オプファン村に行く前日の昼間、お兄様が忙しい合間を縫っておれの部屋へと訪ねてきた。
いつも通りソファに並んで座っていると、お兄様が少し窺うような雰囲気で話を始めていく。
「あ~、その、だな。……もしかして、カテリーネは宝石好きじゃなかったりするか?」
今日つけている、宝石のついた綺麗な髪飾りを見ながらそう言ってきた。
細かな羽を模った金細工に緑色した宝石の煌めきが絶妙に合わさっていて、とても美しい逸品だ。
普通に「うわ〜すげ〜」って思いながら受け取ったと思うんだけどなぁ……?
好きじゃないってどうして捉えたんだ?
「嫌いではございません。お兄様から頂いたこちらの髪飾り、わたくしは好きですよ」
なんてったって、お兄様がおれを想って選んできてくれたからだ!
その上、お兄様センス良いんだよね〜。
美少女たるおれにしっかり似合う髪飾りを選んでくれている。
お兄様は側から見たら、シスコンなこと以外は完璧人間だ。
宝石に関しては……、美少女たるおれを飾り付けるのには必要なものだと思っているよ。
それ相応の地位に着いてる人間は、それ相応の格好をしなきゃいけないのもあるし。
外の人にも身内にもみっともない姿は見せられない。
おれ自身は質素が一番楽だな~って思っているが、それで周りを貶されたりするのは耐えらないわ。
しかもさ〜、ちょっとでも粗があると、めんどくさいことに舐められたりするんだよ。
特にヴァルムントくんやお兄様のことが好きな人とかにな。
おれにそういう態度とってもどうにもならんのにね〜。
ぐちぐち言う暇があったら、その暇で別の努力をしてほしいわ。
とにかく、結論としては特別宝石が好きではないって感じだなぁ~。
「そうか〜。お兄ちゃんとしてはお前がすっごく気に入ってくれるものを贈りたくてな〜」
「こちらも素敵ですよ? お兄様が選んでくださる物は全て洗練されていて、毎回嬉しく思っております」
いや、そりゃ時々何故それを……? ってものはあったりするが、おれに贈りたくてうんうん唸りながら吟味しているお兄様を想像すると、全部愛おしくなってくるっていうか。
だから本当に嬉しいんだよね。
「ありがとな! ……じゃなくて! お前が毎日持っていたい! って思うくらいの特別なのを贈りたいんだよ〜」
どストライクのものを贈りたいってこと?
と言われてもな〜、贈られたものは全部嬉しいしな……。
そもそもお兄様から沢山贈られているのを日替わりでつけたいし。
……ヴァルムントくんからは何もないのかって?
なんか現物を贈るの苦手っぽいんだよね〜。何かくれるとしても基本消え物だ。
多分考えすぎてダメになってるんだと思う。
ま、ヴァルムントくんのことは置いておいて、今はお兄様だ。
「そうですね……。それでしたら、お兄様とお揃いのものがいいです」
お揃いだとお兄様も喜んでくれそうだし、おれにとってもお揃いであるという特別なものになるのは間違いない。
絶対お兄様喜ぶでしょ〜。
そう伝えると、お兄様はポカーンとした顔でおれを見つめていた。
「お兄様?」
「……お、……お揃い?」
「え、ええ。……駄目でしょうか?」
「……お揃い!? いっ、いいのか!? お揃い!? いいのかカテリーネ!? お、俺と、お揃い!?」
同じことを何度も繰り返しておれに確認し始めた。
ええ……? そんなに予想外な話だったか、これ?
「はい、お兄様とお揃いのものが欲しいです」
「そっ、そ、……そうか。そうかぁ……!」
舞い上がっているという言葉が相応しいほど、お兄様は喜びを噛み締めていた。
お揃いにするのを遠慮してたのか?
ま~確かに今更兄妹でお揃いなんて、ちょっとアレだとはおれも思うよ?
思うけど、一番お兄様が喜んでくれるのはこれだと思うからさ。
こういうのでは羞恥心をかなぐり捨てるのが一番なんだよ、うん。……うん!
お兄様が幸せであるのが何よりも大事!
「なっ、なら! ブレスレットとかどうだ!? ……お、お兄ちゃんとお揃いの目の色をしてる宝石を入れたのとか!」
お兄様は照れ照れしながら体を揺らして提案をしてくる。
もしかして、次に贈るプレゼントとして宝石を気にしてたの?
変なところ気にしちゃってんな~。
「色もお揃いにしていただけたら、より一層特別感が出て嬉しいです。是非、お揃いの宝石を入れてください」
「……う、うん、うん! お兄ちゃん、最初から最後までしっかりと確認して作るからな〜!! お前が帰ってくるまでの間に完成させておくから! 楽しみにしておいてくれ!」
笑顔全開になったお兄様は、おれを抱きしめながらウキウキを隠さない声色でそう言った。
……作るって、ま、まさか自分で作るだなんてことはないよな?
デザインとか選んだりとかそのくらいだよね!?
かと言って自分で作るか確認すると「いい考えだ!!」とか言って、本当に一から作りかねない。
なのでおれは何も言えず、ただ「はい、楽しみにしています」としか言えないのであった……。