ティンクルスターチューン   作:晴口 丸

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星騎士達のメヌエット

「新星学園の授業……。質も量も段違いだ」

 

「熱心に聞いてたね。結構気疲れしちゃわない?」

 

「それをいうならマトイだって、ちゃんとノート取ってたじゃないか」

 

「まあね」

 

「そういえば、これ返すよ」

 

ポケットからロザリオを取り出し、手渡した。これのおかげで星騎士(スターナイト)になれたから、ちょっと複雑だが。

 

「ああ、いいよ。そのセレスティア、クロト君のものだし」

 

「え、そうなのか?」

 

「うん、これは本来、入学と同時に一人一人に渡されるものなんだ。星騎士(スターナイト)に変身するために必要なものだから、無くさないようにね」

 

 そういうと、マトイは思い出したように少し考え込む。

 

「どうした? 何か問題があったのか?」

 

「いやそうじゃなくてね、本当はこれって星徒会長から直々に与えられるものなんだけど、何でアナが持ってたのかな〜って」

 

「そっか。実は結構イレギュラーだったんだな。それじゃあ俺はこれをもらってもいいのか?」

 

「うんうん。改めて、星騎士デビューおめでとう!」

 

「ありがとう、それにしてもマトイとか、あの時いた他の面々は強かったな」

 

「それは当然さッ、転入生君ッ!」

 

真後ろから大きな声を出されて、ビックリして飛び退く。そこには筋骨隆々な男性が仁王立ちしていた。

 

「教頭先生……如何されましたか?」

 

「何、転入生を見ておこうと思ってな。貴様は……」

 

 突然懐から水晶を取り出し、目を皿のようにして覗き込む。

 

「あ、その見た目で……」

 

 たっぷり十秒ほどの沈黙の後、丁重に懐に仕舞うと、

 

「貴様は……子孫繁栄の相が出ているッ! そして、いつも誰かに見られているな!」

 

「えぇ、すごい! もしかしてそれってクロト君の運命の人なんじゃない?」

 

 マトイはキラキラした視線を向けてきた。

 

「いやでも占いでしょ? 俺はあんまり信じるタチじゃないんだけど……」

 

「我の星術は少々特殊でな、その存在の過去から総合し、未来を予測して出力するのだァ! つまり、これは過去そのものを見ているわけではないので安心しろ」

 

 なるほど、つまりは現時点で一番あり得る未来、ということか。

 

「なるほど、では心に留めておきます」

 

「精進したまえ。たくさんの生徒を見てきたからわかる、貴様は、上に立つものの資質があるゥ……」

 

「ええと……?」

 

「すごい……! なんか主人公みたい!」

 

横でマトイが騒ぎ立てるが要領を得ず、首を傾げる。

 

「部長か、委員長か、星徒会長か。……はたまた王か。それは貴様の努力次第……。楽しみにしておこう」

 

「は、はい」

 

 身に覚えのない過大評価に少しばかり萎縮してしまうものの、期待に応えられるよう、背筋の伸びる思いだ。

 

「何か困ったことがあれば、星徒会である詠野君を頼るといい」

 

「今朝も助けてくださったところです」

 

「いえ、大したことはしていません」

 

「謙遜はいい。教師側も星徒会を信頼している。市内の危機に柔軟に動き対処する……言うのは簡単だが難しいことだ」

 

 言葉の裏に教頭の強い信頼が伺えた。

 

「星徒会……そんなすごい組織なんですね」

 

「星徒会とはただの学園のトップではない。本当の意味で生徒の代表であり、星騎士(スターナイト)としてのトップを意味する」

 

 そのまま星徒会という立場について語った。この学園における代表。それが意味するのはとどのつまり、流星市国におけるリクリエ対抗組織の一角の代表であり、それを担う星徒会がいかに大きいかを思い知らされた。

 

「例えば星徒会の力を使えば、簡単に校内にジムを置くことができるのだァァッ!」

 

「いや先生の願望でしょう……」

 

 マトイの極めて冷静なツッコミで教頭はショックを受け、全く動かなくなったので、俺たちは教室に戻ることにした。

 

 

 

「ただいま〜」

 

「おかえり。学園はどうだった?」

 

 俺の母親、リノが出迎える。

 

「楽しいよ、友達もできたし。うまくやってけそう」

 

「それなら良かった。モンスターに襲われなかった?」

 

「いや、今日は星騎士の人が助けてくれたよ」

 

「そう、最近は物騒だしクロトも気をつけなさいね。……お風呂沸いてるからさっさと入ってきなさい」

 

