に頑張ろう」
「もちろん」
その後も教頭によるリクリエの話は続き、俺にとっての初めての授業はとても有意義な時間で幕を閉じた。
ご講読、ありがとうございます。
本編の設定と矛盾しないことを第一に筆を進めていきます。