TS生贄娘は役割を遂行したい!   作:雲間

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 次の試合はラハイアーとオシフさんの試合である。

 のんびりとしたラハイアーであるとはいえ、実力は折り紙付きだ。

 どっちが勝つかと言われたら、ラハイアーの方かなぁと思っている。

 ユッタのこともあるし、ゲームキャラだっていうことで贔屓してるって言われたらそうなんだけど。

 オシフさんの戦い方は堅実だ。堅実すぎて一芸がなく見えるから、ラハイアーなのかなぁって思うところもある。

 お兄様にもどっちか勝つのか予想を聞き、ラハイアーの方だと回答を貰ったりした。

 ラドおじさまも同意していたので、ラハイアーが勝つんだろうなぁと思いながら試合を見ていたが……。

 

「……精彩を欠いているな」

 

 お兄様の言う通り、ラハイアーはやけに焦っている様子があった。

 ……いや、焦ってるじゃなくって動揺してる?

 ずっと険しい顔をして斧を振るうラハイアーの一撃は、微妙にへなっとしているように見える。

 結局調子を取り戻すことはできず、ひとつひとつ丁寧に攻撃を処理したオシフさんの勝利となった。

 ラハイアーは試合が終わってからも俯いたまま会場を立ち去っていく。

 一体どうしたのかと見つめていたら、お兄様がこう口にした。

 

「オシフから何か言われてから、徐々に崩れだしていた。……ま、そういう戦術もあるんだがな〜」

 

 えっ、何か言われてたの?

 全然見えなかったし聞こえなかったから、小声で言ってたってことだ。

 ……オシフさんってそういう心理攻撃する人だったのか。

 見てきた中ではしてなかったし、なんか意外だなぁ。

 お兄様の言う通りそういうのも戦術だとは思うから、心理攻撃自体は別に否定するつもりはない。

 そう、否定はしないが嫌な気分ではあるのは確かだ。

 だってユッタの大切な人だし……。

 ってそうだよユッタだよ。

 今回は同じ会場だということで、働きつつも試合は見ていたはずだ。

 あんな風になった兄を放っておけないはずだと思い、後ろに声をかけてユッタを呼び出す。

 そうして出てきたユッタは大分おろおろとした様子になっていた。

 

「かっ、カテリーネ様! いかがなさいましたかっ!?」

「ユッタさん、お兄さんのところへ行って下さい。これは命令です」

「あ、えっ、いえ! ですが! わ、私はカテリーネ様にお仕えしないと……」

「おいおーい! そのカテリーネからの命令なんだから、従うのが筋ってものだろ~?」

 

 最初こそ否定していたもののお兄様からのツッコミもあり、ユッタは目をあちらこちらに飛ばしてからぎこちなく頷きを返した。

 

「カテリーネ様、申し訳ございません。ありがとうございます。私、行ってきます……!」

 

 ユッタは礼をし、急ぎ足でラハイアーの下へと向かって行った。

 そんでもって控えてるリージーさん達に勝手なことをしてごめんなさいをしておく。

 人が突然抜けるのって大変だからさ……!

 

「皆さん、ユッタさんを勝手に抜けさせてごめんなさい」

「大丈夫です、カテリーネ様。何かがあって誰かが抜けるという事態は往々にしてございます。その為に、我々は複数人いるのです。こちらは問題ございません」

 

 リージーさんはニコッとしてそう言ってくれた。

 他の侍女さん達もうんうん頷いている。

 体制作ってくれてるの助かるけど、今回はおれのわがままでしかないからなぁ……。

 なんかお礼考えておこう。

 ……この後もおれが突然眩暈が〜とか嘘言い出して、抜け出すかもしれないし。

 

 オシフさんの勝ち上がりが決まり、ヴァルムントが次に対戦するのはオシフさんになった。

 ということは、ヴァルムントに対しても心理攻撃をしてくる可能性はある。

 ……だ、大丈夫かなぁ?

 だっておれの悪口か何か言われて、キレキレヴァルムントくんになった前例があるじゃん。

 オシフさんが何を言うのか分からんけど、それでヴァルムントくんが爆発しちゃったら……。

 でも、でもなぁ! この後ヘルトくんの試合があるんだよ!

 ヘルトくんの試合は見るって約束したし、よくよく考えたら会いに行っても見つけられない可能性もある。

 

「お兄様。出場されている方は、控室にいらっしゃるのですか?」

「基本はな。ただ自分の試合が近づいたらいてくれればいいって規則になってるから、絶対にいるとは言えない。……ヴァルムントならいるとは思うんだが、今はどうだかな」

 

 なんとも言えない表情でお兄様がそう言った。

 いつものヴァルムントくんなら確かに控室にいそう。

 調子も戻ったみたいだし、今ならいるんじゃないかとも思う。

 ……けど、空振りした時が怖すぎる。

 ひっそりと会わなくちゃいけないし、何度も席を外すのは流石にやばいし……。

 そう思った結果、後ろでゲオフさんと共に控えていたカールさんに声をかけた。

 

「あの、カールさん。ヴァルムント様が控室にいらっしゃるか、確認をしていただけないでしょうか……
?」

「ディートリッヒ様~。ボク、行っても構わないでしょうか~?」

「カール、お前は緊急に確認すべき出来事がある。他にも沢山護衛もいる。さっさといってこーい」

「承りました~!」

 

 うきうきな様子でカールさんは立ち去っていく。

 どうにか控室に居てくれよ~と思いながら、ヘルトくんの試合を見る体勢に入っていった。

 

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