TS生贄娘は役割を遂行したい!   作:雲間

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 なっ、なっ、なっ、なんなの~~~~~っ!!

 と、突然抱きしめてきてさぁ!?

 ちょっとの間ですっごい疲れた顔してたからどうしたん? って思ってたらこれよ!!

 う、あ、ああ、ち、近過ぎる、近過ぎる!

 心の準備も何もないまま抱きしめられるのはビビるっての!

 動揺しすぎて思わずそのままでオッケー出しちゃった……。

 バクバクする心臓がある程度おさまってから、いつまでもおれを抱きしめたまま動かないヴァルムントに声かけする。

 

「あの、ヴァルムント様。お疲れのようでしたが、どうしてそうなられたのか聞いてもよろしいでしょうか?」

「……明確に分かるほど、私は疲れた顔をしておりましたか?」

「はい」

 

 ほんの二時間くらいでのコレは当然ビビるでしょ、一日挟んでってなら何かあったんだなって納得するわ。

 おれの返答にヴァルムントは一度強くぎゅっとしてきてから、体を離した。

 ど、ドキドキするからやめぇい!

 

「ヘルトより、ラハイアーが何故重い雰囲気を漂わせているのか話を聞いて欲しいと頼まれたのです」

「ヘルトくんから?」

 

 なんでヴァルムントに頼んだんだ……。

 ヴァルムントとラハイアーって相性良くないんじゃないか、って考えるのが普通だと思う。

 だって生真面目堅物ちゃんとヘラヘラ詐欺(できてない)師だよ? 想像がつかん。

 

「はい。周囲の人間からでは解決が難しいと判断し、違う切り口を探していたようです」

 

 一番近い存在であるユッタが駄目で、リーダーであるヘルトくんや仲間達からでも解決できなかったからヴァルムントにいったの?

 へ、ヘルトくんつっよ……、流石主人公なだけある。おれだったらいけないわ。

 それはそれとして相当仲良しになっているよね君達。ちょっとジェラシ~感じちゃうわよ!

 

「では、夕食後にラハイアーさんへ話しに向かわれたのですか?」

「……そうです。しかしながら、良い結果にはならず……」

 

 そりゃそうだろうねとしか言えねえ。

 ……まさか頼み事が達成できなかったから、どうすればよかったのか悩んで疲れてたの? ま、真面目過ぎる。

 おれは真面目ちゃんなヴァルムントくんが好きだし、そういうヴァルムントくんだから周りから慕われているんだろうけど、もうちょい肩の力抜いてくれって思うよ。

 

「ひたすら妹は悪くない、全部己が悪いのだと主張を繰り返され、原因について話を進められず後日となりました」

「ええっと……?」

 

 ラハイアーにとってヴァルムントはとんでもなく雲の上な人のはずだ。

 解放軍の人達には気安くできても、お兄様やヴァルムント相手に一対一はいつもの調子ができなかったのかも。

 ユッタを気にしてるし、自分のせいでユッタの仕事に影響が及ぶのを恐れたとか?

 おれの侍女をしてる以上、ヴァルムントの一言で仕事飛ぶんじゃないかとか考えてそー。

 ……てか、ヴァルムントくんはラハイアーが詐欺できてない詐欺師って知ってんのかな。

 この様子だと知らなそう。

 

「私は、どうすれば穏便に話を進められたのでしょうか……。このままではヘルトに面目が立ちません」

「ヴァルムント様……」

 

 いやー、あっちが暴走しただけでヴァルムントくんは悪くないんじゃない?

 まぁ向こうからしたらヴァルムントがとんでもなく怖く見えてたかも。

 圧迫面接状態が余裕で想像できる〜。

 そしてヴァルムントはヴァルムントで、ヘルトくんからのお願いだったのにちゃんと果たせなくて、落ち込んで考えまくってたんだな。

 とりあえず慰めるだけ慰めておこう。

 今度はおれからヴァルムントを抱きしめにいって、背中をぽんぽんする。

 

「また後日、お話するのですよね?」

「はい」

「大丈夫です、次はきっとラハイアーさんも冷静になってお話できます」

 

 ラハイアーは逃げるに逃げられない状況だから、もう話すしか択がないと思うんだよな。

 しかしラハイアー、何やったの?

 それとも、できてもいない詐欺についてヴァルムントから問い詰められるんだと思ったのかなあ。

 全然詐欺できてないとはいえ詐欺する意志がある上に、どうなったのかの顛末がその場で確認できないから、怒られるのは確実では?

 もしかしてヘルトくん、それ込みでヴァルムントに依頼してたり……?

 お、恐ろしい子ッ!

 

「……ありがとうございます。情けない姿をお見せしました、申し訳ございません」

「いいえ、情けなくないです。……わたくしの好きなヴァルムント様であることに変わりございません」

 

 君は情けないって言うけどさぁ!

 おっ、おれが好きなヴァルムントくんに変わりないんだからさぁ!!

 ヴァルムントくんがヴァルムントくんだからこその結果じゃん。

 だから、そんな、その、卑下しないでほしいなーって……。

 精一杯力強く抱きしめると、応えるようにヴァルムントからも抱きしめられた。

 

「……それでも精進いたします」

「ヴァルムント様は十分頑張っていらっしゃいます」

 

 堂々巡りになるだろうから突っ込まないけどさぁ、これ以上頑張ってどーすんの。

 ヴァルムントくんらしいなぁと思いながらも、その日を終えたのだけれども……。

 

「ヴァルムント様……」

 

 翌日ラハイアーと話し合ったっぽい後に見たヴァルムントくんの顔は、もっと酷いものになっていたのだった。

 あ、ああ〜……。ラハイアーお前ヴァルムントくんに何を話したんだ……。

 

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