TS生贄娘は役割を遂行したい!   作:雲間

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 いくら道中を急ぐといっても人間休憩なしにはできない。

 一度馬車は平原で休憩の為に停止をし、ヴァルムントは指示と確認に行った。

 おれは護衛3人に囲まれながら、兵士さんと侍女さん達によっていつもよりは簡素に休憩用のあれこれが広げられていくのを眺めていく。

 ただしおれ用には手が抜かれず、普段通りの椅子やら何やらが並べられていった。

 急いでるんだしそこまでしなくてもいいとは言ったが、長々しく語られた言葉を要約すると『無理だ』と断られてしまったのだ。

 そんな……、本当に適当でいいのに。

 とはいえ押し通そうとしても困らせるだけなので、受け入れて休憩をしている。

 エコノミー症候群になっちゃうかもだから入念に体を解し、その後椅子に座りながら侍女さんたちに足を解されていく。

 勿論、ロングな靴下の上からだ。

 ある程度血行が良くなったので侍女さん達は諸々の片付けに入ってもらい、ユッタには腕や肩を揉んでもらっていると、ヴァルムントが近くにラハイアーを連れて戻ってきた。

 ラハイアーを傍におくのは続行してるのね。

 一方のユッタは揉むのを止め、ヴァルムントに礼をしてから一歩下がった。

 

「カテリーネ様、御御足のお加減いかがでしょうか?」

「問題ございません。皆様が問題なければ、すぐに出られる状態です」

 

 多分、変色してる足の部分についても聞いてたのかな?

 本当に大丈夫だよと追加で頷いておいた。

 納得をしてくれたのか、ヴァルムントは口角を緩ませて微笑みを返してくる。

 あ、相変わらずその笑顔は眩しい。ちょっとこっちが照れてしまう。

 そうやって照れ照れしていたら、何故かラハイアーがおれとヴァルムントを目で行ったり来たりをしていた。

 な、何? 君どうしたの。

 おれが質問するより前に、挙動不審なラハイアーの様子に気がついたヴァルムントが問いを投げていく。

 

「ラハイアー? 何かあったのか」

「いえ、あ、その、そういう訳ではなく……」

 

 違うと言う割には何か言いたげな感じがぷんぷんしている。

 じーっと見つめて無言の圧をかけると、ラハイアーは更に慌てた様子となった。

 

「おっ、あ、わ、私は、その、……お、お二人の! 愛がすごいからそうなるのもやっぱり本当ではないのかなと!」

 

 ……何を言われたのかさっぱりで訳が分からなかった。

 あ、愛で何!? そうなるって何!?

 おれもヴァルムントも唖然としていたら、ユッタが両手をギュッとさせながらキラキラとした目で主張をしてきた。

 

「そうだよ兄さん! まだちょっとみんな信じてくれてないし、もっと言って広めなきゃ!」

「え? あ、いや、そりゃそ……、あっ、う、うん。そ、そうだな! 言わなきゃな!」

 

 ユッタもラハイアーも、一体何を言い始めたんだ?

 ついていけてなくて目をパチパチさせていたら、何とも言い難いといった様子のカールさんが近づいてきて補足をしてくれた。

 

「どうも昨晩、ユッタちゃんが『ヴァルムント様が獣へと変化されたのは聖女たるカテリーネ様の愛によるものだ』って主張したみたいでして……。それが微妙に広まり始めてるんですわ」

 

 何それ!? ギョッとしてユッタを見ると、輝いた瞳と自信満々な表情での頷きを返された。

 昨日の今日だったから皆にどう説明したものかってなってたのに、そんなことになってたの!?

 あ、愛……かどうかはひとまず置いておいて、……置いておいて! おれのせいで変身した可能性が高いのは間違いない。

 でも本当にそうであるとは言い切れないし、呪いについても含めて正直に説明しにくいのは確かだ。

 当事者であるおれ達が絶対にこうって言えない時点でなぁ。

 おれとヴァルムントが言葉に困っていると、カールさんが腕を組んで上半身を傾けながらこう言ってきた。

 

「巫女であらせられたカテリーネ様なら、そういうお力があるのも不思議ではないんちゃいますかね〜。我々が絶対絶命の最中に窮地を脱出する手段として賜った、愛による奇跡ですわ〜」

 

 すごい演技臭い口調で言ってきたな。

 胡散臭すぎるが、カールさんは『そういうことにしておこう』という意味で言ってきたのではないだろうか。

 まぁその、ちゃんとした説明はできないし、『そういうこと』にしておくのがいちばん楽……なのか?

 戸惑っている間にユッタは「そうですよね!」と喜んでいるし、ラハイアーは「本当にそうなのかぁ〜」と納得していた。

 いいのか、それで……。

 

「そういう訳やから、しっかりみんなに説明してきてくれへん?」

「分かりました!」

「え? あっ、はっ、はい!」

 

 カールさんはニコニコしながらユッタとラハイアーの背中を押して他の兵士さんへとけしかけ、おれとヴァルムントと護衛だけが近くにいる状態へとなった。

 眉間にしわを寄せてカールさんをみるヴァルムントに、カールさんが「まぁまぁまぁまぁ」と言いながら説明をしてくる。

 

「ヴァルムント様、説明できないからそのままにしはったでしょ? 適当な理由でもええんで説明しとかんと、余計に変な噂が蔓延するんですわ。公にはこう言われているってのが必要なんです〜。ま、うちの隊にヴァルムント様たちをそない悪く言うやつはおらへんけど……」

 

 それで納得する!? とは思うが、屁理屈捏ね捏ねした説明よりはシンプルでいい……のか?

 すっきりしなくて首を傾けていると、静観していたラドおじさまがおれの頭にポンと手を置いて撫でてきた。

 

「第一な、事態を知らぬ者に獣になったと説明をしたとて誰も簡単に信じやせん。わしとて未だに信じられんくらいだ」

 

 おれはファンタジー世界だから変身くらいありえるかーってなるけど、この世界の人だったらそうなるのも当然っちゃ当然ではある。

 日本で「アイツ狼になったんだ!」って言ったら正気を疑われるし、メイクやマジックかなんかだと思われるのが当たり前だ。

 

「それにな、わしらを護ろうと動いておっただろう。それが事実だと補強する理由が存在し、納得できるのが大切なんだ。これでも納得せん奴はわしが言い聞かせてやろう」

 

 物理で行く気だ……。

 戦々恐々とし、物理説得がされないことを願いながらも頷きを返す。

 物理説得は別としても、他にいい方法も思いつかないのでこれでいくしかない。

 おれの頷きを見て、ヴァルムントもひとまずカールさんの案でいくのを決めたようだった。

 そういえばゲオフさんはどう思っているんだろうと見てみたら、目を何度もパシパシとさせながらもゆーっくりと頷いている。

 多分それが普通の反応だよと思いながら、移動再開の為に動き出したのだった。

 

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