TS生贄娘は役割を遂行したい!   作:雲間

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 真面目すぎるヴァルムントくんを励ました翌日。

 早々に屋敷を出発して、次の街へと向かっていった。

 ゲンブルクほどの日程はかからないとは言っても、現代日本じゃ考えられない日数がかかる。

 鉄道なりなんなり欲しいなーって思っちゃうな〜。

 でも出来上がるのって百年くらい先……、だったと思う黒歴史トラシク3辺りなんだよねえ。

 そんな時代まで生きてる訳がない。

 どうやっても使えない技術に夢を馳せつつ、馬車に揺られていく。

 

 今日も昨日と同じ面々で乗っており、今はユッタとルチェッテが楽しそうに会話をしている。

 主人であるおれを置いてそんな風にしていいの? って思われるかもしれないが、誰に見られてる訳でもないから自由にしてくれと前々から周辺に頼んでいるのだ。

 ユッタ以外の侍女さん達は、自重気味ではあるんだけどな!

 ……恋愛関連の時だけはすんごいきゃあきゃあしたりはする。

 自由にして欲しい理由は単純だ。無言の空間が苦しい。

 お澄まし顔で過ごすことはできるけどさぁ! 毎日毎日これは嫌じゃん!

 当然、ちゃんとしなきゃいけないところではちゃんとしてもらってる。

 

 って、そんなことはどうでもよくて。

 ユッタがこの様子だから、昨日のラハイアーについて何も知らないみたいだ。

 だからなー、ちょっと聞いてみるのも憚られるんだよね……。

 多分ラハイアーもユッタには知られたくないと思うんだよ。

 なので頑張って昔の知識を掘り起こそうとしたけど、全然思い出せない。

 そこまでこの兄妹について深掘りしたこともなかったから、すぐに思い出せたのは義兄妹であることに憤慨してる怪文書くらいだという悲しい事実しか出てこなかった。

 もー、怪文書に重要なことを書いておいてくれよ!

 

「それでそれで、カテリーネさん!」

「はい、なんでしょうか?」

 

 急にルチェッテからおれへボールが飛んできたな。

 うっ、な、なんか昨日の再来の予感が……。

 

「昨日元帥と過ごされてたみたいですけど、何話してたんですか!?」

「……業務のことでお疲れでしたので、そちらのお話をしました」

 

 嘘……ではないはず。嘘ではないはず!

 とても大雑把に言うとラハイアーはヴァルムントの部下みたいなもんだし、部下の悩みを聞くのは上司の仕事みたいなところあるから……。

 ユッタがいるから馬鹿正直に話せないし、頼むから誤魔化されてくれ〜!!

 

「どんな風に癒してあげたんですかっ!? 参考までに聞いてみたいな〜なんて……」

 

 ルチェッテはほんのり頬を赤らめ手先を遊ばせながら、照れた笑顔でおれに聞いてきた。

 ユッタも真剣な表情で頷いている。

 うん? 考えてた展開とちょっと違うな?

 ユッタがあわあわしつつ、ルチェッテはワクワク笑顔のまま聞いてくると思ってたわ。

 どうしてなのかと頭をぽくぽくさせて考えるまでもなく、理由がすぐに分かった。

 ルチェッテは最近忙しなくなっているヘルトくんを癒したいから聞いたのだと!

 あれ? もう二人付き合ってたりする? 2じゃまだだったよね?

 既に付き合ってたらルチェッテはちゃんと言ってくれそうだから違うか。

 んでユッタはそれを知っているから同調していると。

 ということは言ってるままなんだろうけど、おれ達のは大して参考にならないよ?

 てっ、てか! おれは話を聞いて励ましただけで、癒したとかそんなのではなくてだね!

 ……けど、恥じらいながらも聞いてくるおれらのヒロインルチェッテを無下にできないよぉ。

 

「お話を伺って励ましただけです。それ以外は何も……」

 

 抱きしめられたり、おれからも抱きしめたことを言うのは恥ずかしすぎて無理!!

 火吹きそうな顔を冷ましたいと思いながらもそう言ったのに、ヒートアップしたルチェッテは立ち上がって止まらない。

 

「絶対それだけじゃないですよねっ!?」

「ほ、本当に何も、」

「教えてくださいっ! わたしには必要なんですっ!!」

 

 必死すぎる~~~!! おれじゃない人達から参考にしてくれ~~~!!

 ひんひんしながらも、さっさと終わらせる為に事実を吐いた。

 

「た、互いに……、だ、抱きしめたりしました……」

「なっ、な、なるほどぉ……。なるほど~っ……!」

 

 ルチェッテはもっと照れた顔になってゆっくりと静かに座った。

 自分とヘルトくんでその状況を想像したのか?

 うんうん頷きながらユッタがルチェッテに「元気にな~れっていけばいいんだよ!」と助言していた。

 その助言はちょっと違うような気もする。

 チラっとずっと静かだったリージーさんを見たら、リージーさんは黙って頷きを返してきた。

 えっ、いいの? それでいいの!?

 何故か話は最終的におれが悶々とするという結果に終わったのであった。

 

 

 ◆

 

 

 今日の夜はある村の近くで野営となった。

 村だから大人数で泊まれるスペースがないのだ。

 宿屋っぽいところがあるにはあるけれど、諸々の理由で警護しにくいからってことでナシになったんだとか。

 そんな大きくない村だから、夜中に人がぞろぞろいるのは物騒すぎるし結果的に野営でよかったと思うわ。

 いくらおれがお偉いさんとはいえ、そこに住む人へ迷惑をかけていい理由にはならない。

 ……お偉いさんだからこそ、が正しいか。変に悪印象を与えたくないし。

 テントの準備とか、すごい大変なこと兵士さん達にしてもらっているってのはあるけれども!

 そんなことを思いながらもご飯を食べて体を綺麗にして。

 そろそろ寝ようかと思って侍女さん達に声をかけようとしたら、外からヴァルムントの声がかけられた。

 侍女さん達は一斉に「あらあらうふふ」の顔をしながらそそくさと去っていき、入れ替わりでヴァルムントが入ってくる。

 真っ先に見たその顔は、昨日よりも断然疲れた顔をしていた。

 ラハイアーから話を聞いたっぽい。

 ヴァルムントくんをこんな状態にするって、何を話したの?

 

「ヴァルムント様、大丈夫ですか……?」

「……カテリーネ様」

 

 速足でヴァルムントのところへいくと、すっごい眉間に皺を寄せながら小声でこう言ってきたのだ。

 

「人を納得させるにはどのようにしたら良いのでしょうか……」

 

 ……はい? ど、どうしたん?

 ガチで何をヴァルムントへ話したんだラハイアーは!

 おれが頭を混乱させていると、ヴァルムントくんは経緯を話し始めた。

 それは、おれが知らなかったラハイアーが詐欺師になろうと思ったきっかけの話だった。

 

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