パスクアルはニーヒスターで継承権争いがあった結果、すんごい捻くれて闇深な人物になった……ってやつだったはず!
継承権放棄しているのに嫌いな自国から出るのが許されなくて、唯一国を出られる手段としてOKが出されていた国際結婚を目指していたような?
国との交易を繋ぐ役目だから完全に離れられないとはいえ、物理的には国から離れられることには変わりないから地位の女性にとことん頓珍漢なアプローチしまくる男だった。
まあそのせいでなんか色々あって、2主人公と河川敷での殴り合いならぬ湖岸での殴り合いがあった……、ってキャラだったと思う。
やたらテンション高いまま胡散臭い言葉ばかり並べるのが印象的すぎて、堅苦しい政治の場と全然結び付かなかったわ!
……あれ? これってつまり……。
「カテリーネ様の両眼は全ての宝石を集めようとも叶わぬ輝きを放っておりますね。きっと、カテリーネ様の輝きが強すぎる故に恐れをなしてしまったのでしょう! しかしながら、オレはその輝きこそ尊いと感じているのです!」
「は、はい。ありがとうございます……」
全力で笑顔を張り付けながらも頑張って出した声はちょっと震えてしまった。
パスクアルはオッドアイが不吉だって言われているのを、そんなことないぜ! って言いたかったんだろう。
……けどさぁ、これ、おれもターゲットにされてね?
まままま、まさかぁ!
あっ、あのあのあのあのあのあの! おれ婚約者います! いますよ!!
ヴァルムントっていうとんでもなく強くてカッコよくて優しいバカ真面目な男がいますよ!
知ってる!? 知らない!? 流石に知ってるよね!?
結婚はしてないからまだいけるだろ判定ですか!?
しっかしコイツ、婚約者がいてもアプローチしてくるヤツだったっけ!? 最悪すぎる……。
ラドおじさまは露骨になんだコイツってなってるし、侍女さんや護衛達が顔には出さずとも動揺している雰囲気がバシバシ伝わってきた。
把握している限りパスクアルの結婚条件に合致する女性は全くいないから、こんな態度を誰にもとらなかったんだろうな~!?
だからお兄様も変なことにはならないだろうと、おれに会わせるのを許可してくれたんだろうな~!?
うわうわうわ、どうするんだよぉ……。
ちゃんと契約が上手くいくようにできるのか?
様々な意味で絶望しながらも、目的は達成させなきゃと席へと誘導をしていく。
「お茶とお菓子を用意いたしましたので、こちらへどうぞ」
「ああ! ありがとうございます! ……そうです! どうかオレにカテリーネ様をエスコートさせていただけないでしょうか?」
こっ、こんな短い距離で!?
な~に言ってるんだコイツと思いながらも断る訳にもいかなくて、差し出された手を取り大したことのない距離をエスコートされて先に席へと座る。
対面にパスクアルが座り、ようやくお茶会が始まっていった。
「わたくしの体調不良により、お会いするのが遅くなり申し訳ございません。わたくし、ニーヒスターの方であるパスクアル様とお会いできるのを楽しみにしておりました」
お兄様の役に立つ為にニーヒスターの人と会いたかっただけだがな!
当然ながら言外の言葉はパスクアルに届くことなく、そのまま受け取られていく。
「おお……! そう思っていただけていたとは、望外の喜びです。カテリーネ様についてはお伺いしておりましたが、実際にお会いしてみると想像以上に素晴らしいお方で、是非今後ともオレと仲良くしていただけると幸せな未来が築けると確信いたしました!」
やっぱおれのこと狙ってるんじゃねーかなぁ!?
つ、疲れる。コイツと喋ってると疲れる。
イケメンであろうともおれはこんなんじゃ靡かないんだからな!
例えその服の下に素晴らしい筋肉があったとしても、好意的に捉えることは難しすぎる……。
せめて普通の喋り方をしてくれねえかなと思いながら、お茶とお菓子をどうぞと促してひと休憩をおいた。
パスクアルは促された通りにお茶を優雅な所作で味わい、置いてあるクッキーをひとつをつまんでいく。
「ふむ……。こちらの甘く豊かに香る紅茶は、程よい酸味もあり素晴らしく良い味わいですね。控えめな甘さにしているクッキーと相性が抜群に思います。初めて飲みましたがどちらのものでしょうか?」
「ありがとうございます。こちらは我が婚約者が治める領地で生産されたものでして、ぶどうの葉を使用しております。わたくしもお気に入りの一品ですので、気に入っていただけて嬉しいです」
さりげなーくお前分かっているよなという牽制で婚約者と言ってみたが、パスクアルは動揺も何もなく「なるほど、元帥の領地のものでしたか」と言うだけだった。
わ、分かってるじゃん。おれの婚約者がヴァルムントだってことも分かってるじゃん!
最悪すぎる〜〜!
でもここが頑張り時だから! う、うおおお、やるぞ! やるぞ!
「よろしければこちらの紅茶を貴国でも味わえるようにご用意いたしましょうか?」
「ははは! カテリーネ様と共に過ごす空間だからこそ、こちらのお茶を格別に感じているのです! 自国で味わったとしても美味しく感じるとは思いますが、残念ながらこれほど良い味わいにはならないでしょう」
「まぁ……。……過分なお言葉、ありがとうございます」
き、貴様〜! このお茶はヴァルムントの領民の人が丹精込めて作ったものなんだぞ!
おれがいなくとも絶対に美味しくいただけるに決まっとるわ〜!
バチクソきれつつも、どうにか軌道修正をしようと話を続けていく。
「パスクアル様方は我が国との契約見直しをされにいらっしゃったと伺いましたが、どのような形を望まれているのかお伺いしてもよろしいでしょうか?」
一応お兄様から説明は受けているが、それはそれとしてこっち側の主張もちゃんと聞いておきたい。
あまり分かっていないふりをして尋ねると、パスクアルはニコニコしながらその内容を語ってきたのであった。