真面目な話さぁ、ヴァルムントくんはおれを帝都に送り届けた後に国中を回る予定になっている。
ずっと一緒に寝るのは不可能だから今試しておくのは必要でしょ!
そう説明しているのに、ヴァルムントくんはずっと渋った顔のままだ。
「理由を教えていただけないでしょうか?」
「……その、…………」
いつものヴァルムントくんならスパッと言ってくれるのに、やけに歯切れ悪いな?
逸らされた目線の先に移動をして、ヴァルムントくんの顔を見上げた。
「わたくしはヴァルムント様に負担をかけたくないのです。これからのこともございますし、ここでならばわたくしは安心して眠れるかもしれません。一度だけ試させてほしいのです」
お願いお願いおねが〜い!
胸前で両手を組み上目遣いをし、気持ちウルウルした目にする。
美少女が……、すっ、好きな人がお願いしてるんだぞ!
黙って了承せんかーい!
攻め攻めの主張をすると、見つめている先のヴァルムントくんは目を細めて眉尻を下げた。
「……カテリーネ様」
「はい」
「カテリーネ様は……、」
言葉は続かず、そのまま口を閉じてしまった。
う〜ん? 見た感じ、シリアス系の問題だから言えないとかではなさそうなんだけど……?
なんかすっげー気まずそうっていうか。
正当な理由があったら絶対に言ってくるのがヴァルムントくんだ。
それなら問い詰めまくってもいいかな〜と思い、おれは小首を傾げて追撃する。
「ヴァルムント様、どうかお願いします」
プリーズ! プリーズ!
駄々っ子を続けていると、ついにヴァルムントくんを押し留めていたものが決壊したらしく、すごい渋い顔をしてから言葉を吐いてきた。
「貴女は……、ご自身の魅力を自覚できていらっしゃらない」
「え?」
「カテリーネ様、貴女は人々を強く惹きつける力があります。私も貴女に惹かれたその一人です」
お、……おう?
そりゃおれは美少女だし? 人々を魅了しちゃうのも訳ない。
ヴァルムントくんがおれを選んでくれたのも、その理由の一つだと思ってるし。
とはいえ話の先が見えなくて、頭の上に疑問符を浮かべながら静かにしていた。
「ですが、だからこそ……、……私は許せないのです」
「許せない……?」
ヴァルムントはおれの組んでいた両手を上から包むように手を添えてきた。
伝えることを覚悟した目が、おれを貫いていく。
「貴女は無垢すぎるのです。私は……、私は貴女のそのような姿を見て戸惑うと同時に、誰にも見せたくないと強く思いました」
おれの両手を覆い隠す手のひらに、ギュッと力が入ったのを感じた。
「貴女の無防備な姿を見ているのは私だけが良いと、見ることを誰にも許せないと思ってしまった。カテリーネ様の傍にいるのは私だけの特権であると、醜い心が貴女と離れる選択をとりたくないと、叫んでいるのです」
ヴァルムントの手はおれの後頭部と背中へと回っていき、柔らかく抱きしめられる形になる。
体と体が触れ合っている箇所はとても熱く、おれの心もバクバクと鼓動が早まっていった。
「今の私が安心していられるのは貴女の隣です。ですからどうか、貴女の隣に居続けることをお許しいただけないでしょうか……」
ここでおれが拒絶するのは簡単だ。
ヴァルムントくんはあっさり「分かりました」と言って、別々で眠るのを良しとしてくれるだろう。
でも、あのヴァルムントが、盛大なる独占欲を発揮して!
恥を忍んでおれ相手にむき出しの感情を見せてくれている!
ならおれもちゃんと応えるべきだと思って、顔を笑顔にしながらヴァルムントの背中へと手を回した。
「そう思って下さっているのは、とても嬉しいです。わたくしも、このように気持ちを伝えてくださるヴァルムント様は誰にも見せたくありません」
一生懸命におれへ思っていることを伝えてくれたヴァルムントが好きだ。
からかい続けるのもおれだけがいい。
同じ独占したいという気持ちを持ってくれているのが、何よりも嬉しかった。
だから、まぁ……、別々で寝なくてもいっか。
今後なんとかなるっしょ!!
そういう楽観的な考えで、ヴァルムントくんと一緒に寝るのは継続となったのだった。
あんなこと言われちゃあね、へ、へへ……。
……それはそれとして、きっ、キスがあってもおかしくない流れだったと思うんだけどっ!
なっ、なーんもなかったな!?
就寝の準備が入って普通におやすみを言って終わったな!? なっ……。
……この辺に関しては、いつ進むんだ……?
一抹の不安を抱きつつも、この日の夜は終わったのだった……。