TS生贄娘は役割を遂行したい!   作:雲間

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 ヴァルムントは村周辺の確認をしに行き、おれはゆっくりしたいからと家に戻って一人で部屋に入ると、持ってきた荷物を除いて元々そんなに物がなかった部屋がもっと簡素な状態になっていた。

 これはおれが侍女さん達に頼んだことで、城に持ち帰ったりする物の整理や処分をしてもらったのだ。

 片付ければ誰かがこの部屋使えるでしょ。

 多分この村にも戻ってこれないし……。

 ちょっぴり寂しくなった気持ちを、隠し部屋で見つけた2冊の本を読み解くことで紛らわせることにした。

 兵士さんから借りたんだよね〜。

 そ、それに? 古の時代に起こった出来事とかが分かったら、ヴァルムントくんが喜ぶかもしれないし?

 勿論、早めに何かしら異変を解くきっかけが分かるのが一番ではある。

 早速ベッドに腰掛けて、前見ていない方の本を開き中身を見ていく。

 ……う〜ん、やっぱりこっちも読み上げができるだけで何も分からん。

 同じ文章が冒頭にはあれど、その後は違う文字が続いてるし。

 プロローグとかでも書いてあるのか?

 いや~、流石にあんな隠された場所へわざわざ小説を隠さないでしょ。

 仮に黒歴史だからってにしても、あそこまでやる意味分からんわ。燃やせばいい話になる。

 城に戻ったら歴史とか詳しい人へと本を渡すことになっているとはいえ、今分かる限りのことはやりたい。

 しばらく文字をじーっと眺め、なんなら読み上げてみたりしていたら、妙に引っかかるような感覚があった。

 そのまま見つめ続けていると脳裏に何かが浮かびかがってくるような──

 

「カテリーネ様、よろしいでしょうか?」

 

 ノック音と共にリージーさんから声をかけられ、意識が現実に戻っていった。

 

「はい、大丈夫です」

 

 いつの間にか時間がかなり経っていて、そろそろご飯になっていたみたいだ。

 申し訳ね~と思いつつ立ち上がり支度に来た侍女さん達を迎えたのであった。

 

 

 ◆

 

 

 ちゃんと休めていないのではないかと本を読むのは止められ、のんびり村の人と話をしたりでもう寝る時間になった。

 明日は探索を再開させるのもあって早めに寝るべく支度も済ませたが、寝る前にヴァルムントくんへ言ってやらねばならないことがある。

 人前で堂々と最愛とか言うなってことを!

 だから先に寝ていていいと言われていても、おれはヴァルムントくんが来るまでベッドに座って起きていたのだ。

 そうして、静かに扉を開けて中に入ってくる軽装のヴァルムントくんとバッチリ目が合ったのである。

 

「カテリーネ様、起きていらしたのですね」

「ヴァルムント様にお伝えしたいことがございまして……」

 

 こういうのってさ~、早めに言っておかないと被害甚大になるからさ~。

 いやまぁ最初から言っておけって話ではあるんだが、言った方がいいって気がつかない時ってあるじゃん?

 なのでちょっと恥ずかしさはあるものの、今後の為にもはっきりとヴァルムントへ伝えることにした。

 

「……あの、」

「はい、なんでしょうか?」

「ええと……」

 

 ……ど、どう言葉にすればいいんだ? 

 い、いや~、その、ヴァルムントくんが最愛だとか言ってくれること自体は嬉しいのには変わらないし……。

 ま、まっすぐで大変よろしいかと思います。

 それはそれとして、う、うう、ううう~ん……。ううううう~~~~~ん!

 く、くそう! いい言葉が思いつかないっ、こうなりゃヤケだ!!

 

「ヴァルムント様」

「はい」

「あ、……愛の言葉は、わ、わたくしの前だけにしていただけないでしょうか……?」

「は……、……は、い?」

 

 あまりにも唐突な話すぎたのか、ヴァルムントくんが話が読めなくて困惑してしまった。

 ええーん、こっからしっかり説明するの恥ずかしいよー!

 全身から火を噴きだしながらも懸命に説明をしていく。

 

「その、訓練されていた時にヴァルムント様がわたくしのことを、さ、最愛だと……。み、皆様のいる前で……!」

「……カテリーネ様」

 

 これ以上言わせんな恥ずかしい!!

 ヴァルムントはひいこらしているおれの前で片膝をつき、目線を合わせてきた。

 

「私はただ事実を言っている認識でした。それがカテリーネ様のご負担になっていたのであれば、大変申し訳ございません」

「ふ、負担ではないのです! 言って下さるのは、う、嬉しいのです……」

 

 みんなの前ですっぱり言い切れるほど気持ちがあるってことだから、そ、それはそれで嬉しいっていうか……。

 吹っ切れ始めたヴァルムントくんにおれがびっくりしてるだけともいう。

 膝の上で両手をこすり合わせていたら、ヴァルムントがその手を上から包んできた。

 

「……本当は、私が皆に知らしめたかったのです。貴方を深く愛しているのは、貴方の婚約者であるのは私であると」

「え……?」

「近頃、欲が出てかないません。どうすれば私のこの欲望は止まるのでしょうか……」

 

 軽く困ったように微笑みながら、ヴァルムントは強く手を握ってくる。

 ひえ、……えっ、あ、あ、あああああ!?

 おっ、お、お、お、おれを、じっ、自分のものだぞーって言いたかったってこと!?

 そんな、それって独占欲じゃんかー!?

 ふ、ふーん? そ、そんな風に思ってくれちゃってた訳なんだな!? な、なるほどな〜!?

 恥ずかしいんだか嬉しいんだか、色んな感情がごちゃ混ぜになって口をもにょもにょとさせながらも許してあげることにした。

 これで禁止しちゃうのは違う、って思ったんだ。

 

「……やっぱり、いいです。そんな風にわたくしを想って下さっているのが、何よりも嬉しいと分かったのですから」

「カテリーネ様……。とはいえ、私は多少なりとも抑えられるよう努力いたします」

 

 ま、まあ? 心がけてくれるんならそれに越したことはないかな!?

 ふふんふんふんとしながらも、どうにかこの話を和やかに終えたのであった。

 

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