ヴァルムントくんは順調にラハイアーと仲良くなっているみたいだ。
街に泊まった夜に狭いおれの部屋へ来たヴァルムントくんの顔は、ここ二日とは違って通常運転の顔になっていた。
「ラハイアーさんとのお話はいかがでしたか?」
「多少話をした程度ですが、僅かながらに怯えるのは少なくなりました」
おれはベッドに座りながら、近くに立っているヴァルムントくんの話を聞いていた。
マジで寝るだけの部屋だから椅子ないんだよね〜。
こういう時は侍女さん達も全員は入ってこない。
代わる代わるやるべきことをやって、部屋から出たり入ったりを繰り返すのだ。
……今は部屋から完全に出て行っちゃってるけどね!
「きっと、この調子でいければ話してくださるのではないでしょうか」
「はい。そうだと信じ、話していきます」
「……そういえば、ヴァルムント様は何をお話なさっているのですか?」
ヴァルムントくんがラハイアーみたいなタイプと世間話してるイメージがないんだよな。
すごい内容気になる~、教えてくれ!
ニコニコしながら聞くと、ヴァルムントは何度か瞬きをしてから語り始めた。
「強さとは何かを聞いています」
「強さ……、ですか? それはラハイアーさんが詐欺師が一番だと思っているから聞いているのでしょうか?」
「そうです。彼の中にある『強さの基準』が分かれば、詐欺師が一番ではないと理解してくれるのではないかと思ったのです」
思ったよりド直球に真面目な話をしていた……。
世間話とかで仲良くなってから詐欺師が一番な理由聞いていくのかと思ってたよ!
よくよく考えればそうだよね、ヴァルムントくんだもん。おれの想定が間違っていたよ……。
「ラハイアーさんはどのような答えをされたのですか?」
「彼の中で『強さとは何か』が明確な言葉にできない様子でしたので、考えておくようにと伝えました。今後も同類の問いかけをし、彼の真意を探っていこうと思っています」
ラハイアー、まともに答えられなかったんだろうな。
きょどっているのが簡単に想像できる……。
確かに、強さってなに? って突然問いかけられて、すぐに答えが出るかっていうと出ないかなぁ~。
強さにも色々な『強さ』があるじゃん。
力が強いとか心が強いとか、権力だったり魔法だったりなんなり沢山。
その時々で変わったりするもんだし、ふんわりと『強い』って思っているのを言葉にするのって難しいよねぇ。
まー急ぐもんでもないから、ゆっくり進めていけばいいんじゃないかね~。
「ゆっくり進めていきましょう。そして、無事に解決できることを願っております」
「ありがとうございます。……カテリーネ様、ひとつお伺いしたいのですがよろしいでしょうか」
「はい、なんでしょうか?」
「今朝うなされていたと耳にしましたが、本当にお体に不調はございませんか?」
侍女さん達の誰かから聞いたの!?
ええ~、いや、まぁ、そりゃ報告するか……。
おれが体調崩したら、それだけで色々と予定組み替えないといけないもんな~。
でもおれ全然覚えてないし、汗でちょっと気持ち悪かっただけでそれ以降は特に何もなかったから、聞かれるまで忘れてたくらいなんだけども。
「大丈夫です、ヴァルムント様。わたくし、ヴァルムント様から確認されるまで忘れていたのです。うなされた内容も覚えておりませんし……」
「……そうですか。何かありましたら、必ず私にお伝えください」
「勿論です。心配をかけてごめんなさい、わたくしは元気ですから」
とびきりの笑顔をヴァルムントくんに振るっておく。おれは元気やぞ!!
笑顔を受けたヴァルムントくんは何故か神妙な表情になり、膝をついておれの手を取った。
「私にとっての一番は貴女です。貴女の為ならば、私はどんなことも厭いません」
なんでいきなりそんな話に飛んだ!?
動揺と動悸で心を乱しつつも、無茶すんなよと言っておく。
「わたくしの為に動いて下さるのは嬉しいですが、無理はなさらないで下さい」
「無理では……、いえ、はい」
言葉飲み込んだな~?
押し問答になるだろうから、追及する気はないけどさ~。
そんなこんなで話が終わってヴァルムントくんが部屋から出ていき、侍女さん達が戻ってきた。
寝る準備を進めてくれて、寝る準備は満タン!
明日こそ寝坊しないぞ~と就寝した翌朝。
「……ネ様! カテリーネ様!」
目が覚めると昨日と同じく隣には心配した顔のリージーさん、おどおどユッタ、困惑顔の侍女さん達、汗びちょびちょな体という状況が出来上がっていた。
「……わたくし、どうなっていたのでしょうか」
「本日も魘されていました。お体は」
「問題ございません、早く朝ごはんに参りましょう」
今日もバッチリうなされていたらしい。
あのあのあのあの、本当に何も覚えていないんですが……。
心当たりがなさ過ぎて困り果てながら侍女さん達により早支度を受け、さぁ部屋を出るぞ! って時にヴァルムントくんがやってきてしまった。
侍女さん達が部屋を代わる代わる出ている間に誰かが報告しに行ったっぽい。Oh。
やべー、急がなきゃって気持ちが大きすぎて口止めお願いするの忘れてた~……。
パタンと扉が閉められておれとヴァルムントだけの空間になり、めちゃくちゃ気まずい雰囲気が流れていく。
「カテリーネ様」
「本当に大丈夫です! 少々夢見が悪いだけです、気になさらないでください」
たまたまそういう日もあるって!
実害もないし、全部が全部こういう対応してたらキリがないって~!
なあなあでおれが終わらせようとしていたのに、ヴァルムントくんはおれに衝撃の一言を言い放ってきた。
「本日から私はカテリーネ様と共の部屋で過ごします」