「分かったよ」

 

「……近頃はあの人たちの行動も気になるしね」

 

「? なんか言った?」

 

「ううん、別に」

 

 少し気掛かりなものの、疲れに背中を押されて風呂に入る事を優先した。

 

 

 

 

 夢を見た。ああ、またこの夢か。そう思えるくらいには何度もこれを見る。それは俺がモンスターに襲われ、アステラに連れ去られる夢。

 

 死を覚悟した。もうだめだ。そう思った次の瞬間、周囲一帯のモンスターは全て一刀の元に切り伏せられた。

 

「――大丈夫か、少年。強くあれ、世界を飲みこまんとする力に、決して飲まれることなきように」

 

優しく見下ろすその男は一瞬にしてアステラを消滅させた。

 

地面にスッと下ろされると、俺の頭に手を置いた。

 

「君の両手には……他者を救う温かさが宿っている」

 

 彼は結局名前を教えてくれなかったけど、星騎士という存在を知り、憧れたのはそれからだった。

 

 

 

 翌日。新星と流星を分ける岐路を右に曲がって、新星学園へ向かう。

 

 校門に着いたところで空から二人の星騎士(スターナイト)が降りてきた。

 

「はい、パトロール終わり」

 

「最近はあちこちでモンスターが湧いて、予断を許してくれないわぁ」

 

 サキさんと先日の鎌使いの女性だ。二人が並び立つだけで周囲にざわめきが起こる。

 

(あれ、サキ先輩とサーシャ先輩⁉︎ カッコいい……)

(同じ星騎士とは思えないよ〜)

(サーシャ先輩に甘やかされたい〜)

(サキ先輩に耳元で囁いてほしい〜)

 

 確かに二人共すごく様になっている。一瞬一瞬を切り取っても絵になるだろう。

 

「そういえばヴィーナスに呼ばれてなかった?」

 

「呼ばれてたけど、貴方もよ? ちゃんとヴィーナスちゃんの話覚えてないの?」

 

「え? ……あー、お、クロト君。おはよう、おはよう」

 

 彼女に詰められて、慌てて別の話題を探したサキさんに苦笑しつつ、挨拶を返す。

 

「おはようございます、サキさん。それと……」

 

「ああ、彼女はサーシャ。私と同じ三年で、魔族だ」

 

「よろしくね、クロト君」

 

 色っぽく手を振られ、慌ててペコリとお辞儀する。なるほど、確かに頭に特徴的な角が側頭部から生えている。

 

「昨日は災難だったな。今日は大丈夫だったか?」

 

「いえ、襲われました」

 

「おっと、そうだったか。私たちが対処したわけではないから、他の星騎士が来たのか?」

 

「……いいえ? 自分一人で対処しましたよ」

 

そう言うと二人はピシッと動きを止めた。

 

「星騎士は一般人をリクリエから守るんですよね?」

 

「……あー、そういうのは知らないか。そうかそうか。いや、そうだよね、変身なしで素手で戦うぐらいだからね」

 

「でもやっぱりまずいわよ。……あのね? 街中でモンスターが出たとして、戦っていいのは『プリマステラ』って言う学園が認めた星騎士だけなの」

 

「そうなんですか」

 

 今までモンスターに襲われた時一人で勝手に対処してたけど、黙ってた方が良さそうだ。

 

「……まあ、要請されて出動したというより、襲われたから対処したって感じだから、今度からよろしく」

 

「そうね。過去に遡って追及したいわけではないから」

 

 そうこうしていると、突然電子音が鳴り、学園内の放送がつく。

 

『あー、あー。……これ入ってるの? マイクテス。テステステスト中……。オッケー? よしよし』

 

 何だ何だと、周りもざわついている。

 

『二年B組! 緋宮クロト! 今すぐ星徒会室に来なさーい! 全力ダッシュよ! 後サーシャさんとサキも来ること。サーシャさん、引きずってでも連れてきなさい!』

 

 三人で顔を見合わせる。俺とサキさんはポカンとしているが、サーシャさんは余裕ある笑みを浮かべて先輩の首根っこを掴んだ。

 

 周囲の人々はざわついており、新参の自分でも特殊な状況であるということは容易に想像できた。

 

「じゃあいきましょうか。クロト君、星徒会室はこっちよ」

 

「おい待て。放せ」

 

 そのまま引きずられる先輩について星徒会室に向かった。階段も引きずられて運ばれるのは流石に痛そうだった。

 




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