さて村へと出発するぞ〜ってなった時に懸念したのはお見送りだった。
ゲンブルクに出発した時は壮大なものだったじゃん?
国として大事なことだし、まーあるよなぁって思ってたんだよね〜。
けど今回は国内で長い間滞在することもないから、城内で軽くお兄様に挨拶するだけで終わったのだ。正直ほっとした……。
村ならまだしも、ここだと人が多くて注目されるの半端ないからさ〜。大会だってそうだったし!
身分がとんでもなく高くなっても、おれの心は一般人なんですよ! ひいひい。
今回もヴァルムントくんが馬に乗って先行していて、一方のおれは馬車に乗っている。
一緒に乗っているのは、お世話とお話し係としてリージーさんとユッタ、それに我らがヒロインのルチェッテだ。
なんでルチェッテが一緒かっていうと、ルチェッテ本人の希望とブラッツ先生の代わり且つ護衛としてである。
希望の内容としては友達であるユッタが落ち込んだままなのを元気付けたいのと、後者としては行く先に何があるか分からないので、傍で治療対応もできて戦えるルチェッテが選ばれたのだ。
「それでカテリーネさん。将軍……じゃなくて、元帥とどこまで進んだんですか!?」
「る、ルチェ! そっ、そういうことを聞くのはだめだよ……!」
目の前にいるルチェッテは顔をキラキラと輝かせながら、横にいるユッタはあわあわとしながらルチェッテを止めようと必死になっていた。
そうそうそうそうそのまま止めて欲しい! けど勢いに負けてる!
おれ答えたくないのに、答えなきゃ進まない雰囲気になっちゃってんじゃんか!!
隣にいるリージーさんは「ふふふ」と笑っていて止める気なさそうだし、逃げ場がない……。
ど、どーにか誤魔化せないか!?
「あ、あの、わたくしは、……ヴァルムント様とはよくお話もするようになり、つ、つつがなく過ごしています」
「具体的にどうなんですか!? 将軍、最近すごいって聞いたから、どんな甘い言葉を言っているのか知りたいです!」
ルチェッテは興奮で前のめりになり、おれとの距離が縮まっていく。近い近い近い近い!!
結局将軍呼びに戻ってるよ!!
それに、あっ、甘い言葉!?
ヴァルムントくんはどストレートな言葉が多いだけで、そんなクサい台詞は吐かない……いや、それが甘い言葉なのか?
訳分かんなくなってきた!!
「ヴァルムント様は、その、す、素直に気持ちを伝えて下さっているだけです。甘い……かどうかは、わたくしには判別がつかず……」
「わたしに教えて下さい! それで分かります!!」
「ダメだってルチェ……」
追撃は止まることを知らず、おれはどんどん追い詰められていく。
煙に巻きたいのに上手く誤魔化せないっ……!
でも頭が回らないながらに、おれはどうにか言葉を絞り出してみた。
「会いに来てくださると、わたくしの隣に来て手を握り、……会うまで起こった物事をお話しして下さるのです。そ、そして、わ、わたくしをす……、好きだと、言って、下さり……」
あああああああああああああ! もう無理限界これ以上言えない!!
全てを拒絶すべく、顔を手のひらで覆って俯いた。
よく来るようになったヴァルムントくんは、話を終えた後必ずおれに、すっ、好きとか! 愛してるだとか!
言ってくるようになっちゃったんだよぉ〜……。
情緒たっぷり目でおれを見つめてくるしさぁ!!
も、勿論恥ずかしいだけで嫌じゃないよ!
気持ちを伝えてくれるのは嬉しいし、本当に好きだってのがすごく伝わってくる。
だからおれもちゃんと好きだって返してる!
おれだって好きなんだから! 負けないんだから!
けど、けど、も~~~~とにかく恥ずかしいったらありゃしなくってぇ……。
おれが恥ずかしさで悶えていると、ルチェッテは満足そうなため息をついた。
「純愛、ですね……。物語みたいで憧れちゃう恋愛です~っ!」
「ルチェ、もう終わりにしようよぉ……」
「とっても素敵な愛を育んでいるんだな~って……、えへへ」
ルチェッテはふふふふ笑い、それ以上の追求はしてこなくなった。
これで満足したらしい。
おれが限界だったから助かるとはいえ、特色ないことしか言ってないし、もう少し追撃してきそうだと思ったんだけどな……?
口元は覆ったまま体を起こすと、リージーさんからスッと水筒を渡された。
これでクールダウンしましょうという気遣いっぽい。
ありがたく水筒を受け取って中に入っていた水を飲み、恥ずかしさで火照った体を静めていったのだった。